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起業や副業、フリーランスを考える(マクロ経済と人材経営#6)

はじめに
山田教授の授業も来週までだ。名残惜しい気持ちが高まる。クラスメートともZOOMだけでの会話だけだ。早くFace-to-Faceでの飲み会とかしたいけど、まだそのような話しになっていないのが残念だ。

リーダシップ・パイプライン
この言葉は、企業では常に自分の後継者を育てる必要があるというGEの元CEOジャック・ウェルチの想いを示したものだ。出世街道を駆け登る立場から見れば、ステージを上がるための試練と淘汰がある。また、トップから見れば、社長の最も重要でかつ最も困難な仕事は後継者の育成とバトンタッチだろう。これに失敗した企業には快挙のいとまがない。一旦バトンタッチしたけど、また会長から社長に戻る例もある。
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出典:https://www.iibc-global.org/library/default/ghrd/ghrd_project/stepbystep/pdf/advanced-chapter03.pdf

ロミンガー社の法則(70:20:10)
パイプラインとセットで語られることが多いのがロミンガー社の70:20:10の法則だ。これは何かと言えば、人を育てる要素として最も大きいのが実務経験で70%を占めるというもの。仕事を通じた指導や助言は20%であり、座学による教育はわずか10%に過ぎない。仕事が人を育て、地位が人を作るという。確かに、あるポジションに抜擢されて、期待されていることを実感するとアドレナリンは出まくって頑張ってしまう。故野村監督の名言には地位が人をつくり、環境が人を育てるというのがあったのを思い出す。
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出典:https://selfcoaching.3x3career.com/advisor/characteristic/model-for-learning-and-development/

外国人労働者の受け入れ
2020年1月31日時点での厚生労働省の発表では、外国人労働者は前年同期比13.6%増の165万8804人だった。中国からの受け入れが約41万人、これについでベトナムからの受け入れが約40万人。これ以外にはフィリッピンやネパールなどのアジアからの受け入れが増えている。在留資格では、技能実習生が約38万人、高度人材も約32万人を占めるが、2019年4月の改正出入国管理法で創設された特定技能による受け入れはわずかだったという。
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出典:https://visa.yokozeki.net/tokutei-ginou/

正社員の比率
非正規社員の比率が増加しているのは確かだが、正規社員が減少しているわけではないようだ。慶應義塾大学小熊英二教授は著書の中で、正規社員が減少したわけではなく、自営業や家族労働者が非正規に回っていると指摘する。この著書の中で興味深いのは、仮に日本の人口が減少し、それでも多くの企業が業績を維持することができて、正規社員の枠を保持したとすれば、正規社員比率は向上するかもしれないと書いている。子供が苦労しなくても、大手企業の正規社員として採用されるようになれば、母親は安心して子どもを産むようになるかもしれない。人口問題の難しさはこういう心理メカニズムが複雑な点にあると思う。
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出典:小熊英二著、日本社会の仕組み(日本を支配する社会の慣習)

学生と企業の関係の日米比較
米国では大学を卒業して、数社を経験したら大学院に入学し直して、MBAなどを取得したら幹部候補生として入社し、そのあとは頑張ってその会社でのキャリアを形成することが多いそうだ。これは日本のキャリアプランとは全く異なる。日本は学歴社会と言われるが、大学を卒業後、修士や博士を目指す人は少ない。これはなぜかと言えば、入社してからは学歴が問われることが少ないためという。OECDの調査では、仕事に必要な学歴よりも自分の学歴の方が高いと思う人の割合は日本では30%以上とOECDの中ではトップだった。
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出典:OECD

フリーランス
特定の企業や団体、組織に専従しない独立な形態で自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人をフリーランスと言うとフリーランス協会は定義している。日本にはどの程度のフリーランスがいるかと言うと調査する母体によって異なる。内閣府の調査では341万人(2019年)、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)では390万人程度と考えられている。JILPTの調査では390万人のうち290万人が本業として、100万人が副業として対応しているようだ。自分が注目しているのは、副業型フリーランスのうち、雇用x個人事業主のパターンだ。
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出典:https://www.freelance-jp.org/start_freelance

インディペンデント・コントラクター
終身雇用はもはや幻想だと言う。雇わない・雇われない働き方が、インディペンデント・コントラクター(独立業務請負人:IC)だ。「高度な専門性を持ち、組織から独立して、個人の価値基軸で意思決定し、会社の垣根を超えて仕事をしていく。」のがIC協会が語るICだ。ICという言葉はマイナーだけど、いわゆる自営業者、個人事業主と考えればいいのかもしれない。
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出典:https://news.livedoor.com/article/detail/7669243/

プラットフォーム労働者
ウーバーイーツを利用されたことがありますか?配達員はUberのプラットフォームの上で、利用者からの注文に基づいて食料をピックアップして利用者が希望する場所まで配達する。これを体系化したものが下の図だ。Uber Eatsは対面型だけど、非対面型もある。というか、非対面型の方はさらに再委託型か仲介型か、仲介型はマイクロ型かコンペ型かプロジェクト型かと細分される。なんだか、人に使われるのではなくて、コンピュータに使われているような感じがする。
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出典:http://ictj-report.joho.or.jp/2001-02/sp05.html

デジタル・プラットフォームの脅威
プラットフォーム労働者を支えるのはデジタルプラットフォームだ。そして、ITの進化、ネットの進化、AIの進化などが全て取引コストの低減を実現する。最終的には限界コストゼロの世界か。既存の企業がデジタルプラットフォームをベースとした企業と戦うことになるのか、それともこれまでの資源を活用して、参入することになるのか。何れにせよ、世の中のビジネスはオンプラットフォームでの行動となるだろう。
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出典:プラットフォームエコノミーの将来

従属的自営業者
このようにプラットフォームビジネスが拡大すると、従属的自営業者が拡大していくとの予想がある。プラットフォームワーカーがこのプラットフォームビジネスの投資を兼ねている場合には働き、仕組みを改善することで投資家としてのリターンも拡大する好循環が期待される。しかし、労働者と投資家が別の場合には、さらに貧富の二極化が進むことになりそうだ。
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出典:https://www.jil.go.jp/foreign/report/2019/pdf/19-03_f.pdf

ロナルド・コース
ロナルド・H・コース(1910年12月-2013年9月)はイギリス生まれの米経済学者だ。1991年にノーベル経済学賞を受賞している。特に取引コスト概念による企業存在の基礎付けというユニーな業績が認められた。企業が内部のリソースを活用するか外部のリソースを活用するかはどのように判断するのだろう。そのノウハウがどちらかにしかなかったら答えは決まる。どちらでも可能な場合には、その取引コストが小さい方を選択するのが経済合理的だ。
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出典:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd121400.html

グループワーク
今回は、ICの意義や課題、可能性、必要となる能力について話し合い、それぞれのグループの代表が発表した。それぞれのグループのいいとこ取りをすると次のような主旨になるだろうか。

