マクロ経済と人材経営の最終回(#7)を受講して
はじめに
2020年春期後半は修論以外に2科目を受講していたが、今週で終了した。幅広くて理解がなかなか追いつかない部分もあったけど、興味は尽きない。今日は最後の講義だったからか、マクロ経済について関心の強い学生、授業時間終了後も景気は?金利は?と質問が次から次に出た。私もCBDCの是非について質問した。来週から講義がないのは寂しいなあ。時間の制約もあるので、簡単にレビューしておきたい。
ワークシフト
著者のリンダ・グラットン(Lynda Gratton)は、ロンドンビジネススクールの教授だ。人材論や組織論の世界的な権威だ。ワークシフトやライフシフトを書いている。どれも内容が広く深い名著だ。ライフシフトの日本語訳に序文を起こしている。著者は1955年2月生まれだ。年齢は計算しないけど自分より2歳ほど上なのでほぼ姉と同じだ(笑)。
3つの資本
リンダ・グラットンは著書ワークシフトの中で3種類の資本と3つのシフトを説いている。
1) 知識資本:知識と知的思考力
2) 人間関係資本:人的ネットワークの強さと幅広さ
3) 情緒的資本:自分自身について理解し、自分の行う行動について考える能力
3つのシフト
1) ゼネラリストからの連続スペシャリスト
2) 孤独な戦争から協力して起こすイノベーション
3) 大量消費から情熱を傾けられる経験へ
3つの資産
リンダ・グラットンは著書ライフシフトでは3つの資本の代わりに3つの資産を説いている。
1) 生産性資産:仕事で成功し、所得を不安のに役立つ要素
2) 活力資産:肉体的・精神的な健康と幸福
3) 変身資産:人生を生きる過程の変化を経験し、変身を遂げるために必要な資産
長く働く条件
山田教授から長く働く条件は何かと質問があった。ある学生は健康と回答した。自分は、気力と体力と知力と回答した。別の学生は好奇心と回答した。どれも正解だろう。
高齢者雇用のマネジメント
これは敬愛大学の高木朋代教授の著書「高齢者雇用のマネジメント」が詳しい。高木教授は一橋大学の博士課程(社会学)を卒業し、高齢者雇用の研究をされている。著書の中で定年退職者の継続雇用の特徴として、次の3点を指摘している。
1) 同一職内での長期の経験を積んでいる
2) 困難性を伴う起伏のあるキャリアを経験している
3) 能力の伸長に結び付く人との出会いをしている
出典:https://www.recruit-ms.co.jp/research/2030/opinion/detail15.html
高齢社のチェックリスト
定年を迎えても気力、体力、知力のある人には働く場と生きがいを提供すると宣言しているのが高齢社だ。1938年生まれの山田研二が2000年1月に創業した会社だ。登録社員は945人で年商6億円強と立派だ。しゃれているのは心意気だ。コミュニケーションを円滑にする4つの「あ」とか、働く心得などは心に染みる。
出典:https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20190123/resume/07-jirei3-koureisha.pdf
元気だから働くのではなく、働くから元気
楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいという。同じように高齢者では、元気だから働くのではない。働くから元気なのだという。生きがいを持って、「きょうよう」と「きょういく」が大事。
SHRM
話題が変わるが、SHRMとは戦略的人的資源管理のことだ。英語だと、「Strategic Human Resource Management」か。アメリカでは、資産ベース視点の戦略論を受けてSHRMの論争が活発だという。SHRMもベースになるのは、HRMだ。人材育成はマクロマネジメントとミクロマネジメントに分類される。前者は組織マネジメントと人材マネジメント(HRM)に分かれる。後者は従業員に直接影響を及ぼす方法だ。SHRAMはこのHRMをさらに戦略的に進めるものと言える。
出典:https://www.kaonavi.jp/dictionary/hrm/
アルムナイ
ある学校の卒業生のことはOBやOGという。これはOld BoyやOld Girlの略だ。よく考えると失礼な言い方だ。米国では、OBの代わりにAlumnus、OGの代わりにAlumnaと言う。この複数形がAlumni(アルムナイ)だ。知らなかった。多分、まだ知らない人の方が多いのではないだろうか。本来は学校の卒業生グループだが、最近は企業の転職・退職者グループを指すこともあるようだ。
CSR論とCSV論
CSRとCSVは似て非なるものだ。共に社会性を尊重する考えである点は共通しているが、下のような違いがある。CSRは社会貢献を実施することで企業のブランドイメージを維持向上すると言うどちらかと言えば守りのイメージだ。一方のCSVは企業の持つ経営資源や専門性などを活用して、資本主義の原理に基づいてビジネスで社会の問題を解決しようと言うどちらかと言えば攻めのイメージだ。
出典:https://www.sbbit.jp/article/cont1/29352
CSRへの賛否
現在は、CSRの必要性を否定する人は少数派だろう。積極的か消極的かの違いはあっても、賛成か反対かと言う議論には多分ならない。しかし、CSRの揺籃期には多面的な議論があったようだ。
・ピータ・F・ドラッカーの責任限界論
・A.B.キャロルのピラミッド論
・フリードマンの否定論
・ロバート.ライシュのCSR批判
CSRと業績との関係
創価大学大学院の荒木真貴子さんはCSRやSRIなどの研究論文を2007年から2009年にかけて精力的にまとめられている。この論文では業種にも依存するが、CSRと業績には一定の相関関係があることを示している。ただ、ここが難しいところだが、業績が良いからCSR活動をしているのか、CSR活動をしたから業績が良いのかと言う因果関係まで落とし込むことができない。多分、両方の要因があるのだろう。
まとめ
これ以外にも、フェアトレード、コミュニティカレッジ、シルバーウッドなどについても興味深い話を伺ったが、時間の関係もあるので、割愛する。8月2日には修論の中間発表会だ。また、この科目のレポートが8月18日だ。とりあえずの草案はできているが、もう少し精査してから出すことにしよう(笑)。明日もお仕事がんばろう!
以上
最後まで読んで頂きありがとうございました。
拝