LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

経営管理に貢献できるITとは?

はじめに
日本技術士会の認定グループである経営管理チームからの依頼もあり、2時間ほど話をした。タイトルは、経営管理に貢献できるITだ。参加者は多彩だけど、経営工学部門の技術士が多かった。その全てをここで示すことはできないが、特徴的なトピックをまとめておきたい。

アンドロイドの変遷
Androidとは、Googleが開発したモバイルシステムのOSだ。いわゆるオープンソースだ。世界には20億台以上が使われている。そもそもはAndroid社はベンチャー会社として2003年に設立され、それをGoogleが2005年に買収した。最初のAndroid対応機種は2008年10月に発売された。下の図はその後のバージョンアップの歴史だ。Android OSはABC順にバージョンアップしている。2018年はPで始まるPieだ。2019年はQで始まるなんだろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223202624p:plain

5Gの必然性
5Gが必要なのか?と聞かれることがある。必要です。今の3Gとか4Gだと、増大する端末数に対応できない、増大するトラヒックに対応できない、高速化のニーズに対応できない、低遅延の通信ニーズに対応できない、高速移動中の通信に対応できない。これらを解決することは可能なのか。残念ながら、これらの全てを同時に実現することはできない。ではどうするか。5Gではスライシングという概念を導入することで解決した。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223202729p:plain

スライシングの意味
通信ニーズは多様だ。例えば、動画の視聴は楽しいけど、必要以上の速度が必要ではないし、遅延だってそれほどシビアではない。車車間では、低遅延は必須だし、同時接続数の拡大は必要だけど、高速性が必要でもない。それぞれのユーザが求める通信ニーズを見極めて最適な組み合わせとするのがスライシングの特徴であり、目的だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223184659p:plain
 出典:http://cisco-inspire.jp/issues/0023/featuredstory3.html

LPWA
いわゆる携帯電話の通信は広いエリアをカバーするが、そのための消費電力が大きい。下の図で言えば右上のゾーンだ。Wi-FIは左上。Bluetoothは左下。そして、右下がLPWAだ。つまり、消費電力が小さいけど、提供エリアが広いのが特徴だ。エリアがなぜ広いかと言えば、いわゆるプラチナバンドと呼ばれる920MHz帯を使うためだ。なぜ、消費電力が小さいのかと言えば、送信タイミングや受信タイミングを制限し、待ち受け時間を減らすなどの工夫を凝らしたためだ。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223185700p:plain
 出典:IT(情報技術) | 日経 xTECH(クロステック)

Iot〜ビッグデータ〜AI
モバイル端末はかつて10年で10倍のペースで拡大した。しかし、携帯電話やスマートフォンの利用台数は1Gでは10万台、2Gでは100万台、3Gでは1000万台、そして4Gで1億台だ。しかし、携帯電話やスマートフォンの台数が5Gで10億台になるわけではない。増えるのはIoT機器だ。シスコの予測では、2020年のIoT機器は世界で500億台規模になるという。そして、そのように拡大するIoT機器は通信機能を持っているので、当然通信を行う。位置情報もある。センサー情報もある。映像情報もある。マーケット情報もある。そんな多種多様なデータをビッグデータとして蓄積する。しかし、貯めるだけでは意味がない。それらを分析して活用する必要があるが、人手では分析しきれない。その時に期待されるのが、AI分析だ。しかし、AI分析は万能ではない。現時点ではAとBに相関関係があるのかどうかは分析できる。しかし、それは相関関係であって因果関係ではない。医療情報を分析できるが、なぜその結論が導出されたのか説明できない。医療の世界では説明責任があるが、AIではなぜかを説明できない。現時点では医者が最終判断をする必要がある。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223190536p:plain
 出典:http://www.jmode.co.jp/

モデルの複雑さと予測精度のトレードオフ
あるデータを分析する時には、モデル設定は重要だ。例えば、下の図の①は線形モデルに当てはめようとするが、これでは無理がある。②はより複雑なモデルに当てはめようとするが、モデルが複雑すぎて結論が出ない。ちょうど良いのは③のモデルだ。したがって、ビッグデータを分析する時にも、どのようなモデルを設定するかが非常に重要だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223191537p:plain
 出典:Logics of Blue | 統計分析や統計的予測・意思決定理論など

拡大するGAFA
GAFAとは、GoogleAppleFacebookAmazonだ。それぞれの注意点は胸に刺さる。自分はこれらの全てに該当している気がする。Googleであらゆる疑問に対する答えを求めているし、Appleを使うことがかっこいいて思っている。自動運転のApple Carが売りに出されたらすぐに買いたい。Facebookは流石に最近は控えているが、常に自分を晒したいという欲望が起きる。最後にAmazonなしの生活はもう考えられない(苦笑)。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223192026p:plain
 出典:GAFA ガーファ|the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

GAFA v.s. BATH
GAFAに対抗できるのは残念ながら日本企業ではなく、中国企業だ。具体的には、中国の百度(B)、アリババ(A)、テンセント(T)とファーウェイ(H)のBATHだ。3社のBATの時もある。BATHはGAFAにはまだ追いつかないものの、頑張っている。アリババはアマゾンの売り上げには届かないが、利益額ではアマゾンを超えている。しかし、アマゾンは利益を最大化することに執着することはなく、研究開発に投資することを優先している。したがって、将来の成長性を優先するのか、現在の収益性を志向するのかという価値観の問題があることを理解しておく必要がある。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223192528p:plain
 出典:https://www.jmca.jp/column/detail/11991

量子コンピュータの種類と特徴
ムーアの法則の限界をブレークスルーする技術として期待されているのは量子コンピュータだ。この原理の一つである量子アニーリングを提唱したのは、東京工業大学の西森秀稔教授だ。そして、この技術を実用化したのが、量子アニーリング方式であり、カナダのD-Wave社が実用化した。これに対して、IBMGoogleが注力するのが量子ゲート方式だ。量子アニーリングはアナログ的でが、量子ゲートはデジタル的といわれる。一方、この両方式は極低温の環境設定が必要だが、そうではなく常温での運用を目指すのが量子ニューラルネット方式だ。しかし、どの方式が覇権を握るかどうかは今後10年後には明らかになるのだろうと思う。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223193313p:plain
 出典:http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/kakushintekikenkyu/yusikisha_28/siryo1.pdf

ブロックチェーン技術の将来性
2017年はビットコインが過熱した時期だ。3月の頃には7万円ほどだったのに年末には200万円近くまで高騰した。そして、バブルがはじけて現在は43万円ぐらいまで低下している。ビットコインが今後復調するのかどうかは不明というか、可能性は低いだろう。だって、マイニングの処理が電力やコンピュータパワーを浪費しすぎる。また、分散処理だから信用できるというのも信用できない。だって、データが不一致した場合には多数決で決めるので、マジョリティを握れば、嘘も本当になる。こんなシステムを信用できると言えるのだろうか。このビットコインは下の表で言うパブリック方式だ。ブロックチェーンにはこれ以外にもコンソーシアム方式やプライベート方式がある。銀行などでコンソーシアムを形成してその関係者内でブロックチェーンを運用する方式であればマイニングの浪費はない。リップル方式はこのコンソーシアム方式の代表格だ。さらにはプライベート式もある。ブロックチェーン技術は今後もう一度脚光をあびるだろうと思う。
f:id:hiroshi-kizaki:20190223193920p:plain