ICや副業の意義
どのような立場が想定されるだろうか。例えば、会社側から見れば、外部の専門家のノウハウやリソースを合理的な料金で利用できるのであれば、意義はあるだろう。提供する側から言えば、自ら蓄積し、磨いてきたノウハウや経験を広く活用してもらい、結果として対価を得ることができればやはり意義はあるだろう。社会の立場で考えれば、革新するプラットフォーム技術を活用して、安価で高品質なサービスを安全・安心して利用できる社会は望ましいのでやはり意義があると言える。

課題
では何が課題だろうか。会社に勤務する専門家がICを目指そうとした場合に、特に日本の大手企業では就業規則を持って制限をかけようとするだろう。政府は副業解禁を促進する立場をとっているが、企業は慎重だ。政府の狙いは何かと教授に質問したら流動性を高めたいのだろうという回答だった。でも、なぜ流動化を高めたいのか?そして、流動化を高めると政府にとってはどのように良いことが起きるのか。それとも外圧だろうか。ICと副業は同義ではないが、良い副業と悪い副業があるという。前者は専門性やスキルを活用する副業。後者は単なる収入目的。収入目的で働かないといけないとしたら、それは本業の賃金が低すぎることにほかならないといえるのではないか。

可能性
ICや副業がもっと活発に活用されるとどのようなことが期待できるだろう。自分は敗者復活のシナリオを描けるのではないかと発言した。つまり、結婚して出産した女性は、なかなか企業に戻れない。それならば、同じように困っている女性のための事業を起業することも可能かもしれない。定年退職して、長年勤務した会社に再雇用されたと思ったら年収が半減した。不満に思うのであれば、市場に自分の価値を問てみると良いかもしれない。学校を卒業して就職したが不本意な仕事にしかありつけない。そんな人が知恵を出し、汗を流して起業する。そんなチャンスが広がる社会は期待が持てる明るい社会だと思う。

必要な能力
起業すると言っても簡単ではない。他の人ができないことをやる。他の人よりも素晴らしい品質を実現する。安く実現する。早く実現する。丁寧に心を込めて実現する。そんな努力と資質と人的コネクションが重要だろう。フリーランスは一人でやるものではなく、連携してやるものとも言われる。

まとめ
昨日の授業で習ったことをレビューしようと思ったらどんどん話題が広がってしまった。起業するのは勇気がいる。準備も大変だ。しかし、日本では起業しようと思った人の多くは起業できているようだ。問題は起業しようと思うかどうか。特に大企業の正社員として雇用が守られている人ほどチャレンジするメリットに対して失うものが大きい。その意味では失うものがない、もしくは少ない人の方がチャンスかもしれない。最近は東京大学を卒業しても、官僚になるよりは、ビジネスを立ち上げる方がカッコいいと考える人が増えてきているようだ。いい傾向だと思う。クールにスマートにでも泥臭く這いずりながら頑張るのもいいものだ。

以上

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

勤務の内外比較やテレワークなど(マクロ経済と人材経営#5)

はじめに
先週の講義に続いて、今週の講義も盛り沢山だった。うまくまとめきれないけど、自分の印象に残ったキーワードを中心にレビューしてみたい。

日本型経営のメリットとデメリット
終身雇用、年功序列、参加型経営は日本的な経営の代表例だろうか。企業別組合制度を取り上げることも多いし、お客様第一主義なども日本的だろう。欧米型の経営は短期的経営や業績評価、統制型があげられる。つまり、統制する型と統制される側を明確に区別するのが欧米方式だけど、日本型はみんなで一緒にやろうという村型経営と言えるかもしれない。
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出典:http://www.valueassociatesinc.com/news/20080822.html

日本の現場は一流とトップは二流
かつての日本企業の競争力の源泉はトップの理念に共感した現場の頑張りだったのではないだろうか。設計図面よりも出来上がった製品の方が改良が加えられていて、作った後に設計図面を改良するなんてことも日本企業では普通にあった。欧米企業ではあり得ないだろう。しかし、そんな圧倒的に強かった現場力が低下している。逆にガバナンスが弱いと統治を強化しようとするが、そもそも統治能力にかけたトップの場合には最悪だ。現在の日本企業の迷走は、かつての日本企業の強みを消し、弱みを強化できない構造にあるように感じるのは自分だけだろうか。

同一労働同一賃金
同じ仕事をしているのに採用の条件が異なるだけで賃金に格差があるのはおかしいという論法だ。英語では、「Equal pay for equal work」という。国際労働機関(ILO)ではILO憲章の全文に掲げていて基本的人権の1つと考えている。でも、日本で使われ始めたのは2016年のニッポン1億総活躍プランの中で同一労働同一賃金が明記された。個人的には、この言葉には違和感を感じる。なぜなら、労働の対価である賃金を決めるのは、労働の内容や労働の時間だけではないからだ。その人に求められる責任や地位にも依存するだろうし、その人の能力や経験、年齢にも依存する。そもそもジョブ型であれば、違和感は少ないけど、メンバーシップ型では違和感が満載だ。
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出典:https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=569354314653434977

定年再雇用の葛藤
サザエさんの時代は55歳定年だ。波平の設定は定年を控えたおじいちゃんなので、54歳だ。現在は55歳で役職定年を迎えて、60歳で定年を迎える会社が多い。定年後も本人が希望すレバ65歳まで再雇用という受け皿を用意する企業も多いが、その時の年収は現役の頃のほぼ半分だ。なぜこれほど安いのかというと、政府が年金の支給年齢を60歳から65歳に変更するのに合わせて、政府が企業に再雇用制度を求めたからだ。企業からすれば追加コストの発生を最小限に留めたい。政府も年金支給時期の変更が必至なんで了承した。割りの合わないのは会社勤めの社員だ。中小企業の場合には、年齢になっても代りがいないということで部長職等を継続すると収入はそれほど落ちないが、大企業では代りはいる。パーソル総合研究所の調査でも年収の低下が不満というのが9割を占めている。
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出典:https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201812050001.html

テレワークの女性活躍
情報通信技術を活用して場所や時間にとらわれない柔軟な働き方がテレワークだ。具体的な方法として、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトでの勤務等がある。コロナ禍に対応するためにテレワークが一気に広がった。しかし、効果を発揮しているケースとそうでないケースがあるように思う。自宅にWi-Fi環境があり、できれば一人で集中できるスペースがあり、長時間の勤務でも疲れない椅子があれば集中できる。効果も発揮できる。逆に、幼稚園や小学校に行けずに自宅待機する子供の面倒を見る必要があったり、Wi-Fi環境が整備されていなかったり、そもそもパソコンがなかったりすると、集中できないし、効率も上がらない。このようなインフラ以外に、ジョブ型かどうか、上司や同僚との人間関係=信頼関係ができているかも大きな要因だ。管理職の時には、できるだけ部下には大きく任せるようにした。細かな仕事を都度頼む方法もあるが、そうではなく、もっと大きく任した方が本人もやる気になる。また、分担表は常に縦と横を意識した。例えば、営業職であれば、A社とB社を任せるというよりは、外資系の証券会社を任せるといった縦と、PC管理や勤務管理を任せるというよりは管理系を任せるという横だ。縦の分担のみだと忙しい人と暇な人が生じる。横だけでも同じだ。でも、縦の担当と横の担当を割り当てると結構うまくいく。
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出典:https://www.japan-telework.or.jp/taidan1503/index.html

