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ジュゴンと野口啄木鳥(ノグチゲラ)

ジュゴンとは
沖縄諸島の綺麗な海にはかつて300頭以上のジュゴンが住んでいた。しかし、現在では水産庁レッドブックでも絶滅危惧種に指定されている。IUCNの調査では全世界で1940年には7万頭以上いたが、1990年には4220頭に激減した。自然の環境であれば50年から70年と長生きだが、個体の増加率は5%以下。種を維持するには捕獲率を2%以下にする必要がある。哺乳類としては象に近い。生きた海藻しか食べないので飼育が難しい。鳥羽水族館では2頭を飼育していたが、オスのじゅんいちは2011年2月10日に死亡して、現在はメスのセレナのみだ。このセレナは、同じアマモが大好きなオスのアオウミガメのカメ吉と仲良しで、水槽を分けると食欲が減るという。二頭の友情の物語は「ふたりはいつもともだち」(もいちくみこ作、つちだよしはる絵、金の星社)という絵本にもなっている。
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(出典:Wiki、参考1)

ニライカナイ
琉球では、はるか遠い東の彼方または海の底には理想郷があると伝えられている。生命の源であり、年初にニライカナイから神がやってきて、年末に帰るという。死者の魂は7代して親族の守護神になる。そんなニライカナイではジュゴンは神が現世に来る時の乗り物だったり、助けたジュゴン津波の襲来を教えてもらったという伝承がある。浦島太郎のような感じだろうか。

浦島太郎
auの三太郎の一人が浦島太郎だ。しかし、これは明治29年に発刊された絵本「日本昔噺」第18編「浦島太郎」という物語だ。江戸の御伽草子版の「浦島太郎」でも、浦島太郎が竜宮に行って乙姫から玉手箱をもらう。この原典は、伊預部馬養という文官の創作小説であり、日本書紀では浦嶋子が主人公だ。また、その浦嶋子を祀る京都の宇良神社の伝える「浦嶋神社縁起書」には、次のように記載されている。478年の7月7日に常世の国に行き、825年に帰ってきたとある。七夕の要素まで入っているが、これも偶然ではないらしい。
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(出典:民話想、参考2)

ジュゴン辺野古
日本語のWikiには辺野古という言葉は使っていない。まして、米軍という言葉もない。しかし、英語のWikiには「多くの国でジュゴンは法的に保護されているにもかかわらず、人口減少が続いている。日本政府は、辺野古珊瑚礁調査でジュゴンに対する影響を隠していたことが明らかになった。沖縄の辺野古岩礁近くに米国の軍事基地を建設する計画があり、騒音公害、化学的汚染、土壌浸食がジュゴンに脅威を与えている。また、米国の裁判所でも争われている。」とある。Wikiは言語によって、それを母国語とする国の事情や国民性が反映するので、同じWikiでも内容が微妙に異なるのが面白い。
(出典:英語のWiki、参考3)

米国連邦裁判所での要求
Biological Diversityを中心とする日米環境団体は2003年に米国防総省に対し、辺野古湾にアメリカ軍基地を建設することを訴えた。2004年には日米の政府に対して、同基地の建設計画を放棄するように要請した。2005年には連邦裁判官は米国と日本の基地建設計画を否定した。そして2008年には、連邦裁判所は米国国防総省に対してジュゴンに対する影響を検討するように要請した。  f:id:hiroshi-kizaki:20171222173821p:plain
(出典:Biological Diversity、参考4)

沖縄本島周辺の海草藻場と米軍基地
ジュゴンは繊細でグルメで、お気に入りの食事は美味しいアマモという海草だ。そして海草の藻場をプロットしたのが下(左)の図だ。これを見ると、200ヘクタール以上の藻場は辺野古沖とホワイトビーチ沖だ。そして、その両方ともに米軍基地がある。正確に言えば藻場のあるところに米軍基地があるというよりは、米軍基地の海域なので環境破壊が進まずに、藻場が残ったのかもしれない。しかし、ホワイトビーチから逃げて、さらにキャンプシュワッブからも追い出されたらジュゴンはどこで生き残るのだろうか。辺野古から北部に移動しても芳醇な海草藻場がない深刻さを見逃すべきではないだろう。
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(出典:左は沖縄県文化環境部/参考5、右はブログ/参考6)

辺野古の海
私が沖縄に赴任していたのは1996年から1999年の3年間だった。在沖米軍がお客様だったので、沖縄内の米軍基地にはほぼ通った。そしてキャンプシュワッブのある辺野古にも何度か行った。当時は平和だったので、キャンプシュワッブの米兵は綺麗な辺野古の海でダイビングをしていた。仕事だったのかもしれないが、楽しそうだったのをよく覚えている。そして、キャンプシュワッブの崖の上から眼下を見下ろすとマンタが悠々と泳いでいた。本当に綺麗だった。f:id:hiroshi-kizaki:20171222180051p:plain
(出典:ブログ、参考6)