まとめ
今日は、これら以外にも日本人の幸せ感を高めるにはどうするべきなのかとか、ベーシックインカムの是非を聞いたり、平安時代から日本人の心を教えてきた実語教の話などもした。諸先輩も流石に寺子屋の時代ではないので、実語教をご存じなかった。しかし、もう少し実語教は日本で市民権を得てほしいと思う。あまりに日本人が日本の宝を知らなすぎるのが問題だと思う。技術の世界は日進月歩だ。しかし、人間社会には、このように急速に変化し続けることと、変化しないことの両方を大切にするべきかと思っている。新しいものを取り入れながらも古いものを大切にする、そんな姿勢が今後ますます重要になるのではないだろうか。

以上

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

2020年のスマートデバイスの予想(笑)

はじめに
モバイルデバイスの進化は小型、軽量化、薄型、大画面化だ。下の図からは第一世代から第二世代、第三世代、そして第四世代と端末がどのように進化したかは一目瞭然だ。第五世代のデバイスは一体どうなるのだろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20181223121800p:plain
 出典:シーテック2016

想定される方向性
1.大画面化
モバイルデバイスの進化の一つは高解像度化と大画面化だ。しかし、同時に小型軽量薄型化も求められる。下の表は、iPhone 7からiPhone Xまでのサイズや重量、解像度などを一覧にしている。今後も解像度化は進むだろう。4Kや8K対応になるのも時間の問題だろう。しかし、画面サイズを単純に拡大すると、端末のサイズが大きくなり、操作性が悪くなる。
f:id:hiroshi-kizaki:20181223122548p:plain
 出典:サイズモード! iPhone 7/8/Xの大きさと重さを比べてみますよ | ギズモード・ジャパン

2.2つ折りタイプ
この数年の間に登場すると想定されるのは折りたたみタイプだ。年内にも発売かと噂されたサムスンのGalaxy Xはどうしたのだろう。噂のファーウェイやZTEなども商品投入を考えているように報道されている。アップルはいつ出すのか。そのあたりを少し調べてみた。

2.1 サムスン
色々な噂があるが、年内販売はなさそうだ。2019年1月のCESか、2月のMWC2019あたりに発表することをターゲットにしているのかもしれない。どんな風に折り畳むのだろうか。楽しみだ。ただ、初期不良とかが心配だ。品質面の問題解決を今は必死にやっているのだろうか。
f:id:hiroshi-kizaki:20181223123530p:plain
 出典:こっ…これは?噂の“折りたたみスマホ”『Galaxy X』まとめだー! | 8vivid

2.2 ファーウェイ
噂のファーウェイも折りたたみタイプには熱心に取り組んでいるようだ。本年3月には、折りたたみ式のHuawei電話の特許図が登場したという。Yu Chengdong氏は、数ヶ月以内に発表されると示唆しているようだ。逆風の中どんな新商品を発表するのだろうか。興味深い。
f:id:hiroshi-kizaki:20181223124313p:plain
 出典:Huawei Could Release A Foldable Phone Soon

2.3 ZTE
ファーウェイに負けるなと頑張っているのがZTEだ。噂の新モデルは、折りたたみタイプだ。ZTE Axon Mは、山折タイプだ。スクリーンを閉じると厚さは12.1mmとなるので、ちょっと厚っぽい。開発速度を優先しているのかもしれない。
f:id:hiroshi-kizaki:20181223124946p:plain
 出典:ZTEの折りたたみスマホはあのゲーム機にそっくり!? - iPhone Mania

2.4 Apple
個人的には、いつ折りたたみタイプのiPhoneが出るのかに関心が集まる。中韓のメーカーが折りたたみタイプを投入してもそれは目新しいだけで本当に使い勝手の良さを極めたものとは思えない。一方、アップルは先行他社が発表してから数年遅れぐらいで投入することが多い。米国メリルリンチ等の報告では、アップルのサプライヤ数社は早くも折りたたみタイプの製造技術に取り組んでいると報道している。どんな製品に仕上がるのかは今後のお楽しみだ。下のような案もあるようだ。今のiPhone Xはあと2年ほど使って、2020年ごろには折りたたみになっていると嬉しい。
f:id:hiroshi-kizaki:20181223130059p:plain
 出典:Is Apple set to unveil its first FOLDABLE smartphone? | Daily Mail Online

3. スマートグラス
VRやARの実現デバイスとして注目されているのはスマートグラスだ。5年前にGoogleGoogle Glassを発表した時はセンセーショナルだったが、かなり実用レベルまで改善されてきている。ただ、メガネタイプなので、重量と電池のトレードオフが課題だ。軽さを重視するタイプと長時間利用を重視するタイプで二極化するだろう。下の図は、CES2018でVuzix社が発表したスマートメガネだ。先日もある展示会でスマートメガネを試着したが、意外と軽くて便利だと思った。視線を右上に移すとサブ画面が見える。真っ直ぐ前を見たり、下を見てる時はサブ画面が気にならない。歩きスマホは危険だけど、スマートグラスとヘッドセットで映画とか見ながら散歩するのはどうだろう。ミュージックビデオならどうだろう。お仕事をするときにサブ画面で何か参考情報をチェックできると便利かも。講演するときに、投影しているスライドをサブ画面でチェックできると便利だ。これから色々な活用方法が開発されるだろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20181223130804p:plain
 出典:Smart glasses are coming this year, and I’m not ready

4. ゴーグルタイプ
自分は残念ながらまだ購入していないけど、ゴーグルにスマホをセットすると、大画面の映像や3D映像を楽しむことができる。映像自体はスマホで再生するタイプなので、ゴーグル自体は2000円でお釣りが出る。問題はコンテンツがまだまだ少ないことだろうか。近視や遠視の人でも大丈夫なのだろうか。映画とか動画を自宅でゆっくりと視聴するのであれば、大画面のテレビで見るよりも、ゴーグルタイプの方が大迫力かもしれない。
f:id:hiroshi-kizaki:20181223162732p:plain
 出典:https://tabkul.com/?p=176769

まとめ
5Gが開始する2020年にはスマートデバイスはどうなっているのだろう。ダブル画面タイプのiPhone W(仮称)とかが発売されているのだろうか。それとも軽くてカッコいいiGlass(仮称)が出回っているのだろうか。ゴーグルタイプがもっと進化しているのだろうか。あと2年だけど、予測がつかないのがこの世界の凄いところかもしれない。しかし、ここ数年のうちにびっくりするほどの進化を見せるのだろう。今回は含めなかったけど、癒し系ロボットが2020年のスマートデバイスとして急速に普及している可能性もある。将来が本当に楽しみだ。