ドイツのギムナジウム
英米日は基本的に6・3・3制度だ。つまり、小学校は6年間、中学校は3年間、高校が3年間だ。しかし、ドイツはかなり異なる。そもそも教育は文化の一部と考えられているため州によって異なるが、一般的には6歳の時に小学校に入学し、4年間勉強して、その後の進路をほぼ決める。ほぼ決める意味は、小学校の5年と6年の段階で変更可能なためだ。約3分の1は統合学校やギムナジウムに進学し、単科大学や大学、大学院に進む。残り3分の2は実家学校や基幹学校から職業教育や専修学校に進む。前者は勉強だけではなく、企業へのインターンを行う。日本のような名ばかりではなく、半年程度派遣され、お互いが合意すれば就職につながる。後者の場合にも学校内での勉学に加えて、企業での実習を行うため、学校を卒業する時点では即戦力だ。
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出典:Die deutsche Schule – ドイツの教育制度 | 138国際誌

金融系企業がグロービスを活用した研修プログラム
企業による社員研修のアウトソースも広がっているようだ。特に管理者の登用に向けて、経営を担える人材の育成が急務ということでグロービスのプログラムを活用する例が紹介されていた。長時間労働を是正し、スキルアップを図るには、終業後の時間を活用することは会社にも社員にもメリットがある。自分は、自主的に社会人学生になったが、テレワークとオンライン授業はお互いに効率的で良い組み合わせだ。昨年度はよく頑張って通勤&通学していたと自分を褒めてあげたいくらいだ(笑)。
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出典:https://gce.globis.co.jp/column/age-management-of-selection-training

テレワークがうまく機能する条件
そもそもテレワークに対応できる仕事と対応できない仕事があるだろう。契約書の締結など捺印が必要な処理のために毎日出社している人がいる。しかし、これは捺印を不要とする仕組みを作るべき。テレワークがうまく機能するには、何が大事なのだろう。個人的には、人間関係=信頼関係と、やるべきこと が明確=ジョブ型スクリプションの2つと思う。人間関係には、相手の気持ちや立場を想像して、フォローする気持ちも含まれるだろう。上司が部下のことを考えて、部下は顧客のことを考えて、提案したり、調整するようなら好循環が生まれると思う。また、自律的な仕事と他律的な仕事という切り口もあると思う。他律的な仕事はきちんと処理すべき事項や優先度、スケジュールをしっかり管理できているかどうか。自律的な仕事なら方向性を間違っていないかなどを時々相談できる人間関係があるとうまくいくだろう。
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出典:https://recruitgroup.jp/n/n6a873fe69651

スウェーデンセーフティネット
山田教授は自他共に認めるスウェーデン好きだ。何がそれほど魅力的なのだろう。スウェーデンに限らず、北欧諸国では公共職業教育訓練が国民に保障された権利として広く普及している。いわゆる初等・中等・高等の義務教育に加えて、高等職業教育がある。仮にリストラになっても95%の収入は保障され、対象者の強みや弱みをマンツーマンでケアしてくれる。受講生には所得補償制度があるほか、職場訓練を含む教育の場合には受け入れ先から賃金が支払われ、受け入れ先には相応の賃金額が償還されるという。さすがです。
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出典:https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2016/176.html

西郷隆盛の言葉
講義では時間の関係で割愛されたが、興味深いスライドが混じっていた。それは能がある人には何をあたえるのか、功のある人には何を与えるのか、徳のある人には何を与えるのかという質問だ。西郷隆盛の遺訓集である南洲翁遺訓(なんしゅうおういくん)の第一条には為政者の基本的姿勢と人材登用の考え方が示されている。特に有名なのは、「心を公平に操り、正道を蹈み、広く賢人を選挙し、能く其の職に任ふる人を挙げて政柄を執らしむるは、即ち天意也。」の部分だろうか。また、「国家に勲労有るとも、其の職に任へぬ人を官職を以て賞するは善からぬことの第一也」と説いている。つまり、功績があるからと地位を与えてはいけない。「官は其の人を選びて之れを授け、功有る者には俸禄を以て賞し、之れを愛し置くものぞ」と、功があれば、禄を与えて評価すべきと説いている。地位と権限を与えるにふさわしいのは徳のある人だという。ここで徳のある人とは、自分の利益や部分の利益を考えるのはではく、国全体の利益を考えて行動する人のことだと理解する。つまり、今風に言えば、能あるものにはチャンスを、功あるものには収入を、徳あるものには地位を与えよということだ。
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出典:http://www.1-em.net/sampo/gennsisiroku/saigoB/index.htm

まとめ
今回も盛り沢山だった。最後には日本型経営はグローバル経営に通じるか、通じるようにするにはどうすれば良いかなどをグループ討議した。これはこれでいろいろな意見が出て興味深かったが、ここでは割愛する。あと、2回か。もっと聞きたいと思う。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ビジネスデータ分析(ベーシック)#5を受講して

はじめに
実は、昨日は21時にベッドに入って目が覚めたのが6時だったので、9時間も寝ていたことになる。途中目が覚めることもあったが、睡眠時間は十分だ。ということで、今日の授業で習ったことを忘れないうちにブログにまとめることで頭の整理をしたいと思った。

直接効果と間接効果
無糖でコーヒを飲む人は肥満になるかといえば、これは無関係である。しかし、コーヒーを飲む人のうち一定に比率で砂糖をいれる。そして、砂糖の摂取量と肥満とは直接的な関係がある。したがって、コーヒーを飲む人と肥満との関係も間接的ではあるが、一定の関係にはあると言える
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 出典:媒介分析について

パス回帰
ある事象と別の事象の関係をパスと呼ばれる矢印とパス係数と呼ばれる数字で表したものをパス図という。このような関係を分析するのがパス回帰分析だ。例えば、下の図であれば、重症度と因果関係のあるのはTCが1.239、TGが-0.549なので、TGよりTCの方がより強い因果関係があり、TGとTCの間にも0.753という強い相関関係があることを示す。
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 出典:統計学入門−第7章

AMOS(エイモス)
統計解析ソフトとしては、IBM社のSPSSソフトウェアが有名だ。SPSSは、統計解析ソフトウェアのSPSS Statistics、共分散構造分析ソフトウェアのSPSS Amos、データマイニングソフトウェアのSPSS Modelerから構成されている。特に、2つ目のAmosはパス解析の分析ソフトであり、パス図を描きながら共分散構造を解析できる点が優れている。
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 出典:Amosによるパス解析の実行

政府CIO
会社にはCIOが任命されることが増えている。CIOとはChief Information Officerの略で、企業の情報戦略における最高責任者だ。日本では、政府CIOが任命されている。初代の政府CIOは非常勤だったが、2013年からは内閣情報通信政策監が常勤かつ専任として設置された。政府CIOのポータルは、意外とデータが充実していた。新型コロナに関するデータもなかなか公開されていないと憤慨していたが、ここにはいろいろなデータが開示されている。知らないことは罪だ。
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 出典:https://cio.go.jp

