LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

amazon社が考える「IoTで創る未来」

はじめに
昨日は、日本技術士会認定グループであるIT21の会の2月度例会だった。今回は、アマゾンウェブサービスジャパン(以下「アマゾン社」)の門田進一郎さんに「IoTで創る未来」というテーマで90分の講演をお願いした。そのなかで特に興味深った内容を順不同でまとめてみた。

門田進一郎さん
今回の講師をお願いしたのは、アマゾン社のエバンジェリストとして国内外で活躍されている門田さんだ。IoTソリューション・スペシャリストで、NTTで15年勤務された後、アマゾン社に転職された方だ。非常にエネルギッシュで、オープンマインドで、前向きな方という印象を受けた。90分という講演時間参加者を惹きつける話術も秀逸だが、それ以上にIoTや未来への熱い想いがすごいと思った。
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 出典:http://www.niro.or.jp/uploads/2018/12/messe2018-iotmirai.pdf

アマゾンは技術開発会社
参加者にアマゾンの利用を聞くと9割以上が挙手していた。もうアマゾンなしの生活はあり得ない人も多い。自分もそうだ。そして、アマゾンの業績(売上)は急成長している。設立は1994年7月だ。Wikiによると、「1994年、30歳のベゾスはウォール街ヘッジファンド「D. E. Shaw & Co.」のシニア・バイス・プレジデントを退職し、ワシントン州シアトルに転居した。シアトルでベゾスは、のちにAmazon.comとなる企業のための事業計画に取り組んだ。」という。業績は急成長していて、2017年の売上は177Bドル(約20兆円)だ。さらに急成長は続くだろう。しかし、その利益はわずか3Bドル(約140億円)だ。利益率はなんと0.07%だ。なぜ、これほど利益が少ないかといえば、技術開発を優先しているためだ。株主への配当はないという。しかし、株主はハッピーだ。なぜかといえば、株価が上昇するからだ。
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 出典:薄利主義のAmazonが利益急増、巧みな投資戦略 | 日経 xTECH(クロステック)

ジェフ・ベゾスのスケッチ
レストランで食事中に何かを思い付くことがある。そんな時は、身近な紙に忘れないように書き留めることがある。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスがナプキンに書き留めたのが下の絵だ。さすがヘッジファンドだ。成長のエンジンは、品揃えの増加>お客様の満足度向上>お客様の増加>売り手の増加という好巡回だ。さらには低コスト構造を極めて、結果として低価格の商品を提供し、さらにお客様の満足度向上を実現する。つまり、成長の結果として得た利益を元手に技術開発を極めて、低コスト構造と品揃えを徹底的に強化する。これがアマゾンの戦略だ。アマゾンのライバルは他社ではない。このコンセプトの徹底的な実現だ。つまり、アマゾンのライバルはアマゾンだ。
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 出典:Amazon CAPTCHA

2枚のピザ理論
アマゾンのユニークさは、その仕事の仕方だ。基本的に、アマゾン社ではチーム内で仕事をする。他のチームの動向は知らなくて良いし、知る必要もないし、知らない。そして、このチームの構成要員数は、10名を超えることは少ないという。ジェフ・ベゾスは創業時から、チームの構成員数は2枚のピザをシェアできる程度の人数であるべきと考えた。これが「2枚のピザ理論」だ。京セラを創業した稲盛和夫さんが考案したアメーバ組織にも通じる。非常にユニークな考えだが、的を得ている。この辺りにジェフ・ベゾスの非凡さを感じる。
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 出典:米AmazonのCEOジェフ・ベゾスが提唱する「2枚のピザ理論」 | ライフハッカー[日本版]

14の行動原則
多くの会社には社是がある。今勤めている会社にもフィロソフィーがある。今回の講演で初めて知ったが、アマゾン社にもそのようなものがある。それは、世界共通の「Our Leadership Principles」だ。しかも、この原則のすごいところは、日常の会話で多用されていることだ。ボスはCustomer Obsessionとか、もっとThink Bigしてみようなどだ。アマゾン社以外の人が聞いたら、変な日本語と思うかもしれないが、この14の原則が常に実践されているのはすごいと思う。なお、下の日本語は私の勝手な解釈なので正確性はご容赦願いたい。

1) Customer Obsession:お客様目線。顧客満足度を高める。
2) Ownership:オーナーシップ。特にリーダは長期的視点で考える。
3) Invent and Simplify:革新と創造は行動のコアだ。
4) Are Right, A Lot:優れた判断力と経験に裏打ちされた直感。多様な考え方。
5) Learn and Be Curious:好奇心を持って常に探求する。
6) Hire and Develop the Best:優れた人材の採用と活用。
7) Insist on the Highest Standards:より高い品質を目指し、実現する。
8) Think Big:アマゾンらしい。大胆な方針と方向性を常に目指す。
9) Bias for Action:まず行動する。問題があればやり直す。
10) Frugality:質素倹約。金よりも知恵を使え。
11) Earn Trust:信頼関係を築く。間違いは素直に認める。
12) Dive Deep:リーダは常に業務に気を配り、関与する。
13) Have Backbone; Disagree and Commit:勇気を持ってノーという。
14) Deliver Results:結果にコミット(笑)。困難にも妥協しない。