以上

5G時代におけるインフラシェアリングを考える。

はじめに
シェアリングサービスといえば、AirbnbUberによるシェアリングが有名だ。これらに比べると地味だが携帯電話のシステムを整備するときにも基地局やインフラを共用する仕組みがある。日本では各携帯電話事業者がそれぞれ基地局の鉄塔を建設して運用するが、海外では基地局を整備する事業者とその基地局にアンテナを設置する通信事業者が協調しながら進めることが多い。今回は、そんな携帯電話のインフラを共有するインフラシェアリングについて考えてみたい。
f:id:hiroshi-kizaki:20181119195835p:plain

携帯電話の基地局設備(タワー)の種類
携帯電話を利用する場合に、携帯電話と携帯電話が直接接続されているわけではない。携帯電話は携帯電話事業者が運用する基地局やコア設備経由で接続される。基地局設備には屋外に設置されるタイプと屋内に設置されるタイプがある。屋外に設置される基地局にもタワー型と屋上設置型がある。用途やイメージを下の表に示す。
f:id:hiroshi-kizaki:20181118153952p:plain
 出典:みずほ銀行(参考1)

インフラシェアリングとは
インフラシェアリングには、キャリア主導で基地局を設置する類型①、基地局の一部を売却する類型②、複数の通信事業者で共有する類型③、独立系の事業者が基地局設備を設置して運用する類型④がある。日本では類型①が支配的だ。欧米では類型④の事例が増えていて、日本でも始まりつつある。
f:id:hiroshi-kizaki:20181118154839p:plain
 出典:みずほ銀行(参考1)

海外におけるインフラシェアリングに関する規制
自動運転車ではレベル1からレベル5までが規定されている。それと同様の定義がインフラシェアリングを定義し、かつそれに対する規制が行われている。下の表はフランスにおける定義と規制だ。レベル1は土地や建物、鉄塔設備の共有だ。レベル2はアンテナなどの共有化でここまでをパッシブインフラと定義されている。一方、レベル3から5の共有はアクティブインフラだ。例えばレベル3は基地局設備、レベル4は制御装置、レベル5は交換設備やコア設備だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20181118160006p:plain
 出典:みずほ銀行(参考1)

世界的には年率3.7%で成長が見込まれるインフラシェアリング
世界的な通信タワーの新規建築数は、2016年には443件だったが、2020年には513件まで増大すると見込まれている。特に多いのが中国で全体の40%以上を占めている。残念ながらこのグラフには日本は含まれていない。
f:id:hiroshi-kizaki:20181118160333p:plain
 出典:ATカーニー(参考2)

全世界的に普及するインフラシェアリング
欧州の通信事業者別のインフラシェアリングで見ると下のグラフに示すようにオランダのOpen Tower Companyが860局とトップだ。同社は2009年に設立している。二番目はチェコのCRA社(Ceske Radiokomunikace)で800局で、テレビの放送用タワーを活用した事業を行なっている。
f:id:hiroshi-kizaki:20181118161126p:plain
 出典:Tower Exchange(参考3)

日本におけるインフラシェアリング
日本の携帯電話事業者は基本自前主義だ。基地局の鉄塔を間借りすることもあるが非常に少ない。これは事業者によって携帯電話用に割り当てられた周波数が異なるため、最適なロケーションや基地局間隔も事業者によって異なるためだ。しかし、屋内用の基地局設備であればインフラを共用するメリットはある。また、5Gの整備に向けての需要もあるだろう。そのような観点から2012年に設立したJTOWERという会社が日本でもインフラシェアリングサービスを提供している。
f:id:hiroshi-kizaki:20181118162458p:plain
 出典:アスキー(参考4)

JTOWERによるインフラシェアリング
携帯電話やスマホを利用するのは屋外よりも屋内の方が多い。このため大規模な商業施設やオフィスビル、ホテル、病院、マンション等でも携帯電話を利用できるように携帯電話事業者各社が必要な対策を整備している。プラチナバンドと呼ばれる800MHzの時代にはオフィスビルで言えば15階ぐらいまでは窓際で使えた。100m四方のオフィスでも中央に屋内アンテナを1基整備すればほぼ利用できた。しかし、第三世代や第四世代で2GHzを利用するようになると10階でも窓際の一部で使えるだけだ。100m四方のオフィスだとアンテナは4基から8基ぐらい整備しないと電波が浸透せずに利用者からのクレームが起きる。第五世代になると4GHz帯や28GHz帯を用いる予定だ。電波伝搬損失は周波数の二乗で増大する。つまり、4GHzの電波は2GHzの電波よりも4倍伝搬しにくい。このため、屋内であっても非常に稠密(ちょうみつ)に屋内アンテナを設置することが必要となる。100m四方に1個であれば例えば4社の携帯電話の事業者がそれぞれ設置する方が効率的だろう。100mに4個とか8個でもまあいいかもしれない。しかし、第五世代の稠密なアンテナを事業者の数ごとに設置するのはもう現実的ではないだろう。JTOWER社は、これまでインフラシェアリングを進めているが、ほぼ屋内対策だ。これは5Gに向けてさらに加速するだろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20181118163138p:plain
 出典:JTOWER(参考5)

屋内インフラシェアリングのメリットとデメリット
ここでは屋内に焦点を絞ってインフラシェアリングのメリットとデメリットを整理してみたい。

1) メリット
① ビルオーナーとの交渉

オフィスビルや商業施設を建設する場合に、その屋内で携帯やスマホを快適に利用できるようにすることが求められる。しかし、ビルオーナがその整備費用を負担することは少なく、携帯電話事業者が費用負担することが多い。しかし、携帯電話事業者も収入の見込みをベースに投資額を精査する必要がある。このため、どのような対策をどのような精度でいつまでに対策するのか、その費用を誰が負担するのかをビルオーナーと携帯電話事業者が協議して契約を締結する必要がある。屋内対策の費用は携帯電話事業者が負担する場合にも、その設備の設置スペースや通信機器の電気代をオーナーが負担するのか、携帯電話事業者が負担するのかといったことを含めて、細かく協議する必要がある。これが結構大変だが、シェアリングサービス会社が仲介するのであれば、オーナーとの交渉は一本化するので効率的だ。

② 竣工前の工事
携帯電話事業者から見ると、商業施設で想定される利用者数やオフィスビルに入居するテナントの利用者数などをベースに実施計画を検討する。しかし、屋内対策のためのケーブル敷設工事やアンテナ設置工事はビルが竣工した後に行うことが多い。つまり、ゼネコンがビルのオーナーから建物部分の建設工事を請け負って、工事を行い、オーナーに引き渡した後に行う。さらにオーナーは建設工事が完了した後にテナントに提供する。したがって、オーナーへの引き渡しの後と、テナントへの提供の時期の間に急いで対策する必要がある。さらに無線設備なので総務省への電波申請なども必要だ。しかし、シェアリングサービス会社が工事を行うのであれば、ゼネコンに基本的な工事部分の施工を委託して、ビルの引き渡し時期までに工事を完了することも可能かもしれない。そうすれば、ケーブルの敷設工事やEPSの縦管路設置などを何度も行うのではなく、最初から計画的に実施することも可能となる。