Googleの詳細検索
何かをネットで検索して調べることをググるという。しかし、Googleで例えば、検索と入力して検索すると、下の図のような画面が表示される。個人的には、ここで画像を選ぶことが多い。画像を見れば、そのファイルが訴求したいことがビジュアルに理解できるからだ。それ以外にも「設定」キーを押下して、選択オプションを押下すると、キーワードに含めるもの、含めないものの設定や、ファイル形式の指定などもできる。これは便利だ。
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 出典:Google

ダミー変数の活用
重回帰分析は、基本的に量的なデータを分析する手法だ。しかし、そこに質的データが含まれている時にはダミー変数を活用する方法がある。例えば、男性と女性であれば、男性を1、女性を0とする男性ダミー変数を設定する。銘柄Aと銘柄Bを区別して分析したいときには銘柄Aなら1、銘柄Bなら0という銘柄Aダミー変数を設定する。そして、このダミー変数を含めて回帰分析することで、例えば男性の場合の切片と傾き、女性の場合の切片と傾きを分析することが可能だ。
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 出典:https://xica.net/magellan/marketing-idea/stats/abou-dummy-variable/

交互作用
肥料と収穫との間には正の相関関係が確認できる。しかし、その特製は土壌Aの場合と土壌Bの場合で異なる可能性がある。しかも、単に傾きが違うだけではなく、伸び率が異なるケースもある。つまり、これは、肥料と土壌の組み合わせで相乗効果が生じていることになる。このような交互作用による効果のことを「交互作用効果」と言う。
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出典:30-4. 交互作用とは | 統計学の時間 | 統計WEB

二元配置分散分析
接着剤の接着強度を測定した。接着剤の量によっても変わるし、A社の製品かB社の製品かによっても異なる。しかし、これを繰り返しのない二元配置の分散分析で処理すると、接着剤の強度と接着剤の量との関係のP値は0.007と有意であるが、A社とB社の間には差異はあるが、P値が0.136なので、有意であるともいえない状況ということが明確になる。これはすごい。
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 出典:https://kenkou888.com/category13/対応無し_二元配置の分散分析.html

多元配置分析
2元配置分散分析だけでも十分にお腹いっぱいなのだが、2元ができるなら3元もあるか?4元もあるか?と疑問が生じる。一般に、因子の数が3位上の実験計画法を総称して多元配置法と言い、その分析を多元配置分析と呼ぶ。ただ、例えば6因子の事象で、各因子が3つの選択肢(3水準という)をとると、三の6乗、つまり729となる。取り得る組み合わせの数が指数的に増大するため、試験の組み合わせが増えるだけではなく、その分析も複雑になるので注意が必要だ。
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 出典:(株)日科技研:多元配置分散分析とは(実験計画法)|製品案内

シナジーとアナジー
A社とB社の合併は1+1=2ではない。1タス1を3にするのだといったりする。これをシナジー効果という。A社とB社の良いところを作用しあって相乗的に高い効果を上げることをいう。世の中そう簡単ではない。シナジー効果をあげられない出毛でなく、1+1が1.5にしかならないこともある。これをアナジー効果(Anergy Effect)という。これは例えば企業合併で言えば、事業領域が違いすぎたり、経営者の思想が違いすぎたり、情報システムが違いすぎると、合併のための費用が嵩むわりに効果が発揮できなかったりする。M&Aを考える時には、肝に銘じるべきだ。

木構造接近法
ビジネスデータ分析(ベーシック)の枠を超えるが、複数の要因の構造的な関係を調べる方法として、樹木構造接近法がある。さらに、下の論文にあるように複数の分類回帰樹木法(CART)
を調和を図り、複数の樹木の接近を図ることで予測ごさを減らす工夫がなされている。バギング法や、ブースティング法、ランダムフォレスト法などだ。特に、最後のランダムフォレスト法は興味深い。
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 出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscssymo/22/0/22_29/_pdf/-char/ja

まとめ
早くもビジネスデータ分析(ベーシック)の5回目が終了した。残りはあと2回だ。後半の豊田先生の授業はほぼ受講しているので、豊田先生の講義を受けられるのも残りわずかと思うと寂しいなあ。聴講生として受講できないかなあとも思う。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

マクロ経済と人材経営を受講して

はじめに
2020年度春期前半は月曜日と水曜日と土曜日の合計3つの講義と修論だったが、春期後半は月曜日と火曜日の合計2つの講義と修論にした。本当は金曜日の講義も受講したかったけど、社会人学生としてあまり無理しても続かないと考えた結果だ。月曜日の講義は昨日ブログにアップしたビジネスデータ分析だ。そして火曜日の講義が表題だ。これが超面白い。内容が深いし、広いし、データが豊富で分かりやすい。せっかくなので今日の講義で面白いと思ったキーワードを中心に振り返ってみる。なお、このブログは講義メモではない。受講して感じたことやネットで調べたことをまとめたものだ。なので記載に問題があればその責は自分にあり、面白ければ先生のおかげだ。

山田久教授
講義は日本総研副理事長である山田久教授によるオンライン授業だ。スライドにそって説明するのに加えて、途中でグループディスカッションがある。時々、先生からクイズというか質問があり、誰か答えれる人いる?と聞かれる。いつも、回答しようかどうしようかと悩む。ZOOMによる授業で画面表示をするかどうかは生徒に委ねられているが、発言する生徒は画面オンにするが、発言しない人は画面オフが多い。本当は全員画面オンが望ましいが、女性の生徒もいるし、画面をオンにしたくない人もいる。面白いと思うのは、ブレイクアウトルームではほぼ全員が画面オンで討議するので、メインルームに戻ってしばらくは画面オンの生徒が多いけど、徐々に画面オフが多くなる。このあたりの現場感覚は面白い。
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 出典:https://www.jri.co.jp/report/medium/yamada/

働き方の未来
今日の講義は、働き方の未来だ。雇用システムとして日本はメンバーシップ型の人基準だが、欧米はジョブ型の仕事基準が多い。また、日本は企業内部の人材でやりくりする内部労働市場だが、欧米では転職などの流動性が高いために外部労働市場に基づいている。このように日本型企業と欧米型企業の雇用システムの違いを学んだ。山田教授の論文を調べてみると、日本企業では雇用保障が強く、賃金レベルが高い正社員と、雇用保証が弱く賃金レベルも低い非正規社員、その中間の限定社員で構成されているが、今後は、雇用保証が弱いけど賃金レベルが高いプロフェッショナル型の正社員が必要と説いていた。これはその通りだと思う。このプロフェッショナル型はどのようにしてスキルを高め、高めたスキルをどのように活用するのか。これが自分の修論のテーマにも結びつくような気がする。なお、現在の定年後再雇用は雇用保証は強いが、賃金レベルが低い左下のゾーンかもしれない。
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 出典:https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/viewpoint/pdf/10303.pdf

