LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

オイルタンカー事故から将来の自動運航船の可能性まで

イランのオイルタンカー事故
先のブログでも書いたように事故のレベルではなく、海外が報じているように災害(デザスター)のレベルだと思う。朝日新聞テレビ朝日でも取り上げつつある。事実確認と問題指摘をしてくれている。具体的には、次のような内容だ。
1) 奄美大島に油状のものが漂着した。
2) 第10管区海上保安本部は油状の固まりと沈没したタンカーとの関連を調べる。
3) 地元漁協職員は漁への影響を心配している。
4) 中国交通運輸省は2月1日に北京で記者会見を開いて現状を説明した。積荷のコンデンセート約13.6万トンと燃料の重油約1,900トンを積んでいた。重油を除去しなければ海洋汚染の可能性が残る。船体の引き揚げも検討する。油の除去作業には中国当局の船5隻のほか、日韓の応援も得ている。海面に800メートル近い吸油ロープを張るなどして流出を抑えようとしている。1月下旬の水中調査では沈んだタンカーの船体に最大35メートルの穴が見つかった。甲板の通風口なども大部分が損壊しており、さらなる油の流出の懸念があるという。油の流出を防ぐには引き揚げが最も効果的とする。国際条約に照らしタンカー所有者や船籍国と検討して引き揚げるかどうか決めたい。

中国での記者発表
2月1日に行われたという中国での記者発表の内容を調べてみた。そうすると詳細の説明と共に、記者団との質疑応答の内容が詳細に記載されていた。15:35に始まり、16:59に終了していた。約1時間半にわたっての記者発表だ。内容も非常に充実している。そして、その質疑の内容も詳細に公開していた。この真摯な対応は評価されるべきだろう。
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(出典:中華人民共和国交通運輸部、参考1)

交通運輸部からの説明
すべて中国語なので、Googleの自動翻訳で日本語にしてみた。要点のみを次に示す。意訳で要約したのはご容赦願いたい。中国農業省は、1月12日より、調査や監視内容を掲載している(どこに?)東シナ海水産研究所中国科学院の協力を得ている。6隻の船舶で7000海里以上を航海し、約500のサンプルをモニターした。この調査結果によると、関連海域の漁業資源に一定の影響を与えている。調査と監視は継続する必要がある。漁業資源、海洋の汚染調査、漁業資源の追跡調査を継続する。水産資源の品質と安全性を確保するため、領域の漁業管理と制御の強化を行う。沈没地点から30海里のエリアの洋上航海を制限する。石油系炭化水素の含有量とし第一標準(15mg/kg)と第二標準(50mg/kg)を定める。海の監視範囲を拡大し、さらに水産資源の品質と安全性監視を強化する。
(出典:中華人民共和国交通運輸部、参考1)

ARGOプロジェクト
前述の通り調査は中国が主導で行っているようだ。Twitterを見ていたら「cmk2wl」さんがARGOについて言及していたので、少し調べてみた。Wikiによると、ARGO計画とは、全地球的な海洋表層の水温や塩分プロファイルをリアルタイムで取得するグローバルなプロジェクトだ。世界気象機関やユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)とうの国際機関の協力のもと24の国と地域が参加(2006年現在)している。日本も参加している。ARGO計画では全世界の海洋に3000本のアルゴフロートを配置して、データを集める仕組みだ。下の図で見ると図の中央上に日本列島がある。今回の事故発生現場の周辺には日本のアルゴフロートが配置されているように見える。
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(出典:Wiki、参考2)

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日ユ同祖論には諸説あり(笑)

日本人の起源
日本人の祖先をたどると縄文人になる。縄文人の前がどうだったのかはよくわからない。このお正月にはお伊勢さんをお参りした。色々と勉強になったし、神道にも興味を持った。また、昨年の夏にエストニアリトアニアを訪問し、なんとなく遺伝子的に近く、懐かしい感じを持った。