③ 効率的な運用と携帯電話事業者の負担軽減
携帯電話事業者が屋内対策を行う場合には、MDF室に用意されたスペースに必要な無線機設備を設置して共有設備と繋ぎこむだけだ。このため携帯電話事業者も投資費用や運用費用を大幅に削減することが可能だ。また新規参入事業者もプラグインで運用開始できるとすれば追い風になるだろう。
f:id:hiroshi-kizaki:20181118165936p:plain
 出典:JTOWER(参考5)

④ 利用者の不利益の減少
既存携帯電話事業者も新規携帯電話事業者も屋内対策の整備のための費用が低減すれば結果としてどの事業者も整備することが一般的となり、利用者の便益は増大する。エリアの差別化がなくなれば、より安い事業者の携帯を選択しやすくなり、結果としてユーザの負担も軽減するかもしれない。

2) デメリット
① 携帯電話事業者の費用負担と発注方式

シェアリングサービス会社が共通部分の投資を行う場合に、費用を負担する通信事業者からの利用意向に基づいて行う受注発注方式とするのか、通信事業者の利用意向を見越して行う見込み発注方式とするのかが難しい。実際は、受注発注方式と見込み発注方式の良いところを組み合わせたような方式で運用することになるのではないだろうか。かつてはNTTが受け取っていたような設備設置負担金のようなものをDoCoMoが支払うようなことになるのだろうか(笑)。もし月額料金方式にするなら、その透明性が問われることになる。WIN-WINの関係を実現出来るかどうかがポイントだ。

【受注発注方式で整備する場合】
シェアリングサービス会社はこれを希望するだろう。しかし、完全な受注発注方式とすると、オーナーとの先行的な交渉ができないし、新規参入事業者をどのように取り扱うのか、もしくは拒否するのかが問題となる。

【見込み発注方式で整備する場合】
携帯電話事業者が全て利用を表明するという前提で整備するとすると、シェアリングサービス会社が負担する初期投資金額が見かけ上増大する。それは事業リスクの増大に直結するため、全てのビルを先行投資することは難しいだろう。

② 工事業案件数の減少
事業者それぞれが工事をするのであれば、電気通信工事を請け負う会社が得たかもしれない収益が大幅に削減される。しかし、これはあまり考える必要がないだろう。5Gになれば必要なアンテナ数が増大するし、結果として屋内対策の整備が増えればトータルの工事件数や受注金額は増大するだろう。

③ 携帯電話事業者の独自性の低下と設備障害時の切り分けの複雑化や影響度の増大
携帯電話事業者から見ると、屋内対策の基本設計を全てシェアリングサービス事業者に委ねることになるため、独自性を発揮することが難しくなる。さらに、設備障害時にも直接アラームを検出することが難しいなど障害時の切り分けが複雑になり、結果として復旧が遅れるかもしれない。また、現状ではあれば例えばA社が故障しても、B社やC社は利用できるのでトータルダウンはなかったが、今後シェアリングサービス事業者の設備が故障すると、全ての携帯電話事業者のサービスを利用できない事態に陥る。これは避けたい。

④ 利用者の負担の増大の可能性
シェアリングサービス事業者が独占的に屋内設備を整備するなど、競争原理が働かない場合には、結果として費用低減が進まずに、利用者の負担が増大することになるかもしれない。何らかの競争原理が働くような仕組みの整備は必要かもしれない。

5G時代におけるインフラシェアリング普及のための今後の検討課題
このように多くのメリットと同時にデメリットも想定される。このため、インフラシェアリングが適切に活用され、国内で普及させるには、次のような点を十分に検討することが必要だろう。

① 競争原理の導入
海外のインフラシェアリング事業者は通常一つの国に複数あり、競争原理が働いている。今後、本格的に国内でもインフラシェアリングサービスを普及させるにはやはり複数の事業者が切磋琢磨することが望ましいだろう。ビルのオーナーから見ても、複数のインフラシェアリングサービス事業者がいれば、より望ましい事業者を適切に選択することが可能だ。

インターフェイスの整備
屋内対策の整備は、ビルのゼネコンとインフラシェアリングサービス事業者と携帯電話事業者が協力して実施することなる。したがって、それぞれの責任分担や切り分けポイント、インターフェイスが明確である必要がある。求められる通信速度は年々増大する。10年後までは見極めることができても、20年後まで見極めることは難しい。過剰スペックでの整備もコスト増を招く。しかし、少なくとも20年程度先までの需要を見越したインターフェイスの標準化が望ましい。

③ 成功事例の積み上げ
インフラシェアリングサービスは、国内ではまだまだ立ち上げたばかりだ。成功事例を積み上げて、課題を整理して、利用者にとっても、事業者にとっても、ビルオーナーにとってもメリットのある仕組みというか、落とし所を見つけていく必要がある。そして、適切なビジネスモデルを確立することができれば、追随者が出ても先行者メリットを得られるだろう。そうでなければ追随者が成功モデルを確立することになるかもしれない。

④ グローバル対応
インフラシェアリングサービスは、欧米や中国、途上国で先行している。日本の事業者が成功モデルを確立して海外に打って出る可能性がある一方で、海外の事業者が国内に参入する可能性もある。個人的には前者の可能性を願うが、後者の可能性も否定できない。その場合には日本で実現している通信サービスや信頼性を適切なコストで提供できるのかが不安だ。

まとめ
今回は屋内のシェアリングサービスを中心に考えてみた。携帯電話の周波数が高周波化すると、実は基地局の数も増えているし、基地局のアンテナ設置場所の高さも低くなっている。5GではかつてのPHSのように電柱それぞれに設置するようなことになるかもしれない。その場合には、電柱保有者が大きなアドバンテージを持つだろう。景観の整備や災害時のことを考慮して、電線の地中化が進められているが、その場合にも電柱だけは残るのだろうか。ブサイクな基地局が古い電柱に搭載されるというよりは、景観を考慮したちょっとお洒落な、もしくは自然と溶け込むような基地局がさりげなく整備されるようなデザインにも注力する必要があるのではないだろうか。

以上

参考 1:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/mif_91.pdf
参考 2:http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/toushi/20180627/180627toushi02.pdf
参考 3:https://www.towerxchange.com/towerxchanges-analysis-of-the-independent-tower-market-in-europe
参考 4:http://ascii.jp/elem/000/001/764/1764348/
参考 5:https://www.jtower.co.jp

モバイル技術の最新動向に対する学生の反応

はじめに
モバイル技術の最新動向について学生にお話をする機会があった。そして、その中で印象的だったもののアンケートを取ったら結構参加者は真剣に聞いてくれていたことを感じられる結果だった。良かった。