辺野古と高江
ヘリポートの建設予定地は辺野古沖だ。しかし、これと並行して高江地区にヘリパッドを建設している。北部訓練所の一部を返却することは報道されていたが、新たにヘリパッドを建設することとセットだった。

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(出典:MDS、参考7)

ヘリパッドの建設とノグチゲラ
高江知区には小学校も中学校もある。そしてその周辺にはヘリパッドはなかったが、6個のヘリパッドが追加された。下(右)はヘリパッドの建設現場を上空から撮影したものだ。そして、この高江地区にはやはり絶滅危惧種に指定されているノグチゲラが生息している。ノグチゲラは、沖縄の県鳥だが、生息地の破壊により生息数は減少している。1972年には国の天然記念物、1977年には特別天然記念物、2010年には地元でノグチゲラ保護条例が制定され、無断立ち入りや騒音行為に対する罰則を条例化した。しかし、ヘリパッドの追加設置で環境は悪化している。
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(出典:左はWiki/参考8、右はAPJJF/参考9)

米国NHPA訴訟
本土ではあまり報道されないが、米国にはNHPA(国家歴史保存法)があり、絶滅危惧種に指定されているジュゴンの生態に影響を与えるような行為(つまり辺野古沖へのヘリポート建設)について影響度を調査するように指示が出ている。現在の焦点は3頭いたジュゴンのうちの2頭は生存が確認されているが残る1頭が行方不明な点だ。日本の防衛省は個体Aと個体Bがいるから工事の影響ではない。個体Cの行方不明の原因は検討すると回答している状態だという。国内でも環境省防衛省と戦う姿勢を示してほしいが、残念ながらそのような構図ではないようだ。日本の良心が機能しないため米国の良心(司法省)の判断に依存せざるをえないというのはちょっと悲しい。下の新聞は2008年1月27日の琉球新報と沖縄タイムズの記事だ。今後、米国の連邦裁判所がどのように判断するのかに注目が集まる。
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(出典:環境総合研究所、参考10)

スマホを活用したジュゴンの生態調査
ジュゴンの生態調査に向けて、沖縄防衛局は下の図のような調査を予算化し、企画している。予算は不明だが、工事前後や工事中の調査を予定している。しかし、その結果はオープンにされるのだろうか。
これとは全く別のアプローチだが、スマホを使ったアプリの開発をKii Cloud(参考11)が進めている。必要なアプリを搭載したスアホを地元の漁師に渡して、ジュゴンを見つけた時に撮影してもらう。アプリは撮影された位置情報や時刻情報とともに、撮影内容をクラウドに保存するので、低コストで正確にジュゴンの生息状況を把握できるという。

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(出典:沖縄防衛局、参考12)

まとめ
ジュゴンマナティの違いをご存知ですか?ジュゴンは暖流域の浅い海に生息し、アマモが食料だ。尾びれが三日月型なのが特徴だ。マナティは同じ海牛だが、川で生息するので、アマゾン川に生息するアマゾンマネティやカリブに生息するアメリカマナティ、西アフリカに生息するアフリカマナティなどがある。同じ仲間のステラカイギュウはベーリング島周辺で生息していたがすでに絶滅している。
ジュゴンは、辺野古へのヘリポート移設の時に問題になったが、本土の新聞やテレビではほとんど報道がない。なぜだろう。不思議に思ってネットで調べると、琉球新報や沖縄タイムズでは報道しているし、米国連邦裁判所でも国際事件として取り上げている。日本には言論の自由があると信じているが、メディアの報道が偏っているのは是正すべきではないだろうか。
自然保護や絶滅危惧種の保護は法律でも決まっている。国防は重要な問題だが、一度絶滅した種をもとに戻すことはできない。難しい判断を求められる問題だが、少なくとも情報だけはオープンかつ正確に共有できる世の中にしたいものだ。その意味からはスマホジュゴンの生態を確認するアプリを開発して多くの人に使ってもらうのは良い方法だろう。金も権力もないが、知恵を絞り出すことはできる。微力でも何か役に立ちたいものだ。

以上

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

参考1:https://ja.wikipedia.org/wiki/ジュゴン
参考2:http://suwa3.web.fc2.com/enkan/minwa/urasima/column.html
参考3:https://en.wikipedia.org/wiki/Dugong 
参考4:http://www.biologicaldiversity.org/species/mammals/Okinawa_dugong/
参考5:http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/hogo/documents/the_story_of_the_dugong_.pdf
参考6:http://okinawa-labrador.seesaa.net/article/8660814.html
参考7:http://www.mdsweb.jp/doc/1438/1438_03n.html
参考8:https://ja.wikipedia.org/wiki/ノグチゲラ
参考9:http://apjjf.org/data/4991-04.jpg
参考10:http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col15568.htm
参考11:http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/hyoukasyo/127.pdf
参考12:https://jp.kii.com/news/company/news/sen.html