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(その4:提案)ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨として国民に支給したらどうなるのだろう?

はじめに
今回のシリーズも4回目になった。この提案が本丸だ。しかし、実際は提案というよりは仮説だ。日本政府発行の仮想通貨としてベーシックインカムを提供するなんてことは自分が決められるわけがない。まだまだ日本社会の中で議論を尽くして理解を求めていく必要がある。そもそももっと良い方法もあるかもしれない。ベーシックインカムのトライアルを進めているフィンランドでも、そのトライアルを年内で終了させて、今後は支給対象を限定した福祉制度に向かうのではないかという報道もある。その意味ではまだまだ何が本命かは見えない。ここでは、このような提案がもし実現したら、どんな効果があるのを評価していきたい。つまり、設定した仮説が本当に期待したような効果を実現するかを検証することが重要だ。でも、どうやって検証すれば良いのだろう。何か経済モデルを設定して、計算するのだろうか。アンケートをとって行動分析をするのだろうか。ビッグデータの活用事例を示すのだろうか。首尾よくMBAコースに入学できたら、そんな問題意識を持って研究を深めていきたい。
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1. ベーシックインカムを政府発行の仮想通貨で実現する。
1.1 ベーシックインカムの是非

ベーシックインカムについてはまだまだ賛否が分かれている。賛成派と反対派の代表的な意見は次に示す。
(1) 賛成派の意見
・複雑な福祉制度を整理して、一律の制度にすることで小さな政府を実現する。
・財源問題はなんとかなる。少子化に歯止めがかかる。
・国民の生きる権利(日本国憲法第25条の生存権)を守るには必要になる。

(2) 反対派の意見
・そもそも原資がない。財源をどうするのか。
・一律に支給したら働かなくなる。
・福祉制度を見直すことで対応できる。
ベーシックインカムの必然性がない。

(3) 年収による違い
マンナビが年収を限定せずにアンケートをとると賛成派が6割を占めたが、年収1千万円以上に限定すると、賛成派は3割に留まった。これは何を意味しているのだろう。社会で重要なポジションについていて、高額報酬を得ている人はベーシックインカムの意義を理解しながらも、不要と判断するのであれば、議論が進まないのも当然かもしれない。
 出典:年収1,000万円の人は「ベーシックインカム」についてどう思っている? | マイナビニュース

1.2 政府発行の通貨
(1) 中央銀行の存在意義

現在の日本の紙幣は日本銀行が発行し、硬貨は造幣局が製造している。2017年度の発行金額ベースで紙幣は15兆円ほどだが、貨幣は2800億円ほどと2桁ほど少ない。政府が紙幣を発行することは過去にもあったようだが、日本銀行日本銀行の株主から見ると許容できるものではないだろう。しかし、そもそも日本銀行は、日本銀行法に基づき設立された特別法人だ。日本銀行のホームページを見ると、日本銀行法改正の理念として独立性と透明性を挙げている。これはつまり、日本銀行は独立して、そして透明性を高めることが課題ということだろう。株式の過半数は日本政府が有しているが、100%ではない。独立性を高めるのであれば日本政府の出資比率を高めるべきではないのか。また、透明性を高めるなら、出資者をオープンにするべきではないのか。そんなことはとても言えない状況にあるのだろう。

(2) 政府発行紙幣
中央銀行ではなく、政府が直接政府の紙幣を発行することは可能なのだろうか。日本銀行法の第46条において、「日本銀行が発行する銀行券は法貨として無制限に通用する。」とある。この無制限が何を意図しているのかは不明であるが、排他的にとは書かれていない。実際、戦時中には政府が発行した軍票政府紙幣の一つと言える。日本では江戸時代には幕府が発行する貨幣とは別に藩が藩札を発行していたという。明治維新後も明治政府は政府紙幣を発行している。そもそも19世紀初頭まではイングランド銀行も単なる大企業の一つだった。しかし、19世紀初頭の金融恐慌で多くの銀行が破綻したため、1844年にイングランド銀行のみが銀行券を発行しても良いという条例ができたのが中央銀行の始まりだ。日本銀行が設立したのが1882年なので、まだ136年ほどの歴史だ。また、米国には米国銀行という中央銀行はない。全米の主要都市に散在する連邦準備銀行(FRB)を連邦準備制度理事会が統括するという形だ。
 出典:連邦準備制度 - Wikipedia

(3) 日本政府が独自の仮想通貨を発行する可能性
ベネズエラやロシア、トルコなどが政府発行の仮想通貨について検討している。日本では、具体的な動きはないが、日本銀行が「各国の動きを丹念にフォローし考察を深める」としているという。また、三菱UFJは「coin(旧MUFGコイン)」の発行をCEATEC JAPAN 2018でも発表した。1コイン=1円だ。日本で仮想通貨を発行する主体が都市銀行なのか、中央銀行なのか、政府なのか。現状では都市銀行が一歩先行しているが、予断を許さない。
 出典:世界各国で独自仮想通貨の発行がはじまる!? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

(4) 日本政府がベーシックインカムを仮想通貨で発行する可能性
これは難しい。まず日本政府はベーシックインカムを導入するとは言っていない。日本政府が仮想通貨を発行するとは言っていない。ましては、ベーシックインカムを日本政府発行の仮想通貨で開始するとは誰も言っていない。少なくとも直近5年とかではないだろう。しかし、2030年とか、2040年の時代において日本の経済状況が非常に苦境に陥ったりすると、その打開策として採用される可能性はゼロとは言えないだろう。 現状では非常に可能性の低いオプションかもしれない。ここではその可能性を議論するのではなく、それが実現したと仮定するという前提で、以降の議論を進めたい。