1. LTEの技術で印象的だったもの
f:id:hiroshi-kizaki:20181111090712p:plain
モバイル技術の歴史を振り返った上で、今若い人が使っているスマホLTEを用いたものが多い。そのLTEではどのような技術を用いているかを概説した。やはり一番イメージしやすいのかVolteを選択した人が6割以上と圧倒的に多かった。第一世代は音声のみ、第二世代は音声をベースにデータも少し、第三世代は音声用とデータ用のシステム、そして、第四世代はデータ専用だ。このため音声データをパケットに分解して、データ網で疎通させる。一般のデータ通信に比べて音声データは遅延や揺らぎへの要求条件が厳しい。VolteとはVoice over LTEの略だが、ピアノの鍵盤とVolteの帯域、一般的な電話の帯域などを対比して説明したのが面白かったという声も多かった(笑)。

2. 5Gの技術で印象的だったもの
f:id:hiroshi-kizaki:20181111091331p:plain
2020年に向けて検討が進められている5Gについてもその概要を話した。やはり学生さんは高速利用のニーズが強く、高速通信を実現する各種技術が印象的だったようだ。自動運転をサポートするための低遅延技術やスタジアムで任意の角度からの合成映像を観れる自由視点動画なども印象に残ったようだ。また、5Gを支えるコンセプトの一つであるスライシングについても軽く触れたが、これが印象的だったという回答もあった。嬉しい。

3. 基礎技術で印象的だったもの
f:id:hiroshi-kizaki:20181111091657p:plain
少し難しいかなと思ったけど、モバイル通信技術を支える基礎技術についても説明したところ、フーリエ変換が最も多かった。数学などでフーリエ変換を学ぶけど、それが時間軸と周波数軸の変換であることを初めて理解したという声が多かった。また、普段携帯を使っているためだろうか、アンテナの相反性に興味を示した人も多かった。CDMAの仕組みや原理はなかなか難解だけど、狭帯域の信号をコードで拡散して、広帯域信号に変換し、これをまたコードで狭帯域の信号に戻すという仕組みを説明したら、凄い技術だと素直に感動してくれた学生もいた。これも嬉しかった。

4. 電波伝播の仕組みの印象的だったもの
f:id:hiroshi-kizaki:20181111092130p:plain
スマホは、最寄りの携帯電話基地局と無線でつながっている。電波がどのように伝搬するのかを説明した。電波伝搬損失の計算式は難解だけど、周波数によって損失が変わることを知り、なぜプラチナバンドと呼ばれるのかを理解した学生も多かったようだ。また、電波が飛来する時に、直線的に飛来するというよりはラグビーボールのようなゾーンで飛来するというフレネルゾーンの話に興味を持った学生も多かった。また、ドップラー効果は音声では理解していたけど、電波でも生じるのに驚いたという声もあった。ただ、なぜ軽く説明したフレミングの法則が多かったのかは不明だ(笑)。

まとめ
アイスブレイクとして、マラーラさんの話やスティーブ・ジョブズの予言なども交えながら説明した。「未来をイメージして、今すべきことに集中することの大切さを理解しました。」といった感想もあった。今回は持ち出しのボランティア活動だが、若い人と接する機会を持つことは何事にも変えられない経験であり、逆に多くの気づきを得られる1日でした。
 出典:スティーブ・ジョブズ氏、1985年の予言「ネットのために…」 - ライブドアニュース

以上

第369回ITU-R研究会:5Gの実証実験の状況報告

はじめに
日本ITU協会が主催するITU-R研究会に参加した。今回は、標題の通り5Gに関するものだった。2020年のサービス開始に向けて、2017年から2019年の3年間で5Gの実証実験を進めることになっており、様々な話が聞けて貴重だった。

講演1
国際電気通信基礎技術研究所(ATR)適応コミュニケーション研究所の山田雅也担当部長より、5Gの屋内環境における実証試験について話があった。下の表は昨年5月に総務省が発表した実証実験の予定だ。基本、この内容で実証実験が進められている。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920162246p:plain
 出典:総務省報道発表(2017年5月16日)

ATRが進める実証実験(その1:沖縄スタジアムの実証実験)
これはKDDIと連携して実施している実証実験だ。YouTubeにもアップされている。自由視点映像と呼ばれる技術を活用している。これは複数の地点から撮影した映像を合成し、ユーザが操作するタブレットで自由な角度からの映像を合成して再生するものだ。講演2でも説明があったが、実映像とタブレット上の映像との時間差は約0.5秒だという。従来は、多数のカメラで撮影したものをから近いものを再生していたが、今回の自由視点映像は、4台のカメラからの映像から擬似的に任意の場所、角度の動画をリアルタイムに合成するのが新規性でワクワクするところだ。
www.youtube.com
 出典:http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/03/26/3034.html

28GHzの直進性と反射波の影響
ATRの測定結果としては、「伝搬損失モデル式=alog(d) + b」で、aが18.9、bが62.6だ。距離(m)が伸びると伝播損失(dB)が増大するという図式にほぼ当てはまることが確認された。しかし、問題は反射波だ。基地局の設置場所を適切に設定しないと反射波の影響が大きいことが確認された。ポイントはこの反射波を干渉波として除去するのか、それともなんらかの加工をして信号波として活用するのか。この辺りが無線技術として最も前進しないといけない部分だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920163934p:plain

ATRが進める実証実験(その2:京浜急行電鉄羽田空港国際ターミナル駅
2017年度には4カメラを活用した映像監視アプリケーションの基本評価を行った。今後は、5Gと4Kカメラを組み合わせて高精細の映像監視実験を行う。4Kは従来の2Kカメラよりも、2倍程度遠方の人物検出ができることが確認された。今後は人物だけではなく、刃物等の危険物の検出にもトライするという。下の図は講演とは関係ありません。イメージ図です。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920165028p:plain
 出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000022558.html

ATRが進める実証実験(その3:小学校環境を想定した基礎評価)
小学校4年生の2クラス(1クラス36名)を対象に動画の一斉ストリーミングとアップロードのトライアル。授業の一環として先生が用意した映像を生徒に配布したタブレット(iPad)で視聴するだけならそれほど目新しいものではない。今回トライしたのは、生徒が作成した映像をアップして、授業の中で生徒と共有するものだ。生徒には予め1分程度の動画を用意させて、それを共有する試みだ。しかし、生徒によって動画時間のばらつきが大きく、短い生徒は0.6分(36秒)、長い生徒では6.5分(約400MB)だ。今回はまず4Gでのトライアルだ。ストリーミング配信は問題ないが、生徒の動画をアップしようとすると、上りが20Mbps程度なので授業中に行うのは厳しい結果だ。先生からは動画のアップを1分以内に完了するべきという声が多かった。今後、5Gでの実証実験でこれをクリアするかどうかが期待される。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920165328p:plain
 出典:https://news.mynavi.jp/article/20180412-615353/