ジョブ型とメンバーシップ型
日本型のメンバーシップ型と欧米のジョブ型はどのように違うのか。下の図の著者の筒井冨美さんはフリーランスの医師だ。そのため、ドクターXの制作支援などもしている。多分、ジョブ型賛成派だ。古いしがらみをバッサリと断ち切るドクターXはかっこいい。下の表にもあるように、メンバーシップ型は典型的な日本型経営のスタイルである年功序列、終身雇用、ピラミッド型で閉鎖的かもしれない。一方のジョブ型はフラットで雇用の流動制が高く、実力主義がベースだ。
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 出典:https://at-jinji.jp/blog/14147/

解雇権濫用法理(日本)
日本的なメンバーシップ型の前提となる終身雇用は、実は戦後の好景気の時代に企業が優秀な社員を囲い込むためにできた制度である。また、企業の社員は家族であり、不景気の時にも解雇はしない。その代わりに忙しくなっても皆で残業して乗り切ろう。そんな思いもあったようだ。日本企業では、法律面で解雇は非常に難しい。これは国民感情にも沿うものだ。労働契約法第 16 条では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上 相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすると定めている。さらに整理解雇する場合にも4要素を満たしていないと裁判では勝てないという。
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 出典;http://labor.tank.jp/r/08/zukai08/08-04.PDF

随意的雇用原則(米国)
日本と違って米国での雇用は基本的に随意雇用だ。英語では、at-will employmentなどと言う。つまり、採用時にはジョブスクリプションを明確にして、採用される。そして、そこで定義した仕事がなくなれば、必然的に解雇となることを当然と言う合意がある。これを随意的雇用原則(employment-at-will doctrine)と言うようだ。新聞やニュースでも良くレイオフと言う言葉を聞くがそれはこの随意的雇用原則に基づくものだ。米国では労働者の70%以上が随意雇用で働くようだ。
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 出典:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000138377.pdf

解雇制限法(ドイツ)
ドイツは労働時間が短い。労働時間に対する強い規制がかかっている。1990年代前半にドイツにビジネスで出張したときに、金曜日の午後に打ち合わせのアポを入れたいと申し入れたら、「あり得ない」と返事がきた。なぜかと聞くと金曜日の午後は休みだと言う。実際現地に行くと、打ち合わせ相手のIT担当のみで他の人は誰ひとり出社していなかった。また、以前読んだ「5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人」にも書かれていたが、部下の勤務時間が1日に10時間を超えると上司は必死に帰るように命じる。なぜかと言えば、監督局に見つかると罰金を支払う。それも会社の金ではなく、上司のポケットマネーで支払う。最高では1.5万ユーロと言うから大変だ。上司も必死だが、それ以上に部下もそんな長時間勤務は嫌なのでさっさと帰る。日本人も見習いたいものだ。
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 出典:http://www.newsdigest.de/newsde/column/dokudan/6983-1003/

職能資格制度
終身雇用や年功序列型の制度を採用している日本企業では、高い成果を出す若手よりも、勤続年数の長い社員の方が優遇される傾向があり、それはおかしいと言うことで、職能資格制度が採用された。これは単にポストだけではなく、それに習熟度に応じた級数を重ねる方法だ。また、より客観的な評価を行うために目標管理制度(MBO)を採用する企業も増えた。これはピータ・F・ドラッカーが提唱したものだ。人は自分で課題と認識したことを解決するためには自律的に頑張ると言う心理を巧みに活用したものだ。しかし、人材マネジメントは、採用、育成、評価、配置といった一連の流れで考えるべきだが、このMBOは評価のみに焦点を当てた施策であることと、日本企業の場合にはその評価に異議があっても、退職したりしないため、逆にモチベーションを低下させたり、実現可能な目標しか提案しなくなると言った弊害が指摘されるようになった。自分自身管理者をしている時期にもっとも嫌な業務がこのMBOに基づく評価結果をフィードバックすることだった。全員にAやSを付けられれば問題はないが、人によってはBやBー、Cをつけることも必要だ。そのためのネタを記録しておいて、相手が納得しなければそれを持ち出す準備までしないといけないためだ。
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 出典:https://www.fuzoku-hosp.tokai.ac.jp/nurse/education/functional/

ハーズバーグの衛生理論
米国の臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ(1923年4月-2000年1月)が提唱した衛生理論とは、人間が仕事に満足を感じる要因と不満足を感じる要因は全く別物であるとする考え方だ。つまり、仕事を頑張ろうと考える動機づけ要因は、達成や承認や責任などの仕事に関する理念だ。一方、労働条件や給与や人間関係などは衛生要因だ。特に注意すべきは報酬だ。理念に共感して頑張ろうとしている社員に対して、成功すれば報酬を与えると予告するとパフォーマンスが低下することだ。予告せず頑張ったねと労を労うのは良いが人参ぶら下げて効果が出るのは他律的な苦しい労働だ。自律的で創造的な仕事では逆にマイナスの効果が出る。運用には注意が必要だ。
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 出典:ハーズバーグの動機づけ・衛生理論 |モチラボ

日経連の設計図
1995年12月に日経連(現、日本経団連)は「新・日本的経営システム等研究プロジェクト」をまとめて報告している。この中で、「長期蓄積能力活用型グループ」と「高度専門能力活用型グループ」と「雇用柔軟型グループ」の3つを定義した。そして、これが雇用柔軟型グループをオーソライズし、コスト削減が待ったなしだった企業に対して、契約社員や委託社員の利用を一気に広げる契機となった。高度専門能力活用型グループは、期待したほどの広がりはなかった。高度なスキルをいかに高めるか、そして活用するかは現在に続く課題と言える。
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 出典:http://hurec.bz/mt/archives/2006/08/002_199505.html

まとめ
記載した他にも、「成果主義の必要性と弊害」や「職能給と役割給」、「失業者と非労働人口」、「人材のミスマッチ」など多くのキーワードについての講義があった。また、グループワークで討議や発表も実施した。もっと付記したいけど、明日も早いので今日はこれぐらいにしておきたい。次回は多分テレワーク、その次は副業について講義を聞けるようだ。非常に楽しみだ。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ビジネスデータ分析(ベーシック)を受講して

はじめに
ビジネスデータを分析する時に特に効果があるのは重回帰分析だ。豊田先生も今日の授業は特に大事だと力説されていたが、その通りだと思う。

統計分析手法の概要
これまでの授業ではt検定の説明が多かった。これはある集団と別の手段の平均値に有意差があるかどうかを検証する方法だ。分散に有意差があるかどうかはF検定などを用いる。今日からは、複数の変数と変数の間の関係性を分析する手法だ。代表的なものは相関分析だが、これは基本1対1だ。そうではなく、複数の原因変数とある結果変数の間の関係性を分析するのが重回帰分析などだ。これは便利。
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 出典:https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=61928?site=nli