建国記念日
もうすぐ2月11日だ。日本という国がいつできたのだろう。日本書紀では、紀元前660年1月1日に神武天皇が即位されたと解釈できるらしい。このため、1966(昭和41)年にこの旧暦の1月1日(新暦では2月11日)を建国記念日と定めた。しかし、この2月11日は1873(明治6)年に日本国の建国の日として定め、紀元節として祭日だったが、1948(昭和23)年にGHQの意向で廃止された。正しくは、昭和41年になって、これが復活したということだ。当時はまだ小学生低学年だった。

初代天皇とされる神武天皇とは
初代天皇とされる神武天皇は誰の子供なのか?調べてみると、お伊勢さんに祀られている天照大神から数えて5代目だという。そして、この天照大神の父親は有名なイザナギで、母親がイザナミだ。そして、下の図では、天之常立神(あめのとこたちのかみ)の子供のように見える。しかし、天之常立神にまつわる神話がなく、祀る神社も出雲神社(出雲市)、駒形神社(岩手県奥州市)、金持神社(鳥取県日野町)と少なく、天の恒常性を表した神という。
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(出典:記紀神話のすべて、参考1)

古代イスラエル
Wikiによると、紀元前17世紀の頃に族長アブラハムがカナンの地を目指して出発したのがイスラエルの歴史だという。そして、アブラハムの孫のヤコブの時代にエジプトに移住するが、子孫はエジプト人の奴隷になる。紀元前13世紀の頃にモーゼは民族をエジプトから連れ出し、シナイ半島を放浪し、200年かけて一帯を制圧する。そして、ダビデ王の時代(紀元前1004年‐紀元前965年?)に統一イスラエル王国として12部族が統一される。ダビデの次のソロモン王の時代(紀元前965年‐紀元前930年?)には強権政治となった。ソロモンの息子のレハブアムが王位についた後、北部の部族が離反し、ソロモンの家来ヤロブアムを王とし、北王国(イスラエル)を新都シェケムに再興した。北王国は紀元前722年に同じセム語系民族であるアッシリアにより滅ぼされたイスラエル王国から追放されたルベン、シメオン、ダン、ナフタリ、ガド、アッシャー、イッサカル、ゼブルン、マナセ、エフライムを失われた10部族という。

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イランのオイルタンカーの沈没事故はデザスター(災害)と呼ぶべきだ。

1. はじめに
世の中の安心安全を真剣に考えたいと思っている。先月発生したタンカーの衝突&沈没事故は日本国内では大きくは報道されていないが、海外では大きく報道されている。海外の知人からの指摘でことの大きさを知った日本人もいるという。タンカーとか、コンデンセートとか、聞きなれないムズイ言葉飛び交って何がどうなっているのかさっぱり分からなかったが、調べていくうちに何となく概要を理解できた。専門外ではあるが、技術者として今回の問題を無視するわけにもいかない。何が問題で、どのような対策を考えるべきなのかを考えてみた。海外では、今回のことをデザスター(災害)と呼んでいるが、本当にそうだと思う。単なる事故ではなく、災害が発生したという認識を日本人が持ち、その上で、的確な行動を冷静に進めることが求められているのではないかと思う。

2. 沈没事故の概要と問題点
2.1 サーンチー号と長峰水晶号
(1) サーンチー号の概要

サーンチー号(Sanchi)とは、2008年に建造されたパナマ籍の原油タンカーだ。イランタンカー社(National Iranian Tanker Company:NITC)が運営する。天然ガス・コンデンセート(以下は、単に「コンデンセート」という)13.6万トン(96万パレル)を満載し、イランから韓国に航海中だった。サーンチー号は、NITCからの注文に基づいて現代三湖重工業が製造した。全長 274.18メートルのスエズマックス・サイズのダブルデッキ構造で、船舶重量85,462トン、載貨重量164,154トンという巨大タンカーだ。32名の乗組員のうち1名の遺体は1月8日に回収し、1月13日にはサーンチー号の救命ボートの中にいた2名の遺体を収容し、船橋から航海データ記録装置(ブラックボックス)を回収した。コンデンセートは数回吸うと窒息するほどの猛毒であり、残る乗組員は全員死亡したとみられている。
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(出典:Wiki、参考1)

