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ブロックチェーンの応用を考える

はじめに
 ブロックチェーンという言葉は、ビットコインとセットもしくは同義のように使われることがある。しかし、これは鉄道と新幹線のように全く異なる言葉だ。なぜ同義のように使われるかといえば、最初にブロックチェーンのコンセプトを提唱した人が具体化したものがビットコインの処理システムだったからだ。日本技術士会の経営工学部会が本日開催されて参加した。そのテーマがブロックチェーンだった。非常に面白かったので、そのポイントをレビューするとともに感じたことをまとめておきたい。

本日の講演テーマと講師
 今回は、次の3つのテーマについて二人の講師が講演頂いた。
講演1「ブロックチェーンの基礎知識」
 内容:ビットコインの仕組みからブロックチェーンの原理を学ぶ
 講師:株式会社会津ラボ 元代表取締役社長 久田雅之様
講演2「ブロックチェーンが引き起こす劇的な改革のシナリオ」
 内容:ブロックチェーン技術とビジネスでの活用
 講師:日本IBM ブロックチェーンソリューションズ部長貝塚元彦様
講演3「ブロックチェーンのビジネス的側面での応用可能性」
 内容:デジタルコンテンツ、トレーサビリティ、電力取引などの事例紹介
 講師:株式会社会津ラボ 元代表取締役社長 久田雅之様

久田雅之さんの略歴
一言で言えばコンピュータオタクだ。中高生の時もコンピュータに没頭し、コンピュータを学ぶ単科大学会津大学の一期生として入学し、同大学初の修士、初の博士を履修した。でも、いわゆる優等生ではない。金沢工業大学の講師の職を得るが、恩師の言葉に背中を押されて、ベンチャー企業を起こす。常に最先端の技術を追い求めるチャレンジャーだ。今日もそうだったが、勝負服は常に赤だ(笑)。
valu.is

ブロックチェーンの基礎知識
 ブロックチェーンを理解するためのキーワードはなんだろう。会津ラボの久田さんは、次の5つだと言う。
1) P2Pネットワーク:メッシュでつなぐ。
2) 公開鍵暗号:公開鍵と秘密鍵を使い分けてセキュリティを高める。
3) 電子署名:個人認証、本人認証の仕組み。
4) ハッシュ関数:データの改ざんを防止する。
5) 合意形成アルゴリズム:最後は信頼関係をいかに維持するか。

ビットコインは七年で1000万倍の急騰
Satoshi Nakamotoが論文を発表したのが2008年10月だ。これはネットでもすぐに検索できる。原文は英語だが、親切に日本語で翻訳したものもある。そのURLを以下に示す。そして、このSatoshi Nakamotoは2009年1月にBitCoin(以下BC)の仕組みを開発し、最初の取引が2010年5月22日に行われ、ピザ2枚を1万BCで決済した。仮にピザ1枚千円としたら1BC=0.2円だ。Mt.Goxがサービスを開始した2010年7月18日では1BCは7円で、トランザクションは一日に千件程度だった。それが2013年には1BC=11万円、2017年のピーク時には1BC=222万円まで急騰した。同時にトランザクションも2017年には40万件に増加した。しかし、ビットコインは単純に右肩上がりに上がってきたわけではなく、何度も挫折を経験している。有名な挫折は2014年2月のMt.Goxの盗難事故だろう。そして、直近では、2017年12月のバブル崩壊だ。今後、これらの困難を乗り越えて、第三の頂上に向かうのか、それとも別の通貨に覇権が移るのかは分からない。
http://www.kk-kernel.co.jp/qgis/HALTAK/FEBupload/nakamotosatoshi-paper.pdf

IBMによるブロックチェーンの取組み
ブロックチェーンが引き起こす劇的な変革のシナリオを6つの分野に対してホームページで解説している。具体的には基調編、銀行業務編、証券業務編、サプライチェーン編、医療業務編、行政業務編だ。それぞれ有益だが、最もポテンシャルが高いのは最後の行政業務編か。
www.ibm.com

日本は電子政府を推進できるのだろうか
エストニアでは、政府が発行するIDカードの所有率は94%(2016年当時)と高く、電子政府の構想も精力的に進められている。昨年は安倍首相もエストニアを訪問して、電子政府に向けてアクセルを踏もうとしている。しかし、エストニアのIDカードを参考にしたはずのマイナンバーの普及率は、10%に満たない(2017年8月当時)。エストニアのIDカードは、当然ながらIDとパスワードが分離されている。パスワードは利用者本人が管理する。コンセプトも明確で分かりやすい。しかし、日本のマイナンバーはどうもわかりにくい。セキュリティも心配だ。マイナンバーの利用を躊躇する人が多いのも理解できる。
forbesjapan.com

