LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

ポストコロナは今より幸せな世界になるのだろうか

はじめに
幸福度は、時間的な余裕と経済的な余裕と人的つながりに依存する部分がある。リッチな人とは、時間とお金を持っている人だという。自分はどっちもない。でも、お金と時間さえあれば幸福かと言えば、そうでもない。お金持ちになるほど家族や関係者との人間関係がおかしくなり、不信感が出てくると不幸だろう。これらはどういう関係なのかを少し紐解いてみたいと思った。

年収と幸福度
年収が高いと幸福度が高くて、年収が低いと幸福度は低いという仮説はありそうだ。しかし、これは単純なリニアの相関関係ではない。ギャラップ社による米国での調査によれば、7.5万ドル(約750万円)までは年収が上がると幸福度が高まっている。しかし、それ以上になると年収は支配的な要因ではない。一方、満足度は年収が高いほど満足度が増加する。ただし、満足度に関しては、年収よりも経営者との信頼関の方が支配的だという。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529140024p:plain
 出典:仕事と幸福度の研究 - Taka Umada - Medium

年齢と幸福度
幸福度と年齢の関係はどうなのだろう。米国のダートマス大学の調査によると世界132カ国での傾向として、47〜48歳が最低のU字型カーブを描くことが分かった。つまり、年少の頃は将来の希望もあり、幸福度は高い。しかし、学生から社会人になり、結婚して、家族を持つようになると徐々に責任が増えてきて幸福度が下がる。しかし、50〜60歳では家族からも仕事からも徐々に解放されて、個人の幸福を味わうようになるのだろうか。これは多分、国によっても違うだろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529140820j:plain
 出典:https://www.fnn.jp/articles/-/22769

居場所と生活の充実度
内閣府が発行する平成29年度の「子供・若者白書」においては、居場所の一人生活の充実度に高い相関関係があるという。具体的には、居場所を,<1>自分の部屋,<2>家庭,<3>学校,<4>職場,<5>地域,<6>インターネット空間の6つの場に分け,それぞれ自分の居場所と思うかを質問したものだ。一般に居場所はいくつぐらいあるのだろう。例えば、アルバイトとクラブ活動に熱心な大学生なら、家庭、大学、バイト先、部活の4つだろうか。仕事人間なら家族と会社だろうか。社会人学生でボランティアをしているお父さんなら、家族と会社と学校とボランティアの4つだろうか。居場所があると感じるという場合に、自分に貢献できる事、自分が貢献すべき事、自分が貢献したいことが重なっていることが理想だろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529141454g:plain
 出典:https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h29honpen/s0_0.html

分人
小説家の平野 啓一郎が提案するのが分人だ。つまり、一般に、個人とは、それ以上に分割できない存在(individual)だと考えられている。しかし、平野さんはそうではないと主張する。つまり、人は、多面的な存在だ。家庭での父親と、同級生の友達と、会社での上司と、ゴルフの仲間では個性が変わる。それは何かを演じるという意味ではなく、人格が変わるという主張だ。日本の会社員は仕事と上司を選べないというが、気の合う上司と仕事をしている時は明るく、積極的で誠実な社員でも、気に入らない上司と気に入らない仕事をしている時は暗く、消極的で、批判的な社員になるかもしれない。いずれにせよ、この分人という考え方は面白いと思う。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529145733p:plain
 出典:私とは何か「個人」から「分人」へ

インクルージョン
NewsPicksライブを見ていたら、インクルージョンが提唱されていた。下の図のステップ1は多様性のない状態だ。みんなが同じでなくてもいいじゃんという概念がステップ2がダイバーシティだ。そして、その先にあるのがステップ3のインクルージョンという理解だ。このインクルージョンの語源は、社会的排除(ソーシャルエクスクルージョン)に対する対語とも言える。もっと優しく言えば、一人一人の個性を活かす考え方と言えるだろう。ネットバッシングやいじめが広がるステップ1からステップ2へ、さらにステップ3の世界にシフトすることが解決策かもしれない。でも、どうやればできるのだろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529164842g:plain
 出典:https://www.humanvalue.co.jp/wwd/research/insights/articles/post_7/

年齢別の幸福度の日米比較
平成23年度の調査なので、少し古いが、「幸福度に関する研究会」が調査結果をまとめている。その中で、日米比較を示している。米国は先述のようにU字型だが、年齢を重ねるほどにより高くなっている。しかし、日本人はどちらかと言えば右肩下がりだ。「若い頃は幸せでいいよね。」なんてため息が聞こえそうだ。これらの傾向が時間とともに、どのように変遷しているのだろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529150548p:plain
 出典:
 出典:幸福度に関する研究会、https://www5.cao.go.jp/keizai2/koufukudo/pdf/koufukudosian_sono1.pdf

