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いじめ問題:日本の子供の幸せ感はなぜ高くないのか(TEDとUNICEFレポートより)

今日は、世界の国と比べて日本の子供達が幸せなのかどうかという難しい問題について考えてみたい。

ところで、TEDをご存知でしょうか?

Technology Entertainment Designの略で、TEDカンファレンスの様子をNHK教育番組でも取り上げているのでご覧になった方も多いかもしれない。非常に有益な講演が多いし、英語の勉強にもなるので、私はできるだけ時間を作っては見ている。その中で、2011年7月にリチャード・ウィルキンソンが「いかに経済格差が社会に支障をきたすか」というテーマで講演をしていた。

 TED : https://www.ted.com/talks/richard_wilkinson/up-next?language=ja

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上の図はその講演で使われていたスライドの一つだが、横軸が所得の格差であり、縦軸が健康や社会の問題の程度である。日本は格差が少なく、問題が少ない国とされている。いろいろな要素を考慮して数値分析したようだ。

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上の図では経済格差と精神疾患者数との相関関係を示している。日本は経済格差が少なく、メンタル疾患が少ない国とされている。日本でもメンタルが問題になっているケースが多いが、諸外国はもっと多いということか。

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上の図では、経済格差と犯罪者数の相関を示している。ここでも、日本は格差が少なく、犯罪が少ない国とされている。

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しかし、上の図はどうなのか?経済格差が少ない社会では、子供の福祉レベルも高いというのが全体的な相関関係だ。日本は経済格差が少ないはずなのに、子供の福祉レベルは高くない。なぜ、高くないのか?

これの元データは、UNICEFが2007年にOECDへの加盟国を対象に調査をしたものだ。その原本は次のURLで確認できるので、なぜ日本の子供の福祉レベル(幸せ度)が低いかを調べてみた。 参考:https://www.unicef-irc.org/publications/pdf/rc7_eng.pdf

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UNICEFのレポートの内、日本に関係するところを抽出して、レーダチャートにまとめたものが上の図だ。数値は、日本の回答と平均との比較だ。この中から日本が優秀な4つの点と、日本の子供が直面している4つの問題点を説明する。

1. 日本の優秀な4つの点
1) 科学能力が高い
 平均が504点に対して548点だった。25ヶ国中1位だった。フィンランドも同点
 だった。素晴らしい。
2) 数学能力が高い
 平均が505点に対して534点だった。25ヶ国中3位だった。1位はフィンランドで544点、2位はオランダの538点だった。
3) 未成年の出産比率が低い
 日本では4%で最も少なかった。平均で16%、最も多いのは米国で46%だった。沖縄では20歳で産んで祖母に面倒見てもらって、40歳になったら孫の面倒を見るような文化があるが、本土では難しい。ダントツで低い。
4) 働いていない親と同居の比率が低い
 日本では0.4%と最も低かった。平均で5%、最も多いのがハンガリーの11.3%。

2. 日本の子供が直面している4つの問題
1) 自分は孤独で寂しいと考える子供の比率が高い(孤独感が高い)
 日本は29.8%。2番目に多いアイスランド(10.3%)の3倍近いダントツ。平均は7.4%で、最も少ないオランダ(2.9%)の約10倍というのは異常だ。
2) 自分は厄介者で居場所がないと考える子供の比率が高い(孤独感が高い)
 日本は18.1%。2番目に多いベルギーが16.5%。平均が9.8%で、最も少ないのがスウェーデンの4.9%。1)を含めて、この辺りが特徴的な課題だ。
3) 単純労働の就業希望比率が高い(向上心が低い)
 これは向上心を確認する質問で、日本は50.3%と高い。2番目がフランス(41.3%)、平均が27.5%、最も低いのが米国の14.4%だ。
4) 8つの教育項目のうち6つ以下の児童の比率が高い
 日本が53.3%で2番目に高い。もっとも高いのがギリシャ(61.8%)、平均が27%、最も低いのがアイスランド(8.4%)だ。8つとは、机、静かな空間、学習用コンピュータ、教育ソフト、インターネット接続、計算機、辞書、教科書だ。

3. まとめ
日本の子供たちの国語の能力は普通だが、数学や科学の能力は高い。働く親と同居している比率は高く、未成年での出産経験も極めて少ない。一方で、自分が孤独だ、厄介者だ、居場所がないと感じている子供が極めて多い。向上心が低い。楽な仕事を希望する子供が多い。静かな空間や学習用PC、教育ソフト、ネット接続がない子供が多く遅れている。

4. 所感
このUNICEFの調査結果は正直ショックである。2007年当時からどの程度改善されているのかが非常に気になる。パソコンやスマホを子供に積極的に使わせようという機運は日本の家庭も学校もまだまだ不足しているし、住環境も大きくは改善していないだろう。それよりも心配なのは次の2点だ。
 1) 孤独感が高すぎる!
 2) 向上心が低すぎる。
子供の世界は、大人の世界の縮図という。日本社会が将来に希望を持てない、閉塞した社会になっているとしたら、子供を責めることはできない。いじめ問題との関係も気になる。子供が友達と仲良く遊んだり、スポーツに熱中したり、そして将来の夢を叶えるために勉強したり、そんな活発なエネルギーが日本に不足しているとしたら本当に悲しいことだ。子供の孤独感を解消し、向上心を高めるにはどうすれば良いのだろう?

以上