講演2
KDDIのモバイル技術本部次世代ネットワーク開発部5G技術推進グループの渡里雅史グループリーダより、5Gにより実現する世界、ワクワク体験というタイトルで講演があった。下の図はモバイルシステムの進化のイメージ図だ。講演資料からではない。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920170527p:plain
 出典:http://taiga8823.com

KDDIが進める実証実験(その1:異なる周波数を適正に組み合わせる)
制御信号(C-plane)とユーザ信号(U-plane)を分離することをC/U分離という。講師の渡里さんはさらっと説明したが、個人的には必然的に重要な技術であると考えている。つまり5Gになると6GHzや28GHzなどの高い周波数帯を使うことになる。高周波は利用帯域が広いため、伝送速度を高めることができる反面、そのエリアが狭くなる。ユーザ信号として28GHz帯を使うのは良いとしてもこれを制御信号に使うと圏外になった時に制御不能となる。制御信号では、速度を求められないが、確実で粘り強いエリア特性が重要なので、6GHz未満の周波数を活用する。常に制御可能な状態とすることで、通信を行う瞬間に最適な電波を捕捉するように指示することができる。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920170834p:plain
 出典:A novel architecture for LTE-B :C-plane/U-plane split and Phantom Cell concept - Semantic Scholar

KDDIが進める実証実験(その2:ユースケースに応じた周波数の使い分け)
5Gを利用する場合にも、1Gbps程度とかそれ未満で十分なケースと5Gbpsとか10Gbpsといった高速通信が必要なケース、遅延が多少にあっても良いケースとできるだけ低遅延が必要なケース、それほど大量の端末が繋がらないケースと大量の端末が例えば特定のスタジアムなどに集中するケースなどがある。そして、それぞれのユースケースで通信サービスに求める要求条件が異なる。これらの全てを全てのユースケースで実現することは5Gでも厳しい。そのため、5Gではスライシングというコンセプトが有効だ。つまり、速度を求める人のためのネットワーク、低遅延を求める人のためのネットワークというように、ネットワークを分離し、それぞれで適切に運用する考え方だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920172128p:plain
 出典:What is 5G Network Slicing? A Definition — SDxCentral.com

KDDIが進める実証実験(その3:ビームフォーミングとトラッキング
JR東日本と共同で5Gを用いた走行列車での8K/4K映像伝送実験に、KDDIは2017年10月に世界で初めて成功した。ほぼ1年前の実験だが走行中に最大1.7Gbpsのスループットを達成たい。これを実現するために約1.5kmの鉄道区間に5Gのエリアを整備して時速約100kmで走行する列車との連続ハンドオーバにも成功している。しかし、問題は車両の位置によって受信波の品質が異なる点だ。28GHzの電波の電波伝搬損失は先にも述べたようにほぼ距離に依存するが、問題は車両のドアとか、窓とか、座席などとのロケーションに依存する点だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920172340p:plain
 出典:https://www.jreast.co.jp/press/2017/20170915.pdf

KDDIが進める実証実験(その4:世界初192km/hで28GHz帯のハンドオーバーに成功)
サムスンとの共同実験だが、昨年8月に時速192kmで走行する車両との5G通信およびハンドオーバに成功している。ただ、今年の5月に走行試験場において、時速300km超でのハンドオーバーにDoCoMoが成功している。つまり、今後5Gのエリアが整備されていけば、車両に積んだドライブレコーダの映像をリアルタイムに遠隔地で見るようなことが可能だ。F1レースの鑑賞中にF1レーサーのドライバーの目に映る映像を体感することも可能かもしれない(笑)。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920173303p:plain
 出典:https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=yS08jKYKdq8

KDDIが進める実証実験(その5:5Gドローンを用いた4K映像のリアルタイム伝送に成功)
東大柏キャンパスに28GHzの5G実験エリアを整備し、2018年6月8日に上空約150mのドローンからの4映像の伝送を行い、タブレットにリアルタイム伝送した。これは5G端末設備が軽くなってきたのでできたことだ。ドローンの飛行に対する制約をクリアすれば、4K/8Kからの映像を遠隔で見ることが可能ということだ。
f:id:hiroshi-kizaki:20180920174109p:plain
 出典:http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/06/14/3202.html

KDDIが進める実証実験(その6:国内初!4K3Dモニターを活用した建機の遠隔施工に成功)
建機の操作を遠隔で行うことは目新しくないが、それを4K動画で行い、かつ奥行きも判別できる3D映像を活用した点が国内初のポイントだ。従来のWi-Fi利用だと276秒かかったものが、5Gだと177秒と35%も生産性が向上した。今後は、例えば作業の指揮者の目線からのカメラも追加すれば、指揮者の配置も不要となるのだろうか。法律問題の対応は時間がかかるかもしれない。
 出典:www.youtube.com

KDDIが進める実証実験(その7:遠隔操作ロボットによるテレイグジスタンス)
「テレイグジスタンス」(Telexistence)とは、遠隔臨場感とか、遠隔存在感を意味する。このテレイグジスタンスを「瞬間移動」と読んでいる。いわばドラえもんの「どこでもドア」だ。つまり、まず手袋のような触感センサーを指にはめてVRグーグルのようなヘッドセットをつけて、自分とロボットを同期させる。自分が動くとそのままの動作でロボットも動く。ロボットがコップを持つと、その感触を自分が感じられる。コップに入ったビー玉を別のコップに移そうとすると、その音や感触を感じられる。このロボットを行きたい観光地にセットすれば、その観光地に旅行したような不思議な感覚をえる。通信が可能なら宇宙旅行だって可能だ。危険な工事なども安全・安心だ。
 出典:www.youtube.com

まとめ
最後の「瞬間移動」が可能なテレイグジスタンスは衝撃的だ。ネーミングがいまいちだが、視覚や聴覚、触覚だけでなく、嗅覚や味覚などの分野でも研究が進んでいるという。VRやARの技術は今がターニングポイントなのかもしれない。あと数十年すると、ARやMRで旅行することが普通になるのだろうか。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。 

IT21の会の創設経緯と5Gへの展望

はじめに
現在、日本技術士会の認定グループであるIT21の会の幹事をさせてもらっている。IT21の会は1997年に設立し、最新のIT技術の開発や研究を行い、その成果を国際的視野に立って社会に還元することを目的とする。同時に技術士としての自助努力と相互支援を達成する(要約)と会則にある。そんな設立時からの話を創立時から貢献された先般技術士にIT21の会で話をしてもらった。将来を考える上ではやはり起源が大切だ。いわゆる「初心忘るべからず」である。

初心忘るべからず
世阿弥(ぜあみ)という方をご存知でしょうか?1363年(正平18年)生まれなので、645年ほど前に生誕された方で、能を大成し、能楽に関する書物を多数著している。そのうちの一つが「花鏡(かきょう)」という伝書を書き、その時に「初心忘るべからず」と記している。
f:id:hiroshi-kizaki:20180915185910p:plain
 出典:Wiki(世阿弥)