回帰分析
ある原因系の変数xと結果系の変数yの関係を調べる基本的な方法は散布図を描いてみることだ。それに直線を当てはめるのか、指数関数のような曲線を当てはめるのかは変数の特性によるだろう。ただ、簡単なのはやはり直線に当てはめる方法だ。本来指数関数を当てはめるべき場合にも対数に変換すれば直線となるかもしれない。
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 出典:https://bellcurve.jp/statistics/course/9700.html

重回帰分析
原因系変数が一つなら単回帰分析だし、複数なら重回帰分析だ。そして、重回帰分析の目的はやはりモデル化だと思う。例えば、ある店舗の売り上げは、広告ひと売り場面積と従業員数で求まるとすれば、それぞれの変数の最適値を求めたり、最適な組み合わせを計算することも可能だ。目標とする売り上げを実現するためには、どの程度の広告費を打つのが良いのか、売り場面積を確保するのが良いのか、どの程度の従業員を確保すべきか。そういった戦略的な分析にある程度もっともらしい答えを示してくれるからだ。
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 出典:https://www.intage.co.jp/glossary/402/

マルチコ
多変量解析をする時に注意すべきはマルチコだ。マルチコとは、multi-collinearityの略だ。原因系の変数がそれぞれ独立であれば、重回帰分析はシンプルだ。先の広告費と売り場面積と従業員数はほぼ独立変数だろう。ほぼとしたのは、売り場面積が広いとやはりそれなりの従業員も必要となる。また、下の図のように価格と値引き率は微妙だし、定価と販売価格とか、売場面積と家賃などは直接的な関係がある。このような変数間の関係性が強いと、重回帰分析は複雑になる。つまり、重回帰分析はそれぞれの変数は独立という前提なので、独立でないとその影響が発生してしまうためだ。数学的に言えば、偏微分で議論しているのであって、微分ではないということだ。
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 出典:https://watlab-blog.com/2019/12/09/multiple-regression/

直接効果と間接効果
例えばゲームの勝ち数は体重と食事量と稽古量で決まると考えて計算すると下の図のようになる。体重と勝ち数の0.26や稽古量と勝ち数の040は直接効果だ。しかし、一方で、食事量と体重との間にも強い相関関係がある。体重と稽古量にも相関関係がある。これを間接効果という。重回帰分析では、残念ながら直接効果しかわからない。間接効果を調べるのであれば単回帰分析で確認する必要がある。
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 出典:https://istat.co.jp/ta_commentary/covariance_structure_02

A/B分析
講義の中でサラッと触れられていた。なんとなく気になったので調べると、A/B分析とはWebサイトやバナー広告などを最適化するためのテスト手法だった。これはある特定の要素の組み合わせとしてAパターンとBパターンを作成し、ランダムに適用することでその効果を比較検証する方法だ。これは複数のパターンを組み合わせる多変量テストにも適用される。
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 出典:https://www.innovation.co.jp/urumo/split_testing/

Rによる分析
例えば、体重と慎重とウェストにはそれぞれ正の相関関係がありそうだ。それぞれをエクセルで散布図で描いたり、重回帰分析する方法もあるが、Rを使えば下のような複数のデータの散布図の一括表示などが簡単にできる。やはりRは便利だ。
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 出典:データ解析・マイニングとR言語

実験計画法
講義の中で実験計画法という言葉が軽く触れられた。誰も深く突っ込まなかったが、これは数学的にエレガントなだけではなく、実際に試験を繰り返す時にも最小限で効率的に実施することができる秀逸な方法だ。試験をする時には、因子と水準を明確にする。例えば、性別なら通常は2水準だ。じゃんけんなら3水準だ。試験の組み合わせを直交表を用いて組み合わせの最適化をするが、そのパターンには下の図に示すようにいくつかの系がある。個人的にはL9が凄いと思う。どこが凄いかと言えば、3水準系の因子が4つある場合、総当たりなら81通りの組み合わせを試験する必要があるが、それがたったの9回で済む。品質工学では2水準系のときはL12を、3水準系のときはL12もしくはL36を使うことが多いようだ。
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 出典:http://www.ark-web.jp/sandbox/wiki/254.html

交絡因子
原因系の変数と結果系の変数の関係を調べたいが、そこに交じり絡む因子がある。それを交絡因子という。例えば、下の図で言えば飲酒が交絡因子だ。なぜ、交絡因子かと言えば、飲酒と肺癌の関係があるかと言うと直感的にはないと思うが、統計処理をすると見かけ上の関連が生じる。なぜかと言えば、お酒を飲む人はタバコを吸う人が多い。タバコを吸う人は肺癌になりやすい。したがって、お酒を飲む人は肺癌になりやすい。このような交絡因子は色々な局面で発生する。これを見抜くことができるかどうかはデータサイエンティストのセンスにかかっていると言える。
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 出典:http://www.jeic-emf.jp/explanation/1029.html

新谷歩(しんたにあゆみ)
豊田先生が統計の理解を深めるなら新谷歩さんの図書やYouTubeがお勧めという。調べると、奈良女の数学科を卒業後、米国Yale大学等で医療統計学を学んだ統計の専門家だった。説明も明瞭だ。例えば、ある新薬に効果があったことを証明する場合にどのような仮説を立てるか。もし、効果があるという仮説を証明しようとするとあらゆるケースの臨床データが必要だ。しかし、効果がないという仮説であれば、1つでも実証できれば証明できる。なので、何かを証明したい時には、それの逆の仮説を設定する。つまり、これが帰無仮説だ。そして、それをp値が小さい場合は帰無仮説を棄却できるので、対立仮説を支持できることになる。しかし、p値が例えば5%より大きくても、それは帰無仮説を証明したことではなく、帰無仮説を棄却できないというのが正確な表現だという。確かにわかりやすい。
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 出典:https://www.youtube.com/watch?v=8Pt2tCN_eFE

まとめ
2020年度の授業の講義をブログにすることが少なかった。これはなぜかと言えば、オンライン講義が終わるとすぐにリラックスして、ビールでも飲んでしまうからだ。通学していた頃であれば、大学から最寄駅まで歩く間になんとなく頭の整理をして、電車に乗っている間にブログを7割がた作り、そのあと少し頑張って完成させるパターンだった。通勤や通学がなくなり、楽になったのだからブログにもっと時間を避けそうなものだけど、現実は違う。これはなぜなのだろう。急ぎの仕事は忙しい人に頼むのが良いというのに似ているかもしれない。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

副業を修論のテーマにすると決めた

はじめに
修論はいろいろ悩んだが副業関連にすることにした。修論の中間発表が8月2日なのでギリギリのタイミングだろう。テレワークと掛けたり、社内副業にしたり、パラレルワーカーの観点で見たり、居場所と生活の満足度などの観点から分析することも可能だろう。また、まだ思いつきレベルだが、海外と日本を比較したり、日系企業外資系企業を比較したり、老舗企業と新興企業を比較してみると面白いことが見つかるかもしれないと期待している。

働くことの意義
そもそも人は何のために働くのだろう。フランスのヴォルテール(Voltaire)ことフランスの哲学者フランソワ=マリー・アルエ(1694年11月-1778年5月)は労働は三悪から救うと説く。三悪とは、退屈、悪徳、困窮だ。日本人の感覚では、勤勉に働くことは自分のスキルを高め、さらに良い仕事をするために仕事道か。
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 出典:https://meigen-ijin.com/voltaire/