幸福度や満足度の推移
1978年から2011年までの推移を見ると、一人当たりのGDPは2009年度までは右肩上がりで成長し、その後低下した。一方、幸福度と生活満足度はなだらかな右肩下がりだ。ここで言える事は、経済的な成長は必ずしも国民の幸福度や生活満足度を高めるものではない。2005年から2008年にかけて生活満足度がV字回復している。これはその後どうなっているのだろう。疑問は深まるばかりだ。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529151019p:plain
 出典:幸福度に関する研究会

幸福感の高低と希死念慮の関係
横軸を幸福感、縦軸を希死念慮としたのが下図だ。幸福度は10段階による主観的な評価だ。希死念慮は、「死のうとした」または「本気で死のうと思ったことがある」人数の比率だ。幸福度0の人の場合に、希死念慮が3分1ほどが自殺を考えたというのはショックだ。個人的には、横軸は幸福感よりも、居場所の数の方が実態に合うのではないだろうか。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529151824p:plain
 出典:幸福度に関する研究会

居場所と自殺
平成30年度に自殺した小中高生は332人と右肩上がりに増加している。数少ない右肩上がりだが、これは悲しい。これはなぜなのか。いじめの問題もあるのだろうい。では、なぜいじめの問題で自殺まで追い込まれるのか。学校の先生が部活を指導するのは日本の特徴のようだ。良い面と悪い面がある。文化部や運動部は地域のコミュニティで実施することにして、学校の先生とは切り離すべきという人もいる。それがいいのかどうかは自分にはまだ判断できないが、考慮すべきかは居場所の問題だ。居場所のない子供が多いという。学校には居場所がなく、家族の中でも居場所がない。これが問題なのではないだろうか。でも、なぜ学校で居場所がなくなるのか。別にスポーツができなくても、勉強ができなくても、ここの生徒にはそれぞれ素敵な個性と可能性がある。それを先生も生徒も親も信じられない状況に陥ったとしたらこれは悲しいし、辛い。難しい問題だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529152657j:plain
 出典:https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/24489.html

自殺の原因
日本財団の2018年度の調査によると、男女平均で30%の人が「自殺念慮」を持ったことがあり、自殺未遂を経験したことがあるのも11%という。これは異常だ。そして、その原因で最も多いのが学校問題だ。これに対して2016年には自殺対策基本法が改正されたが、その後も中高生の自殺は増加している。今回の新型コロナのよる経済的な影響から自殺を考える中高年齢が増えるのだろうか。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529153351p:plain
 出典:https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2019/28707

自殺者の推移
新型コロナにより経済的に追い込まれると自殺者数が増加するのではないかという心配をしたが、少なくとも令和2年3月の1704人から同4月には1455人と低下している。ただ、月々の変動が大きいので安心はできないし、5月以降どうなるかがやはり心配だ。特に中小企業の経営者で、家族、親族からの借金で運転資金を回している人たちが借金が回らずに自殺の追いやられる目安は500万円だという。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529154241p:plain
 出典:https://www.mhlw.go.jp/content/202004-sokuhou.pdf

ベーシックインカム年金
経済的な課題や精神的な課題に対する解決策としては、どのような方法がいいのだろう。ネットでサーチしてみると、3名の衆議院議員が昨年6月に「年金抜本改革チーム」を立ち上げている。これは、老後資金2千万円不足問題をきっかけだという。個人的には、そこにメスを入れたか〜!という感じだ。現在支給している年金の役割は、該当年齢層におけるベーシックインカムの役割と合致するものの、そもそもベーシックインカムは全ての国民に同一の金額を支給するというシンプルな概念だった。新型コロナに伴う特別給付金の役割もベーシックインカムの役割に合致するものかもしれないが、そもそもベーシックインカムは1回限りではなく、継続的に支給するものだ。どうも、ベーシックインカムバズワードとして使われているのが気になるところだ。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529155000j:plain
 出典:https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019092600001.html?page=1

まとめ
日本の幸福度は低いと言われる。なぜなのだろう。日本の中高生の自殺者が右肩上がりに増えている。なぜなのだろう。新型コロナの関係で自殺者が増えているかと思ったら下がっている。まだ予断を許さないが、前倒しで給付金などを適切に展開すべきだろう。しかし、これをつぎはぎ的に展開するよりは、ベーシックインカムのような制度を中核にした青写真を描けないものだろうか。下図は参議院議員の音喜多さんがブログで提言している内容だ。これが良いのか、実現的なのかは精査する必要があるが、少なくともこのような議論が全国で展開される事は好ましい事だと思う。
f:id:hiroshi-kizaki:20200529161840j:plain
 出典:https://go2senkyo.com/seijika/143644/posts/129623

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。