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労働安全衛生法:難問解読(平成29年第2問)

はじめに
10月16日に労働安全コンサルタント試験がある。楽観主義者の自分もちょっと焦りが出てきた。法令の問題は15題出題され、過去6年分の問題を集めてトライしたが、その約2割の16問は何度やっても正解に収斂しない。これは自分の理解度が乏しいためだが、中には本当?!という問題もある。このままサブノートでトライしても、上っ面だけの正解を目指すことになるので、ちょっと一問ずつ精査したいと思います。門外漢の人には退屈かもしれないので、読み飛ばしてください。また、労働安全衛生法に詳しい方で私の理解が違っていると感じる方はぜひコメントしてほしい(笑)。

【平成29年第2問】

1. 設問の問
安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

2. 設問の回答と関連法規
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3. 解説
う〜ん。むずい。これは「誤っているもの」はどれかと聞いている。従って、誤っているものが正解となる。選択肢1以外は全て正しい記述だ。正解集でも選択肢1が誤っているとある。でも、問題はそのどこを持って誤りと言っているのだろうか。想定されるのは次の誤りだが1)も2)も3)も謝りではないように思われる。何が誤りなのだろう。わからない。

1) 「造船業の特定元方事業者」としている点
2) 「講ずべき措置のうち技術的事項」としている点
3) 「造船業で元方安全衛生管理者の選任が必要」としている点

1) 「造船業の特定元方事業者」としている点
特定元方事業者は一義的には建設業だが、ある解説には、造船業は特定元方に含まれないという説明があったが、それは間違いだろう。つまり、この部分の記述が間違いではないということと理解したい。
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 出典:川崎市(http://www.city.kawasaki.jp/840/cmsfiles/contents/0000022/22571/bessi3.pdf)
2) 「講ずべき措置のうち技術的事項」としている点
労働安全衛生規則第十八条の五において、「事業者は、元方安全衛生管理者に対し、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため必要な措置をなし得る権限を与えなければならない。」とある。つまり、労働災害を防止するための必要な措置」であって、「措置のうちの技術的事項の管理」ではないので、この点が誤りなのだろうか。しかし、労働安全衛生法第15条2では下に引用するように「技術的事項を管理」と明記している。つまり、この点が誤りではない。
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3) 「造船業で元方安全衛生管理者の選任が必要」としている点
ここがややこしい。造船業においても統括安全衛生責任者の選任は必要だ。しかし、元方安全衛生管理者の選定は必要なのだろうか。元方安全衛生管理者については、労働安全衛生法第15条の2で、「建設業その他政令で定める業種」で選任することとなっているが、「その他政令で定める業種」は定められていないという。つまり、造船業では、元方安全衛生管理者は必要ないのだろうか。しかし、後述の安全衛生協会の資料では、造船業においても、50人以上の事業場では元方安全衛生管理者が必要と図示されている。これが正しいなら、この点も正しいということになる。ムズイ。。。

4. 参考事項
4.1 「一の場所」の定義

労働安全衛生法第15条第1項の「一の場所」という記載がある。これは特に建設業法をイメージしたものだが、造船業も含まれている。労働安全衛生法および同法施行令の施行について(1972年(昭和47年)09月18日 基発第602号)では次が「一の場所」とされている。

建設業関係
 建築工事関係
  ビル建設工事 当該工事の作業場の全域
  鉄塔建設工事 当該工事の作業場の全域
  送配電線電気工事 当該工事の工区ごと
  変電所又は火力発電所建設工事 当該工事の作業場の全域
 土木工事関係
  地下鉄道建設工事 当該工事の工区ごと
  道路建設工事 当該工事の工区ごと
  ずい道建設工事 当該工事の工区ごと
  橋りよう建設工事 当該工事の作業場の全域
  水力発電所建設工事
  堰堤工事の作業場の全域水路ずい道工事の工区ごと
  発電所建設工事の作業場の全域
造船業関係
 船殻作業場の全域、艤装又は修理作業場の全域、造機作業場の全域、又は造船所の全域

4.2 元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者
元方安全衛生管理者とは建設業の現場において、統括安全衛生責任者のもと技術的な事項を管理する者だ。一方で、統括安全衛生責任者とは、特定元方事業者の事業場において、特定元方事業者の労働者及び関係請負人の労働者の作業が「同一の場所」において行われることによって生ずる労働災害を防止するために統括管理する者だ(労働安全衛生法第15条第1項)。ここで、特定元方事業者とは、特定事業である建設業、造船業に属する事業の下請負人を使用する元請負人のことだ。
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 出典:安全衛生マネジメント協会(【2】安全衛生管理体制 2|(社) 安全衛生マネジメント協会)

4.3 建設業の安全衛生管理体制
 建設業では、元請、下請け、孫請けという多層構造が一般的だ。このため、労働安全衛生法では、建設業の安全衛生管理体制として、元請である元方事業者と下請けや孫請けである関係請負事業者を対象として、下のような責任者や管理者を定義している。
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 出典:中小建設業特別教育協会(1-2 建設現場の統括管理|(財)中小建設業特別教育協会)

以上