(2) 長峰水晶(CF Crystal)号
長峰水晶号は、香港企業Changhong Group (HK) Ltd の注文に基づき中国江陰市の澄西船廠により2011年に製造されたパナマックス・サイズのばら積み貨物船だ。船舶重量41,073トン、載貨重量71,725トンである。Shanghai CP International Ship Management & Broker Co Ltd が運航していた。長峰水晶号は、米国カラマ港から中国広東省に向けて、穀類65,000トンを積んで航海中だった。衝突後、21名の乗組員は全員無事救助され、長峰水晶号は1月10日に中国の上海近くの舟山市へ牽引された。下の図の黄色の矢印だ。
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(出典:Wiki、参考2)

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イランのタンカー沈没に伴う日本海岸への影響懸念

イランのタンカーが東シナ海に沈没
日本の新聞やテレビでは大きくは報道していないが、海外や一部のSNSで日本の海岸への影響が深刻な可能性があるとして大きく報道されている。いろいろ調べると、やはりWikiの更新が最もよくまとまっていた。下の図は、イランのタンカー「サーンチー号」と香港籍の貨物船「長峰水晶号」が本年1月6日に衝突したポイントと、そのあと、1月14日にサーンチー号は沈没した場所を示している。
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(出典:Wiki、参考1)

石油タンカー「サーンチー号」の衝突事故
発生日:2017年1月6日
発生場所:東シナ海(上海市から東160 nmi (300 km)地点)
乗員:53名(サーンチーに32人、長峰水晶に21人)
死者:32名 (全員サーンチー乗員)
事故内容:石油タンカー・サーンチーの衝突事故は、2018年1月6日に東シナ海の上海沖で発生した。サーンチー号は、パナマ船籍、イラン政府所有の石油タンカーである。天然ガスコンデンセート 136,000 トン(960,000 バレル)を満載にしてイランから韓国に向けて航海していたところ、上海市から沖へ 160海里 (300 km) の地点で香港船籍の貨物船、長峰水晶号と衝突した。
(出典:WIki、参考1)

石油タンカー「サーンチー号」が日本の排他的経済水域に移動
移動日時:1月10日正午時点で日本の排他的経済水域に入った。
発表:日本の海上保安庁の第十管区(鹿児島)は1月12日に発表。
(出典:WIki、参考1)

石油タンカー「サーンチー号」の沈没
沈没日時:1月14日午後4時45分
死者:32名(イラン国籍30名、バングラデシュ国籍2名)
中国の発表:サーンチー号は衝突直後に出火し、1週間、燃えながら漂流して1月14日に沈没した。サーンチー号の乗組員32人全員が助からなかった。長峰水晶号の乗組員は全員救助され、船は中国に入港した。中国運輸省は1月17日にサーンチー号は海中 115メートルのところに沈んでいると発表した。イラン国営石油会社の試算によると、サーンチー号の沈没によりもたらされた経済的損失は、積荷の喪失により6千万ドル、船自体の喪失により5千万ドル、合わせて約1億1千万ドルと見られる。
(出典:WIki、参考1)

日本への影響
イギリスの国立海洋センター(NOC:National Oceanography Center)は、イギリスのサウサンプトン大学と協力して、海洋循環が汚染物質の拡散に及ぼす潜在的影響を評価した。その結果、被災したタンカーは、東シナ海に接近する黒潮の流れの西側の境界線に向かった。3ヶ月以内に韓国沿岸に到達する可能性があり、汚染した黒潮が九州、四国、本州の島々に沿って流れ、2ヶ月以内に東京圏に到達する可能性があることを示唆した。 この研究をリードするNOCのKatya Popova博士は「油流出は、海洋環境と沿岸地域に甚大な影響を与える可能性がある。」と述べている。下の左の図は、周辺の海洋循環である。明るい色は早い流れを示し、矢印は現在の方向を示す。注目すべきは黒潮が左から右に斜めに流れていることだ。右の図は、汚染リスクを示す。より赤い色は汚染の危険性が高いことを示す。サーンチー号からのオイルの流出は、東シナ海および日本海で大きいが北部沿岸地域を含む他の地域にも影響を与える可能性がある。
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(出典:Wiki、参考2)

