LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

フィンテックと企業経営#3を受講して

はじめに
初回が休講だったので、昨日(6月29日)の授業が3回目だった。今回は遠藤准教授による講義ではなく、マネーフォワードの瀧俊雄取締役FinTech研究所長だ。結論から言えばとても面白かった。まず話題が豊富だ。FinTech関連であれば、どんな質問にも自分の経験や知識に基づく回答がある。素晴らしい。さすがです。瀧さんが話した内容というよりは、私が理解した内容やその後ネットで調べた内容を以下にします。

マネーフォワード
2012年5月18日に設立されたベンチャー企業だ。東日本大震災のほぼ1年後だ。創業して7年経過するが、ユーザの声を聞き続けることと、テクノロジーの力でその課題を解決するという道筋はぶらさなかったという。マネーフォワードという社名は、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」という想いからだ。社長は、辻 庸介(1976年生まれ)で、京都大学卒業後、ソニーに入社し、マネックス証券に出向時の留学先で瀧さんと出会ったという。
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 出典:未来を建設しよう

結婚式はクラウドファンディング
生徒と聴講生が計8人ほどいたが、マネーフォワードを使っているかという質問に誰も手をあげなかった。スマホを取り出して、すぐにアプリをインストールするように指示された。私はすぐにインストールした(笑)。ちょっと勢いがすごいと思ったら、結婚式の後なので、少しアルコールも入っていたのかもしれない。そして、結婚式では主賓としてスピーチを依頼され、結婚式は結婚する二人の将来に対して投資をするクラウドファンディングのようなものと話をされたらしい。私はなるほどと納得した。

家計簿ソフトから会計ソフトへ
家計簿ソフトというと、ZaimとMoney Forwardが競っている。Zaimの設立は2012年9月だ。瀧さんも辻さんも家計簿をつけることが目的なのではなくて、家計簿ができたうえでの意思決定をしたかった。つまり、家計簿を自動化するソフトを開発するということだ。そして、家計簿ソフトの利用者を調べると、意外と中小企業が多い。しかし、家計簿ソフトは会計ソフトではない。確定申告に対応するには、せめて複式簿記に対応する必要があるのではということで会計ソフトの開発を決めたという。

イノベーションは無謀な人が起こす
企業の会計ソフトを開発すると、想像以上に大変だったという。イノベーションを起こす人は、ある程度無謀でないと一歩を進めることができない。しかし、なんとか解決してしまうのがすごい。ただ、会計ソフトは数字が命だ。一円でも間違いあると信用されない。この辺りは生命線のようだ。

貯蓄ゼロ世帯
日銀の調査によると、世帯の約3分の1では貯金がゼロだという。日本人は貯金が好きな民族のように言われるが、30代と40代では33.7%が貯金ゼロだ。これは貧富の格差が広がっているためかと思ったら、年収1200万円以上の世帯でも8世帯に1世帯は貯蓄ゼロだという。これはどういうことなのだろう。年金問題が話題になっているが、個人個人では将来のための貯蓄をしていないので老後が不安ということか。貯蓄がなくても将来はなんとななるという楽観論者が多いのか、悲観論者が多か、これだけだとなんだかよくわからない。研究するには良いテーマかもしれない(笑)。
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 出典:貯金ゼロ家計を待ち受ける地獄。3世帯に1世帯は破綻寸前だった | 日刊SPA!

プラットフォーマー
瀧さんは、GAFAへの安直な批判はちょっと反対だという。MicroSoftを含めてIT企業が富を独占していて、個人情報も独占して、けしからんという論法は一理はあるけど、そこに至るまでには数多くの競争と切磋琢磨があった。利用者に満足してもらって、使ってくれる人を増やすことが大事だし、大変だ。ちなみに家計簿ソフトの無料版を使う人に比べて有料版を使う人の毎月の貯蓄額は一万円ほど違うという。やはり意識の高い人が有料版を使うということなのだろうか。

LTVとCAC
私が調べたところでは、SaaSのリカーリングモデルでは、「LTV/CAC > 3x」が健全な水準だ。LTVとはライフタイムバリューだ。つまり、顧客が、生涯でどの程度サービスを利用するかという視点だ。一方のCACとは、顧客あたりの平均獲得コストだ。CAC payback<12ヶ月ともいう。つまり、月々の利用金額が300円だとすると、獲得のためのコストは300x12=3600円未満であるべきで、かつ、LTVはその3倍つまり10,800円以上でないと健全とは言えない。携帯電話の世界も他社にチャーンされたり、他社からチャーンしたりとしている。契約のキャンセル料金を1000円に引き下げられるこの健全なレベルから逸脱するのではないかと心配になる。
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 出典:One More Time: What Drives SaaS Company Valuation? Growth!! | Kellblog

ターゲットは中小企業
いわゆる大企業だと四半期決算を実施したりしていて、月末や四半期末では早く経理を締めるようにうるさい。そして、システムが整備されているので、基礎的な数字が確定すればすぐに経営状況をレビューすることができる。しかし、多くの中小企業で年度の決算数字を経営者が目にするのはお盆の休み明けとか、9月だという。なぜかというと6月に経理伝票とかを締める。そのあと経理事務所が必死にレシートを打ち込んで、仕分けして、決算書ができるのが8月上旬から中旬だ。そして、社長に見ますか?と聞くと、今週は盆休みやで。休み明けでええわ(なぜかここが関西弁)となる。中小企業では稼ぐことに必死なので、経理や財務分析は後回しになりがちだ。しかし、2月になると納税の時期になる。無用な納税はしたくない。ここで税理士が活躍するが、そのためには決算書が必要。でも、優先度は低いので、こうなる。しかし、これでは、羅針盤なしで船を運航しているようなものだ。ナビゲーションシステムなしで自動車を運転するようなものだ。

