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携帯電話の料金を考える。

1.はじめに
今年の9月に自民党の菅官房長官が、携帯各社について「あまりにも不透明で、他の国と比較して高すぎるのではないかという懸念がある。競争が働いていないと言わざるを得ず、いまより料金を4割程度下げる余地はあるのではないか」と述べた。これを業界では菅ショックと呼んでいる。携帯電話各社は、それぞれ盛り込み済みとか、値下げするとか、応酬している。携帯電話の料金は高いのだろうか?少し料金について考えてみたい。
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 出典:携帯電話料金:ソフトバンク値下げ静観 - 毎日新聞

2,携帯電話の料金は高いのか?
携帯電話の料金は、高いという指摘に加えて、分かりにくい、複雑だという指摘がある。確かにそうかもしれない。そもそも高いと言う声は、携帯電話利用者よりも、スマホの利用者だろう。新聞で海外の料金と比較しているが、これも前提条件次第だ。NRIが利用データ量別に海外と日本の比較をしている。毎月データ通信をどの程度使うのか?数年前では1-2GBを使うのは大変だったけど、最近は7GBでは不足して、多い時は20GBほど使う。料金プランは国によって違うし、通信事業者によって違うし、料金も改訂するので、一概には結論つけるのは難しいが、利用が7GB程度ならイギリスは安く、米国は高く、日本はその中間ぐらいか。
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 出典:https://buzzap.jp/news/20180821-suga-mobile-charge/

3.携帯電話の料金分解
3.1 通話料金の値下げの状況

1990年代では携帯電話で通話すると3分で260円だった。2000年には3分で100円レベルまで値下げしている。最近では、無料通話アプリも普及している。恋人とLINE通話で一晩中話をするなんてシーンは若者の間では普通だ。いい時代になったものだ。菅さんの指摘は、この通話料金を下げろという意味なのだろうか?高い料金が嫌なら無料通話アプリを使えばいいだけではないだろうか。
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 出典:リビング+:ドコモ、固定→携帯の通話料を値下げ

3.2 ガラケーからスマホへの主役交代
2010年(平成22年)ごろはまだガラケーの普及率が93%、スマホはわずか10%だった。しかし、東日本大震災が起きた2011年ごろから急速にスマホへのシフトが進み、2014年(平成26年)には、ほぼ同じ普及率となり、現在ではスマホが75%、ガラケーが50%だ。携帯電話の料金が高いという前提はガラケーなのか?スマホなのか?ガラケーの利用料金は安いので、多分、スマホなのだろう。
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 出典:https://toranomics.com/smartphone_price_trend/

3.3 パケ死
第三世代が始まった2000年ごろからデータ通信が始まった。当時は、パケットの単価が決まっていて、調子に乗ってデータ通信をするとデータ通信料金が数十万円にも達する猛者もいた。2005年には873件もパケット料金の相談があった。当時はパケ死とパケ詰まりが社会問題となっていた。今は聞かない。なぜだろう。それは、第4世代へのシフトに成功したためだ。第三世代の時は、最大2.4Mbpsという触れ込みだが、これは基地局のセクター速度だ。10人が同時に使えば240kbps、100人が同時に使えば24kbpsになる。現在は、LTEを使っているので、電波の状況がよければ数十Mbpsで快適に通信できる。しかも、スマホ利用者は7GBとか10GBの定額制を使っていて、パケ詰まりもなければ、パケ死もない。素晴らしい状況であることを理解すべきではないだろうか。
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 出典:「パケ死」の意味が変わった? 「高額請求」ではなく…… - ITmedia NEWS

3.3 データ通信料金の値下げの状況
2020年に開始する5Gでは数Gbpsを狙う。2000年の3Gでは数Mbpsだった。つまり、20年で千倍なので、2年で2倍のペースだ。下のグラフでは利用者あたりの利用トラヒックが1年で倍増している。10年で千倍、20年で百万倍だ。しかし、利用者の通信料金は微増レベルだ。そういうマクロな状況を菅さんは理解しているのだろうか。
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 出典:https://wirelesswire.jp/2012/03/38115/

4. 他の公共料金と比較する。
4.1 公共料金の支払いレベル

公共料金の平均額を調べようとしたけどなかなか良いのがない。洋服の青山のホームページで公共料金をカードで支払うとポイントが貯まるという記事があった。これが一般的かどうかは微妙だけど、電気ガス水道が月2万円、携帯が月1万円、新聞が月4千円というのはありがちかもしれない。
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 出典:https://www.aoyama-card.co.jp/used/public/

4.2 電気・水道・ガス料金との比較
もし、電気・水道・ガスの利用料が毎年50%増加したらどうなるだろう。2年で倍増。4年で8倍も使ったら、料金は8倍になる。それで高いとは言わない。そもそもそんなに使えない。しかし、スマホの利用は急激に増加している。そこがこれら料金と携帯電話料金との大きな違いだ。

4.3 他の通信料金との違い
固定電話を使う頻度は減っている。単身世帯の場合には、固定電話を持っていない人が多いだろう。そんな世帯でもインターネットには契約して、自宅でWi-Fiを利用できるようにしている人も多いだろう。スマホスループットと、Wi-Fiスループットのどちらが早いだろうか?以前はWi-Fiの方が早かったけど、最近は微妙だ。5Gが始まると多分逆転するだろう。そんな状況になったら固定電話やインターネットをキャンセルした方がいいかもしれない。
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 出典:http://voices.ku-neko.com/2015/10/stats-jp-mobile-charge.html

5. スマホの端末料金と通信料金
スマホを機種変更する時に、キャッシュで一括払いする人は少ないだろう。一般には、24ヶ月の割賦にする人が多いのではないだろうか。そして、通信事業者は24ヶ月契約をすると端末費用の全額もしくは一部を補填する料金プランを出している。今回の値下げ要請では、端末料金と通信料金を区別しろという。以前も、区別したら結局、端末が売れなくて、国内メーカーが携帯電話市場から相次いで撤退した。今度はどうなるのだろう。iPhoneの生産量が下方修正されている。日本人は中古品を嫌がる傾向にある。今後は中古市場が立ち上がるのだろうか。
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 出典:http://money-smart-kyoshitsu.com/mobile_fee/high_fee.html

6.まとめ
極端な話、定額制で料金が同じで、利用トラヒックが年間で2倍に増えたら、単価は1年で半分だ。実際はそんな単純ではないが、実際の料金プランもこのようなマクロな傾向に追随する。そして、これを今後20年間支えるのは5Gであり、5Gへの投資をしない限り、2000年のようなパケ詰まりとパケ死が待っている。国内の携帯電話事業者が5Gに投資する金額は5兆円レベルだ。2020年に始まる東京パラリンピック&オリンピックでは5Gがどんな風に活用できるのかを考えると、当事者はドキドキしているのかもしれないが、自分はワクワクする。モバイルの通信速度が倍増すると、その利用も倍増して、トラヒックは4倍になる。そんな爆発を何度も経験してきた。しかし、料金だけは爆発しないように抑制している。料金はもちろん安い方がいいし、今後も単価は下がるだろう。そんな状況を菅さんにも理解してほしいと思う。
 出典:携帯大手の5Gインフラ投資、5兆円の奪い合い :日本経済新聞

以上