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コロナパンデミックとベーシックインカム

はじめに
コロナウイルスの感染者が世界中に広がっている。有効な処方箋の早期開発と早期リリースが待たれる。通常のインフルエンザと異なるのは免疫ができないことであり、また2回目の感染の方が重篤化することである。中国での発祥のピークは沈静化したが、現在は第二波の途中だ。問題は第三波が発生するか、抑制できるかという点かもしれない。また、今回の問題は、医学的な観点だけではなく、経済的な観点でも深刻な影響を世界に強いている点だ。その対応策としてベーシックインカムもしくはその派生について議論が活性化しているので、少しレビューしておきたい。

コロナウイルスの発生分布
下の図は、ジョンホプキンス大学のシステム科学工学センターが公開する分布データだ。発症数244,517人に対して、死亡者数10,030人、回復者86,025人だ。比率を単純に計算すると、致死率が4.1%、回復率(治癒率)が35.2%となる。
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 出典:ArcGIS Dashboards

年代別の致死率
先のデータでは回復率は35.2%だったが、中国疾病予防管理センターの調査では約8割が軽症で回復しているという。しかし、下の図にあるように高齢者ほど重篤しやすい。また、未成年でも、小児ぜんそくなどの疾患者や抗がん剤などの使用者は重篤化しやすいので、かかりつけの医師と十分に相談しておく必要がある。
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 出典:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/395655

コロナウイルスの発症数の推移
下の図は、2020年1月末から3月上旬までの推移だ。中国では、最初のピークまで約2週間、そして沈静化するまでに4週間ほどかかっているように見える。中国が沈静化したと思ったら、2月下旬ぐらいから韓国で広がり、3月に入るとイタリアで広がる。日本では抑えられているようだが、これは感染者が抑えられている部分と検査自体が制限を受けている点に注意が必要かもしれない。いずれにせよ、ヨーロッパは近い段階でピークを迎えて収束すると期待される。しかし、問題は、これから広がる可能性のある北米だ。さらに言えば、南米やアフリカでもピークに向かうと仮定すると、地球規模で沈静化するのはさらに数ヶ月かかるのかもしれない。鍵を握るのは米国の動向だと思う。
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 出典:https://gigazine.net/news/20200312-what-happen-pandemic/

コロナウイルスとは
テレビや写真でもコロナウイルスの拡大写真が映し出される。ちょっと気持ち悪いけど、その形は確かに太陽の光冠(コロナ)のようだ。特徴は、RNAウイルスである点と、RNAウイルスの中ではゲノムサイズが大きいことだ。直径は80-220nmと微小だ。マスクの有効性が疑問視されるのは、この微小性からだ。かつて流行したSARSやMERSと同じコロナウイルスだが、その致死率は下の図だと3%程度と低く、感染力も比較的小さい。潜伏期間はMERSと同等程度だ。
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 出典:https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200131-00161096/

潜伏期間の分布
今回のCOVID-19の潜伏期間の分布図は見つからなかったので、代わりにMERSの潜伏期間の分布図を下に示す。潜伏期間が2週間と聞くと、なんとなく感染者全員が一律2週間で発病するように理解する人がいるが、そんことはない。下の図のように二項分布的なばらつきを示す。死亡した患者の潜伏期間は回復した患者の潜伏期間より若干短いようだが、大きな差異はない。中央値は7日程度だが、人によっては21日とかもあり得る。潜伏期間のばらつきを大きくすることはウイルスの生き残り戦略と言える。
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 出典:https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/22/3/15-1437-f1

ベーシックインカム
世界保健機関(WHO)の事務局長テドロス・アダノムは、COVID-19が世界に急速に広がり、衛生的な課題だけではなく、経済的な課題に全世界が直面して、崩壊の危機にあると説く。そして、世界500人以上の政治家や学者とともに抜本的な対策を講じることを提言している。それがベーシックインカムだ。世界の企業が倒産し、世界の市民が仕事を失い、経済が急激な不況に陥る。そんな大恐慌が懸念される。これに対応するにはすべての市民に最低限の生きるためのお金を支給する仕組みを今こそ実用化すべきと説く。
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 出典:
https://www.independent.co.uk/voices/letters/coronavirus-universal-basic-income-ubi-poverty-economy-business-migrants-a9408846.html


500の学者や政治家など
リストを見ると、Sarath Davala博士@インドベーシックインカムネットワーク、イサベル・ゲリン博士@フランス国立持続可能開発研究所、ガイ・スタンディング博士@FR米国プリンストン大学高等研究所、アーシャ・アミラリ博士@英国開発研究所、ニール・ハワード博士@英国バース大学、バーバラ・ハリス・ホワイト教授@英国オックスフォード大学(名誉教授)と、欧米の科学者や学者、教授、政治家が名を連ねている。日本人はいないのかと調べたら、次の2名が参画していた。なぜだろうと思ったら、岡野内教授は第19回BIENに参加していたようだ。自分も出席したかった。
 ・岡野内正教授@法政大学社会学
 ・山森亮教授@同志社大学経済学部
 出典:
https://www.independent.co.uk/voices/letters/coronavirus-universal-basic-income-ubi-poverty-economy-business-migrants-a9408846.html

