LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

AmazonのECHOとLINEのClova

アマゾンが発売するAIスピーカのEchoが米国で話題になっている。

www.youtube.com

同社は、Prime会員に対して2015年7月から限定販売しているが、着実に人気がでているようだ。処理内容はGoogleiOSのSiriと同様だが、レスポンスと認識率が実用的らしい。すでに数百万台を販売して、Echoがデファクトになりそうだ。

ラインアップとしては、円柱型のEchoが基本。これに加えて、スピーカー機能を簡素化したミニサイズのEcho dot。そして、外出先でも使えるAmazon TAPの3種類だ。

そして、人工知能はアマゾンが開発したAlexaである。動作はSiri等と同様だが、スマホでの動作に限定しないのが特徴だという。つまり、すべての家電にAlexaが搭載されるというのも夢物語ではないいという。

残念ながら日本での発売や日本語対応はまだ発表されていないが、2017年末にもリリースされるのではないかという希望的観測(噂)もある。アマゾンはこのポータブルな音声認識対応の人工知能Alexaを無償で公開しているため、日本メーカはAlexaを活用していくのか、Alexaに対抗するのか戦略の選択を迫られている。

一方、これら欧米の製品に対抗しアジア圏をターゲットにLINEがClovaを発表した。元気のない国内メーカーではなく、LINEが手を挙げたのが現在のIT業界を象徴しているように感じる。

2000年代に日本で電子メールが普及してきた時期に、米国ではボイスメールが普及し、電子メールよりもボイスメールの方が活用されていた。残念ながら日本ではボイスメールは米国ほどは普及しなかった。

果たして、音声認識サービスは日本でも普及するのだろうか。現在、活用しているApple WatchのSiriで「今日の天気は」と聞くとちゃんと答えてくれる。このレベルの会話でも結構楽しい。今後、AI機能がどんどん充実すると楽しい世界が広がるような気がするが、その時に覇権を握るのはAmazonの可能性が高い。LINEが日本市場や韓国市場を中心としたアジア市場でどこまで存在感を示すことができるのかが当面の関心ごとになりそうだ。

なぜなら、日本の子供達はもうLINE一色!LINEを使うためにスマホを使うのであって、スマホを買ったからLINEを使うのではない。そして、その延長でツムツムやSNOWも活用していて、もうLINE系サービスに染まりきっている。

そんな環境なので、LINEが日本市場に特化したClovaなどを開発して、展開すると日本市場を席巻する可能性はあるだろう。

バイオミメティクス

日本技術士会の勉強会に参加した。テーマはバイオミメティクス。

このバイオミモティクス(biomimimetics)とは、生命(Bio)とパントマイム(mime)と模倣(mimic)を組み合わせた造語である。

フナクイムシをヒントにしたシールド工法や、蓮の葉をヒントにした超撥水加工、鳥のくちばしをヒントにした新幹線のロングノーズなどが有名である。

何十億年という年月を経て進化した生物を研究することで、人間の想像を超えた英知を得ることができるという考え方である。

バイオミモティクスは、ISOにおいてもISO/TC266において検討が進んでいる。そのなかでも日本はデータベースのWGの議長国を2012年から務めている。

これは例えば、撥水性という言葉を検索した場合に、生物学的観点からは蓮の葉が出て、工学的観点からは表面コーティングが出る。このようにシーズとニーズを紐付けるのが目的だ。

日本技術士会は、21の専門分野の技術士を要する組織であり、その英知を結集するにはバイオミメティクスは格好のテーマからもしれない。

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出典:http://www.jma.or.jp/ouen/reading/next2010review02_20110530.html

 

ベーシックインカムは社会の課題を解決するのだろうか?

人工知能の文献を読んでいると、ベーシックインカムを言及していることが多い。

これはなぜなのだろうか?

