LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

Disruptとは新秩序を構築することであるべき

既存秩序の崩壊
インターネットの普及により、既存の社会システムや事業モデルが崩壊することを象徴する言葉が「ディスラプト」だ。KDDIの新社長に就任予定の高橋副社長が記者からのインタビューで用いていたので気になって少し調べてみた。

18世紀の第一次産業革命
蒸気機関の発明により、それまで人力で運航していた船舶が蒸気機関駆動となり、その航路の活動範囲が飛躍的に増大した。蒸気機関車が開発されて、陸上での移動範囲が格段に格段し、物流網が整備された。

19世紀後半の第二次産業革命
欧米諸国で始まった工業化により鉄鋼、電気、化学、石油の開発が進んだ。これにより米国では本格的なモータリゼーションの幕が開いた。印刷機の開発が進んだのもこのころだ。フレデリックテイラーによる工場の科学的管理技術の研究が一気に進み、ベルトコンベヤーによる自動車の製造ラインの効率化が図られた。

20世紀後半の第三次産業革命=情報革命
未来学者のアルビントフラーは、情報革命を第三の波と説いた。米国の最大通信会社だったAT&Tの分割案を政府が断行する10年以上前に提言していたという。コンピュータや情報通信が指数関数的に発展することを示したムーアの法則は有名だ。集積回路上のトランジスタ数は「18か月(=1.5年)ごとに倍になる」というものが有名だが、Wikiの英語版を見ると、ムーアの発言はほぼ2年で複雑性が倍増すると言っている。
The complexity for minimum component costs has increased at a rate of roughly a factor of two per year.

第4次産業革命
欧米ではインダストリー4.0という用語を使っている。そして、特徴的な技術をサイバーフィジカルシステム(CPS)と呼ぶ。これは、サイバー=ネットと、フィジカル=既存のハードを連携するものだ。日本語のWikiだと、IoTやAIを用いる製造業の革新と説明されているが、英語版のWikiだと先述のCPSの活用がインダストリー4.0と定義付けている。下の図は、その解説図だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201134744p:plain
(出典:Wiki、参考1)

これから崩壊されると想定される既存秩序とそれをどのように新秩序として再構築すべきかを事例を交えて考えてみたい。

1) 金融
中央銀行が紙幣を発行し、市中銀行を通じて世の中に紙幣流通を図る。中央銀行相互の決済をするための国際決済銀行(BIS)が仮想通貨の技術を活用することを検討しているのは、別のブログで述べた。すでに電子マネーが市民権を得ている世の中だが、今後大きく変貌するだろう。

2) 教育
すでにネットで単位の取れる高校は始まっている。しかし、義務教育の小学校や中学校の改革はどのように進むのだろう。大学入試方法の改善が予定されているが、AI時代に対応した教育システムへの変革は今後待った無しになるだろう。

3) 製造業
製造業の自動化はどこまで進むのだろう。ロボットを製造するロボットも実現するのだろう。調べてみると、ケンブリッジ大学チューリッヒ工科大学が共同でそのような研究を進めている。つまり、母となるロボットは最初に10体の自走ロボットを製造し、最も優秀なものを残す。次に、それをベースに改善を加えて新たな10体を製造し、また最も優秀なものを残す。これを何度か繰り返すと、非常に優秀な自走ロボットが完成するというものだ。すごい!
f:id:hiroshi-kizaki:20180201145607p:plain
(出典:PLOS、参考2)

4) サービス業
典型例はコンビニやスーパーでのレジの合理化だろう。Amazon社は、2018年1月22日にAmazon GOの1号店を米シアトルで開業した。これはQRコードを読み取る方式だ。国内で検討されているのはRFIDの活用だ。下の図のようにRFIDは一斉に読み取れる。非接触で読み取れるという特徴がある。経済産業省は、国内大手コンビニ業界と交渉し、2025年を目途にコンビニ電子タグ1000億枚宣言をした。しかも、これは単なるコンビニの業務効率化には止まらない。食品製造会社からコンビニへの配送管理や、家庭での冷蔵庫内の食品管理まで可能となる。これは大変な構想だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201150706p:plain
(出典:経済産業省、参考3)

5) 農業
水田の作業は、田植え、稲刈り、雑草除去、農薬散布と多岐にわたり大変だ。外部環境としては、水の供給と太陽光の供給がある。太陽光の制御は難しいが、水の管理なら可能だ。IIJはLoRaWANという新しいIoT技術を活用して、水田への水の供給量を監視し、制御するシステムを提案している。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201152222p:plain
(出典:ITメディア、参考4)

6) 林業
林業は中長期の戦略が求められる。たとえば、京都の清水寺の舞台を支える柱の寿命は400年だという。清水の舞台は、何度か焼失し、最近では1633年に再建された。定期補修で対応しているが、木材の耐用年数に基づく本格的な大改修が必要だ。このために清水寺では、樹齢300年以上のケヤキのある山を購入した。しかし、そんな林業に従事する人材が不足している。1980年には14万人いたのが2012年には5万人とほぼ3分の1に激減している。さらに林業には、地球環境の保全、土砂の災害防止、水源の涵養、希少生命の保護など関係する課題も山積している。さらにこれをIoTなどを活用して改善する人材が求められている。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201152956p:plain
(出典:事業構想大学院大学、参考5)

7) 漁業
IoTの活用が進んでいるのはやはり養殖だろう。例えば、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県の女川で行っていたサーモンの養殖を鳥取県の境港に移すことになった。しかし、新しい境港は、女川よりも海水温が高く、潮流が速く、冬は荒波が経つという環境の違いがある。また、養殖業に従事する人の高齢化も進んでいた。このため、先人の知恵に学ぶ一方で、センサーを活用して、養殖に関する各種データをシステム的に分析することにチャレンジしている人がいる。今後のテクノロジーの進歩をうまく活用すれば、画像データや映像データやセンシングデータなどを多面的に、総合的に分析して、より生産性を高めることが可能かもしれない。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201160210p:plain
(出典:Digital Innovation Lab、参考6)

まとめ
第4次産業革命は待ったなしだ。既存秩序が崩壊する例は今後あらゆる業種業態で発生するだろう。しかし、ディスラプトの目的は、既存秩序の崩壊ではなく、新秩序の構築であるべきだ。日本の人口が今後どこまで減少するのかはわからないが、仮に江戸末期のレベルまで減少するとすると3000万人。今の4分の1だ。何の根拠もないが、個人的には7-8千万人ぐらいで一度人口減少に歯止めがかかるのではないかと想像する。そして、そのあと、そのレベルを維持するのか、増加に反転するのか、さらに減少するのかは、その時代の人間が将来の日本に希望を持つことができるかどうかに依存するのではないだろうか。ロボット技術の革新も進んでいるだろう。しかし、人間が人間としての誇りと希望を持って生活をエンジョイするような世の中であって欲しいと思う。

以上

参考1:https://en.wikipedia.org/wiki/Industry_4.0
参考2:http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0128444
参考3:http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170418005/20170418005-3.pdf
参考4:http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1712/08/news032.html
参考5:https://www.projectdesign.jp/201506/forestry/002157.php
参考6:http://digital-innovation-lab.jp/fishery/