LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

保育無償化の課題と情報活用提言(案)

人生100年時代構想
首相官邸では、有識者を集めて、人生100年時代構想会議を立ち上げた。本年9月に第一回会議、10月には幼児教育、11月にはリカレント教育等の議論を進めている。

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(出典:人生100年会議、参考1)

保育無償化構想
人生100年時代構想会議の中で、子供を持つことを躊躇する理由としてお金がかかりすぎることが挙げられている。これらの議論を踏まえ、教育無償化を柱とする2兆円規模の政策を閣議検討中だ。この2兆円のうち約4割は幼児教育と保育の無償化にあてる方針だ。この財源は2019年10月の消費税増税を前提としていると報道されている。しかし、この政策には反対意見や混乱を拡大するという懸念の声も多い。 
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(出典:内閣官房人生100年時代構想室資料、参考2)

保育所と幼稚園
保育所厚生労働省が主管し、幼稚園は文部科学省が主管する。目的が異なるので対象年齢や保育・教育時間も異なる。保育所児童福祉法に基づく児童福祉施設だ。保育園は通称であり、同法の定める施設は保育所だ。慣例的に、公立を保育所、私立を保育園といったり、大きな施設は保育園、小さな施設を保育所とするケースもある。

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(出典:モモママブログ、参考3)

女性パワーの活用要望論
少子が問題となり、幼稚園の入園者数が減少する一方で、保育園の不足が問題となる。なぜなのだろうか。そこには女性のパワーを社会が活用しないと日本の成長が難しいという点にあるのはないだろうか。東洋経済社が発行する四季報によると、上場企業の女性役員(延人数)は1510人に達した。

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(出典:東洋経済オンライン、参考4)

諸外国の女性役員比率は高い
女性役員の割合は、日本では前述のように4%弱であるが、諸外国ではどうなのかが気になるので、調べると驚くほどの格差があった。ノルウェイの4割を筆頭に福祉国家な北欧諸国が一概に高い。また、ノルウェイ以外の諸外国では2011年に比べても2015年には急増している。日本は周回遅れというのが現状だ。

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(出典:内閣府男女共同参画局、参考5)

働くほど広がる貧困
保育園落ちた日本死ね」は30代前半の匿名女性がブログにアップして、2016年の流行語大賞のトップ10に選ばれた。その背景には、何があったのだろう。11月23日にアップした筆者のブログでも言及したが、下の図のように日本では働いていないひとり親家庭よりも、働いているひとり親家庭の方が貧困率が高い。今回の保育無償化も年収の高い人に有利な改正になっているという指摘ある。例えば、派遣社員の平均年収は女性も男性も100万円から300万円が最も多く、派遣社員の比率は全体の約40%まで増大している。現在の制度では派遣されていない期間の派遣社員の収入は原則ない。子供を育てるには働く必要があるが、子供を預けるところがない。しかも、高い。そういう女性たちの不満が先のブログで爆発したのではないか。ちなみに、このブログの女性は保育所に落ちると現在勤務している会社を退職する必要があり、一度退職すると正規社員に戻れないという危機感から勢いで書いたらしい。まさに、ワーキングポアの問題だ。
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(出典;筆者のブログ、参考6)

保育所の問題(量的問題)
下の図は、東京都において幼稚園や保育所(園)を希望する人数の推移だ。幼稚園の利用者希望者数は減少傾向にあるが、保育所の利用希望者数は増加傾向にある。このため、幼稚園を認定子供園に移行したり、幼保連携型認定こども園が増えている。需要の変化に供給を合わせるには、文科省厚労省が密に連携する必要があるし、それがうまくいかないなら、総合的に責任を持つ主官庁を明確にする必要があろう。
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(出典:東京都、参考7)

保育所の問題(金額的問題)
下の表は厚労省の資料だが、認可外保育施設の平均利用金額は3歳児で4万円近く必要だ。この費用負担を軽減しようというのが、政府が考える保育無償化の狙いだろう。ただし、注意すべきは、現在は収入が高いほど負担金額も高いので、一律に無償化されると収入の高い人ほど恩恵を受けることになる点だ。都内でも4-6歳の待機児童はほぼ解消されていて、問題は0−3歳児だ。しかも、この0−3歳児の利用料はより高額だ。しかし、月額3万円を払っても勤務しなければ失業して収入を得られない非正規社員が増大している。これでは、国は子供を産めというがどうすればいいのかとつぶやく気持ちになるかもしれない。
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(出典:厚労省、参考8)

保育所の問題(安心安全問題)
0-3歳児を預かるのと4-6歳児を預かるのは保育士の立場から見ると大きな違いがあるのだろう。例えば、突然死や窒息死を防ぐために、0歳児は5分に1回、1-2歳児は10分に1回は生きている確認をする必要があるという。これは保育士にとっては作業的にも、心理的にも大変な負担になっているのではないだろか。しかし、保育園に預ける親にとっては、この安心安全は必須条件だ。このあたりに、保育所が不足する真の原因があるのではないだろうか。
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(出典:認定病児保険スペシャリスト、参考9)
将来に向けての提言
では、少子高齢化の問題や、女性の活躍の問題、貧富拡大の是正問題という難問に対しては、どのような解決策があるのだろうか。技術士の立場から提言にトライした。