人工知能を筆頭に、ビッグデータ技術、ロボット技術、IoT技術などが連携して、進展すると社会の仕組みは大きく変動する。

例えば、添付のブログでは、2030年までに今の仕事の50%がなくなると言われている。

AIに代表されるIT技術が進歩すると仕事の効率化が進むのは確かだろう。人間がやっていた仕事のうち単純な作業、危険な作業を自動化するのは誰も反対しないが、企業は利益を追求する法人なので、利益追求のための作業の自動化も止めることは難しい。

しかし、企業がどんどん自動化して、利益を上げた結果、失業者が増大して、深刻な不況を迎えることになると、それは望ましい社会ではない。

ベーシックインカムは、年齢や性別に関わらず国籍を有する人、もしくは自国で生活する人に対して、生きる権利を守るための最低限の収入を担保するために例えば一人7万円の支給を行うというもの。

すでに幾つかの国では、ベーシックインカムのトライアルをしていて、実験中の国や経済破綻から中止した国、生活保護のために特定地区の原住民に支給している国はあるが、本格導入に成功して継続している国はまだないと言われている。

日本に於いてもベーシックインカム導入の是非について議論が進みつつあるが、そもそものコンセプトのように一律支給ではなく、条件付きの段階的支給といった複雑な形態が検討されているようだ。

ベーシックインカムの狙いの一つは、非常に複雑になった福利厚生施策を一律のベーシックインカムに代替(吸収)することで政府が行うべきことも簡素化し、政府のコストを削減することにある。

しかし、国家公務員が国家公務員の職業を縮小することを意思決定することは非常に難しい。天下りの問題すら解決できない政府が、小さな政府にすることを決めることはできないだろう。

結局、これを実現するには、非常に大きな民力がベーシックインカムと小さな政府の必要性を認識して、それを突き上げる大きなマグマが必要ではないか。そして、そのような大きなマグマは、例えばAIの導入が不況を招き、その不況が長期化し、失業対策が困難な大恐慌になった後になるのではないか。

個人的には、大恐慌になってからベーシックインカムを導入しようとしても遅いので、好況と言われている時代のうちに「ベーシックインカム」のトライアルを日本でも始める必要があると思う。

その時に大切な事は、どのように支給するのかという支払い方だ。

個人的には、次のような方法を提案したい。

1) マイナンバーに紐づけられた電子マネーシステムを導入する。

2) 電子マネーを導入することで、利用用途や利用場所について最低限の制限を行う。

3) 例えば、不動産の購入や高額品の購入、それに伴うローン支払いは対象外とする。原則として、海外での利用を制限するなど。

4) 基本は衣食住に関する支払いを想定し、利用内容をビッグデータとして蓄積する。同時に、個人情報を秘匿した上で、民間利用が可能なように解放する。

 

 ベーシックインカムの導入に向けてはまだまだ多面的な側面からの深い議論と国民へのコンセンサスを得る努力が必要だろう。その場合にも、特に次の点が検討課題だろう。

1) 基本的課題
 ・支給の原資:既存権益の削減対象者は反対するだろう。
 ・支給金額:一定額の前提
 ・支給対象者:在日外国人の対応

2) 経済政策との関連
 ・ベーシックインカムの支給額でインフレ・デフレを調整可能という。
 ・効果検証が必要だろう。

3) 働く意欲、幸福度への影響
 ・ベーシックインカムの支給は勤務を制限する者ではない。
 ・しかし、働く意欲が減るのか、増えるのか慎重な検証がいるだろう。
 ・2016年度の国連の調査でも日本国民の幸福度は157ケ国中53位であった。
 ・国民が幸せを感じるにはどうすればいいのか。ベーシックインカムは有効か。

4) トライアル
 ・検討課題は広範囲なので、やはりトライアルが必要だろう。

5) 小さな政府
 ・きめ細かな福利厚生施策は他国に誇るべきものだろう。
 ・ただ、これを将来にわたって提供し続けることが望ましいのかどうか。
 ・個人的には、ベーシックインカムの提供とセットで、施策の簡素化を行い、
  抜本的に小さな政府を目指すべきと思う。
 ・その結果、公務員の失業者が大量にでても、困らないようなベーシックイン
  カムの対応をしておくべきかなあ(笑)。

careerpark.jp

 

 

 

