フィンテックと企業経営#3を受講して
はじめに
初回が休講だったので、昨日(6月29日)の授業が3回目だった。今回は遠藤准教授による講義ではなく、マネーフォワードの瀧俊雄取締役FinTech研究所長だ。結論から言えばとても面白かった。まず話題が豊富だ。FinTech関連であれば、どんな質問にも自分の経験や知識に基づく回答がある。素晴らしい。さすがです。瀧さんが話した内容というよりは、私が理解した内容やその後ネットで調べた内容を以下にします。
マネーフォワード
2012年5月18日に設立されたベンチャー企業だ。東日本大震災のほぼ1年後だ。創業して7年経過するが、ユーザの声を聞き続けることと、テクノロジーの力でその課題を解決するという道筋はぶらさなかったという。マネーフォワードという社名は、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」という想いからだ。社長は、辻 庸介(1976年生まれ)で、京都大学卒業後、ソニーに入社し、マネックス証券に出向時の留学先で瀧さんと出会ったという。
出典:未来を建設しよう
結婚式はクラウドファンディング
生徒と聴講生が計8人ほどいたが、マネーフォワードを使っているかという質問に誰も手をあげなかった。スマホを取り出して、すぐにアプリをインストールするように指示された。私はすぐにインストールした(笑)。ちょっと勢いがすごいと思ったら、結婚式の後なので、少しアルコールも入っていたのかもしれない。そして、結婚式では主賓としてスピーチを依頼され、結婚式は結婚する二人の将来に対して投資をするクラウドファンディングのようなものと話をされたらしい。私はなるほどと納得した。
家計簿ソフトから会計ソフトへ
家計簿ソフトというと、ZaimとMoney Forwardが競っている。Zaimの設立は2012年9月だ。瀧さんも辻さんも家計簿をつけることが目的なのではなくて、家計簿ができたうえでの意思決定をしたかった。つまり、家計簿を自動化するソフトを開発するということだ。そして、家計簿ソフトの利用者を調べると、意外と中小企業が多い。しかし、家計簿ソフトは会計ソフトではない。確定申告に対応するには、せめて複式簿記に対応する必要があるのではということで会計ソフトの開発を決めたという。
イノベーションは無謀な人が起こす
企業の会計ソフトを開発すると、想像以上に大変だったという。イノベーションを起こす人は、ある程度無謀でないと一歩を進めることができない。しかし、なんとか解決してしまうのがすごい。ただ、会計ソフトは数字が命だ。一円でも間違いあると信用されない。この辺りは生命線のようだ。
貯蓄ゼロ世帯
日銀の調査によると、世帯の約3分の1では貯金がゼロだという。日本人は貯金が好きな民族のように言われるが、30代と40代では33.7%が貯金ゼロだ。これは貧富の格差が広がっているためかと思ったら、年収1200万円以上の世帯でも8世帯に1世帯は貯蓄ゼロだという。これはどういうことなのだろう。年金問題が話題になっているが、個人個人では将来のための貯蓄をしていないので老後が不安ということか。貯蓄がなくても将来はなんとななるという楽観論者が多いのか、悲観論者が多か、これだけだとなんだかよくわからない。研究するには良いテーマかもしれない(笑)。
出典:貯金ゼロ家計を待ち受ける地獄。3世帯に1世帯は破綻寸前だった | 日刊SPA!
プラットフォーマー
瀧さんは、GAFAへの安直な批判はちょっと反対だという。MicroSoftを含めてIT企業が富を独占していて、個人情報も独占して、けしからんという論法は一理はあるけど、そこに至るまでには数多くの競争と切磋琢磨があった。利用者に満足してもらって、使ってくれる人を増やすことが大事だし、大変だ。ちなみに家計簿ソフトの無料版を使う人に比べて有料版を使う人の毎月の貯蓄額は一万円ほど違うという。やはり意識の高い人が有料版を使うということなのだろうか。
LTVとCAC
私が調べたところでは、SaaSのリカーリングモデルでは、「LTV/CAC > 3x」が健全な水準だ。LTVとはライフタイムバリューだ。つまり、顧客が、生涯でどの程度サービスを利用するかという視点だ。一方のCACとは、顧客あたりの平均獲得コストだ。CAC payback<12ヶ月ともいう。つまり、月々の利用金額が300円だとすると、獲得のためのコストは300x12=3600円未満であるべきで、かつ、LTVはその3倍つまり10,800円以上でないと健全とは言えない。携帯電話の世界も他社にチャーンされたり、他社からチャーンしたりとしている。契約のキャンセル料金を1000円に引き下げられるこの健全なレベルから逸脱するのではないかと心配になる。
出典:One More Time: What Drives SaaS Company Valuation? Growth!! | Kellblog
ターゲットは中小企業
いわゆる大企業だと四半期決算を実施したりしていて、月末や四半期末では早く経理を締めるようにうるさい。そして、システムが整備されているので、基礎的な数字が確定すればすぐに経営状況をレビューすることができる。しかし、多くの中小企業で年度の決算数字を経営者が目にするのはお盆の休み明けとか、9月だという。なぜかというと6月に経理伝票とかを締める。そのあと経理事務所が必死にレシートを打ち込んで、仕分けして、決算書ができるのが8月上旬から中旬だ。そして、社長に見ますか?と聞くと、今週は盆休みやで。休み明けでええわ(なぜかここが関西弁)となる。中小企業では稼ぐことに必死なので、経理や財務分析は後回しになりがちだ。しかし、2月になると納税の時期になる。無用な納税はしたくない。ここで税理士が活躍するが、そのためには決算書が必要。でも、優先度は低いので、こうなる。しかし、これでは、羅針盤なしで船を運航しているようなものだ。ナビゲーションシステムなしで自動車を運転するようなものだ。
FIN/SUM2018
昨年の9月にフィンサムが開催された。瀧さんは麻生大臣のモノマネがめちゃうまかった。フィンサムとは、フィンテックサミットの略だ。日本経済新聞社や金融庁が主導で開催したイベントだ。2018年は、FIN/SUMxREG/SUMとなっている。REG/SUMとは規制緩和を議論するということか。しかし、そんな会議隊とは別にFaceBookは着々とLibraの推進を進めてきた。やはりデファクトを作るのが王道だろう。
出典:https://pipitchoice.jp/fintech-2/
Frey&Osborne論文
英語が苦手でなければ、Frey&Osborneの論文の原文を読むように進められた。ググるとすぐに出てくる。でも、日本語の解説論文もある。英語が苦手な人はまずは日本語で読むのも方法だ。AIが普及して仕事の自動化が進むと雇用はどうなるかを調べた先駆的なものが、2013年9月17日に発表されたFrey&Osborneの研究だ。下の図が特に有名だ。難易度が中庸だ需要の大きな業務から自動化が進む。その結果残る仕事はより高度な仕事か、より単純な仕事だ。どちらの業務をするかで当然報酬が決まる。貧富の差はさらに拡大する方向に進むのだろうか。
出典:https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
質疑応答
参加した生徒からは宿題として作成したレポートを発表するとともに、それに対する質疑応答などを行なった。詳しい内容は割愛するが非常に的確な回答が多くあり、びっくりした。さすがです。エストニアでは、コンピュータが可能な作業は人がやらないという方針でシステムの整備が進められているが、日本ではなかなか進まないなぜか?といった部分を質問したら、税金は、戦後の復旧時においては役所の人手が足らないということで、申告納税制度の拡大を見た。だんだんとエストニアのような自動化が可能にあってきているのではないか、という。人口が減少し、働き手がいなくなる一方で、AIをはじめとするコンピュータのパワーがアップするのであれば、目指すべき道は明らかなはずだ。しかし、現実の社会はそう単純でもない。この辺りも研究課題としては面白い。実行に向けてのあるべき姿を示すことまではまずやるべきだ。
まとめ
日本のフィンテックの第一線を進んできた瀧さんの講義は素晴らしかった。このような方々の話を聞けるだけでも、MBAコースに通う意味はあるかもしれない。MBAに興味にある方はぜひ検討してはいかがでしょうか?
以上
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
拝