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名刺管理を考える。

はじめに
名刺管理といえば最近はTVでコマーシャルもしているEightを愛用している。現時点でEightに登録している名刺は1307枚だった。しかし、最近、メニューや仕様が変わった。そもそも名刺はいつ頃から使われていたのか。世界で使われる名刺の7割は日本だと言われるが、これまでの名刺管理とこれからの名刺管理の展望、WantedlyはSansanのライバルとなるのか、そんなことを考えてみたい。

1. 名刺との出会い
自分の名刺を初めて作ったのは学校を卒業して会社に就職した時だ。最初の3ケ月は試用員なので名刺なし。研修も終えて、正式に配属になった時には、名刺が配られた。当時は国際テレックス端末の保守部門でお客様のオフィスにも訪問するので名刺は必須だ。でも、保守で訪問するので、名刺を交換することはあまりなかった。三ヶ月のローテーションで、ある月は定期点検でお客様まわりする。その次は故障修理で顧客から呼ばれたら出向いて修理する。そして、その次の月は整備を担当する。このローテーションは上手に考えられている。定期点検をしっかりとやれば、故障は少なく、故障が少ないと整備する機械も少ない。逆に、定期点検で手を抜くと、故障修理が増えて、その結果として整備する機械も増える。機械音痴の自分が機械の保守をするのかと家族に驚かれた。一番驚いているのは自分だ(笑)。自慢じゃないが、プラモデルでまともに動いたことがない。それも当然だろう。設計図も見ずに、部品を自由に組み合わせて動かないかなあとトライする。しかし、使える部品は決まっている。動くわけがない(汗)。

2. 名刺の歴史
名刺の起源は諸説あるが、有力なのは古代中国では訪問する時に名前や身分を書いた札を刺したのが発祥のようだ。日本でも、古い情報は不明だが少なくとも江戸時代(1778年)に蝦夷地に来航したロシア帝国に対して松前藩士が名刺を渡している。同じ時期(1760年代)にはフランスやイタリアの上流階級でもおしゃれな名刺を使う文化が普及していた。
 出典:名刺 - Wikipedia

3. 名刺の紙質やサイズ
日本の名刺は、91mm✖️55mmが標準だが、欧米では少し小ぶりの89mm✖️55mmだったり、もう少し小さかったりする。また、女性は角を丸く処理して可愛い感じのものもある。名刺はビジネス向けのシンプルなものと夜の商売向けのカラフルなものに二極化しているようだ。ビジネス向けも裏面は白紙のもの、英語版のもの、広告に活用しているもの等がある。かつては印刷会社に発注していたが、最近では自分で印刷したり、ネットで注文するなど多様化している。自分で作る時には紙質や厚さが気になるが、調査によると0.21mmぐらいの厚さが多いようだ。0.18mmだと薄いし、0.26mmだと厚く感じるようだ。
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 出典:https://www.4030paperlabo.com/2018/04/05/名刺アレコレ-厚さ-サイズ-用紙/

4.名刺管理
(1) レガシーな方法

営業マンが出先から帰ってきたら、名刺の整理をする。昔ならファイリングに入れたり、ちょっとおしゃれな人なら、回転式のファイリングに入れたりしたものだ。しかし、なかなか必要な名刺を選別したり、検索するのが難しかった。
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 出典:新人ビジネスパーソン必見!デキる人のアナログ & デジタル名刺整理術

(2) 名刺ガジェットの活用
ガジェット好きな人なら、名刺をスキャンしてPCに取り込むことにチャレンジしたり、それを簡単に検索できるガジェットを買った人もいるかもしれない。名刺を簡単に検索できて便利かもしれないが、これを盗まれたら大変だ。最近だと個人情報の漏洩事件にもなりかねない。
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 出典:http://www.builder.lk/unoonline/26761srml4957547.htm