FIN/SUM2018
昨年の9月にフィンサムが開催された。瀧さんは麻生大臣のモノマネがめちゃうまかった。フィンサムとは、フィンテックサミットの略だ。日本経済新聞社金融庁が主導で開催したイベントだ。2018年は、FIN/SUMxREG/SUMとなっている。REG/SUMとは規制緩和を議論するということか。しかし、そんな会議隊とは別にFaceBookは着々とLibraの推進を進めてきた。やはりデファクトを作るのが王道だろう。
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 出典:https://pipitchoice.jp/fintech-2/

Frey&Osborne論文
英語が苦手でなければ、Frey&Osborneの論文の原文を読むように進められた。ググるとすぐに出てくる。でも、日本語の解説論文もある。英語が苦手な人はまずは日本語で読むのも方法だ。AIが普及して仕事の自動化が進むと雇用はどうなるかを調べた先駆的なものが、2013年9月17日に発表されたFrey&Osborneの研究だ。下の図が特に有名だ。難易度が中庸だ需要の大きな業務から自動化が進む。その結果残る仕事はより高度な仕事か、より単純な仕事だ。どちらの業務をするかで当然報酬が決まる。貧富の差はさらに拡大する方向に進むのだろうか。
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 出典:https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf

質疑応答
参加した生徒からは宿題として作成したレポートを発表するとともに、それに対する質疑応答などを行なった。詳しい内容は割愛するが非常に的確な回答が多くあり、びっくりした。さすがです。エストニアでは、コンピュータが可能な作業は人がやらないという方針でシステムの整備が進められているが、日本ではなかなか進まないなぜか?といった部分を質問したら、税金は、戦後の復旧時においては役所の人手が足らないということで、申告納税制度の拡大を見た。だんだんとエストニアのような自動化が可能にあってきているのではないか、という。人口が減少し、働き手がいなくなる一方で、AIをはじめとするコンピュータのパワーがアップするのであれば、目指すべき道は明らかなはずだ。しかし、現実の社会はそう単純でもない。この辺りも研究課題としては面白い。実行に向けてのあるべき姿を示すことまではまずやるべきだ。

まとめ
日本のフィンテックの第一線を進んできた瀧さんの講義は素晴らしかった。このような方々の話を聞けるだけでも、MBAコースに通う意味はあるかもしれない。MBAに興味にある方はぜひ検討してはいかがでしょうか?

以上

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ハイパーインテリジェンス

はじめに
今の「人工知能」には知能はない。どのセミナーか忘れたけど、パネラーが話していた。人工知能とは呼んでいるけど、できることは相関関係を示すことぐらいで、因果関係を示すことはできない。したがって、結論を出しても、その理由を説明することができない。現在のAIはせいぜいそんなものだ。

バズワードとしてのAI
AIという言葉はいつから使われているのだろうか? Google Trendで世界の傾向を調べてみると、2012年1月がピークとなっている。IBMのワトソンが発表されたのが2011年1月だ。ジェパディ!で人間と対戦したのが話題になったからだろうか。日本のみだと2017年12月だった。この頃話題になったのは、DeepMind社が開発したアルファ碁とプロ棋士の戦いだろうか。2017年4月にアルファ碁が3戦全勝した。 DeepMind社は人間との対局はこれを最後とすると宣言した。それにしても、世界のピークと日本のピークに6年もの格差があるのは驚きだ。
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 出典:https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=all&q=AI,5G

汎用的人工知能
ガートナー社が毎年発表するハイプカーブは有名だ。ここで汎用的人工知能(Artificial General Intellligence)の実現は、10年以上先となっている。まだまだ、これからだろう。その頃にはどんなことが実現するのだろうか。
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 出典:Artificial Intelligence for fraud detection: beyond the hype

人工知能の売り上げは右肩上がり
Tractica社は、AIやウェアラブルに強い調査会社だ。人間と技術の相互作用にフォーカスしている点が特徴だ。そんなTractivaのレポートによると、2019年度のAI関連のソフトウェアの売り上げは100億ドルを超えるレベルだが、2025年には900億ドル(約10兆円)に伸びるという。この市場に日本企業はどこまで入れるのだろう。
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 出典:Artificial Intelligence Software Market to Reach $89.8 Billion in Annual Worldwide Revenue by 2025 | Tractica

ハイパーアンナ
ハイパーインテリジェンスへのチャレンジの一つがハイパーアンナだ。現在のAI関連の製品は主に分析者向けのソフトが圧倒的に多い。IBMのワトソンは知性の抽出が可能だが、まだ分析者向けだ。これをもっとビジネス向けにしようというのがハイパーアンナだ。マイクロソフトが推進している人工知能といっていいだろうか。
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 出典:https://www.actuaries.asn.au/Library/Events/YAPConference/2018/ChelseaWiseWebPresentation.pdf

AI関連のスタートアップ群
IT業界が必死にしのぎを削っているのはやはりAI関連の製品だろう。先のハイパーアンナを含めて、どこが市場を制覇するかは、まだまだ見えない。混戦模様だ。ざっとみるだけでも下のような企業群がひしめいている。この中に日本企業はいるのだろうか。
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 出典:Venture Scanner: Artificial Intelligence Startup Highlights – Q1 2018

