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人的資源管理論I(後半)#3を受講して(解雇の功罪)

長くなったので2つに分割した。前半はこれです。

hiroshi-kizaki.hatenablog.com


先任権制度(Seniority System)
知らないことがあるとGoogle先生に聞いたり、Wikiに聞くことが多い。でも、なぜか先任権制度をWikiで調べても出てこない。でも、Seniority systemで調べるとすぐに出てきた。ドイツ語やフランス語でも軽視されているが日中韓の言語ではフォローしていなかった。しかし、その内容は年長者に敬意を示そうという非常に日本的な内容だ。つまり、例えば昇進の候補者が複数いた時には長く勤務した人を優先する。解雇や給食の候補者が複数いた時にも長く勤務した人は優遇し、勤務の短い人を優先する。米国でも20世紀には米国でも年功序列を人事制度の基盤としていたが、20世紀後半にはこれを強調することをやめて、パフォーマンス評価に移った。しかし、米国のブルーワーカーでは先任権制度が残っているようだ。米国では、1920年代の人種差別への反動からこの先任権制度が規程か労使協約などで規定化されている例が多いという。
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 出典:http://www.koshiodatabank.com/10-1-8-american_labor_market.html

解雇の種類と解雇権濫用法理
解雇するのもされるのも嫌だ。解雇には、普通解雇と整理解雇と懲戒解雇がある。普通解雇とは、労働能力の低下等の事由に基づいて行われる解雇だ。一方の整理解雇とは、会社の業績不振など会社の事由に基づいて行われる解雇だ。そして、懲戒解雇とは、会社の規律や秩序を乱す社員に対して実施される解雇だ。解雇権濫用法理とは、客観的かつ合理的な理由がないのに解雇を実施することを戒める考えだ。解雇するには、4つの条件が必要とされる。つまり、必然性があること、解雇を回避する努力をしたこと、選定基準が合理的であること、そして事前の協議をしたことだ。処分の自由が懲戒解雇よりも軽微でかつ本人が反省しているケースや、会社に対する功績が大きい場合には諭旨免職することもある。首にされたのではなく、自分で辞めるというていだ。
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 出典:解雇権の濫用|社長のための労働相談マニュアル

メンバーシップとジョブシップ
日本の雇用はメンバーシップ型で欧米の雇用はジョブシップ型だと言われることが多いが、そうなのだろうか。日本でも非正規社員の比率が増えている。自分が勤務する企業では正規社員よりも非正規社員の方が多い。そういう企業も珍しくないのではないだろうか。そして、正規社員はメンバーシップ型だけど、非世紀社員のジョブシップ型のはずだ。正規社員の能力が非正規社員の能力よりもたかいのか言えばそれは人による。なので、本来ならジョブシップ型の非正規社員に対しても、メンバーシップ型の働きを要求することがある。自分も現在はジョブシップ型の雇用形態なのに、メンバーシップ型の正規社員の仕事がそのまま来て、さらに追加されている。だんだん責任も追加されるのに、報酬は追加されない。ちょっとおかしいと反発しつつある今日この頃(笑)。
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 出典:https://ameblo.jp/rouichi-shiken/entry-12496126882.html

近江商人の三方によし
近江商人大坂商人伊勢商人を人の最大商人という。大坂は室町時代から江戸時代にかけて活躍た諍いの商人で、堺が源流だ。伊勢商人とは、江戸時代の伊勢国出身の商人で、江戸時代には全国規模で活躍した商人だ。特に、越後屋を築いた三井高利が有名だ。近江商人は、近江出身の商人で、高島屋白木屋伊藤忠商事住友商事西武グループ日清紡東洋紡東レ武田薬品工業ニチレイなど数多い。このため、近江商人は琵琶湖のあゆと同じで、近江から離れてから活躍すると揶揄される。また、経営哲学としては、三方よしが有名だが、本当は「三方によし」だという。つまり、買い手によし、売り手によし、世間によしだ。規律道徳や陰徳善事を大切にした。また、流通革命とも言える店舗展開や複式簿記の考案も近江商人の功績のようだ。
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 出典:出典:末永國紀『近江商人学入門 CSRの源流「三方よし」』
 
解雇の影響
解雇の決断を迫られる企業も苦しいが解雇される側は経済面だけでなく、健康面でも大きな影響を受ける。非常にショッキングな内容だが、失業率と自殺率には高い相関関係がある。当然原因は解雇で結果が自殺だ。下の図は総務省の「労働力調査」と厚労省の「人口動態統計」から舞田俊彦さんが作成したものだ。相関係数は0.7024だという。ドイツでは、解雇のルールの中に社会的な影響を考慮すべきという条項があるという。つまり、例えば独身の社員と家族持ちの社員がいたら、解雇の優先度は前者だ。しかし、これも判断は難しい。大事なことは解雇してもその社員が次の就職先を見つけて、ちゃんと仕事できるか、もしくはそれに変わるセーフティネットを社会制度として整備することが重要だと思う。
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 出典:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/01/post-11515.php

雇用保蔵者
リクルートワークスが発行したWORKS REPORT2015では、2015年のレビューと2025年の予測を交えて雇用の変化をレポートしている。その中で雇用保蔵者についても言及している。雇用保蔵者とは、会社に雇用されて入るが、事業活動に活用されていない社員。つまり、本当は解雇したい社員だ。ただ、これの厳密な統計が難しいが、同レポートでは内閣府「日本経済2011-2012」の付注1ー3に従って統計を行い、2015年の401万人から2025年には497万人に増加すると推定した。企業内部で人材活用を図ることが先決だが、それが難しい場合には解雇の対象とならざるを得ない。人材流動化を高めることは、企業の収益を高めるだけでなく、社内で活用されたいない人材が新しいフィールドで活躍する機会を与えることと、それに対するセーフティネットを整備することが有効ではないだろうか。
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 出典:https://www.works-i.com/research/works-report/item/150528_2025yosoku.pdf

まとめ
書き出すとかなり長くなってしまった。でも、これでも講義で習った事の半分程度は除外している。今回のテーマは解雇だった。そして、最後に解雇されてもその会社との円満な関係を形成するにはどうすれば良いかと聞かれた。いろんな意見が出たが、辞める時に対応も大事だけど、そもそも辞める前の期間、普段の対応が大事という集約だった。つまり、会社に育ててもらったという感謝の気持ちを退職者が持てるかどうか。確かに自分も会社というか、お客様と仕事に育ててもらった。その意味で感謝の気持ちは大きい。ただ、最近は投資や教育よりは、活用(こき使おう)というマインドが透けて見えるので、ちょっと違和感を感じることもある。まあ、自分のことはどうでもいいが、解雇しなくてもすむ社会、解雇されても大丈夫な社会的なセーフティネットを実現するにはどうすれば良いのか。個人的にはその候補の一つがベーシックインカム だと思うのだが、まだまだ日本社会では合意形成に時間がかかりそうだ。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。