シンギュラリティとは、コンピュータがコンピュータを開発する時代ではないか。

レイ・カーツワイルによると2045年には10万円程度で購入出来るコンピュータの性能が地球上の全人類の頭脳の性能の総和を上回るという。

そして、近年深層学習機能を用いた人工知能が注目を集めている。

このため、30年後には人工知能の性能が現在の性能の数万倍に向上して人間の知能を超えると理解しがちです。

しかし、現在の深層学習は単に大量の経験値を蓄積して、多数決で最も良さそうな方法を判断するだけの処理であり、これが最終系ではありえない。

Wikiによるとシンギュラリティに関する記述の続きがあって、ポスト2045年にはAIが最大速度で全宇宙に進出し、2100年には人々は過去の人間が記憶のバックアップを取らずに生きてきたことにひどく驚くようになるという。

一方、ガートナーが定期的に発行しているハイプ曲線は有名だが、これによると、黎明期、流行期、幻滅期、回復期を経て安定期に到達するという(参考に2016年版を引用)。

したがって、現在の深層学習が回復期を経て、安定期を迎える頃に黎明期にある新たな要素技術、あるいは、その要素技術が安定期を迎える頃に開発される要素技術が将来のシンギュラリティを支えるということだ。

その頃の要素技術は、すでに人が開発したものではなく、コンピュータが開発する要素技術になるのかもしれない。

つまり、コンピュータが新しいコンピュータを開発する時代が到達するということであり、これがまさにシンギュラリティの本質ではないかと思う。

そんな時代がわずか30年に到達するのであれば、少なくともその30年間は生きて、その変化を自分の目で見て、自分の手で触って、確認したい。

つまり、今59歳なので、89歳まで生きる!ことが自分の人生の最大の目標です。

 

(参考)ガートナーによるハイプ曲線

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バツイチは理想の人生を謳歌するのだろうか。

母親から聞いた話。

父曰く、最も幸せな男性とは若い時には年上の女性と結婚し、中年になったら
若い女性と再婚することだという。

そんな話を妻に言う父も、そんな話を息子に伝える母もちょっとおかしいと
息子である自分は思った。

おかしいという意味では、食卓に納豆を出して、臭いから納豆を早く食べなさいと急かす納豆嫌いの母の思考も幼い自分には理解できなかったが、父となった今は理解できる。

同じように、父の気持ちも分かる気がする。そんな時、ピーズ国際研究所が調べて男女の性欲の年齢曲線を見つけた。

これによると、男性の性欲のピークと女性の性欲のピークにはなんと約20歳のズレがある。つまり、女性の性欲がピークの30代半ばから40代の熟女の若いツバメとして女性の悦ばし方をしっかりとマスターする。そして、自分が30代半ばから40代後半で性欲が落ち着いた段階で若い女性を育てていく。

そして、育てられた女性が30代後半から40代になったら、また若い男性を育てる。そんなことを男性も女性も可能ならば、それは幸せかもしれない。

しかし、日本は一夫一婦制なので、離婚するか、死別するかしない限り、そんな理想の人生を過ごすことは難しいし、経済的にも難しい。

その意味では、バツイチの人はこの理想の人生を過ごすことが可能な人かもしれない。でも、そのために負う精神的、金銭的、肉体的な損失を考慮するとそれほど幸せとも言えない。世の中公平にできているのかもしれない(笑)。

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自動車の走行速度規制を自然に学ぶ

自動操縦の自動車が実用化がカウントダウンの時代になりつつある。2020年には自動操縦車が走り出すという。これを実現しているのは、各種センサー技術や、ディープラーニングをベースとする人工知能がキーテクノロジーとなっている。しかし、ディープラーニングの処理は、一言で言えば多数決での決定アルゴリズムだ。過半数の人が良いというものを採択して、どんどん処理を高度化する。囲碁や将棋では人間を打ち負かすほどのレベルに達している。