ハイパーインテリジェンス
1990年代はPCベース。2000年代はクラウドベース、2010年代はモバイルベース、そして、2020年代はハイパーインテリジェンスの時代になるという。どんなインテリジェンスの世界だろう。少なくとも相関関係に加えて、因果関係を紐解く程度のインテリジェンスは実現するのだろうか。
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 出典:https://go.microstrategy.com/

まとめ
久しぶりにAIについて考えてみた。ITの世界は流れが早いというが、AIの世界は激流だ。この激流が5年も10年もすると、もう世界は全く違う景色になるのだろうと思う。将来が怖いような、楽しみなような。

以上

最後まで呼んでいただき、ありがとうございました。

情報工学部会の参加報告:AIロボットを考える。

1. はじめに
日本技術士会の情報工学部会が12月15日(土)の午後に機械振興会館で開催された。今回のテーマは、「ロボットへのAI適用について」だった。興味深いテーマなので参加した。本年4月に東京に戻ってはや9ヶ月。36名の技術士が参加したが、そのうち6名ほどは知人だった。前半のパートは山口教授の講演だが、後半はチュートリアルで、慶応大学で開発したソフトを用いて実際にロボットのアプリ開発にトライした。

2. 山口教授
慶應義塾大学の教授だが、1957年生まれで大阪大学出身。大阪の四條畷(しじょうなわて)育ちのようで、これこての関西弁だった(笑)。博士課程まで大阪大学だったので、多分、奥様も関西の人なのだろう。現在のAIはいわゆる第三世代であり、結論は出せても、その根拠を示すことができない。知識を問えば完璧に答えるし、ある事象と別の事象の相関関係も分析できる。しかし、因果関係を聞いても答えられない。なぜ?どうして?と言う質問は苦手で、まだまだ進化の途上だ。
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 出典:https://www.criprof.com/magazine/2017/06/22/post-4168/

3. 相関関係と因果関係
人間でも単なる相関関係を因果関係のように勘違いすることはある。山口教授が指摘したのは、例えば病院を減らすと病人が減ったというもの。これは夕張市の経済破綻に伴い、市民病院がなくなった。市民が健康に注意するように意識改革が進んだこともあるが、重篤な病人は夕張市から転出したので、病人が減少したというもの。何が原因で、何が結果かを突き止めるのは、現時点では人間の役目だ。しかし、AIが色々な相関関係を分析してくれるのは、本当の因果関係を調べる上で大きな支援になる。
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 出典:atarimae.biz

4. AIと人間の協働社会
山口教授の講演の結論は、人間とAIロボットが同じ目的のために協働するのが望ましい社会だと理解した。現在のAIでは、次のような要素は代行が困難だ。
 1) 創造性や創意工夫が必要な要素(Creativity)
 2) 手先の器用さを求められる要素(Dexterity)
 3) 社交性を求められる要素(Social Intelligence)
この3つのキーワードで検索すると、有名な論文「47%の仕事はAIロボットに代替される」と同じ主張だった。ROBOTENOMICSが発行するこのペーパーでは、AIロボットに代替されるリスクの高いのが47%、中ぐらいが19%、低いのが33%だという。例えば、事務員の仕事はRPAなどで自動化されやすいが、ファッションデザイナーの仕事は自動化しにくい。測量士や受付係りの仕事は自動化されやすいが、高度な判断を伴うような監督員の仕事は自動化しにくいだろう。
 出典:https://robotenomics.com/2016/04/18/1158/

5. サービス業におけるロボット利用
学生の時に、学園祭でコンピュータ占いのコーナーを作ったことがある。一見、コンピュータが処理しているようにダンボールで作ったが、中には人がいて、それらしいメッセージをボックスに落とすだけのアナログなものだが、結構人気になった(笑)。現在の変なホテルの受付ロボットは、単に挨拶をしているだけで、視覚認証もしていないし、言語認証もしていない。ある研究者が認知症気味の老人の相談ロボットを作ったという。色々な有益と思える情報を提供する機能を実現したが、老人の逆鱗に触れて殴られて壊れたという。今度は、相槌(あいづち)のみをするロボットを開発したら、えらく喜ばれたという。必ずしも高度な機能が必要ではない好例だ(苦笑)。

6. 自動運転車
2020年の東京オリンピックパラリンピックの時には、首都高速を自動運転車が颯爽と走行することが計画されている。しかし、このミッションを受けた研究者は頭を抱えているという。なぜかといえば、自動運転車は事故を起こしてはいけない。それだけでプロジェクトがストップする。「下町ロケット」のように失敗しても次のチャンスがあるとは限らない。このため、安全係数をとる。どうしても慎重な設定となる。首都高速のインターには入れても、一般の車が走行している走行レーンに合流できない。つまり、スタートしない!という。このため、自動運転車が安心してスタートできるように、助走レーンを長くしてあげるとか、車が走っていないところでスタートさせる必要があるようだ。なかなか大変だ。個人的には、道路交通法の改正を検討すべきだと思う。一般に最高速度のプラス10km/hとか、20km/hまでなら、他の走行車両の速度に合わせて運転すべきだし、警察もある程度は許容しているという俗説もある。しかし、自動運転車は俗説や常識ではなく、法令に準拠して走行するので、交通渋滞やイライラした車による事故の増加要因となりかねない。

