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ジャパンハート創設者吉岡秀人医師の魂の講演

はじめに
尊敬する米倉教授がミャンマーで奮闘する吉岡医師と出会い、その活動の素晴らしさに加えて、ビジネスモデルとして継続する仕組みを構築するその秀逸さに感銘を受けられた。今回はそんな吉岡秀人医師による講演だ。
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出典:https://www.japanheart.org

たとえ死んでも心が救われる医療
吉岡医師がミャンマーで奮闘するなかで到達した境地がこれだ。要は患者を大切にすること。小さな命を大切にすること。救える場合もあれば、救えない場合もある。結果は大事だけど、それよりも最善を尽くすことで患者や患者の家族の心が救われるという。

患者さんたちの人生の質を少しでも高めること
吉岡さんが考える医療の定義とは、患者を直すことではない。ミャンマーではホスピタルが2つしかない。医師が圧倒的に少ない。ミャンマーの人口は5371万人(2018年)だが、一人の医師で32万人の患者を相手にする構図だ。特に5歳以下の子供たちの死亡率が高い。その中には手術をしない限り死ぬしかない子供多い。一人で全てを解決することはできない。やるのか、やめるのかを何度も何度も心の中で葛藤した結論は一人でもいいから最善を尽くそうということだった。手術をした結果、その患者や患者の家族の人生が少しでも高められればそれこそが医療だと考えた。
出典:https://www.youtube.com/watch?v=3Vz-9_jt-Sw&feature=emb_logo

盾と鉾
医療は盾。医療は防御。経済は鉾。経済が発展すれば、医療にも投資できる。吉岡医師が目指すのはあくまで盾=医療だ。吉岡医師が尊敬する中村医師は鉾が必要と方針転換された。残念ながら昨年末にアフガニスタン武装集団に殺害されたが、アフガニスタンで奮闘するNGOペシャワール会」の代表だ。
出典:みんなの広場:中村医師遺族の思いに沿って=無職・中野雅俊・79 - 毎日新聞

50%と1%
日本ではGDPのほぼ50%に当たる50兆円を医療や福祉に当てている。一方、ミャンマーGDPは712億米ドルなので、日本の数10分の1のGDPのわずか1%しか医療費に当てていない。圧倒的な格差だ。

頭がおかしい医師
吉岡医師は、医師を目指した時から海外の貧しい人を救いたいという意思があった。その手段として医師を目指した。出発点が全然違う。医大を卒業して、欧米に赴任する医師は多いが、途上国に行く医師はいない。ミャンマーに旅立つ吉岡医師を当時に同僚は頭のおかしい医師として見ていなかった。

延べ5000名の参加者
1995年に吉岡医師はミャンマーでの活動を開始した。2004年に国際医療ボランティア団体ジャパンハートを設立した。2009年には、脳瘤のトゥーチャーアウン君の手術を日本で行う。この頃から海外活動の参加者が増大し、これまでに延べ5000人をこえる。素晴らしい。
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出典:https://www.japanheart.org

血管麻酔は1時間
ミャンマーの電気事情などのインフラは未整備だ。なので、日本で使うような麻酔装置は使えない。せいぜい血管麻酔だ。しかし、1時間しか麻酔は効かないので、必然的に1時間のタイムリミット内で手術を終わらせる必要がある。もし、1時間で終わらない場合には、患者の痛みは絶大だ。もう押さえつけるしかない。

ミャンマーのがん患者は楽に死ねる
ミャンマーでは手術をしないで死ぬがん患者は多い。その子供たちは食事ができなくなったら餓死の状態で死にいく。その時には体内麻薬も分泌されるため、非常に楽に死んでいく。一方、日本の小児癌患者は治療をする。家族が希望すれば最善の治療を行う。子供たちは家族のために生き続ける。しかし、それは不幸な事だが、助かる子供いるので日本人の小児癌患者の運命かもしれない。難しい問題だ。

胃瘻(いろう)
同じようなことが高齢者のがん患者の治療だ。食事ができなくなった患者の胃に直接栄養を供給する方法だ。がん患者は死ぬ権利さえ奪われる。少しでも長生きしてほしいという家族の願いに悪意はない。しかし、延命して苦しむのは患者だ。葬儀屋曰く、昔のがん患者は痩せ細って軽かった。しかし、最近のがん患者は水膨れのように膨れ上がって重いという。どちらが幸せなのか。難しい問題だ。もし、自分がそのような状況になった場合には、個人的には、延命治療はしてほしくないと思っている。