これらの技術の開発のみで、望ましい社会が実現するかというと、それは難しい。なぜなら、現在の自動操縦車は安全係数や規則遵守という縛りがある。他の車両が時速60kmで走行している道路の法定速度が40kmだった時に、自動操縦車は60km/hで走行すべきなのか、40km/hで走行するのか、あるいは50km/hで走行するのか。高速道路のランプでメインレーンで車が途切れない時に、自動操縦車はメインレーンに合流できるのだろうか? 常識的には、事故防止を第一に考えるだろう。渋滞防止を第一に考えなければ、渋滞は拡大するだろう。自然の河川では、川幅が狭くなると流れは速くなる。これが自然の摂理である。しかし、高速道路では、車線が増えて広くなると追い越し車線を走る車の走行速度は上がり、車線数が減ると低速で走行する車両に合わせて走行速度が下がる。自動操縦車と手動操縦車が混在している間は、自動操縦車は手動操縦車への追随を第一に考えるべきだが、それでは、自動操縦車は手動操縦車を超えることができない。

自動操縦車が目指すべきは、自然の摂理に合わせた走行ではないだろうか。そこで、速度規制の見直し、高速料金の見直し、 自動操縦車の前提条件、そして、今後の検討課題について以下の通り述べたい。 

1. 速度規制の見直し
速度規制は、現在は一律だが、今後はより状況に合わせて見直すべきと考える。ここでは、並行走行時、接近走行時、拡散走行時の3つの走行パターンに分類して検討してみたい。

1) 並行走行時
・並行走行時に大切な事は周辺(前後)を走行する車両との調和です。
・つまり、流れに合わせることです。
・その時にあるべき速度は、現在の法定規制速度で適切なのだろうか。
・規制速度には、最大速度と最低速度があるが、これだけで十分なのだろうか。
・走行レーンによって望ましい速度が違うかもしれない。
・通常時と渋滞時、事故発生時では望ましい速度が異なる。

2) 接近走行時
・接近走行を余儀なくされる事態をなくすことが道路設計の理想増です。
・しかし、実際の走行時には他の車両との接近が発生する可能性が想定される。
・例えば、車線が減少した時、周辺の車両が車線変更してきた時、渋滞が発生
 した時、前方を走行している車両が速度を落とした時等が考えられます。
・常識的には、周辺の車両が接近してきた時には、望ましい車間距離を維持す
 べく速度を落とす。これは正解なのだろうか。自然科学的には、車線が少なく
 なった時には、速度を下げるべきではなく、上げるべきだ。
・しかし、ディープラーニングだけでは速度を上げるという発想はない。
・車線の減少と接近車両の増加を感知したら、車間距離を縮小して、安全係数を
 縮小できれば、全体の速度は上がる。
・危険は回避し、事故を未然防止し、急発進・急停止を回避する必要がある。
・そのためには、法定規制速度を抜本的に見直す必要がある。このように法的・
 制度的な見直しと技術革新を車輪の両輪のように検討を進めることで、安全
 で快適で効率的な自動運転が可能となります。

3) 拡散走行時
・周辺の車両との距離が拡大する時に自動操縦車はどのように追随すべきか。
・これが難しい。自然の摂理に合わせれば走行速度を下げても渋滞は発生しない。
・一方で、走行速度を上げても危険係数は上がらない。
・周辺車両との接触事故が発生するのはこのような時が多いのではないでしょうか。
・複数の車線が存在する場合に、現在走行している車線を継続して走行すべきなの
 か、他の車線に変更するべきなのか。速度規制も、本来ならレーン別に行うべき。
・例えば、しぜんの河川の流速は岸に近いところと中央では異なる。
・一般走行車線と追い越し車線の速度規制が同じというのもおかしい話だ。
・今までは、運転者に対する分かりやすい安全指導が重要なので、車線に関係なく、
 車線数に関係なく、平常時・渋滞時に関係なく、一定の速度規制をしていた。
・しかし、IoTが進み、豊富なデータを処理できる環境では、安全性、効率性、
 経済性などを考慮して最適な走行速度のガイドラインが決められるべきだ。
・逆に言えば、そうしたガイドラインが適切に規定されば、目的地に到着する
 までの希望時間に基づいて、走行レーンや走行速度を自動操縦車が判断すること
 が可能だろう。

