LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

久しぶりの技術士活動:IT21の会9月度例会参加

はじめに
最近、少しブログを書く頻度が減っている。これは可処分時間が少なくなっていることと、MBAの授業が夏休みなのでMBAネタがないためだ。SEの仕事が徐々に増えていて時間が取れないというのは、まあ、言い訳だ。今回は久しぶに技術士の話題だ。昨日、IT21の会の9月度例会に参加した。そのレポートではなく、その中で話されている内容を拝聴して、感じたことなどをまとめてみた。期せずして明日のNHK番組でも特集が放送される。あな番と被っていないのでよかった。せっかくなので観てみたい。
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出典: https://www.nhk.or.jp/special/space/

久保田孝、JAXA宇宙科学研究所の研究総主幹
専門は電気・電子工学で工学博士(東京大学)だ。下の写真は、2019年2月20日に探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウ」に着陸させる指示をしたとJAXA(宇宙航空研究開発機構)が発表した時の写真で、左が久保田総主幹だ。
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 出典:https://www.sankei.com/life/news/190220/lif1902200040-n1.html

宇宙の謎
講師の久保田さんは子供達にお話することも多いようだ。その時によく聞かれるのは、次の4つだという。小学生高学年だと最も興味を持っているのはブラックホールだという。あまりにブラックホールの質問が集中するので、ブラックホール以外の質問を求めても、ブラックホールの質問だという。小学生低学年だと吸い込まれるのを想像して泣き出す子供もいるという。
1)宇宙の果てはあるの?
2)宇宙の始まりは?
3)ブラックホールの中は?
4)宇宙人はいるのか?

宇宙は148億年前に誕生
宇宙の世界には、まだまだ未知の課題がある。これをダークマターという。また、太陽系は46億年前に誕生したという。なぜ地球に水があるのか?太陽から見ると地球より火星は遠い。そして、太陽から遠いと水分は凍る。太陽から近いと水分は蒸発する。地球が誕生した頃は太陽の活動が今よりも活発だったので、地球上の水分は蒸発していたはず。なので、現在の水分は、地球よりも遠い惑星がもたらしたのではないかという。

はやぶさ2の目的
300億円ほどの投資で実現する重量600kgほどの「はやぶさ2」の目的は、太陽系の誕生と生命の誕生の秘密に迫ることだ。小惑星の調査をしたり、物質を回収するのは手段だ。
 出典:目的 | ミッション | JAXA はやぶさ2プロジェクト

放射線に強いコンピュータ
宇宙で使われているコンピュータの性能は高いのだろうか。地球上で使うパソコンは数GHz級だが、宇宙船の中でのコンピュータのクロック速度は10MHzに抑えている。これは、宇宙で飛び交う放射線の影響を受けにくくすることと、発熱を最小限に抑えるためだ。宇宙船内では発熱に対処することが難しいという。

関係者での禁句
宇宙に挑戦する場合にはリスクがある。常にどうすれば良いかを考える。審査員も研究者もネガティブな発言は禁句だ。単に批判するだけの先生に次の出番はない。課題を指摘するだけではだめだ。その課題を理解して、どのように解決するかを考えて、そのアイデアを磨いて提案する審査員も求められる。

はやぶさのチャレンジと成功
初代のはやぶさは2003年5月9日に打ち上げられた。世界で初めて小惑星のサンプルリターンミッションの遂行に成功した。しかし、全てが順調に進んだわけではない。2005年11月に小惑星タッチダウンを2回行ったが、その後姿勢制御に失敗し、完全に通信が途絶えた。しかし、翌年の2006年1月に突然通信の再開に成功し、その後2010年6月には無事地球に帰還した。これは日本の新聞でも報道された。
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 出典:JAXA|小惑星探査機「はやぶさ」 ついに地球へ帰還!