参加者63名
IT21の会は、だいたい20名から30名程度の参加だが、9月の例会はなんと63名という過去最高レベルの技術士に参加頂いた。その理由は2つある。一つは、今回、エリクソン・ジャパンのCTOである藤岡雅宣工学博士に登壇してもらい、5Gを中心としたモバイル通信の最新動向について話をしてもらった点だ。藤岡さんはモバイル技術の最先端の状況に精通し、かつ分かりやすく説明頂けるので、セミナーを受講した人や著書を読まれた方も多い。携帯電話システムの担当者だけではなく、情報通信に関係する多くの技術士に聴講して欲しいという思いを電気電子部会に伝えた。共同開催や後援の可能性も想定したが、電気電子部会の会員に展開してもらった。席上も挙手を求めるとIT21の会員でない人=初めてIT21の会の例会に参加した方が25-30名ほどいらした。参加者の許諾をもらっていないので、少し写真の顔を隠しました。
f:id:hiroshi-kizaki:20180915185948p:plain

5Gを中心としたモバイル通信の最新動向
今回の講演の内容は次の4つのトピックだ。
・モバイル通信のの世代と進化
セルラーLPWAの動向
・5Gのロードマップと現状
・5Gフィールドトライアル

モバイル通信のの世代と進化
モバイルの世界はほぼ10年で世代が交代している。現在は、いわゆる第4世代のLTEだ。2017年時点での世界のモバイル加入者数は78億台だが、すでに第四世代方式が第三世代方式を抜いている。第四世代でも十分に高速だし、エリアも広い。特に困っていることはない。第五世代が本当に必要か?と疑問に感じる人もいるかもしれない。しかし、やはり第五世代が必要だ。理由は3つある。まず、第一にモバイルのトラヒックは毎年54%程度増加している。これが10年続くと何倍になると思いますか?なんと75倍です。つまり、2010年から2020年の間に75倍のトラヒックなる。それはLTEでなんとか対応する。しかし、2030年までにさらに75倍になるトラヒックLTEでは対応できない。やはり新しい仕組みが必要だ。第二はIoTの台頭だ。第4世代までは通信の主役は人間だった。しかし、今後はIoTを筆頭にものとなる。このものとものの通信にLTEでは効率的に対応することが難しい。第三は自動運転のような超程遅延通信のニーズへの対応だ。LTEでは超低遅延通信には対応できない。
f:id:hiroshi-kizaki:20180915191813p:plain
 出典:総務省|平成28年版 情報通信白書|移動通信システムの高度化

セルラーLPWAの動向
LPWAについては以前にもこのブログで取り扱った。
hiroshi-kizaki.hatenablog.com
LPWAは、実はセルラー系の方式と非セルラー系の方式が激しく切削琢磨している。非セルラー系の優位性は900MHz帯の周波数を活用して、低廉なコストで自営ネットワークを構築して運用することだ。限られたエリアや限られた用途で低速の通信であれば、非セルラー系のLPWAが活躍するユースケースも多いだろうと思う。しかし、できるだけ制限のないエリアで安定して通信しようとすると、やはりセルラー系のLPWAを活用することが有利だ。そして、セルラー系のLPWAにも大きく2つの流れがある。NB-IoTとLTE-Mだ。NB-IoTは、既存のLTEのガードバンド等の隙間電波を活用する方式で、帯域が200kHz以下なので、通信速度も100kbps程度だ。LTE-Mは、1Mbps程度の速度が可能で2017年にはRel-14のCat-M2の仕様がリリースされている。2018年のRel-15ではさらに機能追加も予定されている。特徴は、待ち受けモードの高度化だ。例えば第3世代のセルラーでは5.12秒ごとに無通信でも基地局とアライブ確認を行っている。これをeMTCと呼ばれる拡張モードでは43分、NB-IoTでは2.91時間まで拡張できる。この間隔が長く、かつ1回の通信で時間が短いほど低消費電力が実現する。
f:id:hiroshi-kizaki:20180915193026p:plain
 出典:SocialNetworking(http://www.socialnetworking.jp/?p=132899)

5Gのロードマップと現状
5Gのキーワードは色々ある。まずはスライシングだ。これは通信のユースケースに応じて通信速度や遅延などの要求条件の組み合わせたを決めることだ。次が仮想化とクラウド化だ。ネットワークの機能を従来は固有のハードに固有のOSと固有のソフトで最適化したが、このハードウェアをまずクラウド化し、OSも仮想化で共通化する。これによって、例えば交換機能のMMEのリソースが足らなければこれを増やす。認証機能が不足しているならこれにリソースを割り当てる。さらには、クラウドのセンターも集中化と分散化を組み合わせることでエッジ化も可能だ。つまり、超低遅延通信を実現する場合には、端末〜基地局だけでなく、基地局〜サーバーも遅延も短縮する必要がある。そこで期待されるのがエッジサーバーだ。つまり、例えば基地局の近傍でサーバ機能が実現すれば超低遅延も可能だ。さらにはビームフォーミングやC/S分離など多彩な技術が開発されている。この辺りの基本的な概念は過去のブログも参照して欲しい。
hiroshi-kizaki.hatenablog.com
f:id:hiroshi-kizaki:20180915195019p:plain
 出典:http://www.omgkrk.com/apply-for-hubraum-low-latency-prototyping-program-edge-computing-and-5g-technology/

5Gフィールドトライアル
藤岡さんは、色々と興味深いネタを集めて頂いた。例えば、次のようなYouTubeは興味深い。講演で拝聴した動画そのものではないが、5GとかEricssonといったキーワードを入れるといろんなYouTubeの動画が出てくる。興味のある人はぜひトライして欲しい。
The Power of Millimeter Wave | 5G | Verizon
 The Power of Millimeter Wave | 5G | Verizon - YouTube
Verizon quietly ran live 5G VR, 4K, and video calling demos during Super Bowl LII
 https://www.youtube.com/watch?v=ZUfRI7UkiiQ
Taking Cell Tower Inspections to the Next Level | AT&T
 https://www.youtube.com/watch?v=d-nDYAlCYp4

まとめ
今回のIT21の会の9月度例会は本当に多くの方に参加頂いた。さすがに良く知っている人もたくさん来ていただけた。自分がIT21の会の幹事をやっていることを知らなかった人がほとんどでびっくりされていたようだ。IT21の会の講演資料はさすがに会員もしくは参加者以外には開示していないが、その議事録は結構詳細に記録するので、多分参考になると思います。興味があれば検索してみて欲しい。
日本技術士会登録グループ - IT21の会ポータルサイト

以上


  

Disruptとは新秩序を構築することであるべき

既存秩序の崩壊
インターネットの普及により、既存の社会システムや事業モデルが崩壊することを象徴する言葉が「ディスラプト」だ。KDDIの新社長に就任予定の高橋副社長が記者からのインタビューで用いていたので気になって少し調べてみた。