2. 高速料金の見直し
1) 現状
・有料の高速道路の利用料金は、距離別です。
・法定速度を遵守して走行しても、速度オーバして高速走行しても同じ料金です。
・ただし、速度オーバするとパトカーに見つかって罰金を払うことになりえます。

2) 将来
・ETC対応車両がランプ間をどれだけの時間で走行したかを管理することは可能だ。
・鉄道では、急行より特急、特急より超特急の料金が高額なのは受容されています。
・高速道路でも、標準速度で走行した場合と、高速で走行した場合と、超高速で
 走行した場合の利用料金を変えても良いのではないか?
・技術の革新に合わせて、より短時間で安全に走行するようにする。それは望ましい
 社会ではないか。

3. 自動操縦車の前提条件
自動操縦車が普及した時に、すべてを自動操縦車が決めるわけではない。利用する人間が決めるべき事が必ずあります。利用者が決めるべき事と、自動操縦車が判断すべき事は明確に分けて考える必要があります。

1) 利用者が決める事
・出発地と目的地
・走行速度モード:標準モード、高速モード、超高速モード

2) 自動操縦車が処理する事
・走行速度モード別の到着予想時間と利用料金の表示
・周辺に高速モードや超高速モードの自動操縦車を検知した場合の謙譲走行
  (車線変更して高速・超高速モードの車両に車線を譲る)

4. 今後検討すべき事項

1) 走行モード別の高速料金
・現在の高速道路には、走行速度の概念はない。
・走行モード別の高速料金実現へのハードルは多い。

2) 法定速度の高度化
・速度規制は、運転者への抑止力を期待するが、自動操縦車では制御指示となる。
・推奨走行速度、通常最低速度、通常最大速度、渋滞時・故障時の推奨速度等を
 決められかが現状の体制では難しいだろう。

3)緊急走行車線走行の是非
・高速道路には、一般走行車線と追い越し走行車線とは別に緊急走行車線がある。
・自動操縦車がここを臨機応変に使うことが許容されるのであれば、後続車両に車線
 を譲るような走行が可能となる。

自動運転は専門分野ではないが、技術者として感じることをまとめてみました。

長文失礼。

アドルフに告ぐと杉原千畝

アドルフに告ぐ」とは、手塚治虫の後期の代表作である。

 ベルリンオリンピックゾルゲ事件第二次世界大戦の敗戦などの歴史的事件をモチーフにして、3人のアドルフが中心になって、ヒットラーユダヤ人の血を引くという機密文書をめぐって翻弄されるという力作である。

 一方、杉原千畝は、リトアニアのカウナス領事館に赴任していた時期に、欧州各地から逃れてきた6千人に上る避難民を救ったことで知られる。杉原からビザを発行してもらった避難民はシベリア鉄道を通じて極東の日本に向かうが、その途中のウラジオストックでも、同領事館の根井三郎の人道的配慮により、日本に入国が許された。

 当日の松岡洋右外務大臣は、杉原千畝に対してビザ発給条件を守るように再三訓令したが、一方で避難民が入国した後は外務省ではなく内務省の管轄であり、難民の対応に奔走していたユダヤ人学者小辻節三に滞在期間を延長するための便法を教えている。

 そのような多く日本人の人道的配慮により1940年10月に日本にやってきたユダヤ難民は当時の日本人に強烈な印象を残したという。特に、写真家の安井仲治に随行した若き日の手塚治虫(1928年〜1989年)はその時の体験をもとに「アドルフに告ぐ(1986年)」を書き上げた。

 手塚治虫は、後期には自身のルーツをたどった「陽だまりの樹」で第29回小学館漫画賞、「アドルフに告ぐ」で第10回講談社漫画賞を受賞したが、1988年に体調を崩して入院し、手術を受けている。当時、病症である胃癌を告知されずに病院で漫画の連載を続けたという。ただ、その遺作の一つの「ネオ・ファウスト」では主人公が胃癌にかかり、医者や周りの人はその病気を伝えないが、本人はそれを知っていて死亡するという内容だったという。

 誇るべき日本人が歴史上、たくさんいたことを我々は忘れてはいけないのだろう。