7. Google翻訳
2016年11月に「Neural Machine Translation(ニューラル機械翻訳)」という深層学習の機能が導入され、翻訳精度が大幅に向上した。英語からフランス語への翻訳では1万5千時間の学習で、プロの翻訳家レベルではないけど、その前段の翻訳としては十分に使えるレベルだという。実際、最近は、言語に関係なくGoogleで調べて、Googleで翻訳して理解することが多い。便利な世の中になったものだ。
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 出典:「Google翻訳」の精度が劇的に向上したワケ - 日経トレンディネット

8. IBMのワトソン
ワトソンは、すでに百科事典や辞書、ニュース、著作物など100万冊、2億ページの知識を獲得している。しかし、そこで使われているのは、最新技術というよりも従来技術だ。それでも従来技術を集大成することで、すでに年間1兆円規模の売り上げを達成しているようだ。IBMの売り上げは約10兆円なので1割を稼ぐとはすごい。
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 出典:IBMのAI「ワトソン」、年1兆円稼ぐ 初期市場で先行 - 気の向くままに

9.東ロボくん
2011年から2016年にかけて国立情報学研究所が中心になって、人工知能東京大学に合格できる能力まで高めることを目標にしたプロジェクトだ。5教科合計の偏差値は57.8まで高まったが、これが限界と研究は幕を閉じた。しかし、それでも、国公立大170大学の33大学、私立大580のうちの441大学に入学できるレベルには達した。世界史や数学は得意だが、国語や英語、物理で50を超えない。国語とか英語では、特に長文読解の能力が現在の深層学習では克服するのが難しいという。また、物理の試験では、問題文に記載されているイラストを正しく認識することができないらしい。興味深いのは、Wikiで学習して知識を増やしているので、日本史の問題が出ても、教科書と異なる答えを書いてしまって得点にならないこともあるようだ。これって、東ロボくんの問題ではなく、教科書側の問題ではないかと思う。教科書検定をやめて、Wikiをベースに試験するようになれば、もっと得点が上がるのかもしれない(笑)。東ロボくんの研究が中止になった裏の理由がこの辺りにあるかもと考えるのは邪推だろうか(^^)
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 出典:ASCII.jp:東大生がロボットに仕事を奪われる日は来るのか (1/2)

10. まとめ
これら以外にも興味深い話が本当に湯水のように湧き出てくる。慶應義塾大学が開発したPRINTEPSというロボット開発ツールを学習し、小グループに分かれて、簡単なプログラムを開発した。AIを活用して解決するような社会的な課題を決めて、どうやって解決するかといったディスカッションと発表を行った。その時に出てくる山口教授のコメントには、多くの示唆に富んだ事例の話があり、すごいと思った。特に、スキルだけでもダメ、知識だけでもだめ。実践を通じて習得した経験ノウハウというスキルと、体系的な知識を連携させることが大事だというのが印象的だった。また、世の中にIoTが普及して、大量のデータが発生(=ビッグデータ)することで終わってはいけない。この大量のデータを分析(AI)して、それを専門家が持つ知見で判断して、解決策を見出す。そして、それを実社会の課題解決に役立てる。そういう大きなサイクルを確立することが大切だと思った。

以上

技術士(情報工学部門)へのトライと停止性問題

情報工学部門へのトライ
技術士には過去にトライしてすでに3つの部門で登録しているが、今年度は情報工学部門にトライすることにした。昨年度の二次試験の実績で言えば、合格率はわずか7%と非常に難関な部門だ。大丈夫だろうか。情報工学部門でも、他の部門と同様に課題Iは必須科目(択一問題)で、課題IIと課題IIIが選択科目(記述問題)だ。このいずれもがムズイ。

情報工学部門の択一問題
二次試験では、まず択一問題だ。情報工学には、コンピュータ工学、ソフトウェア工学、情報システム・データ工学、情報ネットワークの4つの科目があるので、この4つの科目から合計20の問題が出題され、そこから15問を選択し、さらにそのうちの6割以上なので9問が正解である必要がある。単純計算でいえば、各科目から5問ずつ出題されるわけだ。何度かトライしたが、いずれもなかなか難問だ。答えが違うのではないかと感じる問題もある。まあ、もう少しトライしたら、一度出題傾向を分析して、傾向と対策を整理したい。

情報工学部門の記述問題
次は、記述問題だ。これも課題IIにおいて600字の1枚ものを2題と、2枚ものを1題選択して回答し、課題IIIでは600字の3枚ものを1題選択して回答する。つまり、合計で600字ものを7枚書き上げる必要がある。受験するのは、情報ネットワークなので、インターネット関連、セキュリティー関係、Wi-Fi通信プロトコルなどの問題が多い。これについては、5月のゴールデンウィークで頑張って、技術ノートを100個作成した。そのあと、この技術ノートを見ながら600字の解答用紙にそれぞれのキーワードの特徴や課題、課題への対応をまとめるドリルを実施した。技術ノートを見ながら30分ほどかけて600字の解答用紙にまとめるので、技術ノートの内容よりも、解答用紙の内容の方が整理されていることが多い。このため、作成した解答用紙の内容をベースに技術ノートの内容を改定して、第二版を更新しているところだ。これが結構時間がかかる(涙)。

停止性問題
技術ノートとして整理したキーワードの中にチューリングマシンがあった。数学者のアランチューリングが提唱した単純化・理想化した仮想機械だ。当時の計算機はプログラムが間違っていると無限ループに陥った。アランチューリングは、停止性問題として、あるチューリングマシンはそのような無限ループに陥らずに一定の時間で停止することが可能かを問い、それは無理だと結論つけた。