API
アマゾン社のすごいところは、チームが独立している点だ。自分たちのチームのミッションを完遂することに全力を投入する。他のチームが何をしているかとか、バッティングしないかなどは考えない。調整もしない。そもそも人と人が調整すると、ロクなことが起きないというのがジェフ・ベゾスの考えだ。では、どうするかというと、APIだ。システムでAPIを決めて、このAPIに沿ったものを開発する。システムとの整合性だけを考える。結果として、類似のサービスや競合サービスが登場してもそれは構わない。この割り切りはすごい。日本企業は、サービスとサービスの整合性や、人と人の和を重んじる巨大な岩だとすれば、アマゾンは小さなレゴのようなブロックを組み合わせてニーズに対応する。どちらが変化に柔軟に対応するかといえば、やはり後者だ。

アマゾンの倉庫
通常の倉庫では棚にものが保管されていて、人間が必要なものを探して、ピックアップして、持ち運ぶ。しかし、アマゾンの倉庫は全く違う。まずお掃除ロボットのような配送ロボットの上に棚があり、何か商品のピックアップが必要となるとその商品が格納されている配送ロボットが人がいるところに移動する。そして、人が必要な商品をピックアップする。配送ロボットはまた移動する。この仕組みのメリットの一つは、作業時間の短縮で5倍の生産性という。倉庫内では人間ではなく、配送ロボットが移動するので人間のための移動スペースが不要だ。配送ロボットの棚には商品がランダムに保管されていて、どのロボットの棚からピックアップするのが最適かはコンピュータが自動計算する。これを考えたチームは凄いと思う。
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 出典:<ロボットのいる世界> (下)アマゾンの倉庫:ロボカップ2017名古屋世界大会:中日新聞(CHUNICHI Web)

アマゾンGO
日本企業はコスト削減が好きだ。しかし、欧米企業は事業創造が好きだ。アマゾンGOの店舗のすごさを日本で示す時に、よく「無人店舗」が実現したように報道されるが、これはアマゾン社が目指す姿ではない。実際アマゾンGOにはスタッフが常駐している。アマゾン社が欲しいのは、マーケティングデータだ。かつて、セブンイレブンはマーケット情報を活用して、品揃えして、ブレークした。しかし、そのデータは購入データだ。しかし、アマゾンGOが収集しているのは、消費者が購買に至るプロセスデータだ。つまり、どの商品を買ったよりも、商品を手に取ったがやめたものはどれか?長時間悩んだのはどれか。どのような動線で購入するのか。Aという商品を購入した後に興味を示す商品は何か。そんな無限のマーケットデータを欲しいのだ。

AMAZON ECHOAWS IoTボタン
講演の中でアマゾンECHOを持っている人と聞かれた。また、AWS IoTボタンを持っている人と聞かれた。残念ながらどちらも持っていなかった。門田さんからぜひ買ってくださいと言われた。素直な自分は、さっき買いました。単なるスピーカは面白くないので、画面付きの最新のEcho SpotとAWS IoTエンタープライズボタンだ。どんなことができるのかぜひ試してみようと思う。
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 出典:AWS IoT ボタン (プログラミング可能な Dash Button) | AWS

チームがサービス開発するときの最初の仕事
アマゾン社では、何か新しいサービスを企画したり、開発する時には、どうするか。通常の会社なら企画書を作ったり、稟議書を作ったりするのかもしれない。しかし、アマゾン社では、まずプレスリリースを作るという。報道される価値があるのかどうかを最初に考える。一体何が画期的なのか。誰が嬉しいのか。どのような問題を解決するのか。そんなことをプレスリリースを作る時には求められるが、それを企画段階の最初に決めるという。面白い。

まとめ
IT21の会では、情報通信を活用して社会に貢献するために毎月講演会を開催している。先月のヘルスケア分野でのAI活用とか、先々月のドローンの活用の話も興味深かったが、今回の話も考えさせられることが多かった。IoTの流れはもう止まらない。それを支えるサービスもどんどん充実している。しかし、ユニークで革新的なサービスを数多く展開するアマゾン社の秘密に2枚のピザ理論や独立したチームでの仕事、14の行動理念などがあることを初めて知った。アマゾン社の快進撃はこれからだと思った。

以上

最後まで読んで頂いてありがとうございます。