提言1) 保育所業務のICT化
保育所に限らないが教育現場のICT化は急務の課題だ。すでにICTを導入している保育所とまだ導入していない保育所の計104名の保育士にアンケートをとった結果だ。その結果、ICTをまだ導入していない保育士の7割は導入に期待すると回答している。特に、手書きの書類が減ることや、紙資料の管理が減ること、情報共有が楽になることに対して期待する声が多かった。保育所のICT化は、保育士だけでなく、保育所の利用者にとっても有効だろう。現状では、認可型は自治体、認可外は施設に申し込む。そして、自治体によって情報提供も、認可の選定基準もバラバラ。しかもアナログ文化なので、ネットで処理はできないので、貴重な年休を取得して手続きに奔走する負担も甚大だろう。また、ICT化の肝はICT化に着手する前にいかに業務フローを整理するかが重要だ。その意味では、管理省庁や市区町村、施設の業務フローを合理化して、その上で、システム化するのが理想だ。
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(出典:保育のお仕事、参考10)
提言2) 園児の見守りシステムの導入
0歳児を受け入れると、5分ごとに生きているかどうかを確認することが求められるという。これは保育士にとって大変な負担だし、精神的にも大きな苦痛だろう。下の図は、保育士の負担を軽減するために乳児の呼吸を見守るセンサーシステムだ。例えば、手首に簡単なセンサーを付けて、リアルタイムにモニターするようなシステム構築は現在の技術を活用すれば難しくはない。また、そのデータをシステムが常時監視し、異常もしくは異常の兆候が監視されたら、保育士や保護者に通報するようなことができれば、保育士の負荷がかなり軽減されるのではないだろうか。もちろん、保育士の仕事を代替するのではなく、保育士の僕(しもべ)として、5分間隔と言わず、リアルタイムに複数の園児や乳児を監視することで安心・安全は向上すると思う。

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(出典:IoTニュース、参考11)

提言3) 保育士ロボットの開発
IoTでモニターできるのであれば、それをさらに発展させてロボットに保育士の補助をさせられないかと考えて調べてみた。下の写真は、グローバルブリッヂホールディングス社が群馬県太田市の保育園で保育ロボットの実証実験をした時の写真だ。まだまだ小さな一歩だけど、保育士ロボットを園児が受け入れ、保育士の業務を少しづつでも補助することができれば、その効果は指数関数的に拡大すると期待される。

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(出典:産経ニュース、参考12)

今後の検討課題
技術士なので、提言には技術的な事項を3つ提言した。いずれも一度導入して終わりではなく、まずは導入して、効果を検証して、さらに改善する。そのようなPDCAサイクルをまわすことが重要だ。ICT技術や、IoT技術、ロボット技術などを少しずつ導入して、活用していくことで、良循環を作り上げることが最も大切だ。
しかし、課題は技術的な問題だけではない。専門外なので、多くは語るのは控えるが、やはり次の点は課題だろう。
1) 監督主官庁の連携強化もしくは整理
2) 保育士の待遇改善と負担軽減
3) 派遣業法の見直しと貧富の是正
4) 育児休暇制度と取得率の拡充
5) マザーライフの選択

まとめ
上述のマザーライフの選択について少し補足する。女性はこうすべしという一つの価値観を女性に押し付けるような時代ではない。キャリアパーソンとして勤務を優先するのか、出産を経験して子育てを経験してから復職するのか、それとも専業主婦で育児に専念するのか。どのような選択をするかは一人一人の問題だ。もっと言えば男性も同じだ。下の図は総務省の資料だ。2015年からは推定値だ。しかし、これからの人口が単純減少するのだろうか。縄文時代初期は2万台規模だった人口は、紀元前2300年頃には26万人まで増加したが、縄文時代晩期に8万人まで減少した(参考14)。仮にこれと同じことが起きるとすると、1億2千万人を超えた人口が一度は4千万人ぐらいまで減少するのかもしれない。もしくは、8千万人ぐらいで安定人口へと増加傾向に転じるかもしれない。例えば、40年後は中国やインドは深刻な高齢化社会に陥っている。逆説的だが、その頃の日本人はどん底を経験して、這い上がった元気な民族になっているのではないだろうか。そんな風に考えるのは楽観的過ぎるだろうか。
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(出典:総務省、参考13)

以上

参考 1:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai3/siryou.html
参考 2:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai2/siryou1.pdf
参考 3:http://momomamablog.pink/archives/65.html
参考 4:http://toyokeizai.net/articles/-/193863 
参考 5:http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/yakuin.html 
参考 6:http://hiroshi-kizaki.hatenablog.com/entry/2017/11/23/215303
参考 7:http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/katei/kodomokosodatekaigi/
参考 8:https://www.businessinsider.jp/post-107697 
参考 9:http://sickchild-care.jp/point/5117/
参考10:https://hoiku-shigoto.com/report/news/ict-at-nursery/ 
参考11:https://iotnews.jp/archives/77459
参考12:http://www.sankei.com/life/news/170919/lif1709190025-n1.html
参考13:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc141210.html
参考14:http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20110907/283253/