Appleの爆弾マーク
皆さんはAppleの爆弾マークを見たことがあるでしょうか?30年ほど前に初めてLCIIというAppleのPCを購入した時には、よくLCIIはハングして、画面には爆弾マークが表示された。会社の一部の部門でAppleのPCを導入した時も、あちこちで悲鳴が聞こえた。頑張って作成した資料も、PCがハングすると復元できずに無駄になるからだ。

iPhoneの爆弾マーク
最近はほとんど見ないが、日本で初めて売られたiPhone3Gを購入して使っていると、懐かしい爆弾マークを見たことがある。やはりAppleのOSで動いているので同じなんだなあと妙に納得したことを覚えている。

将来のAIロボット
コンピュータ技術が進歩して、一人一台のAIロボットを使うような時代になっても、この停止性問題は解決しないのだろうか。世の中にはノンストップコンピュータは実現しているが、これは停止性問題の解決ではない。停止性問題とは、ある入力(指示)に対して、無限ループに陥るのではなく、これは無限ループに陥るから嫌だと拒否するか、無限ループに陥っていることを理解して自らの処理をストップすることだ。

人間は停止性問題を解決できるのか
そもそも人間はどうなのだろうか。通常の問題であれば、着手してから何分も何時間も考えても解けなければこれは無理と判断する。その意味では人間は停止性問題を解けるといえる。しかし、常にそうかというとそうでもない。例えば、電通に勤務していた女性社員が自殺した問題がある。詳しくは分からないが、非常にやりがいのある仕事ではなく、意味が不明な仕事を大量に強いられ、思考能力も低下し、結局自らの死で決着をつけた。本来は、そうなる前に停止すべきだったが、停止できなかった。そのような意味では、人間も停止性問題を解決できるとは限らないのかもしれない。

汎用AIは停止性問題を解決できるのか
レイ・カーツワイル人工知能が人間の知性を超えるシンギュラリティの到達を2045年と予想したが、そのような時代に稼働している汎用AIも、所詮は計算機だ。チューリングマシンが解決できない停止性問題を解決することができるのだろうか。つまり、どれだけコンピュータの技術が発達しても、なんらかのミスやトラブルがあり、想定外の事態に陥ると無限ループから抜け出せなくなる可能性はゼロではない。

フェールセーフ
大切なことは、そのような時に一声かけることだ。先の電通の女子社員にしても、周囲の人が大丈夫?と声を掛けていたら最悪の事態を回避することができたかもしれない。汎用AIが世の中に多数存在するような社会においても、特定の汎用AIは無限ループに陥るかもしれない。そんな時には、周囲にいる人間か別の汎用AIが大丈夫?と聞いてあげるような優しい社会が実現できれば、停止性問題は解決するのかもしれない。

未来を予測する最善の方法は未来を創ることだ
これはスティーブ・ジョブズとともにiPhoneを開発したアラン・ケイの有名な言葉だ。子供達にITの啓蒙活動講座をする時にも、次の絵を見せて知ってる?と聞くとほとんどの生徒は知らない。1968年にアラン・ケイが描いた絵といっても、アラン・ケイを知っている生徒はほとんどいない。それでも、50年前にこんなことを想像したことが今は実現している。50年後にはどんな世界になっているのだろう?どんなことができるようになっているのかを目を閉じて想像してごらんと言うと、素直な子供達は色々な想像をしてくれる。そして、想像するだけでなく、ぜひ創造してと言うと眼が輝く子供達がいる。(出展:https://the01.jp/p000966/)
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まとめ
ブログの更新が途切れがちだが、気になったことやびっくりしたことなどは今後も定期的にはアップしたいと思う。以前ほど深い内容を頻繁にアップすることはできないけど、無理のない範疇で、無限ループに陥らないように、マイペースで更新するので、気が向いたら覗いて見てください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

以上

ヘッブの法則からAIソフトと人間の役割分担まで

ヘッブの理論
脳細胞の動きについての法則だ。ヘブ則ともいう。脳のシナプスの可塑性についての法則だと言われても何のことだかわからない。

ヘッブの理論の提唱者
このヘッブの理論を提唱するのは、カナダの心理学者であるドナルドヘッブ(1904年7月22日〜1985年8月20日)だ。両親は医師だが、作家を目指し、心理学を学び、ハーバード大学で博士号を取得。その後、知覚や学習についての神経学的研究を行ない、それをヘッブの理論としてまとめた。

心や精神はどこにあるのか
人間の行動や感覚を司る心や精神は、脳神経に存在するのではなく、神経細胞同士の相互作用の中に存在するという考え方がヘッブの理論だ。つまり、ある神経細胞Aが別の神経細胞Bを継続的に刺激するときに神経細胞Bも活性化するとAとBの間の神経回路が活性化される。継続的に刺激するとAとBの神経回路は強化され、短期的な記憶となる。

短期的な記憶と長期的な記憶
点の記憶だけだと短期的な記憶だが、その点と点が繋がり、面的なつながりが強化されるとそれは長期的な記憶となるという。技術士試験でも、知らない言葉が出て面食らうことが多いが、そのような未知の言葉(キーワード)についての理解が深まり、さらにキーワードとキーワードの関係を理解すると、なんとなくその分野のことを理解したような気持ちになる。そのように理解することが長期的な記憶に繋がるということだろう。

