子供の安全から自殺の増加とその要因と対策まで
子供の安全
今日は、子供の安全について少し考えてみたいと思います。消費者庁の資料を見ていると、次のように不慮の事故が子供死因の上位に上がっています。
出典:http://www.caa.go.jp/kodomo/project/pdf/130509_project.pdf
長期的な傾向
1950年から2010年までの不慮の事故の発生率を年齢別に調べた資料がありましたので、そこの図を引用します。
出典:http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20120710
これで見ると、全人口での発生率はここ20年ほど横ばいだが、子供たちの発生率は確実に減少していることが確認できます。1995年が高いのは阪神大震災の影響のようです。
交通事故
子供の交通事故の傾向を調べてみると、交通事故の死亡者数も確実の減少しています。これも前述と同じブログからです。
出典:http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20120713
オートバイによる交通事故死
同じブログに交通事故死のうち、オートバイの乗員事故の推移があった。1997年には550件ほどあったものが2010年には120件ほどと大幅に減少している。若者の車離れが話題になるが、オートバイの暴走族はもう昔の話になっているようだ。
暴走族が減少
オートバイの事故が減少したのは、流行り暴走族が激減していることが背景にあるようだ。都内だけでもピークの1980年には5379人いたのが、2011年1月には119人となんと50分の1に減少したという。
出典:https://cotoba.jp/2012/03/17/zoku/
自殺の増加
不慮の事故や交通事故が減少している一方で、逆に増加しているのが自殺である。例えば、下の2つの円グラフを見ると、子供死因割合として、不慮の事故は23%から16%に減少しているが、逆に自殺は2.6%から8.8%に増加しています。
出典:http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20120710
年代別自殺者数の推移
それでは自殺者数の増加しているのかというと、ほぼ300名前後で推移している状態にある。他の死亡事故が減少しているのに自殺者が減らないために死因割合が増加している。逆に言うと、自殺に対して効果的な対応策が講じられていないということになるのではないか。
出典:内閣府・警察庁の統計資料
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/09/10/1351886_05.pdf
自殺の原因
これを見ると例えば小学生では親子関係・家族からのしつけの合計で6割を占めている。中学生ではそれが3割程度に減少し、その代りに学業不振や精神疾患が増加。高校生になると学業不振・精神疾患・うつ病・進路の悩み等が増加している。しかし、これは小学生のうちに家族との人間関係に苦しみ、それが精神を蝕んでいくということではないのであろうか。
出典:http://ure.pia.co.jp/articles/-/49451?page=2
海外との比較
内閣府の資料で海外と日本の比較資料がある(15歳から34歳)。日本では、自殺による死亡率が20人と事故の7.9人の2.5倍以上ある。しかし、他の6ケ国はすべて事故の方が多く、自殺者は少ない。また、日本の自殺者による死亡率(10万人あたり20人)も他の国と9レベルと以上に高い。これはなぜなのだろう?
出典:http://www.asyura2.com/16/senkyo213/msg/112.html
自殺に関する意識調査
厚生労働省は2017年3月21日に、自殺に関する成人の意識調査の結果を公表した。その結果、「自殺したいと思ったことがある」と答えた人は23.6%と言う。2012年の前回調査より0.2ポイント増加している。
出典:日経新聞2017年3月21日
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17HHU_R20C17A3CC0000/
これによると、男性の21.4%より、女性の25.6%の方が高い。また、年代別には50歳代が30.1%と最多だったという。
自殺予防のキーワード
どうすれば自殺を予防することができるのでしょうか?多摩府中保健所はそれを気づきと繋がりだという。すごく共感したので、そのまま引用します。
わが国では、1998年に自殺による死亡者が初めて年間3万人を超えて以来、その水準で推移しています。この数は、交通事故死者数の約5倍になります。自殺や自殺未遂により、身近な家族や友人など少なくとも数人が深刻な心の影響を受けるとされ、全国で毎年、百数十万人の人々に影響を与えています。自殺は、単にひとつの原因から起こるのではなく、健康問題や家庭問題、経済・生活問題など、さまざまな要因が複雑に絡み合う中で発生すると考えられています。多くの自殺は、個人の自由な意思や選択の結果ではなく、さまざまな悩みにより心理的に「追い込まれた末の死」といえます。自殺に及ぶ前には何らかのこころの病を抱えていた人が多いことが分かっています。うつ病などのこころの病は依然として治らない、怖いという偏見があります。うつ病などを早期に発見し治療ができる体制を整え、自殺を予防する取り組みが始まっています。また、うつ病だけでなく、気分の落ち込みなどにも身近な人が気づき、悩みを抱える人を支援できる体制、地域のつながりを整えていこうとする取り組みもでてきました。こころの不調や自殺のサインに気づいたら、相談機関に相談したり、医療機関を受診したりすることが大切です。自殺は避けることができる死です。
