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通信事情:IoTとLPWAの関係と5Gへの進化への期待

はじめに
IoTは新聞紙上でも記事にならない日はないぐらい日常的に使われている流行り言葉だ。Internet of Thingsの略で、すべてのモノがインターネットに繋がれる時代が来るぞと、IoTの用語を始めて使ったのは1999年で、ケビン・アシュトンだという。国際通信連合(ITU)ではユビキタスネットワークという用語を用いて、未来の情報通信社会を説明していたが、IoTはユビキタスネットワークの後継とも言える。

e-Japan
最近は聞かれないが、ITUユビキタス構想を受けて、日本政府が提唱したのがe-Japan構想だ。2000年9月に森総理大臣(当時)が150回国会の所信表明演説としてIT国家戦略を打ち出した。しかし、当時の総理大臣は「イット(IT)」とはなんだと言って国民の失笑を浴びたことを覚えている人もいるだろう。その当時には、モバイルの波がここまで大きくなると予想するのは難しかったのだろう。

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(出典:総務省のホームページ、参考1)

IoTが目指す未来社
2017年3月8日に開催されたデータマネジメント2017において、IoTが目指す未来社を次のように示していた。IoTの適用領域を思いっきり広げた感じだ(笑)。シスコ社は、2013年時点で100億近くまで増大しているIoTが2020年には500億まで増加すると予想している。あらゆるものがインターネットに接続する時代が来るのだろうか?
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(出典:データマネジメント2017、参考2)

総務省が描く未来社
総務省が2015年7月に示した「新たな情報通信技術戦略の在り方」に関する情報通信審議会からの中間答申の中では、未来社会を下の図のように示していた。つまり、現在の電気通信は人と人を結ぶものだ。今後は情報利活用技術によって人と情報を繋ぐ。さらに、将来は他分野の市場や技術・制度と融合することで新たな価値を創造する。それこそがIoTの目的だ。これに異存はない。
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(出典:総務省、参考3)

パケ詰まり
現在の携帯電話システムはいわゆる第三世代と第四世代で運用されている。第三世代はIMT-2000として、2000年の実現を目指したモバイルシステムだ。厳密に言うとITUは初期のLTEは3.9世代と呼ぶが、商用的には3.9世代も第4世代と呼んでも良いと許容されていているのでLTE=第4世代と理解した方がシンプルだろう。第三世代の時代には、データ通信が急増した結果、パケ詰まりが流行り言葉になるほど混乱した。2013年当時といえば、ソフトバンク孫社長がパケ詰まりを解消します!と下の図で宣言していた。しかし、LTEの登場に伴ってこのパケ詰まりも今は死語となっている。

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(出典:Livedoor News、参考4)

期待されるLPWAシステム
LTEの投入に伴ってモバイル通信は、速度も容量も品質も格段の飛躍を遂げた。しかし、それでも500億のIoT端末をLTEで結ぶことは難しい。これはLTEシステム側の容量の問題に加えて、通常のLTEの料金ではIoTの裾野を広げることができない。このため、ISMバンドと呼ばれる自由に使える周波数を使って、もっと安く、簡単に、機器を接続できれば便利だということで検討されたのがLPWA(Low Power Wide Area)システムだ。文字どおり、小さな電力で広いエリアをカバーするという通信方式だ。そして、その裏には低速度という特徴もある。代表的なものはSIGFOXとLoraの二方式であり、最大の違いは速度だ。日本が主導する方式がWi-SUNで電力のテレメトリーへの適用が想定されている。そして、NB-IoTは通信事業者がこれらに対抗する方式で検討が急速に進展した。

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(出典:筆算作成)

ISMバンド
先に引用したISMバンドとはなんだろうか。Wi-FiBluetoothで使われている周波数帯だといえば理解される人も多いだろう。ISMとは、Industry Science Medicalの略で、産業、科学、医療の目的のために自由に使えるようにITUにより割り当てられた周波数帯だ。代表的なものは、電子レンジにも使われている2.4GHzやWi-Fiで利用されている5GHzだが、それ以外にもRFIDで使われる13.56MHzや、市民ラジオ(CB無線)で使われる27.12MHzなどがある。また、携帯電話の周波数再編に伴って、920MHzも特定用途向けに利用が解放された。この920MHzをサブギガヘルツと呼ぶこともある。

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(出典:Ownd、参考5)