(3) 名刺管理ソフト
最近、利用者が急増しているのがSansanの名刺管理ソフトではないだろうか。「早く言ってよ!」のTVCMを見たことのある人も多いのではないだろうか。2017年には6千社だったが、2018年には7千社に増加している。2017年の名刺管理市場では81.9%をSansanが占めている。すごいシェアだ!
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 出典:https://note.mu/matsumoto1988/n/n67e56f7dc00c

5. Sansan社の概要と提供サービス
(1) 会社概要

創業は2007年の若い会社だ。同社では企業向けのサービス(sansan)と個人向けのサービス(Eight)を提供している。名刺画像を読み込んで、名刺データとして提供するという機能は同じだが、企業と個人ではニーズが異なるために、別のサービスとして提供し、それを実現する仕組みも分離されている。Eightは、2012年にスマホのアプリとしてリリースされ、2018年7月現在で200万人が利用している。使い勝手も良い。
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 出典:https://logmi.jp/tech/articles/320633

(2) Sansan社の決算公告
4月からはMBAコースを通う。多少は決算書も読めないといけないだろう。Sansan社の決算資料を調べたら平成30年8月22日に公告した第11期決算があった。売上が73億円。売上原価が14億円で売上総利益(いわば粗利)は58億円。これに対して販売費および一般管理費が88億円。なので、なんと30億円の赤字だ。資産総額は52億円だが、純資産は13億円だ。売上は、9期の31億円、10期の48億円、11期の73億円と順調に拡大している。12期で100億円を突破できれば成長戦略を描けるだろう。すでに30億円のベンチャーキャピタルからの資金も確保している。ベストシナリオは株式公開に持っていくことだろうか。経営判断を間違えると、どこかと合併するか、買収されるかという経営の危機に瀕することになる。今年が勝負の年だ。
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 出典:https://kigyolog.com/company.php?id=52

(3) 名刺データ化システム(GEES)
Sansanでは、企業向けのsansanサービスと、個人向けのEightサービスを提供している。Sansanは「C#」で記述し、法人で導入しやすいようにマイクロソフトが提供する「.NET Framework」ベースのシステムだ。一方のEightはオブジェクト指向スクリプト言語である「Ruby」を採用している。Eightの開発者はWebサービス系が多く、Sansanの開発者は.NetやJAVAの経験者が多いため文化も違う。そして、この両システムを支えるのがGEESと呼ぶ名刺データ化システムだ。GEESは自動入力する機能とオペレータが手動で修正・確認する機能で構成している。
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 出典:https://logmi.jp/tech/articles/320633

(4) AmazonAWSGoogleGCPの良いとこ取り
SansanのGEESシステムはクラウドベースのシステムだけど、その特徴がAWSGCPの両方をうまく使い分けている点だ。基本的なデータはAWSベースで管理しているが、名刺画像の処理はGCPを使っている。特筆すべきは商売のうまさだ。両者を使い分けることで、AWAからは最大90%の割引料金を引き出し、GCPからも80%近い割引を実現している。このような粘り強い交渉力が実はSansanの最大の強みかもしれない。
 出典:https://logmi.jp/tech/articles/320633

(5) Sansanの7E
Sansan社のチーム組織も面白い。以前はシンボリックな大企業への全社導入案件の獲得を優先していたが、それだと個人プレイが重視される。そうではなく、もっと組織的に機能できるようにしようと改革したものが下の図のような7つのEだ。これは、営業チームに共通する点を整理して、フレームワーク化したものだ。つまり、人と、情報と組織ルールの3つに分解している。つまり、人は、存在目的、教育システム、モチベーションの3つ。情報は効果的なCRM活用、営業ナレッジの共有の2つ。そして、組織は、組織運営のルール、採用の2つだ。これらを全てEで始まるキーワードで整理しているのがオシャレだ。
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 出典:https://sales-hacker.jp/sales/hatai_interview2/

