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築地市場を豊洲に移転する文化的な側面

築地市場豊洲移転問題を論じる場合に、安心・安全というキーワードで議論が進んできた。

 

これは必要な議論だし、食の安全を担保するという意味では重要だ。

 

飲料対象外の地下水が基準を超えていても安全面では問題ないが、それだけでは安心できないという心情的な議論に移っていた。

 

しかし、日本在住40年以上のリシャールコラス氏(シャネル日本法人社長)のコメントは、日本人以上に日本の文化保存を訴えている。日本人として、日本の文化に対する思いが足らなかったと恥ずかしく感じた。

 参考:http://toyokeizai.net/articles/-/171868

 

自然の保護問題の難しさは因果関係の複雑さによる。例えば、治水の観点からダムを建設した。その結果、下流の水量が減少し、上流からの砂が下流に流れなくなり、下流の生態系が破壊されたり、海岸線が縮小したり、想像もしない影響が後から発生し、それに気づいたときにはもう新たな生態系が生成されていて、元には戻せない。そんな状況で元に戻すこともできず、かといって放置もできず解決策がないという非常に困難な課題に昇華してしまう。

 

今回の築地市場の問題も、築地市場が古くなり、衛生上の問題があるから、豊洲に移転して、築地市場の跡地は銀座にも近いから再開発しよう。どのように再開発するのかは存じないが、条件が合えばカジノでも誘致して一大レジャーランドにでもしようと考えている輩がいるのではないかと想像してしまう。

 

そうではなくて、築地市場を移転することは、江戸時代から流れる文化をここで断ち切ることになるという側面をもう一度考える必要があるのかもしれない。

 

日本の人口は50年後には8800万人まで減少するという予想もある。どこで底打つのかは分からないが、人口が縮退した時に、日本が海外に誇れる文化を後世に残すというのは現在を生きる我々の使命かもしれない。

 

東京駅の再開発の時に、文化遺産の価値のある部分を残したように、築地市場文化遺産の価値のある部分は残しつつ、近代的な設備を導入するような再開発を行い、それが完成するまでの間は豊洲に移転するといった方法もあるのではないだろうか。

 

難しい問題だが、単に食の問題ではなく、日本人、日本のレゾンデートルを問われている問題なのかもしれない。