まとめ
日本の新聞やテレビでもっと大きく報道すべき重大な事件ではないだろうか。タンカーの衝突とその後の沈没がなぜ起こったかの原因究明も必要だが、流出した原油による影響を予見し、そのリスクを最小限に留めるための対策を至急実施すべきだ。関係省庁は対策に奔走しているのかもしれないが、その状況を国民にも開示してほしい。ニューヨークタイムズは、漁業の被害だけでなく、浜辺の汚染を含む環境被害が深刻であるという。CNNの報道によると、1月19日までに100平方キロメートルを超える規模になったという。Natureの報告書によれば、今回の流出の重要な側面は、海洋の住人に対する直接的な毒性だという。2018年はタンカーの衝突と沈没という大変な事故で始まったが、日本の新聞での報道はわずかだ。今日のテレビのニュースを見ても、海外の自動車事故は報道されても、日本及び日本人に大きな影響を与える可能性のあるこのタンカーの沈没とオイル流出の報道がないのはどうしたことなんだろう。個人的には悲観的に考えることは好きではないが、水産物への影響を考えると、2018年は厳しい経済事情に陥るのではないかと心配する。
以上

参考1:https://ja.wikipedia.org/wiki/石油タンカー・サーンチーの衝突事故
参考2:http://noc.ac.uk/news/sanchi-oil-spill-contamination-could-reach-japan-within-month-update

コンビニの成人向け雑誌から十訓抄まで(笑)

コンビニの雑誌販売
コンビニはとても便利だ。でも、どうも違和感を感じるものがある。特に海外から帰国するとドキッとする。多分、日本に来た外人旅行客も驚くのではないかと思う。この前も、その話をとある校長先生に聞いてみた。最初は思いつかなかったようだが、こちらから指摘すると確かにそうかもしれない。もう日本人の感覚が麻痺しているのかもしれないとおっしゃっていた。子供達に、ふざけた写真や人に見せられない写真を撮ったり、取らせたり、ましてネットに絶対アップしてはいけないといくら熱弁を奮っても、学校近くのコンビニには成人向け雑誌が堂々と陳列されている。特に、トイレを使おうと店の奥に行くと、そういう場所に成人向け雑誌があったりする。小さな子供から、あれなあに?と聞かれたお母様も回答に困っていたりする。大人になったら読む本なのかと理解している子供たちもいるかもしれない。成人向けの雑誌は、表紙を見ただけで内容を想像できそうなけばけばしい写真がふんだんに使われている。これは教育には良いわけはない。

コンビニの店舗戦略の見直し
最近は、これを見直す動きが出ている。調べてみると2つの方向性が見えてきた。一つは、地域社会からのクレームを受けて、店舗での陳列や販売を見直す動きだ。例えば、大手コンビニのミニストップ千葉市内の店舗で成人向けの雑誌の取り扱いをやめると発表した。本年1月からは全国のミニストップで販売を停止するという。もう一つは市場の需要に基づく戦略の見直しだ。大手コンビニのセブンイレブンでも、旧店舗のリニューアルの時には、雑誌のコーナを半減させたりしている。その空いたスペースはイートインなどに転用するケースもある。下の図は、2001年から2016年までの店舗数の推移と、出版物の売り上げの推移だ。店舗数は約4万店舗から5.6万店舗に1.4倍に増加している。しかし、出版物売上高は約5千億円から1859億円と、4割以下に減少している。書籍離れに拍車がかかっているのだろうか。
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(出典:GarbageNews、参考1)

好調な週刊文春
下の図は一般週刊誌の2017年7-9月の発売部数と前年同期比だ。これを見ると最大部数を誇るのがセンテンススプリングこと週刊文春で64万部だ。二位が週刊現代、三位が週刊新潮、そして四位が週刊ポストだ。また、前年同期比で見ると、増加している雑誌はなく、かろうじて週刊文春が2.7%の微減にとどまっている。あれだけ芸能や政治のスキャンダルを暴きながらも販売部数を伸ばせない。世の中はネットにどんどん移行する中で、逆風の中で頑張っているというべきなのかもしれない。しかし、国際便などではこれらの週刊誌も持ち込み禁止のポルノ雑誌だ。実際、これでもかというぐらいヌード写真が連発されている。報道の自由表現の自由を主張するのは自由だが、日本の美徳はどこに行ったのかと書くと笑われるのだろうか。
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(出典:GarbageNews、参考2)