(6) Sansanの一括メール
テレビCMでも「もっと早く言ってよ!」と訴えているが、Sansanを使えば、あるターゲット企業と誰がコンタクトを持っているかがわかる。このため、通常のダイレクトメールだと、システムからターゲット顧客に一斉に展開するがほぼ無視される。しかし、Sansanの仕組みを使えば、過去に名刺交換をしたことのある担当営業から展開するために、お客様からの反応率が圧倒的に良くなるという。お客様の反応が直にそれぞれの担当の営業マンにフィードバックするために的確な提案も可能だ。これはすごい。
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 出典:https://kintone-sol.cybozu.co.jp/integrate/sansan001.html

6. Sansan社の連携戦略
(1) UZABASE社との連携

ユーザベース社は面白い会社だ。最初は「うざ」ベースって?と疑問符がついたけど、UZABASE社を調べていると、NewsPicksの親会社であることがわかった。また、企業や業界情報プラットフォームである「SPEEDA」を展開している。そのSPEEDAはSansanとの連携も図っている。
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 出典:https://www.uzabase.com/company/news/speeda-auto-targeting-list/

(2) Hiramekiとの連携
Hirameki managementとは、マーケティングプラットフォームであり、ウェブ・コンサルティングファームが開発した。豊富なマーケティングアプローチが得意なHiramekiとSansanを連携されることで、営業リードのデータ化からきめ細かなアプローチまでを可能とすることを狙っているようだ。
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 出典:https://www.atpress.ne.jp/news/145163

(3) DMMやPWCとの連携
コンサルティングファームPWCとスマートロボットを提供するDMMと名刺管理サービスを提供するSansanの連携も3年前に発表されている。プレスでは次のような記載がある。うまく行っているのだろうか。
スマートロボットがユーザーインターフェースとなり、音声会話やメールなどで情報の受け渡しを行うだけでなく、職場のコミュニケーションを活性化させる潤滑油としての役割も担います。顔認識機能により、担当顧客に関連する情報や訪問時に役立つナレッジなど、利用者の趣向に合わせた情報発信を、ロボット側から行うことも可能です。利用者とロボットの接触回数が増えれば増えるほど、データの蓄積が進み、Sansanが本来持つ顧客データベース管理と情報共有機能をより効果的に活用できる環境が整います。

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 出典:https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/ai-smart-robot160223.html

7. Sansan社のライバル
(1) CamCard

Camcardは中国のKingsoft CorporationがINTSIG information Corporationと業務提携して開発したソフトだ。日本では、キングソフト株式会社が窓口だ。ソフトは有料だが一時金で960円なので、それほど高価ではない。しかし、例えばSansanが提供するEightと比べるとその文字認識精度が決定的に劣る。これでは日本人は満足できない。
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 出典:名刺管理アプリ「Eight」と「CamCard」を比較・評価してみる!

(2) Wanted People
Eightの強力なライバルになると見込まれるのがWantedlyが提供するWantedly Peopleだ。Wantedlyはユニークな女性企業である仲暁子(なか あきこ)さんが創業した企業だ。仲さんは高校時代にNZに留学し、京都大学を卒業後は外資投資銀行(GS証券)に入社し、その後漫画家を目指し、FBの日本法人の立ち上げに参画し、その後2010年にWantedlyを創業した。面白い。そんなユニークな企業が展開するのがWantedly Peopleだ。2017年4月からWEBで利用可能となった。同時にCSVファイルへのエクスポートが可能となった。これが便利だ。さらに無料。名刺管理に特化しているので、画面もシンプル。どこで儲けるのかが問題だが、名刺管理ソフトとしては注目株だ。
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 出典:https://www.idotch.net/11183.html

まとめ
Sansan社が提供するEightのすごい点は、そのデータ活用だ。例えばAさんと名刺交換して、AさんのデータをEightに登録する。AさんもEightを利用していたら、そこでマッチングされ、ショートメールなども可能だ。自分が人事異動で名刺が変わったら、マッチングしている相手に自動通知することも可能だ。名刺文化は日本だけではなく、世界共通だ。ビジネス界のSNSではLinkedInが支配的だが、ここにEightも参入できるだろうか。それとも、独自の市場を築くのだろうか。Wantedly Peopleとも切磋琢磨して日本企業のSNSが世界に羽ばたくことをぜひ期待したい。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。