LoRa(Long Range IoT)
ローラといえば、モデルを思いつきますか?それとも傷だらけのローラを思い出しますか?残念ながらどちらでもありません(笑)。そもそもモデルのローラはRolaです。傷だらけのローラを歌うのはちびまる子ちゃんのお姉ちゃんが大好きな西城秀樹です。LoRaは日本ではソラコムが2017年2月よりサービスを提供している。同社のホームページを見ると大まかなタリフが掲載されている。
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(出典:ソラコム社のホームページ、参考6)

SIGFOX
2009年に設立された仏SigFox社が開発し、2012年からサービスを開始している。100bpsと超低速だが、年間1ドルを目指す。日本では京セラ系のKCCSが2017年2月からサービスを開始する。現在は、双日とも連携して顧客を広げている。条件が合えば年額100円からの利用で、電池が10年持つことを目標にしている。
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(出典:Business News、参考7を一部加工)

NB-IoT
SigFoxやLoRaは900MHz帯のいわゆるサブギガヘルツの周波数を活用し、かつ通信時間を短くし、電力消費量を最小限にしながらも、低速の通信を可能とするように工夫した方式だ。一方、このNB-IoTは、LTEGSMの隙間の帯域を活用する方式だ。日本以外の海外ではいわゆる第二世代の携帯電話方式(GSM)が使われており、これを活用する方策は必須だ。日本では、第二世代の携帯電話方式(PDC)は全てサービスを終了しているため、LTEの電波の隙間を活用する。したがって、全国に整備したLTE基地局カバレッジと無線通信品質をそのまま継承できるのが最大の強みだ。
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(出典:NOKIA資料、参考8)

NB-IoTとLTE-M
少しわかりにくいのがNB-IoTとLTE-Mの違いかもしれない。共に通信事業者が提供するサービスだ。前者のNB-IoTは、前述の通り既存のLTEのガードバンド等の隙間電波を活用する方式で、帯域が200kHz以下なので、通信速度も100kbps程度だ。そして、LTE-Mとは、3GPPが推進するMachine Type Communicationのための仕様であり、その広い帯域を活用することで高速通信にも対応する。その先には2020年をターゲットとして推進する第五世代に向かっている。
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(出典:エリクソン資料、参考9)

LPWAから5Gへの進化
下の図はSIGFOX、LoRA、NB-IoT、LTE-Mさらには5Gへの進化を理解するための諸元だ。このように見ると5Gが最も優れているように見えるかもしれないが、5Gのコンセプトはいいとこ取りだ。使えるものは何でも使って、多重化して、高速化して、容量も増やしてという考えだ。したがって、ユーザの要求条件はそれぞれ異なるので、それぞれのユーザに最適な通信方式を模索し、採用し、構築する。そんな積み重ねの先に5GによるIoTの世界が広がると理解している。
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(出典:lafibre、参考10)

まとめ
自分の専門分野のことをブログにアップするのには勇気がいる。まずは、やはり細くなりすぎる。また、調べているうちに、興味がどんどん広がってしまってまとまらない。専門家として嘘を言いたくないけど、分かりにくのも本末転倒だ。今回は、IoTとLPWAという観点からできるだけ分かりやすく説明したつもりだが、まだまだ説明をスキップしたり、大切な考え方の説明が抜けているのも多いと思う。しかし、IoTの実現に向けて世界中の通信関係の技術者が必死に研究を続けていることを知ってほしい。また、(多分)コンピュータの世界と異なり、通信の世界の技術者は基本的に仲が良い。なぜなら、仲良くしないと通信できないからだ。そんな通信の世界の技術文化は大好きだし、これからも可能な限りどっぷりと参加して、そこで得た知見をできるだけ分かりやすく解説できればと思う。

以上

参考1:http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ict/u-japan/new_outline01.html 
参考2:http://www.seminar-reg.jp/jdmc/dm2017/
参考3:http://blogs.itmedia.co.jp/business20/2015/08/2030.html
参考4:http://news.livedoor.com/article/detail/7520912/
参考5:https://mksund.amebaownd.com/posts/2152694?categoryIds=520280
参考6:https://soracom.jp/press/2017020702/
参考7:http://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/5600/Default.aspx
参考8:https://wirelesswire.jp/2016/04/52700/
参考9:http://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/4274/Default.aspx
参考10:https://lafibre.info/internet-des-objets/lte-m/