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Disruptとは新秩序を構築することであるべき

既存秩序の崩壊
インターネットの普及により、既存の社会システムや事業モデルが崩壊することを象徴する言葉が「ディスラプト」だ。KDDIの新社長に就任予定の高橋副社長が記者からのインタビューで用いていたので気になって少し調べてみた。

18世紀の第一次産業革命
蒸気機関の発明により、それまで人力で運航していた船舶が蒸気機関駆動となり、その航路の活動範囲が飛躍的に増大した。蒸気機関車が開発されて、陸上での移動範囲が格段に格段し、物流網が整備された。

19世紀後半の第二次産業革命
欧米諸国で始まった工業化により鉄鋼、電気、化学、石油の開発が進んだ。これにより米国では本格的なモータリゼーションの幕が開いた。印刷機の開発が進んだのもこのころだ。フレデリックテイラーによる工場の科学的管理技術の研究が一気に進み、ベルトコンベヤーによる自動車の製造ラインの効率化が図られた。

20世紀後半の第三次産業革命=情報革命
未来学者のアルビントフラーは、情報革命を第三の波と説いた。米国の最大通信会社だったAT&Tの分割案を政府が断行する10年以上前に提言していたという。コンピュータや情報通信が指数関数的に発展することを示したムーアの法則は有名だ。集積回路上のトランジスタ数は「18か月(=1.5年)ごとに倍になる」というものが有名だが、Wikiの英語版を見ると、ムーアの発言はほぼ2年で複雑性が倍増すると言っている。
The complexity for minimum component costs has increased at a rate of roughly a factor of two per year.

第4次産業革命
欧米ではインダストリー4.0という用語を使っている。そして、特徴的な技術をサイバーフィジカルシステム(CPS)と呼ぶ。これは、サイバー=ネットと、フィジカル=既存のハードを連携するものだ。日本語のWikiだと、IoTやAIを用いる製造業の革新と説明されているが、英語版のWikiだと先述のCPSの活用がインダストリー4.0と定義付けている。下の図は、その解説図だ。
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(出典:Wiki、参考1)

これから崩壊されると想定される既存秩序とそれをどのように新秩序として再構築すべきかを事例を交えて考えてみたい。

1) 金融
中央銀行が紙幣を発行し、市中銀行を通じて世の中に紙幣流通を図る。中央銀行相互の決済をするための国際決済銀行(BIS)が仮想通貨の技術を活用することを検討しているのは、別のブログで述べた。すでに電子マネーが市民権を得ている世の中だが、今後大きく変貌するだろう。

2) 教育
すでにネットで単位の取れる高校は始まっている。しかし、義務教育の小学校や中学校の改革はどのように進むのだろう。大学入試方法の改善が予定されているが、AI時代に対応した教育システムへの変革は今後待った無しになるだろう。

3) 製造業
製造業の自動化はどこまで進むのだろう。ロボットを製造するロボットも実現するのだろう。調べてみると、ケンブリッジ大学チューリッヒ工科大学が共同でそのような研究を進めている。つまり、母となるロボットは最初に10体の自走ロボットを製造し、最も優秀なものを残す。次に、それをベースに改善を加えて新たな10体を製造し、また最も優秀なものを残す。これを何度か繰り返すと、非常に優秀な自走ロボットが完成するというものだ。すごい!
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(出典:PLOS、参考2)

4) サービス業
典型例はコンビニやスーパーでのレジの合理化だろう。Amazon社は、2018年1月22日にAmazon GOの1号店を米シアトルで開業した。これはQRコードを読み取る方式だ。国内で検討されているのはRFIDの活用だ。下の図のようにRFIDは一斉に読み取れる。非接触で読み取れるという特徴がある。経済産業省は、国内大手コンビニ業界と交渉し、2025年を目途にコンビニ電子タグ1000億枚宣言をした。しかも、これは単なるコンビニの業務効率化には止まらない。食品製造会社からコンビニへの配送管理や、家庭での冷蔵庫内の食品管理まで可能となる。これは大変な構想だ。
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(出典:経済産業省、参考3)