ヒトゲノムとヒトコネクトーム
ヒトゲノムとは、人間のゲノムのことである。ゲノムとは遺伝情報のセットであり、ヒトゲノムは核ゲノムとミトコンドリアゲノムからなる。この核ゲノムには約31億のDNA塩基がある。ヒトゲノムの解読は非常にチャレンジングだったが、2003年に解読の終了が宣言された。一方、ヒトコネクトームとは、人間のコネクトームのことだ。コネクトームとは生物の神経系内の各要素がどのように接続しているのかという全体的な地図を意味する。人間の脳には約一千億ほどの神経細胞があり、その神経細胞間の接続数は1兆ほど存在する。ヒトゲノムの解明は終了したが、ヒトコネクトームの研究はまだ始まったばかりだ。

遺伝と環境
人間の性格は遺伝で決まるのか、環境で決まるのか。遺伝が8割とか、5割とか諸説あるようだ。しかし、昔からのことわざで言われるように、三つ子の魂百までというのは結構当たっているのではないだろうか。幼少時の性格と大人の性格は変わるものだが、その基本的なセットは幼少期に形成されるというのはあるかもしれない。先の人コネクトームに基づけば、1千億個ほどの神経細胞の形成はDNA、つまり遺伝に依存するだろう。しかし、その後の1兆ほどの組み合わせのどこが強化されるかは環境による。その意味では、環境の影響も非常に大きいと言えるのはではないか。
fukusuke.tokyo

SASのセミナー
新聞を読んでいると人工知能やAI、機械学習といった話題が満載だ。昨日もAIエンジンのパッケージソフトで先行するSAS社のセミナーを覗いてみたが、すごい集客力に驚いた。300人ほどが収容できる会議ホールが6 ほどあり、いずれも立ち見が出るほどの満席だ。しかも、それらの会議室では6回ほどのセッションをしている。ざっと考えても延1万人ほどの参加はすごい。先行してSASのAIエンジンを利用した成果が発表されていたが、医療あり、電力あり、金融ありだった。ポイントは大量の業務に適用すると省力化の効果が高いということだ。

AIソフトによる仕分け
例えば、マネーロンダリーに口座が使われていないかどうかを銀行は調べる義務があるが、この処理は大変だという。しかし、AIソフトを活用し、明らかに問題がない案件と、明らかな問題を仕分け、人間はどちらとも言えない微妙な案件に集中することで精査業務の効率化が飛躍的な向上したという。しかし、精査業務に長く従事した人はAIソフトの導入に反対だったという。その理由を問うと、「だって我々が実質している内容しかAIソフトはしていない。」、意味がないという。しかし、AIソフトは精査のベテラン社員が行うことを機械学習して、その通りに仕分けし、その理由を明記するような仕組みなので、それは当然だ。そして、精査のベテラン社員もそのことを理解すると、「繰り返しの作業から解放されて、より困難な案件や微妙な案件に注力できるのは歓迎すべきことかもしれない」と考えるのようになったという。最終的にはAIソフトが対応できる業務がどんどん増えるのだろうが、人間とAIソフトのあるべき役割分担の一つのパターンのように感じた。

技術士試験にチャレンジする人へのエール
総監を除く一般部門の二次試験は7月15日に予定されている。今年の試験にトライする人は技術ノートを作ったり、記述ドリルにトライしたりしているかもしれない。私も今回は情報部門にトライしているが、人工知能ブロックチェーン量子コンピュータあたりは出題に狙われやすいキーワードだ。人工知能では、教師あり学習と教師なし学習や、ニューロン構造などはマストだ。このような分野を調べていると先にあげたヘッブ理論やヒトコネクトームのキーワードを初めて知った。その意味することは難解だけど、点の理解ではなく、その点と点を結びあわせて面の知識にすることの重要性と効果は理解できる。

まとめ
AIは結論を出せても、その判断ロジックを示せないと聞いていたが、SASの講演では判断ロジックまでを出力する事例が発表されていた。AIを中心ととする業務改善はこれからの産業構造を改革する中心的なエンジンだろう。情報工学部門にも首尾よく合格できれば、人工知能の安心・安全な活用に向けての研究も継続して実施して行きたいと思っている。そのためにも合格しなければ(汗)。

以上

景気政策としてのベーシックインカムの側面と実語教の意味

ベーシックインカム(以下はBI)の経済政策としての側面
BIは一般には貧困対策などの福利厚生政策として論じられることが多い。しかし、BIを導入しても、一定の金額があまねく支払われるだけであって貧富の解消にはならない。しかし、その一方で今後、ロボットやAIの技術が進歩して、ほとんどの仕事を自動化できるような時代には仕事をしたくても、希望する仕事につけなかったり、そもそのその仕事がなくなり、収入を得られない人口比率が増大すると懸念される。商品を供給するシーズとしてのメーカ側の機能は充実し、それを消費したいというニーズも高いのに、消費すべき人に収入がないために消費できないというジレンマに陥る危険がある。

BIはデフレ対策として有効か
ニーズはあるが、収入がないもしくは収入が低下するとどうなるか。人々はより安いものを志向するようになる。多少ニーズと違っても、必要十分な商品が100円ショップで購入できるのであれば、高価な店では購入しなくなるだろう。飲食にしても、同じようなものなら安い店にニーズがシフトするだろう。結果として、デフレは加速するかもしれない。しかし、生きるために必要な衣食住を賄うための必要最小限の収入をBIとして確保できるのであれば、その収入の範囲内で少しでも美味しいもの、少しでもおしゃれなものを嗜好するようになるのではないだろうか。

