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手形の電子化が遅れていたとは盲点だった

本日の日経新聞(14面)で麗沢大学の中島真志教授が私見宅見に「手形交換の電子化 急務」という記事を投稿されていた。

 

日本は手形電子化に遅れている?
内容的には、日本では手形の電子化が遅れている。海外では1990年代以降にドイツ、フランスで、2000年代以降香港、シンガポール、中国、インド等でも導入されている。日本でも、2000年代に導入を検討されたが、不良債権問題が持ち上がった余波で先送りされたとあった。

 

ただ、この内容では納得できないので、中島真志教授のHP(http://nakajipark.com)を拝見すると、そうではなかった。つまり、手形の電子化の検討が始まった時に、電子記録債券のプロジェクトが立ち上がり、こちらを優先して、手形の電子化が先送りされたということだ。

 

手形電子化と電子記録債券は別物?
電子記録債券は、2008年12月に電子記録債券法が施行され、2009年6月にJEMCO(日本電子債券機構)が設立して、2009年8月から電子記録債券としての電子決済サービスがスタートした。2011年9月には利用契約者が1万社を突破し、2014年5月には流通残高1兆5千億円を突破と一見順調に見える。問題は、現行の手形交換のリプレースではなかったということだ。手形交換枚数は1995年の3億枚から2016年には5900万枚まで減少したが、その後の減少傾向が加速していないことだ。

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つまり、電子債券サービスを提供したから、現行の手形は徐々に無くなるだろうという読みが外れているというのが問題だという。そして、中島教授によると現行の手形の運用に年間50億円の費用がかかっているという。

 

今後の方向性
多分、方法は2つあるのだと思う。つまり、現行の電子債券サービスを拡充して、現行の手形を廃止する期日を決めること。もしくは、現行の手形をリプレースする仕組みを新たに立ち上げて、やはり現行の手形を廃止する記事を決めること。

 

サービスの立ち上げよりも、サービスの廃止の方が難しい。廃止期日を決めれば終わりではない。やはり経過措置や段階的な縮小プランが必要となるだろう。

 

日経新聞の記事では、字数の関係もあり、そのような本当の背景や、本当の課題を示していないが、業界紙(2017年3月27日の金融財政事情)には詳しく書かれている。やはりメディアに書かれていることをそのまま鵜呑みにするのは危険であり、自分の頭で考えて、自分が納得できるまで、自分の目と手で調べることが大切な気がする。

 

手形の交換所の廃止となると、長い歴史を持つ事業だけに、多くの抵抗があるのだろうし、利害関係の調整も難しいだろう。でも、現在の銀行業も、将来は電子マネーや仮想通貨に駆逐される可能性があるので、他山の石ではない関係者も多いだろう。全国各地の銀行協会が運営する手形交換所は、2017年1月1日現在で184ケ所あると言う。
(出典:https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/efforts/system/tegata/

 

チェックトランケーション
全銀行によるとチェックトランケーションに対応するように手形・小切手の記載事項やMICR印字の内容の見直しをすれば合理化が可能という。
(出典:https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/efforts/system/koukangourika.pdf

でも、現行の手形を変更するということは、古いフォーマットの手形には対応しないということなので、移行措置がまた必要になる。なお、チェックトランケーションとは、クレジットカードナビゲーションによると、次のように説明されていた。
(出典:http://creditcard-navigate.com/bank/20150202-4/

小切手は、その性質からどうしてもお金に換えるには手間がかかるということがあります。その処理を迅速に進めるために導入されたのがチェックトランケーションであり、これはデジタル画像の小切手管理システムのことです。 手形交換を電子化して、手形と小切手の現物交換の手間を省くことができ、このシステムを使用するには電子手形交換所を設置する必要はあります。実際には銀行から取引明細書を受け取る際には、使用済小切手の代わりにデジタル画像の小切手を送り、その画像には法的に有効な写しという旨が記載されており、法的に問題なく使用できることがはっきりと明記されているのです。また、銀行ではデジタル画像の小切手を補完する場合には、ほとんどの場所では現物を破棄することが多いでしょう。チェックトランケーションを導入するメリットとして、事務負担や決済リスクの管理や顧客サービスの向上、現物が損失する危険性を回避したりでき、また交換作業も省けますので、コスト削減にも繋がります。日本でも導入が検討されましたが、費用効果や小切手自体が国内で流通量が少ないなどの面から検討は凍結されている状態ですが、アメリカでは一番流通量が多く導入済であり、その他の世界中でもすでに導入されており、日本でも取り入れれば国際的な金銭を手軽に使えるようになり、国益にもかなう事です。ただし、すでに全銀協が一度検討をやめているので、導入される見込みは少ないのが現状でしょう。

結論
つまり、現在、手形を運用している全銀協が電子化する意思があるのかどうか。中島教授の不満はその辺りにありそうな。全銀協がやらないなら他の機関にさせるような代案を出せば、全銀行は頑張って真剣に検討するのではないだろうか(笑)