ベーシックインカム アースネットワーク(BIEN)
BIENは1983年に3名のベルギーの大学の研究者で設立された。最初の国際会議は1986年9月に開催され、第19回の国際会議は昨年インドで開催された。今年の9月28日から30日までオーストラリアのブリスベンで第20回国際会議が開催される予定だ。今年は大きな進展が期待されている。
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 出典:BIEN | Basic Income Earth Network

様々な意見
(1) インド

第19回BIEN国際会議が開催されたインドでは、2020年には州レベルでベーシックインカム の導入が真剣に検討されている。賛否はあるし、総論賛成各論反対はいつでも起こり得るが、先行事例に期待がかかる。

(2) FBの共同設立者によるプロジェクト
クリスヒューズは奨学金ハーバード大学に進学した苦学生だったが、FBの立ち上げに参画し、3年間で5億ドル近くを稼いだ。20代半ばにして全米トップ1%のランクに加わった。そして、2年前に経済安全保障プロジェクトを立ち上げた。年間5万ドル未満の収入のすべての米国人労働者に月500ドルを支給するためだ。テクノロジーが発達し、新サービスを低廉な料金で利用できることは消費者として嬉しいが、その反面深刻な格差が拡大する。「米国経済のために働いているかぎり、米国はあなたの面倒を見ますよ。僕が提案しているのは、そういうシンプルなアイデアだ」と、ヒューズ氏はいう。逆に言えば、それほど米国内での経済格差が進んでいる。
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 出典:https://mopanews.wp-x.jp/?p=993

(3) 緊急ベーシックインカム(emergency basic income)
2020年の米国大統領選挙に民主党から出馬した実業家のアンドリュー・ヤンはベーシックインカムの導入を提唱した。18歳以上の米国民に毎月千ドルを支給するFreedom Dividendは、米国建国の父トーマス・ジェファーソンが提唱し、最近ではマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが提唱したようだ。米国下院ではコロナウイルス救済パッケージを可決した。救済案は5億ドルの緊急援助を州に提供するが、ほとんどの失業保険プログラムでは仕事を探していることを証明する必要がある。毎週申請が必要だ。さらに州は5億ドルの緊急援助を受け取るために失業率が増加することを示す必要がある。いかにも官僚的で実用的ではない。そんな対応でコロナウイルスによるパンデミックに対応できるのだろうかと警鐘を鳴らす。
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 出典:Americans Need a Basic Income During the Coronavirus Outbreak | Washington Monthly

(4) 英国での対応
英国のアレグザンダー・ボリス・ド・フェファル・ジョンソン首相は、3月18日に、コロナウイルスの大流行する中で、一時的なユニバーサルベーシックインカム(UBI)の実施を検討すると表明した。3500億ポンドの企業向け支援パッケージをフォローアップするため、労働者を支援する計画を策定していますとTelegraphは伝えている。日本経済新聞では、英政府は医療体制の充実や労働者の休業補償の支援などを盛り込んだ300億ポンド(約3兆7500億円)規模の経済対策をすでに公表しているが、17日には企業の資金繰り対策として3300億ポンドの信用枠の新設も打ち出し、経済の底割れ防止策を相次いで打ち出していると報道した。まあ、内容には大きな齟齬はない。しかし、具体的に決定したわけではなく、英議会の議論で実施の可能性を問われ、「検討すべきアイデアの一つだ」と応じたに過ぎない。これからの実行力に注目と期待が集まる。
 出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56978020Z10C20A3EAF000/

まとめ
ベーシックインカムのような仕組みは有事の際には有効だと思っている。特に、世界的な経済恐慌に落ちいった時に、金利を下げても、公共投資を増やしても消費者は動かない。なぜなら消費すべきお金がないからだ。そのような時にはベーシックインカムは特効薬となるだろうし、有事に備えて、早めにトライアルをして、日本国民全員に効率的に支給する仕組みを整える必要があると思う。マイナンバーを使えば網羅性は整えられるかもしれないが、不信感が強い。銀行口座に振り込む方法でもいいけど、それも手間だ。個人的にはキャッシュレスの仕組みを導入するのがいいと思っている。コロナウイルスによるパンデミックは早期に沈静化してほしいけど、これを機会にテレワークやオンライン学習などの新しい働き方、学び方を始めるとともに、経済的にも精神的にも市民が健全に暮らせるような世界に向けての一歩を踏み出すきっかけにすべきと思う。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。