コンソーシアム型とプライベート型は低消費電力でエコだ
ブロックチェーンの最大の欠点は電力とコンピュータパワーを浪費する点だ。したがって、パブリック型のマイニング処理は電力料金の高い日本ではペイしない。中国のビットコインのマイニング業者は電力が無料のエリアに集中すると言う。仮に51%以上を中国の業者が独占したら処理の正常性は担保されるのだろうか。これを51%攻撃問題という。しかし、それはパブリック型の問題であり、複数の企業が連携するコンソーシアム型や単独の企業が運用するプライベート型はそんな無駄なマイニング処理の競争が必要ない。このため、トランザクションも数秒で完了できるし、消費電力も少ない。このため処理が宙に浮くようなことがない。これをファイナリティがないと言うが、コンソーシアム型ではファイナリティがあると言う。
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 出典:富士通(http://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/financial/concept/blockchain/)

IBM BlockChain Platform
今回の講師は、IBMブロックチェーン・プロモーションリーダなので、少し宣伝もあった(笑)。それによると、本格的なパイロット利用だと月20万円〜(最小構成)だが、実証実験向けのプランだと月5万円〜(2ピア2組織)だと言う。ブロックチェーンの実証実験も最小単位なら月5万からできると言うことだ。有望なのは複数の事業者がそれぞれホスト系で管理して、それを後から精算処理をしているようなケースだと言う。従来は権威が価値を保証するホスト型だが、今後はユーザが取引履歴を監視することで価値を保証するようになると言う。
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 出典:HRナビ(http://hrnabi.com/2018/03/27/16875/)

ICO(Initial Coin Offering)の可能性
ICOに参加したことはありますか?私はまだないです。しかし、久田さんは二桁はあると言う。そして、残念ながら詐欺のようなケースも多いと言う。ICOでは、ホワイトペーパーを起草し、それに賛同した人は仮想通貨で投資し、トークンを得る。起業家は仮想通貨を円等に変換して起業する。そのプロジェクトが成功するとそのトークンの価値が増加するので、投資家は利益を得る。そんな仕組みだ。しかし、久田さんによると、数十のホワイトペーパーを読み込むと類似のもの、コピペのものも散見されると言う。しかし、ホワイトペーパーをしっかり読み込んでから投資する人は少数なので、投資家からの投資を集めるだけ集めてドロンするケースもある。投資するならホワイトペーパを精査するぐらいは必須ではないだろうか。
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 出典:Nigekiri(https://nigekiricurrency.info/ico)

電力のP2P取引
自然エネルギーは気ままだ。風や日差しが強い日には発電量が増えるが、そうでない日は発電量が減る。しかし、電力の供給は同時同量が基本だ。つまり、需要と供給が同じになるようにしないと電圧値が変動したり、最悪停電となる。現在の電力会社はそのために大変な努力をする。しかし、再生エネルギーは供給量を調整することが困難だ。ではどうするか。経済原理を働かすしかない。つまり、電力の供給量が多いときは単価を下げ、逆に供給量が少ない時には単価をあげる。そして、例えば、電気自動車への充電とかは電力料金の安い時に行ったり、エアコンの消費量をIoT機器で制御する。そんなことを実現するのは、電力の売買を細かく管理する必要がある。それをブロックチェーンで制御するインフラを整備しようと言う壮大な構想だ。
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 出典:TEPCO(http://www.tepco.co.jp/press/release/2017/1443908_8706.html)

まとめ
今日のセミナーは面白かった。でも、その全てを伝えることはできないので、ポイントのみを自分なりに裏付けを取りながらまとめて見た。支離滅裂になっていなけれと思う。皆様の参考になる部分が少しでもあれば幸いだ。個人的にはブロックチェーンは電力とコンピュータパワーの浪費が課題だと思っていたが、コンソーシアム型やプライベート型はそうでないと確認できたのが最大の収穫だ。仮想通貨に関しては、各国の中央銀行が虎視眈々と狙っている。エストニアでは、国がエストコインをICOで発行しようとしている。ブロックチェーンのインフラは、1980年代に現れたインターネットと同じか、それ以上のインパクトを社会のインフラ整備に与える可能性がある。しかし、光もあれば、影もあるので、取扱には十分な注意が必要だ。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。