出典:東京都多摩府中保健所
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/tamafuchu/hoken/kokoro/jisatu_yobo.html
子供たちのサインに気づく
文科省の資料によると、次のような7つの危険因子があるという。
そして自殺のサインとしては、次のように自殺をほのめかしたり、家出したり、自分を傷つける行為をしたり。そんなサインにいち早く気付いてあげることができないものか。
出典:文科省資料
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2009/04/13/1259190_5.pdf
自殺系サイトと自殺予防サイト
世の中には自殺サイトがあるというが、これを検索するとオドオドしたサイトがいっぱい出来てきそうで断念した。一方、自殺予防サイトと検索するとNPO団体や政府のサイトに加えて幸福の科学の自殺防止サイトが出てきた。是非論は別にして、心の悩みを持つ人にとっては宗教法人は救いの道になるのかもしれない。幸福の科学がなぜ、立派なビルを建てているのか、個人的には全く理解できないのだが、自殺まで追い込まれている人を助けている一面はあるのだろうか。誤解を恐れずに言えば、宗教とは必要悪なのかもしれない。
子供の世界は社会の縮図
子供が家族から十分な愛情を受けられない理由は、家族自身が十分な愛情を与えられるような環境にない。つまり、大人自身が追い込まれているのではないかという仮説に至る。つまり、社会の縮図として、子供の自殺が問題化するが、これを解決する方法は子供を助けるのではなくて、その家族を助けることで結果としてその子供も助かるというケースがあるのではないかと思う。調べてみると、埼玉県県民生活部がポスターを出していて、その一部を抜粋してみた。
出典:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0307/ijimebokumetu/documents/panel_06.pdf
日本が幸せになるにはどうすればいいのか
年齢別の幸福度を日米比較した資料が国民生活白書に掲載されていたので引用する。これによると、日本人は若い人は幸福度が高いが、年齢が進むほど幸福度が低くなる。逆に、米国人では年齢が高いほど幸福度高くなり、50歳以上はアメリカ人の方が日本人よりも幸福度が高い。これは何を意味しているのだろう。
出典:http://www.caa.go.jp/seikatsu/whitepaper/h20/01_honpen/index.html
経済的保証と精神的保証
前述の国民生活白書の中で、幸福の経済学というコラムが掲載されていた。幸福の科学ではなく、幸福の経済学です。結論として、経済的に豊かになっても幸福になるかというと、国内では相関関係があるが、国際比較では相関関係がないという。興味深いのでそのまま引用します。 出典:
http://www.caa.go.jp/seikatsu/whitepaper/h20/01_honpen/html/08sh010301.html#08sh077
経済成長が人々の幸せに結び付いていないという「幸福のパラドックス(paradoxes of happiness)」が明示的に議論されるようになったのは1971年にブリックマンとキャンベルの二人の心理学者によって所得や富といった生活の客観的状況を良くすることは個人の幸福に何も影響していないという結論を示してからである。「イースターリンのパラドックス」とも言われているが、イースターリンが1974年に所得との関係を詳細に分析し、一国内では所得の高い人が幸福度が高いという相関が見られるにもかかわらず、国際比較では少なくとも先進国間では一国の所得水準と幸福度の平均値に相関がないことを示した。その後、このパラドックスを解く「幸福の経済学」という分野が生まれ、年齢、失業、家族形態、ソーシャルキャピタルといった要因について実証分析が行われてきた。所得についても、絶対的な所得よりもむしろ他人の所得との相対関係が幸福度に影響しているとの報告がされている。また行動経済学でノーベル賞を得たカーネマンは脳の活動で幸福度を測る実験や生活の質、満足度と健康との相関関係を研究している。ただし、最近の研究では、社会の中の裕福なメンバーと貧しいメンバーを対比して一国における幸福度と所得の関係を見た場合、その関係は、裕福な国と貧しい国を対比して国家間の幸福度と所得の関係を見た場合と類似の関係を示すということを指摘するものもあり、その要因も含めて経済学者などの間で論争が続いている。
まとめ
なんだかとりとめのないブログになってしまいました。ただ、不慮の事故も防止すべきだが、それよりも自殺の増加がきになる。ただ、子供の自殺を防ごうとすると、その原因は大人=家族=社会の側にあることに思いが至る。では、日本人が幸せなのかといううと、確かに経済的には幸せになったが、幸福度の国際比較では決して高くない。この満足度を高めるにはどうすれば良いのかは、じっくりと今後も考えていく必要がありそうだ。夏にはエストニアを含めてバルト三国に旅行する予定だが、この時に大切なテームの一つだ。最後まで読んでいただいてありがとうございました。
以上