5) 農業
水田の作業は、田植え、稲刈り、雑草除去、農薬散布と多岐にわたり大変だ。外部環境としては、水の供給と太陽光の供給がある。太陽光の制御は難しいが、水の管理なら可能だ。IIJはLoRaWANという新しいIoT技術を活用して、水田への水の供給量を監視し、制御するシステムを提案している。
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(出典:ITメディア、参考4)

6) 林業
林業は中長期の戦略が求められる。たとえば、京都の清水寺の舞台を支える柱の寿命は400年だという。清水の舞台は、何度か焼失し、最近では1633年に再建された。定期補修で対応しているが、木材の耐用年数に基づく本格的な大改修が必要だ。このために清水寺では、樹齢300年以上のケヤキのある山を購入した。しかし、そんな林業に従事する人材が不足している。1980年には14万人いたのが2012年には5万人とほぼ3分の1に激減している。さらに林業には、地球環境の保全、土砂の災害防止、水源の涵養、希少生命の保護など関係する課題も山積している。さらにこれをIoTなどを活用して改善する人材が求められている。
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(出典:事業構想大学院大学、参考5)

7) 漁業
IoTの活用が進んでいるのはやはり養殖だろう。例えば、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県の女川で行っていたサーモンの養殖を鳥取県の境港に移すことになった。しかし、新しい境港は、女川よりも海水温が高く、潮流が速く、冬は荒波が経つという環境の違いがある。また、養殖業に従事する人の高齢化も進んでいた。このため、先人の知恵に学ぶ一方で、センサーを活用して、養殖に関する各種データをシステム的に分析することにチャレンジしている人がいる。今後のテクノロジーの進歩をうまく活用すれば、画像データや映像データやセンシングデータなどを多面的に、総合的に分析して、より生産性を高めることが可能かもしれない。
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(出典:Digital Innovation Lab、参考6)

まとめ
第4次産業革命は待ったなしだ。既存秩序が崩壊する例は今後あらゆる業種業態で発生するだろう。しかし、ディスラプトの目的は、既存秩序の崩壊ではなく、新秩序の構築であるべきだ。日本の人口が今後どこまで減少するのかはわからないが、仮に江戸末期のレベルまで減少するとすると3000万人。今の4分の1だ。何の根拠もないが、個人的には7-8千万人ぐらいで一度人口減少に歯止めがかかるのではないかと想像する。そして、そのあと、そのレベルを維持するのか、増加に反転するのか、さらに減少するのかは、その時代の人間が将来の日本に希望を持つことができるかどうかに依存するのではないだろうか。ロボット技術の革新も進んでいるだろう。しかし、人間が人間としての誇りと希望を持って生活をエンジョイするような世の中であって欲しいと思う。

以上

参考1:https://en.wikipedia.org/wiki/Industry_4.0
参考2:http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0128444
参考3:http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170418005/20170418005-3.pdf
参考4:http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1712/08/news032.html
参考5:https://www.projectdesign.jp/201506/forestry/002157.php
参考6:http://digital-innovation-lab.jp/fishery/

1000年の歴史を持つ道徳教育「實語教」ルネッサンス

實語教をご存知でしょうか?
戦前の教育を受けた人ならご存知でも、多くの方はご存知ないと思います。全国の学校の校長先生や教育委員会の人と話す機会が多い。實語教のことを話題にしても、軽くあしらわれることが多いのは残念だ。實語教のことを詳しくはご存じないこともある。實語教とは、平安時代に作られて、寺子屋などで日本の子供達への道徳教育のバイブルとして使われていたものだ。

福沢諭吉の「学問のすゝめ」のオリジナル
1872(明治5)年に初編が出版され、1876(明治9)年に17編までが揃って完成した。「實語教」は知らない人は多くても、この「学問のすゝめ」を知らない人は少ないだろう。当時の日本人の人口が3000万人だったのに、300万部以上が売れたという。今で言えば、1000万部が売れるという超超ベストセラーだ。しかし、この学問のすゝめで説いていることの多くは實語教で説いていることだ。