BIはインフレ政策として有効か
BIの財源問題があるので、例えば最初から月額7万円を支給するのではなく、数万円から初めて効果を見極めながら徐々に増額するのが現実的だろうという意見がある。それは一理ある。支給金額が増えすぎるとインフレが懸念されるため、適正な金額に抑えるべきともいう。それはその通りだ。

BIの増額を抑制できるのか?
しかし、仮にBIを開始し、効果を確認できたので、金額を増額する。きっと国民は喜ぶだろう。もっと増額してほしいという希望が増えるだろう。そんな国民のニーズを組んで増額を宣言する政治家が当選するようになると、まさにポピュリズムの結果として、政治家は増額を推進しようとする。多少インフレ懸念があったとしても、国民が望む増額をやるのだから国民が反対することはない。

インフレ政策が引き起こすこと
一旦、インフレが発生するとどうなるのだろう。政治家は国民の人気を得るためにBIの増額を宣言して、国民もこれを歓迎する。しかし、過剰なBIの増額がもたらすものはインフレであり、通貨価値の減少だ。その結果として、タンス預金としてせっせと貯蓄した資産は目減りして国民は損害を受ける。一方、政府は多額の負債が実質的に目減りして、政府は利益を得る

BIの制限とフェイルセーフ

予算の制約もあるため無制限にBIを増額することはできない。しかし、政府は、国民を煽ってさらにBIの増額とそれに伴うインフレをさらに加速しようとするかもしれない。したがって、BIを導入するときには、段階的な増額は実行可能なプランであるが、上限の宣言をするべきだ。また、一旦インフレが加速したときには、BIを減額して、インフレを鎮静する市場メカニズムをあらかじめフェイルセーフの仕組みとして盛り込んでおくべきだ。

BIバブルの懸念
これをBIバブルのリスクと定義したい。人間の叡智でこれを未然に防ぐことが可能と信じたい。しかし、人間は体制に流されやすい側面もある。冷静な判断が出来ないという愚かな性癖を持っているので、BIバブルの発生とBIバブルの崩壊は不可避なのかもしれない。願わくは最初のBIバブルの崩壊からの教訓を得て、それ以降は適切なBI支給額に設定ルールを社会が受け入れることを望みたい。

実語教が教える意味
BIのもう一つの課題は人は何のために生きるのかという精神的な支柱だ。子供からなぜ勉強するべきなのかを問われたときにあなたは何と答えるのだろうか。良い学校には入れても、良い会社に入れる人は少ないだろう。また、その会社で活躍出来る人も少ないだろう。自分で起業する方法もある。でも、起業に成功する人も少ないだろう。大多数の人はどうすれば良いのだろうか?私は、千年に渡って日本人の心を育てた実語教が大きなヒントになると考えている。実語教に関しては別に投稿したものを引用しておきたい。
hiroshi-kizaki.hatenablog.com

まとめ
大切なことはお金ではなく知恵だ。自分を磨き、その知恵を次代に引き継ぐ。そんな社会は前向きで健全で活気に溢れているのではないかと期待したい。BIの目的は格差是正や貧困対策がメインかもしれない。しかし、インフレを誘起することによる景気対策の側面もあることを忘れてはいけない。20年後、40年後の世界がユートピアになるのか、ディストピアになるのかは、今後の技術開発や技術研究だけではなく、社会面での仕組みの検討が重要だし、その中でもBIの是非は最重要なキーワードだろう。しかし、本当にユートピアにするには、一人一人の人間が生きがいを持って、やりがいを持って、目的を持って自らを研鑽する。成長を実感する。そういったことが重要だ。そのための方法論はここでは割愛するが、少なくとも日本で一千年に渡って語り継がれた実語教の存在ぐらいは知っておくべきだと思う。

以上

Disruptとは新秩序を構築することであるべき

既存秩序の崩壊
インターネットの普及により、既存の社会システムや事業モデルが崩壊することを象徴する言葉が「ディスラプト」だ。KDDIの新社長に就任予定の高橋副社長が記者からのインタビューで用いていたので気になって少し調べてみた。

18世紀の第一次産業革命
蒸気機関の発明により、それまで人力で運航していた船舶が蒸気機関駆動となり、その航路の活動範囲が飛躍的に増大した。蒸気機関車が開発されて、陸上での移動範囲が格段に格段し、物流網が整備された。

19世紀後半の第二次産業革命
欧米諸国で始まった工業化により鉄鋼、電気、化学、石油の開発が進んだ。これにより米国では本格的なモータリゼーションの幕が開いた。印刷機の開発が進んだのもこのころだ。フレデリックテイラーによる工場の科学的管理技術の研究が一気に進み、ベルトコンベヤーによる自動車の製造ラインの効率化が図られた。

20世紀後半の第三次産業革命=情報革命
未来学者のアルビントフラーは、情報革命を第三の波と説いた。米国の最大通信会社だったAT&Tの分割案を政府が断行する10年以上前に提言していたという。コンピュータや情報通信が指数関数的に発展することを示したムーアの法則は有名だ。集積回路上のトランジスタ数は「18か月(=1.5年)ごとに倍になる」というものが有名だが、Wikiの英語版を見ると、ムーアの発言はほぼ2年で複雑性が倍増すると言っている。
The complexity for minimum component costs has increased at a rate of roughly a factor of two per year.