18世紀の第一次産業革命
蒸気機関の発明により、それまで人力で運航していた船舶が蒸気機関駆動となり、その航路の活動範囲が飛躍的に増大した。蒸気機関車が開発されて、陸上での移動範囲が格段に格段し、物流網が整備された。

19世紀後半の第二次産業革命
欧米諸国で始まった工業化により鉄鋼、電気、化学、石油の開発が進んだ。これにより米国では本格的なモータリゼーションの幕が開いた。印刷機の開発が進んだのもこのころだ。フレデリックテイラーによる工場の科学的管理技術の研究が一気に進み、ベルトコンベヤーによる自動車の製造ラインの効率化が図られた。

20世紀後半の第三次産業革命=情報革命
未来学者のアルビントフラーは、情報革命を第三の波と説いた。米国の最大通信会社だったAT&Tの分割案を政府が断行する10年以上前に提言していたという。コンピュータや情報通信が指数関数的に発展することを示したムーアの法則は有名だ。集積回路上のトランジスタ数は「18か月(=1.5年)ごとに倍になる」というものが有名だが、Wikiの英語版を見ると、ムーアの発言はほぼ2年で複雑性が倍増すると言っている。
The complexity for minimum component costs has increased at a rate of roughly a factor of two per year.

第4次産業革命
欧米ではインダストリー4.0という用語を使っている。そして、特徴的な技術をサイバーフィジカルシステム(CPS)と呼ぶ。これは、サイバー=ネットと、フィジカル=既存のハードを連携するものだ。日本語のWikiだと、IoTやAIを用いる製造業の革新と説明されているが、英語版のWikiだと先述のCPSの活用がインダストリー4.0と定義付けている。下の図は、その解説図だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201134744p:plain
(出典:Wiki、参考1)

これから崩壊されると想定される既存秩序とそれをどのように新秩序として再構築すべきかを事例を交えて考えてみたい。

1) 金融
中央銀行が紙幣を発行し、市中銀行を通じて世の中に紙幣流通を図る。中央銀行相互の決済をするための国際決済銀行(BIS)が仮想通貨の技術を活用することを検討しているのは、別のブログで述べた。すでに電子マネーが市民権を得ている世の中だが、今後大きく変貌するだろう。

2) 教育
すでにネットで単位の取れる高校は始まっている。しかし、義務教育の小学校や中学校の改革はどのように進むのだろう。大学入試方法の改善が予定されているが、AI時代に対応した教育システムへの変革は今後待った無しになるだろう。

3) 製造業
製造業の自動化はどこまで進むのだろう。ロボットを製造するロボットも実現するのだろう。調べてみると、ケンブリッジ大学チューリッヒ工科大学が共同でそのような研究を進めている。つまり、母となるロボットは最初に10体の自走ロボットを製造し、最も優秀なものを残す。次に、それをベースに改善を加えて新たな10体を製造し、また最も優秀なものを残す。これを何度か繰り返すと、非常に優秀な自走ロボットが完成するというものだ。すごい!
f:id:hiroshi-kizaki:20180201145607p:plain
(出典:PLOS、参考2)

4) サービス業
典型例はコンビニやスーパーでのレジの合理化だろう。Amazon社は、2018年1月22日にAmazon GOの1号店を米シアトルで開業した。これはQRコードを読み取る方式だ。国内で検討されているのはRFIDの活用だ。下の図のようにRFIDは一斉に読み取れる。非接触で読み取れるという特徴がある。経済産業省は、国内大手コンビニ業界と交渉し、2025年を目途にコンビニ電子タグ1000億枚宣言をした。しかも、これは単なるコンビニの業務効率化には止まらない。食品製造会社からコンビニへの配送管理や、家庭での冷蔵庫内の食品管理まで可能となる。これは大変な構想だ。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201150706p:plain
(出典:経済産業省、参考3)

5) 農業
水田の作業は、田植え、稲刈り、雑草除去、農薬散布と多岐にわたり大変だ。外部環境としては、水の供給と太陽光の供給がある。太陽光の制御は難しいが、水の管理なら可能だ。IIJはLoRaWANという新しいIoT技術を活用して、水田への水の供給量を監視し、制御するシステムを提案している。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201152222p:plain
(出典:ITメディア、参考4)

6) 林業
林業は中長期の戦略が求められる。たとえば、京都の清水寺の舞台を支える柱の寿命は400年だという。清水の舞台は、何度か焼失し、最近では1633年に再建された。定期補修で対応しているが、木材の耐用年数に基づく本格的な大改修が必要だ。このために清水寺では、樹齢300年以上のケヤキのある山を購入した。しかし、そんな林業に従事する人材が不足している。1980年には14万人いたのが2012年には5万人とほぼ3分の1に激減している。さらに林業には、地球環境の保全、土砂の災害防止、水源の涵養、希少生命の保護など関係する課題も山積している。さらにこれをIoTなどを活用して改善する人材が求められている。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201152956p:plain
(出典:事業構想大学院大学、参考5)

7) 漁業
IoTの活用が進んでいるのはやはり養殖だろう。例えば、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県の女川で行っていたサーモンの養殖を鳥取県の境港に移すことになった。しかし、新しい境港は、女川よりも海水温が高く、潮流が速く、冬は荒波が経つという環境の違いがある。また、養殖業に従事する人の高齢化も進んでいた。このため、先人の知恵に学ぶ一方で、センサーを活用して、養殖に関する各種データをシステム的に分析することにチャレンジしている人がいる。今後のテクノロジーの進歩をうまく活用すれば、画像データや映像データやセンシングデータなどを多面的に、総合的に分析して、より生産性を高めることが可能かもしれない。
f:id:hiroshi-kizaki:20180201160210p:plain
(出典:Digital Innovation Lab、参考6)

まとめ
第4次産業革命は待ったなしだ。既存秩序が崩壊する例は今後あらゆる業種業態で発生するだろう。しかし、ディスラプトの目的は、既存秩序の崩壊ではなく、新秩序の構築であるべきだ。日本の人口が今後どこまで減少するのかはわからないが、仮に江戸末期のレベルまで減少するとすると3000万人。今の4分の1だ。何の根拠もないが、個人的には7-8千万人ぐらいで一度人口減少に歯止めがかかるのではないかと想像する。そして、そのあと、そのレベルを維持するのか、増加に反転するのか、さらに減少するのかは、その時代の人間が将来の日本に希望を持つことができるかどうかに依存するのではないだろうか。ロボット技術の革新も進んでいるだろう。しかし、人間が人間としての誇りと希望を持って生活をエンジョイするような世の中であって欲しいと思う。

以上

参考1:https://en.wikipedia.org/wiki/Industry_4.0
参考2:http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0128444
参考3:http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170418005/20170418005-3.pdf
参考4:http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1712/08/news032.html
参考5:https://www.projectdesign.jp/201506/forestry/002157.php
参考6:http://digital-innovation-lab.jp/fishery/