寺子屋の意義
寺子屋の起源を調べると仏教寺院に設立された17世紀初頭の教育施設だった。江戸時代になると江戸や大阪だけでなく全国の農村部や沿岸部に寺子屋が広がった。1850年頃(江戸時代末期)の寺子屋への就学率は70-86%に達した。これはイギリスの20-25%(1837年)、ロシア帝国時代のモスクワの20%(1850年)に比して格段に高い。Wikiによると、幕末期には村民の91%が寺子屋に入門し、1877年のある調査では「6歳以上で自己の姓名を記し得る者」の比率は「男子89%、女子39%」だったという。日本では、浮浪者が新聞を普通に読むが、外人はそれにびっくりするという。そんな識字率の高さは江戸時代の寺子屋が貢献したものだ。

勝ち組と負け組
現代社会は、経済システムが根本にあり、金儲けに成功した人を勝ち組、そうでない人を負け組という。そんな社会にいつからなったのだろうか。自動車会社による燃費の詐称事件や認定されていない試験官による最終検査の実施などモラルの低下が叫ばれているが、これも利益至上主義の弊害ではないのか。日本の企業は品質重視だった。匠の技を磨き、誰も真似をできないレベルまで品質や機能を高めることを誇りとした。暗黙知形式知にすることの意義は否定しないが、そんな職人的なプライドを持つ日本人は少ないのではないか。

實語教の教え
實語教は下の図のように漢語だ。しかも5文字の漢語がペアとなっていて、韻を踏んだり、対比法を活用したりするので読みやすく覚えやすい。中には難しい仏教概念も含まれているが、昔の日本人の子供達がこれを暗唱し、理解することで、日本人のDNAが養生されてきたのではないだろうか。
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(出典:問道、参考1)

現代の子供への教え
この實語教の教えを、今の子供達に理解できるように説明したり、教育したり、考えさせたりできないものだろうか。小学生の3年生とか4年生ぐらいなら、理解度も高まり、まだ純粋なので、實語教の教えを素直に吸収するのではないかと思う。實語教の教えには、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なりとあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由(よっ)て出来るものなり」があるが、そんなことを今の子供は教わっているのだろうか。何のために勉強するの?という素朴な質問に保護者や先生はどのように教えているのだろう。

YouTuberになりたい
勉強して、有名大学に入って、一流企業に入る。それを否定はしないが、それだけが目的だとしたらあまりに悲しい。子供達は反論する。YouTuberになれば何千万円も稼げるよ。有名大学を出て、一流企業の部長をしているパパの年収をはるかに超えるよ。お金を稼ぐことが勉強の目的だと考えるのだとしたら、そんな風に主張する子供をどのように諭すのだろう。

UNICEFの調査
日本の子供達は勉強ができる。特に数学や科学は優秀だ。しかし、コンピュータの利用は先進国の中でも底辺だ。そして、最もショックなのはUNICEFの調査だ。日本の子供達は、「自分は寂しいと思おうか」という質問と、「将来は単純で楽な仕事に就きたいか」という質問ではいと回答した比率がダントツの1位だった。いつからそんな寂しくて、向上心のない子供達が増えたのか。日頃子供達に接していても、そんなことは感じない。しかし、今後働く母親がさらに増えて、保育所が整備されると、寂しい子供達がもっと増えてしまうことにならないのだろうか。
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(出典;OECDUNICEF資料を基に筆者が作成、参考2)

まとめ
明るく生き生きとした子供達に接すると幸せな気持ちになる。元気になる。逆に、目を伏せて、悲しい表情の子供達に接すると悲しくなる。日本の子供達が元気になり、もっと将来に希望を持ち、そして、そんな将来に向けて日々切磋琢磨する。そんな社会にするにはどうすればいいのだろう。

以上

参考1:http://mondou.hateblo.jp/entry/2015/05/08/021102
参考2:http://ascii.jp/elem/000/001/424/1424552/