LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

教育勅語と実語教

はじめに
平成30年10月2日に第4次安倍改造内閣の組閣が発表された。文科省の大臣に任命された柴山昌彦大臣の就任会見の発言に朝日新聞をはじめとするマスメディアが攻撃している。何が問題なのだろうか。日経新聞では記事として取り上げられていない。

教育勅語とは
明治23年(1890年)に教育の基本方針を示すものとして明治政府が制定した明治天皇勅語だ。勅語とは、天皇が国民に対して発する意思表示の言葉とある。Wikiをみると、「大日本帝国における国民道徳の基本と教育の根本理念を明示するために発布された。とある。何が書かれているのだろう。

教育勅語は315文字
言葉としては知っていても、何が書かれているかを知らない。そもそも見たこともない。現代人はそんな人も多いのではないだろうか。非難する前に、教育勅語は何かをマスメディアは解説しない。感情的な言葉の伝達だけをしているように感じるのは自分だけだろうか。
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 出典:http://www.media-japan.info/?p=3944

教育勅語の現代訳
わずか128年ほど前なのに、原文を見ても何が書いてあるのかさっぱり解らない。どういう意味かをネットで調べてみると、次の訳が分かりやすい気がした。親孝行をしなさい。兄弟姉妹は助け合いなさい。夫婦は仲良くしなさい。学問を怠らず職業に専念し、人格を磨き、社会公共のために貢献しなさい。教育勅語に書かれていることは日本人が遥か昔から大切にしてきた日本人の心を大切にしなさいと言っているにすぎない。
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 出典:https://blog.goo.ne.jp/cdp50570/e/5528d5730795932d024cb7a43452ef21

実語教の教え
このブログでも何度か実語教について書いている。そして、教育勅語に書かれていることは実語教に書かれていることを明治天皇の言葉として分かりやすく内容を凝縮したものとも言える。このブログの読者は実語教について知っている人が多いと思うが、一般の人はまだまだ知っている人は少ないだろう。だって、マスメディアはなぜ教育勅語が悪いのか。教育勅語はどのような想いでできたのか。日本人の心を育んできた実語教について解説しない。テレビでも、二流の政治家の発言を引用ばかりしている。
hiroshi-kizaki.hatenablog.com

教育勅語の反省点
では何が悪かったのか。それは、1939年に第二次世界大戦が始まり、治安維持法が1941年(昭和16年)に制定された。そして、当時の政府が教育勅語を国民教育の思想的基礎として神聖化した点にあるのではないか。つまり、国民を鼓舞し、扇動するために錦の御旗にされた点ではないかと思う。wikiでも、この点については、「戦争激化の中にあって、1938年(昭和13年)に国家総動員法が制定され、その体制を正当化するために利用された。そのため、教育勅語の本来の趣旨から乖離する形で軍国主義の教典として利用されるに至った。」と記載されている。教育勅語が悪いのか、それともそれを悪用した政府が悪いのか。

スマホは悪か
子供達にもスマホは浸透している。学校の先生や保護者は子供がスマホを使わないように指導して欲しいと言われることがあった。しかし、スマホが悪いのか。スマホを利用する子供が悪いのか、正しい利用方法を指導せずに自由に使わせる保護者が悪いのか。それを放置する学校が悪いのか。何か重篤な事件が発生すると、犯人探しが始めることがあった。最近は、スマホのリスクを子供達にも教えて、正しく、節度を持って使わせようという方向にある。

子供の声
先日訪問した小学校では5年生に話をした。先生が質疑や感想を話す時間を5分ほど設定してくれた。5分でも足らないくらい子供達が挙手して次つぎと感想や質問などをしてくれた。その時にある女の子は、こう話をしてくれた。「私はまだスマホを持っていません。いわゆるキッズ携帯です。スマホを欲しいと思っていたけど、今日の話を聞いて怖いこともある。もう少し持つのは大きくなってからにしようと思いました。ありがというございました。」ちょっとおませな感じの可愛い子だった。スマホをガンガン使っているのかと実は想像していたら、こんな感想を受けて実はびっくりした。悪いのはスマホではなく、そのリスクを示し、正しい使い方を一緒に考えていくことが大切ではないだろうか。

実語教を考える
教育勅語が悪いのか、悪くないのかという議論はしたくない。やはり感情的には悲しい戦争とセットで議論される可能性があるし、慎重に対応すべきだろう。その意味では、柴山大臣も脇が甘かったのかもしれない。柴山大臣は、もしかしたら実語教のことをご存知ないのかもしれない。1000年以上にわたって日本人の心を育ててきた実語教に書かれている内容を道徳教育に活用することが可能かを検討したいと言っていたら、野党の人はどのようにコメントするのだろう。

まとめ
テレビにもよく出演される齋藤孝明治大学教授が実語教の解説本を出している。著者自身も8歳の時に実語教と童子教を学んだという。著者は1960年静岡生まれだ。静岡の小学校では粋なことをしていたのだろうか。興味のある人は読んでみてはいかがでしょうか。
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相関関係と因果関係

はじめに
昨日は台風が接近するなか、久しぶりに会社のゴルフコンペに参加した。アスリート向けのタフなゴルフ場だったが、打ちっ放しがないので、受付ギリギリまで近くのゴルフ練習場で練習していた(笑)。お陰で前半のドライバーはほぼ矯正できて44。後半は持病のパターイップスが出て、ドライバーも左に曲がるというか、まともに当たっていない。なんとか51。でも、この2つの現象は同じような原因のような気がする。何が原因なんだろう。

スマホの利用時間と学力の関係
一昨日は、これまた久しぶりに横浜の小学校を訪問して、100人ほどの5年生にお話をした。その時に、下の保護者向けのスライドも含めて話をしたら、鋭く突っ込んできた子供がいた。素朴に「本当にケータイの利用時間を減らすと成績が上がるのですか?」この質問は素晴らしい。保護者に説明すると、我が意を得たりと「分かりました。今日から子供のケータイの利用時間を制限します」というコメントが返ってくることが多い。本当はそうじゃないと思いながら、くどくなるので、「そうですね。」とお茶を濁すことがある。しかし、今回は問題点をズバリと聞いてきた。つまり、これは因果関係のグラフではなく、相関関係のグラフなのだ。ケータイの利用時間を減らすだけでは成績は上がらない。ちゃんと勉強に興味を持って、真剣に勉強する。その結果として成績が上がるし、同時にその結果としてケータイの利用時間が減るということだ。子供の感性は素晴らしいと思う。これからは保護者にもこの構図をちゃんと説明するようにしようと反省した。
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 出典:文部科学省

血圧と健康の関係
毎年健康診断の時に血圧が高めにでる。特に、看護師さんが美人だったりするとてき面だ。さらにスタイルが良かったりしたらもうそれだけでドキドキしてしまう(笑)。しかし、血圧が高いことは悪いことなのでだろうか。熱中症の原因を調べていると血圧が低い人や、高血圧で降圧剤を服用している人の方が重篤化する傾向がある。下のグラフは、年齢ごとの血圧と死亡率を示したものだ。物事は二軸で説明できることは少なく、三軸とか四軸でないと説明できないことが多い。各年齢で見ると、80台は血圧が高くても顕著に死亡率は上がっていない。それよりも低血圧の方が死亡率が上がる傾向にある。70台は血圧が上がると死亡率も徐々に上がるが、血圧が引くと急激に上がっている。60代はあまり関係ないようだ。しかし、年齢が上がるほど死亡率は確実に高まっている。これはどういうことかというと、年をとるほど残念ながら死亡率は上昇する。そして、同時に年をとるほど血圧も上昇する。従って、血圧が高いと死亡率が高いという相関関係にある。先の小学生なら「血圧を下げたら本当に死亡率が減るのですか?」と素朴に質問するかもしれない。単なる相関関係を因果関係のように連想させるトリックに騙されていはいけない。
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 出典:血圧と死亡率 | おしえて!ゲンさん! ~分かると楽しい、分かると恐い~

降圧剤と死亡率
降圧剤を服用している人と服用してない人で死亡率の差異がどの程度あるのかのデータを調べたが残念ながら分からなかった。しかし、下の図のように降圧剤を服用している人と降圧剤なしの人の、血圧と自立者の割合の関係を調べたグラフがあった。これをみると、降圧剤を服用しない人の方が服用する人よりも血圧に関わらず自立者の割合が高いということだ。しかも、降圧剤を服用している人で最大血圧が119以下の人は自立者の割合いが極端に少ない。これは降圧剤の副作用と関係があるだろう。とはいっても、パロディだが、血圧が高いほど自立者の割合は減少傾向にある。このデータをさらに年代別に調べてみるともっと詳しいことが分かるけど、流石にネットではそこまでは分からなかった。
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 出典:高血圧は健康で長生きできます。血圧の薬は飲んじゃダメ。中高年は180でも大丈夫。(改訂版) - 薬屋のおやじのボヤキ

ゴルフと健康
残業時間が100時間を軽く超えていた頃にメンタルの診断を受けさせられたことがある。確かに慢性的な睡眠不足で週末は昼寝で休養しないとキツかった。しかし、その時の産業医を見た時に、この人はメンタルをやられていると感じた。メンタルをやられる社員を一手に引き受ける。しかもメンタルは伝染する。やられない方が不思議かもしれない。でも、その産業医からの質問は「何か運動してますか?」だった。そして、たまにゴルフをしますと答えると、「あっ、そう。じゃあ大丈夫ですね。」といとも簡単に診断が終わった。ゴルフをしたらなぜ大丈夫なのかを知りたかったけど、それを聞かせないオーラが放たれていて、「わかりました。ありがとうございました。」とメンタル診断は無事終了した。たまに運動して体の節々が痛くなるほど体をいじめるのも必要だと思う。また、頭ばかりではなく体を使うことで心身のバランスも良くなるのかもしれない。機会があればもっと深掘りしたい。

まとめ
相関関係と因果関係は似て非なるものだ。本当の因果関係とまやかしの因果関係を見抜く眼力は常に持っていたいと思う。経営指標も要注意だと思う。経営指標の良い会社は業績が良いが、経営指標をよくしようとしても会社経営はよくならない。この2つはどちらも結果だ。大切なことは、従業員が明るく挨拶しているか、社員の目が輝いているか、自由闊達な社風か、お客様やパートナーとの信頼関係を重視しているか。良いものを作ろうと頑張っているか。戦略的に活動しているか。研究開発を頑張っているかなどが重要だ。間違っても、ケータイの利用時間を制限すれば子供の成績が上がるような短絡的思想では、経営者は務まらない。しかし、最近の経営不振に陥る優良企業はそのような経営指標を重視する傾向にないかどうかが心配だ。

以上

西野七瀬の卒業考える。

はじめに
法律の勉強ばかりをしていると頭が固くなりそうだ。ちょっと柔らかいネタにトライしたい。

西野七瀬の卒業宣言
9月20日に「ななせまる」こと乃木坂46のエースの一人である西野七瀬が卒業宣言を公式ブログで行った。これはショックだったけど、ファンには概ね前向きに捕らえられているような報道が多い。
 出典:乃木坂46 西野七瀬 公式ブログ

西野七瀬の魅力
ななせまるの魅力は何と言っても他のアイドルと異なる点だろう。アイドルを目指す娘は一般に自己主張が強く、少しでも自分をアピールしようと頑張るタイプが多い。でも、西野七瀬はそういうところがない。人見知りが強い。蛇とかトカゲとか爬虫類は大丈夫なのに、なぜ人間がダメなのか。面白い。

瞳がまっすぐ
もしかしたらコンタクトで強調しているのかもしれないが、大きな瞳で見つめられると中高年のオヤジはどきっとする。まして若い男の子はズッキュンだろう(笑)。サンマほどではないが、笑うと前歯が綺麗だ。そんな内面的な部分と外面的な部分の両方が魅力だろう。話をしたことはないけど、ライオンのグータッチとかを見ていると素直でまっすぐな性格だと思う。
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 出典:ライオンのグータッチ
アイドルの周期
グループアイドルの元祖はおニャン子クラブだろうか。フジテレビが放送する「夕やけニャンニャン」の番組アシスタントの女性グループとして結成したのが始まりだ。1985年4月から1988年9月までだ。工藤静香は勝ち組だろう。今から思うと3年半と短い寿命だったが、彼女たちの魅力が輝いた時期でもあるし、秋元康はいかにアイドルグループの寿命を伸ばすかを考えたのだろう。次はモーニング娘。だ。シャ乱Qつんく♂が手掛け、1998年のメジャーデビューから始まり、ピークを過ぎた後も、例えば今年なら、「モーニング娘。'18」(ワンエイト)として頑張っているようだが、正直あまり好きでない。これに対して秋元康がリベンジしたのが、AKB48グループで、2005年12月に秋葉原で誕生した。AKB48グループは現在では名古屋、大阪、福岡、新潟、瀬戸内に姉妹グループがある。上海は頓挫したが、ジャカルタ、バンコックなどにも展開している。

AKBグループの総選挙
前田敦子大島優子が互いに優勝を競って切磋琢磨していた頃がやはり黄金期だろう。当時のスピーチは、ものまねのネタにもなるほど社会に浸透した。アイドルたちも使って良い言い回しと、使ってはいけないフレーズなどを必死に勉強しながら、さらに自分の色を出そうと頑張っている。個人的にはぱるるのそっけないスピーチが好きだった。総選挙で神7に選ばれるとテレビなどへの露出も増えるが、最近は誰が神7か良く分からない。個人的な推しメンもどんどん卒業していてもうついていけない。そうしたAKBグループの公式ライバルが乃木坂46欅坂46等の坂道シリーズだ。

乃木坂46
乃木坂46が結成したのは2011年8月だ。東日本大震災が起きた年の夏だ。しかし、西野七瀬は最初はセンターではなかった。2014年に発売された8枚目のシングルで4代目のセンターとなった。切ない歌声でキュンとくる「気づいたら片想い」だ。明るく楽しい曲も良いけど、個人的には、ちょっと寂しげな「隙間」とか、「光合成希望」とか、そんなマイナーな曲が好きだ。秋元康は天才だと思う。

立つ鳥跡を濁さず
鳥は飛び立つ時には、体重を少しでも軽くするために不要なものを排出する。これは生理的な必然かもしれない。自然界には跡を濁さない鳥はいないかもしれないし、人間でも簡単ではないけど、だからこそ立つ鳥跡を濁さずは貴重だ。そして、1年前から卒業を考えながら、スタッフと調整し、やっと機が熟したと卒業宣言をする西野七瀬は立派だと思う。そして、そんな風に筋を通す彼女なら卒業してからも活躍することを期待できると思う。結婚したり、出産したり、女性としての幸せを節度を持って満喫して欲しい。

まとめ
アイドルおたくでもないけど、西野七瀬は好きだ。まだ24歳だ。卒業してからも少なくとも数年は芸能界で活躍はできるだろう。これからの彼女の活躍を応援したいと思う。

以上

労働安全衛生マネジメントシステム:ISO45001を考える。

はじめに
ISO規格をご存知でしょうか?有名なのは品質マネジメントシステムに関するISO9000シリーズだろうか。そもそも、ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略だ。スイスのジュネーヴに本部を置く非営利法人で1947年(昭和22年)2月23日に設立された。日本のJISは国内規格だが、ISOは国際規格(international standard=IS)だ。ISOは単独で規格を提示する場合もあるし、ISOとIECが合同で規格を開発する場合もある。例えば安全のためのガイドラインとしてISO/IEC guide51が標準化されている。
 出典:https://www.sis.se/api/document/preview/917199/

ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)入門セミナー
ISOの規格としては、すでに本年3月にリリースされている。これに対応したJIS規格が9月28日にリリースされる計画だ。日本品質保障機構では、このJIS規格のリリースに先立ってセミナーを開催したのでこれに参加した。簡単にポイントを報告しておきたい。

最近の労働災害の動向
1974年(昭和49年)には347千人の死傷者(休業4日以上)が発生していたが、2014年(平成26年)には119千人まで減少している。しかし、直近で見ると、平成29年度の死傷者数は114千人であり、平成28年の112千人よりも逆に増加している。

労働災害の減少傾向が反転した理由
労働災害の撲滅に対する改善施策を進め、マクロ的にはその効果が出ているものの、労働災害を増やす要因が近年増えていることも注意する必要がある。例えば、従業員の高齢化、正社員の減少と派遣社員の増加、下請け・孫請け、技能や知識の伝承が困難なためだ。

労働災害の事後的対応から系統化された仕組みへ
災害や事故が発生したときには、撲滅対策が検討されて、実行されるが、これはいわば行き当たりばったりの活動だ。そうではなく、そもそも事故が発生しないような仕組みを導入し、実現することが重要という認識だ。この認識で検討が進められているのがISO45001だ。

OHSMS(オームス)の導入
安全衛生活動を持続するための労働安全衛生的管理システムをOHSMS(Occupational Health and Safety Management System)だ。

日本的考え方と欧米的な考え方
日本では、災害の主原因を人間に求める傾向があり、技術的な対策も人の教育が重視される。安全衛生法では、人や施設の安全化を目指し、災害が発生するたびに規制が強化される。また、安全に対するコストは認めにくく、最低限のコストで対応する傾向がある。一方、欧米では、災害問題は技術的な問題と感が、人の教育よりも技術的な仕組みの改善を優先する。安全対策にコストがかかるのは当然として、対策を投資と考える。

ISO45001の特徴
労働安全衛生法では、労働者の安全を守ることを主眼としているが、ISO45001ではトップマネジメントを含めて働く人を定義し、事故を未然に防止するためのPDCAを回す仕組みを作ることを主眼としている。

労働安全マネジメントシステムを導入することのメリット
関係者の役割や権限を明確にし、運用上の課題を示し、問題が顕在化する前に解決することを目指す。リスクアセスメントを行うことで取り組む優先順位を明確にして、効果的な投資を実現する。

ISO45001の開発経緯
そもそもの発端は2013年10月で、第一回PC283会議だ。その後、検討が進み、2018年3月に国際規格(IS)が発行し、2018年9月28日にJIS規格が発行する予定だ。規格の検討の途中では、2016年5月には3000件の不承認コメントが発生したが、これに対する検討を進めた。2017年9月には2000件のコメントが発生したが、これは基本先延ばしにすることで規格の成立を優先した。仕組みの実現を目指すISOと規格を守らせようとするILOは意見が食い違うことが多いようだ。

ISO45001の特徴
その1)手順ではなくプロセスを重視
 具体的な手順を作成すると形式的な文書が増大する。ISO45001では手順ではなく、手順を含むプロセスを明確にすることを重視する。

その2)働く人(Worker)
 いわゆる現場で働く人労働者だけではなく、組織の管理層やトップマネジメントまでを含めて働く人と定義している。これは労働災害を撲滅するにはトップが本気になって取り組むという姿勢が非常に重要という認識からだ。

その3)PDCAを回す
 危険源やリスク、機会を評価し、起源源の除去やリスクの低減・変更、緊急事態への備えや対応を行う。特に大事なのは、インシデントの調査や不適合のレビューを行うことでPDCAを回すことだ。

その4)安全文化の醸成
 これは非常に日本的な印象を受けるが、欧米の企業においても労働安全を重視する社風をいかに実現するかが重要だと認識しているためだ。安全文化を醸成するには、労働者だけではなく、トップマネジメントを含めて働く人が強力なして取り組むことが重要だ。

その5)トップマネジメントのリーダシップとコミットメント
 従来の労働安全は、労働災害の発生を未然に防止するための管理の規定を定め、その規定を遵守することを求めている。ISO45001ではそれに加えて、トップマネジメントが安全衛生方針を確立し、コミットすることの重要性を重視している。例えば、その中には、次のような項目がある。
  ・労働安全衛生法文化を形成し、主導し、推進する。
  ・働く人が危険源やリスクを報告する場合に、報復から擁護する。
  ・働く人の協議および参加のプロセスを確立、実施する。
  ・安全衛生委員会を設置し、機能することを支援する。

まとめ
ISO45001に関する理解度がまだ低いので、十分にポイントを整理できたかどうか不安だ。ただ、今後、ISO45001に関する対応を求めらえる人もいるかもしれない。労働災害の原因を人に求めるのではなく、仕組みに求めるというのは理解できるし、日本社会の課題かもしれない。少しでも参考になる部分があれば幸いだ。

以上

昭和恐慌からシンギュラリティ、ポリテック、そしてベーシックインカムの可能性まで

はじめに
9月9日に重機についてこのブログにアップしたときに、昭和恐慌の時には雇用対策として機械化が禁止されたことを書いた。後から考えるとなんて愚かなと思うけど、その時の政治状況ではやむを得なかったのだろう。そして、もし、今後不況が発生した場合には同様に雇用対策としてAIを禁止するなんてこともあり得るのだろうか。そんなことをもう一度考えてみたい。
hiroshi-kizaki.hatenablog.com

昭和恐慌
歴史から人類は何を学ぶのだろう。経済は恐慌と好景気を繰り返す。昭和の恐慌は1929年(昭和4年)に米国発で起きた世界的な恐慌だ。2008年(平成20年)9月に発生したリーマンショックの79年前だ。不況が発生して雇用不安が拡大したため機械化を禁止した。満州や朝鮮の開拓には機械化は続行したが、国内では雇用対策を優先した。当時日本経済の舵取りをしたのが高橋是清だ。一方、米国はニューデール政策に基づいて機械化を推進した。日本と米国の機械化に関する取り組みの違いから日本の実力が下がり、米国の実力が一気に上がったのは注目すべきだろう。
 出典:土工機械史:大正・昭和(戦前・戦中)期

第4世代の人工知能は2040年代か
人工知能のブームは過去にもあった。最初が1950年代でコンピュータへの期待から高まった。二番目が1980年代でルールベースのソフトとサーバの高性能化から盛り上がった。第五世代コンピュータの開発に約570億円の国家予算を投じた頃だ。そして現在は三番目だ。ほぼ30年周期で盛り上がるのは偶然なのだろうか。ブームが立ちがると研究者が殺到し、ブームがさると研究者のトラウマとなる。その意味ではコンピュータの性能が人類を超えるという2045年のシンギュラリティが第四のブームの時期と重なるのが興味深い。
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 出典:http://ねねねnews.com/2045年問題とは?2045年問題の対策はなにかある?

シンギュラリティ
未来学者のカーツワイルが予測した2045年の定義は、10万円ほどで入手できるコンピュータの性能が地球の全人類の頭脳の総和を超えるというものだ。集積度の観点ではコンピュータが人間の頭脳を超えるのは2020年だ。第二世代はルールベースの人工知能。第三世代はそのルールを自分で生成する=機械学習人工知能だ。第四世代のキーテクノロジーはなんだろう。
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 出典:Singularity university

量子コンピュータ
量子コンピュータについては、このブログでも今年の2月に2回に分けて解説した。現在は、量子アニーリング方式が先行しているが、これが覇者となるかどうかは不明だ。量子ニューラルネット方式と量子ゲート方式が虎視眈々と狙っている。この3方式の中で唯一デジタル方式なのが、量子ゲート方式だ。日本でも理化学研究所がNTTやNEC東芝などと組んで5年後のクラウドサービスの開始を目指すと発表した。10年後に100量子ビットの集積を目指すというが、米国はすでに50量子ビットを超えている。米国よりも2桁も少ない投資金額では世界に存在感を与えるようなインパクトを残せるのかは極めて不明だ。
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 出典:hiroshi-kizaki.hatenablog.com

東京五輪後の不況
オリンピックが過ぎると不況になると予想する人が多い。問題は国内の不況ではなく、世界的な大恐慌が来るのかどうか。そして、仮に不況がきたとすると、深刻な雇用不安が拡大するだろう。そのときに、日本の政府はどのように対応するのだろう。昭和の日本のように人工知能が原因だとして、人工知能の利用を禁止するのだろうか。それは無理だろう。あるとしたら、人工知能への開発投資を縮小したり、見直したりして歳出を減らすようなことかもしれない。しかし、それは正解なのだろうか。人工知能に対する研究開発への投資を逆に拡大する英断をその時の指導者に可能なのだろうか。安倍総理の再任が決まり、何もなければ2021年9月までだ。ポスト安倍を狙う人材がAIに対してどのような知見を有するのだろう。

小泉進次郎の動き
石破氏は地方票で全体の45%を確保したのは驚きだ。プレジデントの記事では、小泉進次郎が選挙期間中に石破と組んでいたら逆転したかもしれない。投票直前に石破指示を表明した小泉進次郎の対応は安倍陣営にとってギリギリ容認できる限界だったという。そして、自分に刃向かった人材(小泉進次郎)を内閣に取り込むことで安倍内閣の目玉とする。そんな想像が記載さている。政治の世界は、技術者には理解できない。できることは、その後の動向を注視することぐらいだ。
 出典:president.jp

ポリテック
政治にAIを活用することを小泉進次郎はポリテックと呼んでいる。ITの世界での討論会にも参加し、AIに対する高い見識を示している。ポスト安倍時代に、石破氏が総理になるのかどうかは別にして、小泉進次郎氏が構想するポリテックを進めるなら、日本の将来に明かりが見えるような気がする。しかし、AIにも光と陰がある。また、現在の機械学習にも限界がある。そのような効能と限界を理解した上で、AIを活用するシナリオを示して欲しいと思う。少なくともAIの禁止令を出すような愚行がないことを期待する。
 出典:www.youtube.com

まとめ
東京五輪の後に不況が起きても、雇用対策としてAIが禁止されるようなことはないと期待したい。高齢化や人口減少の穴を埋めるために海外からの労働者の拡大と同時に、ロボットやAIの活用が進むだろう。2045年のシンギュラリティに向かって発展するかもしれない。しかし、その後には60年に一度の大不況が発生するかもしれない。そのようなときに、日本人が幸せを感じるような日本となるには、やはりベーシックインカムのような仕組みが必要となるのではないだろうか。問題はその導入タイミングだろう。原資が問題になることも多いが、日本銀行が発行する紙幣を支給するのではなく、日本国政府が発行する政府認定通貨として、電子的に全国民に支給するような仕組みであってほしい。仮想通貨は、トラブルも多く、失望期にあるが、そのようなタイミングの今こそ将来に向けての地道な検討が必要な時期だろう。

以上

イスラエルのお正月と蜂蜜の起源

はじめに
 日本でお正月というと1月だ。中国だと旧暦の正月なので1月末から2月頭だ。お仕事で打ち合わせをしていて、先方がいまお正月なのでと言い訳をする。一体どういうことかというと、イスラエルはいまがお正月だ。「そんなことは何千年も前から分かっている!」とは叱責しなかった。なぜなら私も初耳だったから(笑)。

イスラエルのお正月
イスラエルでは、ユダヤ暦のお正月をお祝いする。今年だと、9月9日から11日だ。しかも、西暦だと2018年、神武天皇即位を紀元とする皇紀だと2678年、そしてユダヤ暦ではなんと5778年。皇紀よりも3100年も古いとはすごい。

お正月の行事
イスラエルでは、単にお正月を祝うだけではなく、その後も行事が続く。これはエジプトを脱出して、聖地イスラエルにたどり着くまで40年も流浪したことを忘れないという意味もあるようだ。2015年の暦では次のようだったという。今年は5日ほど前倒しと理解すればいいのだろうか。
 2015年9月14日 新年(ユダヤ教の正月)ローシュ・ハシャナ(13日の夜に新年を祝う)
 2015年9月23日 ヨム・キプール(贖罪日)
 2015年9月28日 スコット(仮庵の祭り)
 2015年10月5日 シムハット・トーラー (トーラーを読み終える日)
 出典:https://tokuhain.arukikata.co.jp/jerusalem/2015/09/post_19.html

お正月の行事
イスラエルでのお正月の挨拶は、「シャナー・トバー(שנה טובה)」という。これは「あけましておめでとうございます」という意味だという。そして、次のような習慣がある。日本のお正月との奇妙の共通点があるように思うのは気のせいだろうか。
1) 除夜の鐘
日本ではお寺で鐘を鳴らすが、イスラエルでは、ショファー(שופר)という雄羊の角笛を鳴らして、日没を知らせる。日没が終えると新年なので、実際には大晦日である9月9日の日没後から新年を祝うことになる。
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 出典:ショファー - Wikipedia

2) おせち料理
日本のおせち料理は芸術的だ。イスラエルで正月に食べるものも、それぞれ意味を持たせているようだ。例えば、蜂蜜をつけたりんごは甘い=良い年となるという願いを込める。ざくろも子孫繁栄を願った食材だ。日本だと数の子や里芋だろうか。そして、魚や羊の頭を食べる習慣もある。これは日本でいう尾頭付きだ。頭=リーダとなるような人物になることを願って食するという。お料理がいっぱいで、もう動けなくなるぐらいまで食べるのがイスラエル流らしい(笑)。
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 出典:http://arayama.hans-huber.com/

3) 年賀状
バーモントカレーではないが、りんごと蜂蜜を描くのが一般的な年賀状だという。ユダヤ人は古来からリンゴを食していたのだろうか。そういえば、アダムとイブでもリンゴが出てくる。蜂蜜との関わりも古代からだ。ユダヤ教徒のローシュ・ハ・シャナー(年賀状)は、ティシュレー月の1月だけでなく、エルール月の12月末から送られる。新年の挨拶はヘブライ語で「良い年」を意味する「シャナー・トバー(שנה טובה)」だという。
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 出典:https://jp.123rf.com/

蜂蜜の起源
大好きなWikiで調べてみると、日本語のWikiには記載はないが、英語のWikiには蜂蜜の起源について説明があり、少なくとも8000年前には蜂蜜のために狩りを始めたようだ。スペインのバレンシアの洞窟の絵が残っている。野生のハチの巣からハチミツとハニカムを収集しているハニーハンターを描いている。バスケットやひょうたんを運び、野生の巣に達するためのはしごや一連のロープを使用している。古代では砂糖がないため、ギリシャ時代やローマ時代の甘味成分として貴重だったようだ。
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 出典:Honey - Wikipedia

まとめ
イスラエルの正月がまさか9月とは思わなかった。それよりもちゃんと連絡をとって納期に間に合わせてくれ!(涙)

以上

労働安全衛生法:溶接を考える。

はじめに
溶接という言葉を聞いたことがあるでしょうか?一般的にはあまり馴染みのない言葉からもしれない。工場などで鉄と鉄をつなぐ作業をしているのが溶接だ。

本田技研鈴鹿工場でのアルバイト
学生時代に夏休みにアルバイトをしようと考えていた頃に鈴鹿工場でのバイト募集があった。説明会に参加すると交通費が支給された。これはいいかもと応募して、3週間ほど勤務した。そのお金で北海道に旅行するつもりだったが、結局は自動車の普通免許の取得費用に消えてしまった。工場では、昼間勤務と夜間勤務を1週間交代で行う。最初にアンケートがあり、つい「頑健」を選んでしまった。一緒に応募した友達は「病弱」を選んでいた。配属先は、当時のアコードの溶接あとを削る作業だった。結構きつかった。何がきついかと言うと体勢が不安定なこともあるが、火花が飛ぶので目がやられる。制服の隙間に火花が入り込んで軽い火傷になる。そして、何よりも騒音がうるさい。後年、左耳が突発性難聴になって高音が聞こえなくなったが、この時に痛めたような気がしないでもない。まあ、しかし現在ではそんな作業は全てロボットがやってくれる。
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 出典:https://jp.123rf.com/

アーク放電
アーク放電(electric arc)とは、電極に電位差を与え、電極間の気体が絶縁破壊することで通電する現象だ。雷なども同じ原理だ。そして、アーク放電が起きるときには、高温と閃光が発生する。それは、気体分子がイオン化し、プラズマを生み出すためだ。
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 出典:電弧 - Wikipedia

オーロラ
北極とか南極に行くと天空にオーロラ(aurora)を見ることがある。なんとも神秘的だ。英語のWikiによるとオーロラは、女神の名前に由来するが、紀元前4世紀のギリシャの探検家ピテアスによる記述が残っていたり、北欧神話にもあるという。近代に入って両極にトライした探検家の伝聞から広く知られるようになった。その原理はプラズマとなった太陽数が地球の磁力線に引っ張られて大気の酸素原子や窒素原子を励起して発光するようだ。
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 出典:オーロラ - Wikipedia

鍛造とアーク溶接
鍛造(forging)とは、金属をハンマーでなんどもなんども叩いて強度を高める手法だ。日本刀を作るときの様子を思い浮かべればイメージできるだろう。この鍛造の手法は、青銅器時代鉄器時代に始まるという。しかし、アーク溶接が始まるのは1800年代になってからだ。イギリスの化学者であるサー・ハンフリー・デービー準男爵(1778年12月17日-1829年5月29日)は、1800年に短パルスの電気アークを発見したことがきっかけで研究・開発が進む。ロシアの発明家ニコライ(Nikolay Nikolayevich Benardos、1842-1905)は、1881年にカーボンアーク溶接を発明した。フランスの発明家アウグストも、カーボンアークを同じ年に発明している。1900年には被覆溶接が発明される。
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 出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/69/8/69_8_971/_pdf

被覆アース溶接
溶接の手法で作業が全て作業で行われるため手溶接とか、手棒溶接ともいう。金属の棒を電極として、母材との間にアークを発生させ、その時に発生する高温で母材を溶かせて、金属を溶接させるものだ。風に強いため、屋外で使う溶接として活用されている。構造が簡単なため広く使われている。
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 出典:被覆アーク溶接 - Wikipedia

溶接の接合形態
溶接は、複数の部材の接合部に熱や圧力などを加えて、一つの部材にする手法だ。その方法には、融接、圧接、ろう接の3種類がある。融接は、接合部を加熱して接合するものでアーク溶接は代表例だ。圧接は、接合部に熱を加えながら圧力を加えて接合する。ろう接は、融点の低いろう材を用いて複数の接合材を溶融するものでハンダ付けが代表例だろう。
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 出典:https://www.ipros.jp/technote/basic-welding1/

アーク溶接とは
アーク溶接とは、先にも書いたように、アーク放電の熱で金属材料を溶融する方法だ。5000~6000Kと非常に高熱である。大気中で金属を溶融すると大気中の酸素や窒素が溶融金属に溶ける。これを防ぐために、被覆材や不活性ガスを用いる。被覆アーク溶接は、金属芯線に有機物や無機物、脱酸剤などの被覆材を塗布することで溶融酸化物(スラグ)層を形成させる。他にも、サブマージアーク溶接や不活性ガスアーク溶接などの手法がある。
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 出典:アーク溶接(アークようせつ)とは - コトバンク

アセチレン溶接とは
アセチレン溶接とは、酸素アセチレン溶接(oxyacetylene welding)とも言い、酸素とアセチレンの混合ガスを用いて母材の接合部を溶かして融合させるガス溶接の一種である。高圧酸素とを混合して点火し、その3000度にもなる火炎で金属溶接や切断を行う方法だ。
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 出典:アセチレン貯蔵及び消費時の注意事項

アセチレン溶接とアーク溶接に関する労働安全規則での規定
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アセチレン溶接に関する付随規定
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交流アーク溶接に関する付随規定
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アーク溶接の労働安全
労働安全に話を戻す。Wikiには良くまとまっていたので、以下に引用する。
1) 労働安全:アーク溶接は強烈な紫外線を発生する。その強さは、アークから50cm離れた皮膚に数秒間アーク光を曝しただけで炎症を起こすほどであり、日光の比ではない。長時間アーク光に曝した場合、火傷、水ぶくれ、シミなどの症状が発生する。何度も至近距離で強烈なアーク光に皮膚を曝すと最悪皮膚癌に至る場合もある。通常、溶接の光では日焼けと同じような炎症を起こし皮が剥けるものの、小麦色の肌にはならない(しかしシミはできる)。裸眼でアーク光を見た場合、電光性眼炎(電眼炎)という目の炎症を起こす。何度も電光性眼炎になると視力の低下や最悪の場合失明に至る。また金属ヒュームという酸化鉄からなる煙を発生し、大量に吸った場合、金属ヒューム熱やじん肺などの深刻な病気の原因となる。ヒュームには一酸化炭素やオゾンも混ざっており、換気には十分注意しなければならない。
2) 防護装備:強力な紫外線を避けるため、アーク溶接作業には長袖、長ズボンの作業服、溶接面、皮手袋が必須である。さらに、ヒュームを避けるために防塵マスクが必須である。また必要に応じて安全靴、スパッツ(足カバー)、厚手の耐熱エプロン、ヘルメット、ゴーグルなどを着用しなければならない。さらに場合によってはワセリンや熱焼け防止クリームなどの表皮保護剤(ゲル状クリーム状の物が望ましい)を顔面や頸胸部周囲などに事前塗布しておく事が望ましい。また、溶接作業者の更衣室、休憩室などには衣服に付いた粉塵を吸い取る装置や、空気清浄器などを設置することが望ましい。
3) 従事者資格:日本では労働安全衛生法の規定により、事業主は従業員をアーク溶接に従事させるにはアーク溶接作業者の特別教育を受けさせなければならない。

特別教育
労働安全衛生法の39条には、特別教育として受講すべき業務が列挙されている。これを全部覚えるのは正直厳しい。今回のテーマの溶接は3番目に記載されている。
1 研削といしの取替え等の業務に係る特別教育(機械研削用といし)、自由研削用といしの取替え等の業務に係る特別教育(自由研削用といし)
2 動力プレスの金型等の取付け、取外し又は調整の業務に係る特別教育
3 アーク溶接等の業務に係る特別教育
4 電気取扱の業務に係る特別教育(高圧又は特別高圧)、低圧の充電電路の敷設等の業務に係る特別教育(低圧)
フォークリフトの運転の業務に係る特別教育(最大荷重1トン未満)
5-2 ショベルローダー等の運転の業務に係る特別教育(最大荷重1トン未満)
5-3 不整地運搬車の運転の業務に係る特別教育(最大積載量1トン未満)
6 揚貨装置の運転の業務に係る特別教育(制限荷重5トン未満)
7 機械集材装置の運転の業務に係る特別教育
8 伐木等の業務に係る特別教育(胸高直径70cm以上の立ち木の伐木、胸高直径20cm以上で、かつ重心が著しく偏している立ち木の伐木、つりきりその他特殊な方法による伐木又はかかり木でかかっている木の胸高直径が20cm以上であるもの)
8-2 伐木等の業務に係る特別教育(チェーンソーを用いて胸高直径70cm未満の立ち木の伐木、かかり木でかかっている木の胸高直径が20cm未満であるもの)
9 小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育(機体質量3トン未満)、小型車両系建設機械(基礎工事用)の運転の業務に係る特別教育(機体重量3トン未満)、小型車両系建設機械(解体用)の運転の業務に係る特別教育(機体重量3トン未満)
9-2 基礎工事用建設機械の運転の業務に係る特別教育(非自走式のみ)
9-3 車両系建設機械(基礎工事用)の作業装置の操作の業務に係る特別教育
10 ローラーの運転の業務に係る特別教育
10-2 車両系建設機械(コンクリート打設用)の作業装置の操作の業務に係る特別教育
10-3 ボーリングマシンの運転の業務に係る特別教育
10-4 ジャッキ式つり上げ機械の調整又は運転の業務に係る特別教育
10-5 高所作業車の運転の業務に係る特別教育(作業床の高さが10メートル未満のもの)
11 巻上げ機の運転の業務に係る特別教育
12(削除)
13 軌道装置の動力車の運転の業務に係る特別教育
14 小型ボイラー取扱業務特別教育
15 クレーンの運転の業務に係る特別教育(つり上げ荷重5トン未満。ただし、跨線テルハはつり上げ荷重5トン以上)
16 移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育(つり上げ荷重1トン未満)
17 デリックの運転の業務に係る特別教育(つり上げ荷重5トン未満)
18 建設用リフトの運転の業務に係る特別教育
19 玉掛けの業務に係る特別教育(つり上げ荷重1トン未満のクレーン等にかかわる作業)
20 ゴンドラの操作の業務に係る特別教育
20-2 作業室及び気閘室へ送気するための空気圧縮機を運転の業務に係る特別教育
21 高圧室内作業に係る作業室への送気の調節を行うためのバルブ又はコツクの操作の業務に係る特別教育
22 気閘室への送気又は気閘室からの排気の調整を行うためのバルブ又はコツクを操作の業務に係る特別教育
23 潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコツクの操作の業務に係る特別教育
24 再圧室の操作の業務に係る特別教育
24-2 高圧室内作業の業務に係る特別教育
25 四アルキル鉛等の業務に係る特別教育
26 酸素欠乏危険作業の業務に係る特別教育
27 特殊化学設備の取扱い、整備及び修理の業務に係る特別教育
28 エツクス線装置又はガンマ線照射装置を用いて行う透過写真の撮影の業務に係る特別教育
28-2 加工施設、再処理施設又は使用施設等の管理区域内において核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物の取扱いの業務に係る特別教育(加工施設、再処理施設、使用施設等の管理区域内)
28-3 原子炉施設の管理区域内において、核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物の取扱いの業務に係る特別教育(原子力施設の管理内)
29 粉じん作業に係る特別教育
30 ずい道等の掘削、覆工等の業務に係る特別教育
31 産業用ロボツトの教示等の業務に係る特別教育
32 産業用ロボツトの検査等の業務に係る特別教育
33 自動車用タイヤの組立てに係る業務のうち、空気圧縮機を用いて当該タイヤの空気の充てんの業務に係る特別教育
34 廃棄物の焼却施設に関する業務に係る特別教育(廃棄物焼却炉を有する廃棄物の焼却施設においてばいじん及び焼却灰その他の燃え殻を取り扱う)
35 廃棄物の焼却施設に関する業務に係る特別教育(廃棄物の焼却施設に設置された廃棄物焼却炉、集じん機等の設備の保守点検等)
36 廃棄物の焼却施設に関する業務に係る特別教育(廃棄物の焼却施設に設置された廃棄物焼却炉、集じん機等の設備の解体等、これに伴うばいじん及び焼却灰その他の燃え殻を取り扱う)
37 石綿等が使用されている建築物又は工作物の解体等の作業に係る特別教育
38 東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る特別教育
39 足場の組立て、解体又は変更の作業(地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除く)に係る特別教育
40 ロープ高所作業に係る業務に係る特別教育

まとめ
溶接についての知識を少し深掘りしてみた。労働安全コンサルタント試験では交流アーク溶接についての出題が目立つが、もしかしたら今年ぐらいはアセチレン溶接に関する出題があるかもしれない。それにしても出題範囲が広いし、覚えたつもりでも一晩寝るとすっかり忘れている。先が長い(涙)。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。今回は引用が多くてすいません。