副業のおすすめ
ネットで調べるとお勧めの副業10選が目に留まった。最近では、何がトレンドなのだろう。Uber Eatなどの宅食なども稼げるのだろうか。スマホやPCがあればどこでも隙間時間で稼げるようなものもあるのかもしれない。
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 出典:https://fukupon.jp/a/16011318

副業の目的
そもそも副業の目的はなんだろう。下のグラフをみると、バスタブ型の曲線になっている。これは何を意味するのか。本業の年収が低いほど副業をする人が増えている。これはつまり、本業だけでは不足するので、収入増目的の副業と言える。逆に、本業の年収が900万円から1000万円以上となるとまた副業をする人が増えている。これは収入増を目的とすると言うよりは、自分が持つスキルや能力を活用して誰かの役に立ちたいとか、自己実現を果たしたいと言う目的のように見える。
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 出典:https://lifeplan.gomez.co.jp/lifeplan/0814.html

収入増目的の副業
パーソル総合研究所が行った「副業の実態・意識調査」によると、副業をしている人の平均月収は6.82万円だった。また、時給では1,652円なので、時間数で言えば、41時間だ。副業に月41時間も費やして大丈夫なのだろうか。収入増目的ということは、本業の時給はこれと同等か、これ以下ということなのか。疑問が深まる。
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 出典:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1903/06/news021.html

副業実施理由
副業を実施している人に対して、なぜ副業をしているのを質問した結果をみると、年収とのプラスの相関関係のある要因とマイナスの相関関係のある要因に分かれた。スキルアップや頼まれ副業、自己実現目的の要因は前者だ。収入補填目的は後者だ。これ以外にもいくつかの要因が想定されたが相関係数が小さかったようだ。例えば、独立したいから、転職したいから。社会課題の解決に取り組みたいから、残業代が減ったから、時間のゆとりがあるから、ローンなど借金や負債を抱えているからなどは想定したほどの関係は確認できなかったようだ。
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 出典:https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/files/sidejob.pdf

副業している理由のトップ3
ワーディングとして、副業はサブの仕事、複業は複数の仕事=パラレルワークということのようだ。パラレルワークを実施している人の理由でもっとも多いのは、収入を増やすこと、好きなことをしていたい、得意なスキルを活かすというものだ。
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 出典:https://dime.jp/genre/728694/

実施したい副業
どのような仕事で稼いでいるのだろう。So-netによる20代~50代の2,500名を対象にしたパラレルワークに関する実態調査では、現在やっている複業のトップはライター・作家だった。2位が投資、3位がWeb制作だ。また、年収が800万円以上の人では、Web制作が50%、システムエンジニアが40%とネットを活用した副業で稼いでいる結果となった。これからの有望な複業は、デザイナー、イラストレーター、コンサルティングなどの専門性の高い職業だ。自らのスキルを高めて、活用する人たちは今後増える可能性が高いのではないだろうか。
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 出典:https://dime.jp/genre/728694/2/

起業の活発さの国際比較
各国の起業活動の活発さを示す指標がTEAだ。これは、総合起業活動指数(Total Early-Soage Enorepreneurial Acoivioy)の略だ。GEM(グローバル・アントルプレナーシップ・モニター:Global Enorepreneurship Monioor)が2018年に日本を含む49か国で交際比較する調査を実施した。この結果によると、日本のTEAは2018年で 5.3 だ。これは2017年度の4.7 から0.6増加した。しかし、他国と比べると低い方のグループに属している。
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 出典:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000149.pdf

高齢者の起業率の増加
日本の話でないのが残念だが、アメリカでは2050年までに高齢者が8400人に達し、高齢者のベンチャーの成功例はなんと70%という。若い起業家の成功率が28%なので、2.5倍も高い成長率だ。日本では、そもそも起業する人が少ないが、ある程度の期間勤務し、経験も積み、貯金もためて、年金ももらえる年齢になったら、堅実な事業を起業することはお勧めかもしれない。
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 出典:https://www.mag2.com/p/news/342605

今後の取り組み
・Questantによる簡易アンケート調査
 まずはアンケートの素案は作成した。まだまだ改善の余地はあるが、まずは100名程でトライして傾向を把握したいと思う。
・企業のヒアリングリストの作成と回答依頼
 ターゲットとなる企業群をリストアップして、各社の人事部門に協力の依頼と、WEBによる簡単なアンケートの回答を依頼する。また、詳細の話を聞かせてもらえるかも質問項目に入れておき、OKを貰えた会社には適時ヒアリングに向かいたい。
・ある程度仮説が整ったら、9月を目途に500名程度のアンケートを実施して、仮説の検証にトライする。
・その結果を受けて、さらにヒアリングの会社を増やして、事例調査を深める。
・11月を目途にこれまでの調査の骨子と、成果をまとめ、修論のプレゼンおよび論文の作成の準備に進む。

まとめ
なんとかギリギリ修論の作業のマイルストーンは立ててみた。働きかた改革の一環として、副業についての実態調査を進めることは会社員としても興味深い。日本における中高年齢層の起業のメリットや留意事項にも言及できるといいし、副業がそのような起業に向けての布石になると嬉しい。米国では高齢者による起業の成功率が若者の起業の成功率よりも2.5倍ほど高い。日本でも元気な高齢者が起業し、社会を活性化し、日本を元気にするとしたら、こんな素晴らしいことはない。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ザ・セカンド・マシン・エイジを読んで感じたこと

はじめに
題名がカタカナで何が言いたのかよく分からなかったけど、読んでみると名著だと思った。著者はマサチューセッツ工科大学(MIT)教授のエリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson)だ。1962年にデンマークで生まれ、ハーバード大学を卒業した。現在はMITの准教授だ。スタンフォード大学の客員准教授や、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の上級特別研究員も務めている。この図書を読んで感じたことを書いておきたい。決してこの図書のサマリーではない。
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 出典:https://www.dhbr.net/articles/-/6211

GDPは幸福の指標ではない
2018年度の国民総生産(GDP)はIMPの発表によると米国、中国についで世界3位だ。国民一人当たりのGDPも、1958年から2010年にかけて約8倍に増大した。しかし、国民が感じる生活満足度はほとんど変化がない。これは幸福のパラドクスと呼ばれ、一定以上に所得が増加すると、絶対的な収入ではなく、周りの人との相対的な所得差で幸せを感じるようだ。これが相対所得仮説や順応仮説と呼ばれている。
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 出典:https://www.eventglobe.net/delusion-gdp/

多次元貧困指数(MPI)
豊さの逆は貧困だ。貧困は所得額に強く影響を受けるが、それ以外にも教育、健康、生活水準などにも依存する。このため、これらを総合的に評価し、環境を改善しようと導入された指標が多次元貧困指数(Multidimensional Poverty Index: MPI)だ。持続可能な開発目標(SDGs)1の課題でもある。
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 出典:https://slofia.com/others/what-is-mpi-multidimensional-poverty-index.html