大東亜戦争ミャンマー
今は太平洋戦争と呼ぶが、本来は大東亜戦争。当時のアジアは、タイと日本を除き欧米列国の植民地にされていた。ビルマ(現在のミャンマー)は英国によって植民地化されていた。そんなアジアの植民地を解放することを目的とした戦争が大東亜戦争という。戦わなければ日本は植民地化される。戦っても勝ち目はない。しかし、戦わずして欧米列国に屈するのではなく、死力を尽くして戦えば、日本人はきっと立ち上がるはずだ。そんな思いで必死に我々の祖先はアジア諸国で欧米列国と戦った。しかし、ビルマが独立すると、戦勝国になるために日本軍を敵国に指定した。しかし、ビルマの人々は日本軍人を助けてくれた。それは日本軍人はビルマ人のために戦っていることを知っているからだ。そんな奮闘した日本軍人の多くは現地で亡くなった。下の写真は、昭和22年ビルマで戦った将兵らを建立した「大東亜戦争陣没英霊之碑」だ。
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出典:https://www.sankei.com/life/photos/150814/lif1508140003-p3.html

ミャンマーで亡くなった元日本軍人の願い=日本をよろしく
吉岡医師はそんな英霊之碑を前にして、若くして亡くなった日本軍人の思いに感じた。それは、「日本をよろしく」、そんなメッセージと感じたという。しかし、現代の日本人はそんな想いを受け取っているのだろうか。こんな国にしたかったのか、我々は恥ずかしくない日本にする責任があるのだはないか。

貧しい人にも質の高い医療をしたい
2018年8月には、カンボジアに小児医療センターを設立した。ポルポト政権下では、国民の4分の1に当たる知識層の人々が殺害された。医師や教師が殺害され、医療や教育は崩壊した。その傷跡は今も残っている。そんなカンボジアは手術も受けられない子供が本当に多い。そんな子供たちを助けたいという一念だ。そして、そんな信念に賛同した寄付や善意で実現した。
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出典:https://www.japanheart.org/activity/medical/childrens-hospital.html

日本の医者は経験値が浅い
カンボジアの小児医療センターには日本からも医師が有料で派遣される。お金を払うのは日本の医師であり、それを受け取るのは小児医療センターだ。お金を払ってまでカンボジアに来る意味がどこにあるのかと考える人がいるかもしれない。しかし、それには理由がある。つまり、日本は少子化のために小児科の医者の経験値が圧倒的に少ない。しかし、カンボジアでは経験値を高めることができる。ただし、若い経験の少ない日本医師に手術はさせない。カンボジアで手術をさせるのは経験を持った医師のみだ。しかし、若手医師はそんな手術を何件も何件も見ることができる。体験することができる。これは貴重だ。そして、日本に帰って、経験を積んで、またカンボジアに来る。そんなサイクルができるとしたら素晴らしい。

看護師には、海外から離島経由で帰国するスキーム
医療は医師だけでは成り立たない。看護師の活躍が必須だ。海外で経験を積んだ看護師は、日本に戻る際に、日本の離島の治療に従事することができる。これも離島と看護師と患者の間の絶妙のWIN-WINの関係がある。そんな活動をRIKAjobと呼んでいる。これは、認定NPO法人 ジャパンハートがプロデュースする RITOU(離島・僻地)、IRYO(医療)、KANGOSHI(看護師)の連携で成り立っている。看護師として生きていく人生と離島・僻地地域医療の現場が共に豊かになる仕組みを実現している。
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出典:https://www.japanheart.org/join/event/explanation/200504-ritou-nurse-hataraku.html

日本人の医師は丁寧だけど遅い、視覚が8割
シンガポールなどの国では優秀な医者は手術が早い。手術が遅い医者は無能とみなされる。吉岡医師は、手術が早い。通常は視覚が8割と言われるが、吉岡医師は触覚や収穫を駆使する。頭で考えていることは、現在の手術の手順ではなく、その先の先だ。手は条件反射的に動いている。まさに職人の境地だ。

27時間で1.5億円のクラウドファンディング
コロナ禍で医療従事者が着用すべきマスクが不足した。そんな2020年4月には、ジャパンハートが27時間で1.5億円をクラウドファンディングで資金を集めた。最終的には、500余りの医療機関に100万枚のサージカルマスクと100万枚の一般三層マスクを届けた。ただ、実際は偽造品との戦い。103の業者から信用できる3業者を厳選して依頼した成果だ。
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出典:https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/777814/

所感
吉岡医師やジャパンハートの活動はカンブリア宮殿で視聴した時にショックを受けた。そして、今回、オンラインではあるけど、吉岡医師の話を直接拝聴する機会を得た。考えさせられることが多い。特に、吉岡医師が悟った医療の意義、日本の医師の経験の浅さ、カンボジアでの旧日本軍人の想い、がん治療の是非などは重い課題だ。簡単に答えは出せないかもしれない。しかし、そんな現実に吉岡医師は明確なメッセージを発した。これは強烈だ。有限な時間の貴重さを意識して頑張る人だけが成功する。そんなメッセージは心に残る。貴重なお話を聞く機会を頂き、本当にありがとうございます。吉岡医師と米倉教授、そして関係者の皆様に感謝します。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございます。