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失業率と雇用保蔵率を考える。

はじめに
雇用保蔵者という概念をご存知でしょうか?日本では、特に正規社員の場合には特段の理由なく解雇されることはない。このため、リストラでも解雇するというよりは、早期退職制や割増金を払うことで自主的な退職を促す。今日のテーマの雇用保蔵者とは、分かりやすく言えば社内失業者だ。この推移はどうなっているのだろう。50年後、100年後の労働条件はどうなっているのだろう。

雇用保蔵者の推移
雇用保蔵者をどのように集計するのだろうか?企業が発行する有価証券報告書を見ても、社内失業者数は掲載されていない。まあ、そりゃそうだろう。積み上げ方式が難しいので、マクロ的な算出をしている。つまり、企業の業績などから想定される必要な人員と現実の雇用者数を比較して、過剰に雇用していると思われる雇用者を推定している。つまり、推定値だ。リクルートの推定によると下の図のように2000年当時は201万人だったが、2008年9月のリーマンショックを受けて急増し、2010年には426万人に倍増する。2020年には若干減少して408万人だが、2025年には415万人と雇用保蔵率は約8%まで増加すると試算している。
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 出典:https://www.works-i.com/pdf/150731_yosokugraph.pdf

失業率の推移
高度成長期の1960年代にはほぼ1%だったが、1970年代になると2%を超え、1980年代には3%弱まで増加した。その後、1991年には2.1%まで減少したが、その後は増加し、2007年には3.8%まで増加した。そのあと低下し、2016年度では3.0%まで下がっている。総務省統計局によると、完全失業率は2018年10月時点で2.4%まで低下したという。完全失業者は163万人だという。景気の復活を感じないが、なぜこれほど失業率が低いのだろうか。
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 出典:空前の低失業率でも賃金が上がらない理由 | プレジデントオンライン

非正規社員の増加
1990年の非正規比率は20%で、非正規社員は870万人だった。しかし、その後は右肩上がりに増え続け、2018年では非正規比率が38%と1990年に比べてほぼ倍増している。非正規社員数も2018年には2090万人と2000万人を超えている。一方で、正規社員数は2011年に3135万人まで減少したが、2018年には3395万人まで微増した。注目すべきは完全失業者が163万人に対して、非正規社員が2090万人と10倍以上だということだ。つまり、正規社員を目指すが、正規社員になれない時に、失業する人よりも、非正規社員として働く人が10倍以上と言えるのではないか。
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 出典:図録▽正規雇用者と非正規雇用者の推移

残業時間の推移
残業時間が多いことは悪のように言われる。労働者の心身の健康のためといわれるがそうなのだろうか。下のグラフは6万人の口コミに基づく調査結果だが、これによると2013年には平均46時間だった残業が、2016年には35時間まで減少しているという。また、この年齢別の残業時間を見ると20代と30代の平均月間残業時間は50時間ほどだが、40代では45時間、50代は40時間と年齢との逆相関関係があるという。
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 出典:残業時間は3年前に比べ大幅減少 | マイナビニュース

ワーキングシェア
以前、やる気と残業時間の関係を調べたことがある。高収入のプロフェッショナルはやる気も高く、残業時間は多い。逆に低収入のゾーンは残業時間も少ない。やる気は高く残業が少ないのはスタバだった。そして、問題は低賃金で残業を強いられるやる気のないゾーンだ。これが問題だという指摘だが、新聞やテレビの報道を見ても、このような二次元的な分析はあまりなく、100時間を越えると労災に該当すると、職業ややる気度合いなどを無視して、ひたすら残業時間を削減するように扇動しているように見える。もしかしたら、ワーキングシェアが目的なのだろうか。つまり、ドイツのように労働時間を減らすことで、見かけ上の社内保蔵者や失業者を減らそうとしていると考えるのはうがった見方だろうか。今後、AIの進展とともに、ホワイトカラーの業務はどんどん自動化されるだろう。その時には就業時間を8時間ではなく、6時間とか4時間とかに短縮する方向に向かうのだろうか。

限界費用ゼロ社会
コンピュータやインターネットが発達すると、限界費用ゼロ社会が実現するという。限界費用とは、生産量をある単位増やした時の総費用の増加分だ。例えば、アマゾンUnlimittedでは、同時に読める本は10冊だが、1日に1冊読んでも、10冊読んでも100冊読んでも同じ料金だ。提供側のアマゾンにしても、別に印刷して発送するわけでもない。ネット経由で配信するだけだ。このような商品が今後どんどん増えていく。逆に言えば、時間を売るような労働型ではなく、ネットを活用したビジネスを考えることが成功の条件なのかもしれない。

ケインズの予言
失業率は減少傾向にある。雇用保蔵率も横ばいだ。そして、非正規社員比率は右肩上がりで増えている。一方、残業時間は減少傾向にある。さらにコンピュータの発達に伴って人手に依存しない仕組みがどんどん増えている。これが10年、20年と続くとどうなるのだろう。ケインズは、「100年後には1日3時間労働になると言った。」という。このような世界に向かっているのだろうか。
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 出典:ケインズ「孫たちの経済的可能性」 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

まとめ
社会科学は難しい。何が難しいかと言えば、答えが一つとは限らないことだ。自然科学なら事実を積み重ねれば真実が見えてくる。しかし、失業率とか、雇用保蔵率とかを積み上げたら未来の世界が見えてくるのだろうか。将来がユートピアなのか、ディストピアなのかは自分たちがどのような社会を作りたいと願うか、実行するかによっているのかもしれない。

以上