米国ではビリオネア
日本では億万長者といえば大金持ちのイメージだ。ビットコインの急増に伴って億り人と呼ばれるニューリッチが急増した。しかし、アメリカではミリオネではなく、ビリオネアが大金持ちだ。10億ドル以上の資産を保有するのは、世界に2153人いるようだ。桁が違う。フォーブスで2020年の長者番付が発表されたが、1位はアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスで、1130億ドルだ。凄すぎ。
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 出典:https://dime.jp/genre/554717/

ヒューマロイドロボットの時給は4ドル
この書籍の意図するところは、第一のマシンは牛や馬を駆逐する動力源だった。そして、第二のマシンは人間の仕事を代替する知的マシンやロボットだ。人間と牛・馬は違う。人間は意思を持つし、投票権を持つし、判断もできる。だから牛や馬のようにはならないという希望的な観測がある一方で、ヒューマノイドロボットのコストがどんどん低下している。現在は四ドル程度というが、これが二ドルになり、一ドルになり、50セントになるのは時間の問題だ。コロナ禍の心配もある。ロボットにできることはロボットにさせるべきだという風潮になると、一気に人間の仕事はなくなるだろう。

売店が大規模店舗に太刀打ちする方法
大規模のスーパーが小売値を駆逐し、全国規模のチェーン店が小規模飲食店を駆逐する。そんな構造が続いているが、著者は「透明性が増すことによって、独立系の小さなレストランが大規模チェーン店に太刀打ちできるようになった。」という。つまり、目立たない裏通りにあるお店でも、味がよくて、サービスがよくて、値段も手頃で、居心地が良ければ繁盛する。大事なことは、共有経済だといいう。つまり、SNSでの口コミだ。
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 出典:https://www.travelvoice.jp/20190507-129801

計測されない無形資本財
著者は、シェアリングサービスや無料のサービスが大きな比率になると同時に、無形資産が重要になるととく。具体的には、知的財産、組織資本、ユーザ生成コンテンツ、人的資本の4つだ。下の図はすこし角度が異なるが、同じように無形資産の存在がより重要になるという点では同じだ。
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 出典:https://note.com/delpie6/n/n9b7755c1dc11

正規分布と指数分布
かつて男性の年収は正規分布だった。働き盛りで年収がピークになった。一方、女性の年収は指数分布だった。年収ゼロが最も多く、年収が高い人ほど少ない。実はスポーツや芸能などスキルベースの職業も指数分布だ。今後、セカンドマシンが普及すると、定形的な作業はどんどん自由化され、高収入を得るのは一部の高いスキルや資本家となるだろう。平均値よりも中央値が低い。大多数の低所得層と一部の高所得層に分かれるのではないだろうか。
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 出典:https://slidesplayer.net/slide/11526474/

モラベックのパラドックス
職人はマイクロメータ単位の精度を触感で感じることができる。これは生命が長い時間をかけて生き残るために得たセンサー技術だ。人類も数百万年の年月をかけて進化し、何十億ものニューロンを身につけてきた。一方、論理的な演算や思考はせいぜいここ数千年の歴史しかない。コンピュータは、世界トップクラスのチェスプレーヤや将棋の棋士に打ち勝つことは可能かもしれないが、1歳児の知覚や運動を実現することは難しい。赤ちゃんをあやすなんてことは大の苦手だ。こんな矛盾を1980年代にハンス・モラベックは、「高度な推論よりも感覚運動スキルの方が多くの計算資源を要する」というパラドックスを発表した。まあ、その通りだろう。

学歴と寿命
米国でも全体の平均寿命は伸びているが、高校を出ていない白人女性の平均寿命を調査すると、1990ねんから2008年にかけて78.5歳から73.5歳に低下している。同様に高校を出ていない白人男性も3年ほど低下している。貧困層潜在的な問題が顕在化していると言える。下のグラフは10万人あたりの死亡者数だ。黒人やヒスパニック系の死亡率が下がっているのに、高卒以下の白人の死亡率が増えているのが特徴的だ。
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 出典:米白人成人の死亡率、幅広い年齢層で上昇=研究 - WSJ

ジェボンズパラドックス
会社にパソコンが整備され、ペーパレスの業務にシフトすれば、紙の消費量は減少すると思ったら、増えた。節水機能を持つシャワーノズルの付け替えたら、水道代が減るかと思ったら、安心して利用するようにになり、逆に水道代が増えた。こんな風に、技術の進歩で資源の利用効率が向上すると、資源の消費量が減るはずだけど、実際は増加するという傾向があり、これをジェボンズパラドックス(Jevons paradox)という。

弱い人間と強いプロセスの組み合わせは最強
最近のゲーム機の性能はすごい。将棋だけではなく、囲碁でもアマ4段ぐらいの実力にあるようだ。アメリカではチェスだ。さすがにチェスではAIには勝てないが、フリースタイルだと面白い結果だ。最強のコンピュータよりも、弱い人間と普通のマシンと強いプロセスの組み合わせが最強だったという。これはどういうことだろう。人間の直感や思いつきをマシンでチェックして、最強の一手を打つことができれば最強ということか。これは、AIやロボットが仕事を代替するのではなく、人間とのパートナーとしてAIやロボットが得意なところを担当し、不得意なところは人間が補完するような組み合わせが最強ということになる。面白い。

ベーシックインカム
著者はベーシックインカムに賛成していない。理由は労働の意義だ。有名なのはヴォルテールの名言から、「労働は人間を人生の三悪、すなわち退屈、悪徳、困窮から救ってくれる。」を引用する。人は報酬のためだけに働くものではない。ベーシックインカムが実現すると、人は働かなくなるという主張だ。でも、これは違うと思う。指摘されているように人は、報酬のためだけに働くのではない。したがって、ベーシックインカムが支給されたとしても三悪を避けるために働く。もっと言えば、報酬のためにやりたくもない仕事はしなくても良い。もっと、自分がやりたいと思っていた仕事、面白いと感じる仕事を選択することが可能だ。

やる気の3要素
ダニエルピンクは、モチベーション3.0において、「やる気を起こさせる3つの要素として、熟練、自主自立、目的をあげた。」と引用している。これは言い換えれば、やれること 、やりたいこと、やるべきことの3つが重なる仕事にはワクワク感を感じながら夢中ですることができるということかもしれない。
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 出典:アマゾン

テクノロジーが引き起こす予想外の重大な副作用
著者は、最後にテクノロジーのマイナスの側面として、次の3つを上げている。今回のコロナ禍は2)に該当するだろう。テクノロジーのメリットとデメリットを見極めて、マイナス面に対する対応を整備していくことが人類に求められていることだと思う。
1) 大規模災害
2) 人類の存続を脅かす物体
3) 自由の抑制

まとめ
今回の図書はなかなか読み応えもあったけど、得ることも多かったし、考えさせられる点も多かった。ダニエルピンクの図書も面白そう。ステーホームで小遣いは減らないけど、アマゾンに支払う金額はどんどん増えているような気がする。

以上