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倫理問題:不祥事が発生するのは健全?!

相次ぐ日本企業の不祥事
最近、製造業を中心に不祥事の報道が相次いでいる。まとめサイト(参考1)を見ると、次の各社の不祥事が掲載されていた。
三菱自動車 2000年 ブレーキなどのリコール案件を放置、隠蔽
三菱自動車 2004年 ハブなどのリコール案件を放置、隠蔽
パロマ   2006年 湯沸かし器のリコール案件を放置
東洋ゴム  2007年 断熱パネルで性能データを偽装
・タカタ   2015年 エアバックのリコール案件を放置
東洋ゴム  2015年 免震、防振ゴム等で性能データ偽装
旭化成   2015年 子会社の旭化成建材が地盤調査データを偽装
三菱自動車 2016年 自動車の燃費性能データを偽装
日産自動車 2017年 無資格者による法定検査の実施、隠蔽
神戸製鋼  2017年 鋼材性能データを偽装

不祥事はなぜ起こる
病気では急性と慢性があり、急性は原因が明確だが、慢性は生活病とも言われ、体質改善が必要だ。現在、問題となっている不祥事には急性というよりは慢性の問題が多いのではないだろうか。例えば、神戸製鋼の性能データの偽装や日産自動車の無資格者による法定検査の実施は長年現場で運用されていたものではないか。それぞれの不祥事にはそれぞれ理由があるはずだ。例えば、無資格者による法定検査が良いわけはないが、止むを得ず1度行ったことが見過ごされると、2度目、3度目が発生し、ついには、慢性化する。そんな歴史があったのではないだろうか。

不祥事の発覚
では、なぜここにきて急速に不祥事が発覚するのだろうか。すべての不祥事がどのように見つかったは確認できていないが、ニュースやネットで見る限り内部告発によるものが多い。つまり、顕在化する問題が生じないが、本来おかしいのではないか、法令違反なのではないかと感じた社員が内部告発をしているということではないか。現場力が高い時代には、現場で起きている問題を現場で解決・改善していた。しかし、このボトムアップ力が下がっているのではないか。現場の声が本社や経営層に届かないか、それを経営改善に反映するということがなくなっているのではないか。

東京労働局の申告受理件数
平成12年から平成19年にかけて東京労働局が受理した内部告発の件数の推移だ。東京労働局のサイトをアクセスしてもなかなか直近の内部告発件数が分からない。

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(出典:東京労働局、参考2)

公益通報者保護法
内部告発を行った労働者を保護するために、2006年4月1日に公益通報者保護法が施行された。この法律により内部告発者(公益通報者)を保護されるが、対象は犯罪の可能性または法規制の違反行為なので、すべての違法行為が対象となっているわけではなく、すべての倫理違反行為が対象でもない。同法で定める通報先は1)事業者内部、2)監督官庁や警察・検察等の取締り当局、3)その他外部(マスコミ・消費者団体等)の3つだ。事業者内部の告発件数は社外には開示されないし、監督主官庁の統計情報の開示も不十分だ。マスコミもニュースソースとしての裏付けデータはあまり見れない。頼りは消費者団体等による情報公開ということになるのだろうか。

内部告発者は守られているの?
プレジデントオンラインにおいて、ジャーナリストの元木昌彦は「内部告発は割に合わない」と指摘する(参考3)。米国のホイッスルブロワー法では、告発者に褒賞を出すことまで規定しているが、日本の法律は事実上内部告発者を規制する法律となっているという。また、外部への通報を行う場合には、まず社内で通報して、20日以内に「調査する」という回答がないことが条件となっている。したがって、調査したかどうかではなく、「調査する」と回答を受けると外部に通報できない。つまり、内部告発者というよりは企業を守る法律ではないかという。

一般企業が公開する通報件数
下の図は、株式会社SPNの内部通報マログチリスクホットライン(RHL)に寄せられた通報実績だ。100人当たりの通報件数は0.5前後で推移しているが、通報件数自体は加速度的に増加している。内部告発件数は増加傾向にあると言える。
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(出典:RHL、参考4)

パワハラの申告件数
通報件数で多いのがパワハラだ。下の図は平成18年度から平成28年度までに、全国の都道府県労働局の総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数だ。子供の世界での「いじめ」が問題になるが、大人の世界でも平成28年度には8万件弱のいじめの相談が寄せられている。子供の世界は大人の世界の縮図と言われるが、まさにその通りではないのかと悲しくなる。

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(出典:明るい職場応援団、参考5)

インターネット上の内部告発サイト
最近急増しているのはSNSへの告発サイトだ。最近では、匿名で企業体質や企業内の問題を投稿するサイトがある。それを検索すると、例えば、NTTdocomoやKDDIは企業倫理を重視するという内部評価が高いことがわかるが、もう1社の携帯電話事業者では普通だったりする。怖い世の中になったものだ。

ハインリッヒの法則
企業の不祥事が発覚するとメディアでも大騒ぎになる。テレビや新聞でも報道される。しかし、大事なことは重大な不祥事(事故)が発生した時に騒ぐのではなく、軽微な事故が発生した時に、なぜ発生したのかを分析して早期に対策することだとハインリッヒは指摘している。さらに言えば、重大な1件の事故の背後には300件のヒヤリハットがある。日常のヒヤリハットを吸い上げ、関係者で共有し、その再発を防止するための対策を講じることだ。それを実現するには、
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(出典:筆者の作成資料)

 SNSの活用は有効
子供のいじめ問題でもSNSを活用する試みが増えている。例えば、長野県教育委員会は9月にLINEを用いた悩み相談を試験的に開始したところ2週間で1500件超の相談が殺到したという。昨年度の電話による相談は259件だった(参考6)。千葉県柏市教育委員会でも脱傍観者を目指して、チャットによる相談が可能な「STOPit」を導入した(参考7)。このSTOPitを開発した米国では約6千校、266万人が使っている。日本での普及してヒヤリハットの情報を共有して、いじめを防止する体質を強化してほしい。

まとめ
不祥事が発生するのは問題だ。しかし、不祥事が表に出ないでいつまでも根本解決が図られないのはもっと問題だ。公益通報者保護法が制定されてから、内部告発は悪いことではないという意識が若い人の中で徐々に広がっているのかもしれない。さらに最近ではSNSサイトで簡単に内部告発ができる。現在の法律に基づくと重大な不祥事をこのようなサイトにアップすることは合法とは言えないが、「ヒヤリハット」をSNSに上げることは問題ないのではないか。そして、ヒヤリハットの法則に基づけば、例えば1万件のヒヤリハットの書き込みがあり、それの対策をきちんと行えば、それは30件の重大事故の未然防止を果たしたことになるのではないか。重大な事故が発生してから大騒ぎするのではなく、日常のヒヤリハットを関係者が共有して、問題意識を持って日常の業務改善につなげることではないだろうか。

 以上

参考1:https://matome.naver.jp/odai/2150868092708361301
参考2:http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51263004.html 
参考3:http://president.jp/articles/-/22763?page=2
参考4:http://www.sp-network.co.jp/column-report/risk-focus/naibutuho/candr20004.html
参考5:https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/statistics/ 
参考6:http://editor.fem.jp/blog/?p=1741
参考7:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22740460W7A021C1CC1000/