はやぶさ2のチャレンジ
2014年12月にはやぶさ2が打ち上げられた。そして、今年2019年2月には小惑星へのタッチダウンに成功した。さらに4月には、世界で初めてインパクターによる人工クレーターの生成にも成功した。7月には2回目のタッチダウンを行い、小惑星の地下物質のサンプル採取にトライした。目標は1gのサンプル採取だが、無重力環境での事前試験を何度もなんども行い、数gから数十gの採取が可能と判断した。はやぶさ2では、はやぶさの教訓を生かして、数々の改善を施している。初代のはやぶさ無くして、はやぶさ2の成功はなかったと言える。改良点は数多いが特に印象的なものを数点列挙して見たい。

1) 自律的運行
推進力となるイオンエンジンのパワーアップが図れれた。これに伴い、はやぶさでは地球からのリモート制御が基本だったが、はやぶさ2では自律的運行を可能とするように設計された。もちろん、全てが自律ではないが、地球からの指示を最小限にするように、タイマーによる命令を数多く用意して置いたり、いくつかのパターンのシナリオを用意して置いて状況を踏まえて最善のシナリオを採用するような仕組みだ。

2) 滞在期間の拡大
軌道の関係からはやぶさでは、わずか3ヶ月の間に小惑星イトカワでの全てのミッションを実行する必要があった。しかし、はやぶさ2では軌道を改善して、小惑星リュウグウでは一年半の期間での作業が可能となった。この時間的な拡大は大きい。

3) 水の存在の可能性
2018年6月に小惑星リュウグウに到着してから、その表面の約7万箇所の岩石の組成を観測したが、水分の存在を示すデータは取れなかったという。しかし、これに諦めず、観測誤差を低減する努力を続けたところ、水分の可能性を示すOHの組成を含む岩石を発見した。しかも、1%弱の割合でOHを含む岩石が分布していることも突き止めた。この功績は大きい。
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 出典:https://nazology.net/archives/34099

今後の課題と対応の方向性
はやぶさ2が地球に戻るのは2020年末だ。東京オリンピックパラリンピックも終わった後だ。はやぶさ2は素晴らしい成果を挙げることと期待するが、宇宙への挑戦はこれで終わりではない。主要な課題と対応の方向性についてまとめて置きたい。

1) エネルギー源
はやぶさはやぶさ2では太陽電池が主なエネルギー源だ。しかし、これは太陽から遠のくほどエネルギー密度が低くなるのと、太陽からの光を受けられない場所ではエネルギーを捕捉できない。このため、NASAが開発する火星有人ロケットには原子力エンジンの採用の可能性が報道されている。しかし、打ち上げに失敗した場合のリスクを懸念して地域住民の反対があるという。まして、友人になれば宇宙飛行士の被曝量の影響もある。より、安全で安心なエネルギー源が切望される。講師の久保田さんも参加していた技術士に是非検討して欲しいと要請されていた。
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 出典:火星有人探査には原子力ロケット[NTR]が有望 | TOKYO EXPRESS

2) 国際連携
今回のはやぶさ2ではフランスとドイツとの協力関係の元で実現した。宇宙開発では、お金のやり取りではなく、基本的にバーター交渉だ。つまり、今回ははやぶさ2との通信にKuバンド(12GHz~18GHzの周波数)を利用したが、そのための適切な地球局設備がない。現在、国内でも建設中だが、間に合わないため、今回はフランスやドイツの地球局を活用させてもらい、その代わりに、フランス・ドイツが開発した小型着陸機マスコットを搭載した。当初、フランス・ドイツから提案を受けた時には重量制限から難しいのではという状況もあったが、なんとか課題をクリアしたようだ。日本が貢献できる技術を持つことができれば、諸外国との連携強化もスムーズに進むだろう。そのためには日本の強みを開拓することが前提だ。
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 出典:仏独開発の小型着陸機がリュウグウに着陸成功 - La France au Japon
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 出典:https://mascot.cnes.fr/fr/atterrissage

3) ロボットの活用
有人宇宙船ではなく、ロボットが活躍する無人宇宙船は今後成長が期待される分野ではないだろうか。しかし、問題は一度搭載すると5年とか10年といった長い期間での利用を求められ、かつ宇宙船や放射線が行き交う過酷な環境でも性能劣化を起こさない仕組みが求められる。
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 出典:宇宙でのロボット活用、実態と今後の課題 | 未来コトハジメ

まとめ
宇宙・航空は専門外だけど、素朴に宇宙の話はミステリーとロマンがいっぱいで楽しい。また、自分が専門の通信の分野で言えば、地上での通信は4Gから5Gへの変革が進むが、宇宙の通信は速度が遅く、反面遅延が大きい。通信誤りも多い。今後の飛躍を実現するには、夢の通信方式と言われるニュートリノ通信の実用化が必要かもしれない。まだまだ課題も多いけど、その分可能性も大きい宇宙の話でした。
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 出典:夢の通信技術(2/2) ~驚きのニュートリノ~ | ITU-AJ

  以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。