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コロナウイルスとベーシックインカム

はじめに
新型コロナウイルスの被害が拡大することに対する対抗策としてベーシックインカム(BI)を検討する事例が増えている。日本でも国民一人ひとりに10万円の一律給付が実施されることになった。世界ではどうなのかについては、BIの世界的な組織であるBIENが新型コロナの危機における緊急のBIというタイトルで記事が掲載されていたので参考にその和訳を展開する。ただし、翻訳のプロではないので、厳密性よりもわかりやすさを重視したので、ご承知おき願いたい。
 出典:Emergency Basic Income during the Coronavirus crisis | BIEN

1. ベーシックインカム(BI)の定義
BIEN(ベーシックインカムアースネットワーク)の定義によれば、BIとは、受給資格の検査や勤労に関する申請処理が不要で、無条件にすべての国民に個別に支給される定期的な現金支払いだ。

2. 新型コロナの影響
コロナウイルスによるパンデミックは、感染者が身体的に深刻な影響を受けるだけではなく、その家族や友人に対しても多大な苦痛を与えている。世界中の政府は、何らかの社会的な措置を講じる必要がある。医療機関が医療サービスを必要とする人に提供することができなくなる医療崩壊のプレッシャーは大きく、これは回避することが必須だ。しかし、感染を防止するために社会活動の制限や、ビジネスの制限、個人の活動の制限は、個人にとっても、企業にとっても、そして社会にとっても多大な継続的損失を発生し、これからも発生し続ける。

3. 政府の対応
ビジネスの停滞は、企業や雇用主を直撃する。しかし、雇用主が従業員の給料を支払うことができないような事態は保護されるべきだ。政府はそのための政府ができることをしなければならない。最も影響を受けるのは、非正規の労働者であったり、移民労働者だ。

4. BIの誤用
政策立案者や研究者、運動家がBIについて真剣に検討している。これは歓迎すべきことだ。BIの概念に近づけるように既存の福利厚生システムを改善することも歓迎すべきことだ。ただ、本来BIではない福利厚生施策にBIという用語を安易に用いるのは歓迎されるべきではない。BIへの関心が高まる理由は、全ての安全ではない層に対しても安定した収入を提供することである。これにより需要が活性化され、不況を回避することが期待される。BIを必要としない人に支払われることは問題ではない。なぜなら、高所得の人々の可処分所得が増えないように所得税率を引き上げることは簡単なことだからだ。そして、誰もが必要とする基本的な収入の支給を助けることができる。

5. インセンティブ
従来の貧困対策のための給付金の場合には、給与所得が増えると給付金が減少する。給付金の受領を維持するために新たな仕事にチャレンジするインセンティブが得られないため、追加収入を得ようとしないかもしれない。しかし、BIであれば追加収入があろうがなかろうが同じ金額が支給される。このため受給された金額をもとにもっと稼げる仕事にチャレンジしようというインセンティブが大いに期待できる。

6. BI実現のためのシステム
BIには明らかな利点があるが、政府がBIの支給に踏み切らない理由は何か?1つは、全ての法定居住者に対してBIを支払う仕組みがないのかもしれない。このシステムを実現するには、個人のなめ、連絡先、生年月日、銀行口座などのデータベースだ。多くの国ではこうしたシステムの構築は短期間で可能だろう。しかし、新型コロナウイルスの危機の真っ只中では、新しいシステムを構築するよりは、既存の所得税のシステムを活用する方法の方が簡単かもしれない。その場合には、解雇された従業員に雇用主が引き続き給与を支払えるように自営業者に助成金を支給する方法だ。

7. 妥協策
完全な形でのBIではないが、既存の所得税のシステムや給付のためのシステムを活用して、世帯収入の維持を図ることは歓迎すべきだ。このような施策が完全で無条件なBIへの第一ステップであれば歓迎すべきことだ。しかし、完全で無条件でないBIに対して、BIという用語を使用することは慎むべきだ。例えば、オンタリオ州では短期間の支給がなされたが、これは個人ではなく、世帯であったので、BIとは呼ぶべきではない。

8. まとめ
政府がBIに近い性格の福利制度を導入することは歓迎すべきだ。しかし、BIでないものをBIと呼ぶことはできない。それはBIの真の利点を示すことができない。BIENは、人々の所得を保護するために各国の政府が実施する対策を加盟組織から収集している。それらの情報はIMBのウェブサイトに掲載されている。

参考1:IMFのウェブサイト   
www.imf.org

参考2:IMFのウェブでの日本に関する記述
2020年4月16日現在、日本は8,626人のCOVID-19感染者と178人の死亡者を報告している。発生に対応して、当局は健康と封じ込めの取り組みに向けたいくつかの措置をとった。現在、75か国が日本の入国禁止の対象になっている。これにより、過去14日間にCOVID-19の影響を受ける国と地域を訪れた外国人の入国が制限されている。 4月16日に、安倍晋三首相は全国緊急事態を宣言し、4月に発表された7都道府県(東京、埼玉、神奈川、千葉、大阪、兵庫、福岡を含む)から日本のすべての都道府県に緊急事態の範囲を拡大した。5月6日まで全国的な緊急事態が発生し、指定された地域の県知事は、住民の自宅への滞在、学校や公共施設の閉鎖の要請、一時的な医療施設の建設、医療および食料供給などの支援措置の採択が可能になる。 2020年の東京オリンピックは、2021年7月23日から8月8日まで延期された。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。