2. 消費者の購買力がアップして、経済が循環する。
(1) お小遣いカード

想像してほしい。2030年になるのか、2040年になるのかは別にして、日本国民全員が自由に使える一定の金額が仮想通貨として利用可能となる。イメージ的には、スマホで何かをかざすのか、特定のカードをかざすのか、それともスマートウオッチのようなものをかざすのかは別にして、商業施設や飲食店などで使える。支給されるベーシックインカムに対して有効期限を設けるのかどうかは議論のあるところだけど、個人的には期限をつけた方が良いと思う。使える権利が消滅するとすると、その期限前に使おうとするのが人間の性だろう。つまり、消費が喚起される。タンス預金を許さない。しかも、日本国民1億2,500万人が仮想通貨を使うのであれば、それに対応するインフラ整備が必要だ。出来るだけ低廉なコストで使えるようにすることが求められる。その頃には実質のキャッシャレス社会になっているのだろう。

(2) 3つのメリット
ベーシックインカムの議論では財源問題が避けて通れない。しかし、政府発行とすることであれば、国債を発行する必要がない。政府としてやると決めて発行するだけだ。そのタイミングの消費税が10%に留まっているのかどうかはわからないが、仮に10%としても政府には支給した金額の10%相当は戻ってくる。ベーシックインカムで消費が喚起されれば、それを供給する企業は潤い、利益をだす。そして、法人税を支払う。さらに、ここからは過激にならないようにバランスを取る必要があるが、政府としてインフレ誘導が可能だ。過剰なインフレは厳禁だし、適切なインフレ率を見極めるのは難しいが、ベーシックインカムの支給額と期待されるインフレ率には一定の相関関係が生じるだろう。仮に年間5%のインフレを見込むのであれば、政府の負債はその分実質的に目減りすることになる。つまり、適切に運用されれば、国民もハッピーだし、企業もハッピーだし、政府もハッピーとなり得るのではないか。

(3) 小さな電子政府
エストニアは電子立国だ。ICOエストコインにトライしようとしているがECの加盟国でもあり、独自の通貨ではなく、ユーロドルを使っているため、反対派の包囲網の中で苦戦しているようだ。厳しいかもしれない。しかし、このエストニアの素晴らしいことは、コンピュータにできることはコンピュータに任せて、小さな政府を実現している点だ。安倍首相もエストニアを含めてバルト3国を訪問して、連携しようとしている。日本の政府をどこまで効率化できるかは微妙だ。企業は経費削減を進めて、もうカラカラの雑巾の状況だが、政府はまだまだ効率化の余地が大きいだろう。しかし、公務員の削減には反対が強いだろう。現在の公務員をレイオフしてもベーシックインカムがあればいいというのは暴言だろう。やはり、一定の職に就けるように、実体のある意義のある仕事につけられるような配慮と調整をしない限り、小さな政府は実現しないだろう。では、どんな仕事があり得るのだろう。

3. 消費者の購買データをビッグデータとして活用する。
(1) ビッグデータの分析業務

日本国民が使う仮想通貨のデータはすべて政府が管理するシステムで運用することになるだろう。そのシステムには時々刻々と日本国民が使うデータが蓄積される。まさにビッグデータだ。日本の企業がマーケットを分析するためには喉から手が出るほどほしい情報だ。そのようなデータを分析するような業務、データから知見を導き出すような業務、そんなデータアナリストのニーズは今後ますます高まるだろう。個人情報が流出しては困るので、セキュリティ関連の業務も増えるだろう。これらの業務を誰がやるのか。

(2) 小さな政府とこれを実現するシンクタンク組織の受け皿
ここは異論が出るところかもしれないが、やはり公務員の業務を思いっきり効率化するためには、現在の省庁の構成が最適とは限らない。小さな政府にするための再編成が必須だろう。その中で捻出した人材を外部団体で引き受ける仕組みもやはり必要だろう。公務員になる人は優秀で真面目な人だ。そんな優秀で真面目な人材がシンクタンク的な業務にトライすることはできないものか。もしかしたら、複数のシンクタンクと特約を結んでベーシックマネーで蓄積したビッグデータを解析するような仕組みにして、そこに大量に公務員を引き受けてもらうことが現実的なのかもしれない。

(3) 日本銀行はいつまで必要なのか
想像してほしい。今後20年とか30年とかの先にまだキャッシュを使っているのだろうか。骨董品的に紙幣を鑑賞することはあっても、日常の経済活動はほとんどがキャッシュレスになっているのではないか。その時に日本の国債はどの程度残っているのだろうか。一般会計の25%が国債関連の費用に飛んでいるような事態は改善されているのだろうか。

まとめ
ベーシックインカムを日本政府が発行する仮想通貨で実現することは可能なのだろうか。そこを議論してもなかなか答えは出ない。そのため、あるタイミングXにおいて、仮にそれが実現したとして、いったいどのようなことが起きるのかを想像することはできるだろう。一定のモデルを作ればシミュレーションすることも可能だろう。ただ、その先にある日本社会が本当にハッピーかどうかは実は微妙かもしれない。ベーシックインカムを支給するという甘い言葉の先にあるのがインフレだとしたらそれは悲劇だ。公共投資は必要だし、金利政策も重要だけど、今後の景気対策や景気調整はそれだけでは難しいだろう。ベーシックマネーは、その時の重要かつ有効な施策となりうるのではないか。また、同時に社会の仕組みの効率化は待った無しだ。政府も例外ではない。無駄を排除する一方で、日本人としての尊厳を持って生存する社会保障を充実する。かつての日本が輝いたように、日本社会を磨いていく。そのためには心の手当や、日本人としての原点を踏まえて、一人一人の人格を高めることも求められるのではないだろうか。

とりとめのない結論になってしまったが、現時点の自分の知見と能力ではここまでです。ご容赦ください。

次回は、留意点についてトライしたいと思います。