第4次産業革命
欧米ではインダストリー4.0という用語を使っている。そして、特徴的な技術をサイバーフィジカルシステム(CPS)と呼ぶ。これは、サイバー=ネットと、フィジカル=既存のハードを連携するものだ。日本語のWikiだと、IoTやAIを用いる製造業の革新と説明されているが、英語版のWikiだと先述のCPSの活用がインダストリー4.0と定義付けている。下の図は、その解説図だ。
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(出典:Wiki、参考1)

これから崩壊されると想定される既存秩序とそれをどのように新秩序として再構築すべきかを事例を交えて考えてみたい。

1) 金融
中央銀行が紙幣を発行し、市中銀行を通じて世の中に紙幣流通を図る。中央銀行相互の決済をするための国際決済銀行(BIS)が仮想通貨の技術を活用することを検討しているのは、別のブログで述べた。すでに電子マネーが市民権を得ている世の中だが、今後大きく変貌するだろう。

2) 教育
すでにネットで単位の取れる高校は始まっている。しかし、義務教育の小学校や中学校の改革はどのように進むのだろう。大学入試方法の改善が予定されているが、AI時代に対応した教育システムへの変革は今後待った無しになるだろう。

3) 製造業
製造業の自動化はどこまで進むのだろう。ロボットを製造するロボットも実現するのだろう。調べてみると、ケンブリッジ大学チューリッヒ工科大学が共同でそのような研究を進めている。つまり、母となるロボットは最初に10体の自走ロボットを製造し、最も優秀なものを残す。次に、それをベースに改善を加えて新たな10体を製造し、また最も優秀なものを残す。これを何度か繰り返すと、非常に優秀な自走ロボットが完成するというものだ。すごい!
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(出典:PLOS、参考2)

4) サービス業
典型例はコンビニやスーパーでのレジの合理化だろう。Amazon社は、2018年1月22日にAmazon GOの1号店を米シアトルで開業した。これはQRコードを読み取る方式だ。国内で検討されているのはRFIDの活用だ。下の図のようにRFIDは一斉に読み取れる。非接触で読み取れるという特徴がある。経済産業省は、国内大手コンビニ業界と交渉し、2025年を目途にコンビニ電子タグ1000億枚宣言をした。しかも、これは単なるコンビニの業務効率化には止まらない。食品製造会社からコンビニへの配送管理や、家庭での冷蔵庫内の食品管理まで可能となる。これは大変な構想だ。
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(出典:経済産業省、参考3)

5) 農業
水田の作業は、田植え、稲刈り、雑草除去、農薬散布と多岐にわたり大変だ。外部環境としては、水の供給と太陽光の供給がある。太陽光の制御は難しいが、水の管理なら可能だ。IIJはLoRaWANという新しいIoT技術を活用して、水田への水の供給量を監視し、制御するシステムを提案している。
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(出典:ITメディア、参考4)

6) 林業
林業は中長期の戦略が求められる。たとえば、京都の清水寺の舞台を支える柱の寿命は400年だという。清水の舞台は、何度か焼失し、最近では1633年に再建された。定期補修で対応しているが、木材の耐用年数に基づく本格的な大改修が必要だ。このために清水寺では、樹齢300年以上のケヤキのある山を購入した。しかし、そんな林業に従事する人材が不足している。1980年には14万人いたのが2012年には5万人とほぼ3分の1に激減している。さらに林業には、地球環境の保全、土砂の災害防止、水源の涵養、希少生命の保護など関係する課題も山積している。さらにこれをIoTなどを活用して改善する人材が求められている。
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(出典:事業構想大学院大学、参考5)

7) 漁業
IoTの活用が進んでいるのはやはり養殖だろう。例えば、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県の女川で行っていたサーモンの養殖を鳥取県の境港に移すことになった。しかし、新しい境港は、女川よりも海水温が高く、潮流が速く、冬は荒波が経つという環境の違いがある。また、養殖業に従事する人の高齢化も進んでいた。このため、先人の知恵に学ぶ一方で、センサーを活用して、養殖に関する各種データをシステム的に分析することにチャレンジしている人がいる。今後のテクノロジーの進歩をうまく活用すれば、画像データや映像データやセンシングデータなどを多面的に、総合的に分析して、より生産性を高めることが可能かもしれない。
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(出典:Digital Innovation Lab、参考6)

まとめ
第4次産業革命は待ったなしだ。既存秩序が崩壊する例は今後あらゆる業種業態で発生するだろう。しかし、ディスラプトの目的は、既存秩序の崩壊ではなく、新秩序の構築であるべきだ。日本の人口が今後どこまで減少するのかはわからないが、仮に江戸末期のレベルまで減少するとすると3000万人。今の4分の1だ。何の根拠もないが、個人的には7-8千万人ぐらいで一度人口減少に歯止めがかかるのではないかと想像する。そして、そのあと、そのレベルを維持するのか、増加に反転するのか、さらに減少するのかは、その時代の人間が将来の日本に希望を持つことができるかどうかに依存するのではないだろうか。ロボット技術の革新も進んでいるだろう。しかし、人間が人間としての誇りと希望を持って生活をエンジョイするような世の中であって欲しいと思う。

以上

参考1:https://en.wikipedia.org/wiki/Industry_4.0
参考2:http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0128444
参考3:http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170418005/20170418005-3.pdf
参考4:http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1712/08/news032.html
参考5:https://www.projectdesign.jp/201506/forestry/002157.php
参考6:http://digital-innovation-lab.jp/fishery/