LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

子供の安全について

はじめに
2018年3月に名古屋から戻って、2018年4月からは日本技術士会のいろいろな部会に参加した。2018年5月にたまたま参加したIT21の会では、次期役員を決める選挙があり、なぜか副会長に選任されて、1年間活動した。良き仲間や先輩にも恵まれて楽しかった。2019年4月からは社会人学生として、平日の夜や土曜日に大学院に通って、講義を受けたり、ディスカッションしたりした。2020年4月からは大学院の二年生で修論に悩んでいる。ふと、気になって、日本技術士会の活動に参加した。

子どもの安全研究グループ
公益社団法人日本技術士会に登録された「子どもの安全研究グループ」は2009年4月に開催された講座がきっかけだ。緑園子どもクリニック院長の山中先生から、「子どもの安全を守る-技術者のミッション」について話をしていただき、それに共感した有志で設立されたグループだ。このグループを引っ張っていただいた先輩技術士の一人が森山さんだ。
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 出典:子どもの安全研究グループ

森山哲先生
森山先生のコアコンピタンスは安全管理だ。森山技術士事務所と森山労働安全コンサルタント事務所を開設されている。安全工学研修やリスクアセスメント実地指導などをされている。安全工学の博士でもある。すごすぎる。
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 出典:http://www.safetyeng.co.jp

豊島園のふわふわウォーターランド
2019年8月15日に小学校3年生の女子が溺死する痛ましい事故が発生した。豊島園のふわふわウォーターランドで起きた事故だ。当時、ライフジャケットを着用していたけど、事故にあった。もっと言えば、ライフジャケットは安全のための装置だけど、これがリスクを拡大する原因となった。どういうことかと言えば、下の写真のような遊具で、人が立っているところの下に子供が潜り込んでしまい、ライフジャケットが邪魔をして出られず溺死。遊具は透明でないために溺れていることに気づかず、正午の点検では問題なかったけど、14時の点検の時に浮島の下に沈んでいる女の子が発見されたが、すでに意識がなかったという。これの原因を掘り下げていくと、いくつかのリスクが浮かび上がる。まず一つは、ライフジャケットがリスク源になっていたこと。浮島が事故を発見しにくい構造だったこと。そして、そもそもそのようなリスクがあるという認識が関係者になかったこと。つまり、リスクアセスメントの不備と言えるだろう。
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 出典:http://www.toshimaen.co.jp/pool/fuwafuwa.html

リスクアセスメント
工事現場や建設現場、製造現場では、安全管理のためのリスクアセスメントは必須だ。現場には危険がいっぱいだ。例えば、化学工場には、有害な化学物質が使われている。原子力発電所には人体に有害な放射線を放射する放射性物質を燃料として活用している。建設現場では重機を使って、講書作業をしたりする。電力工事も感電したら大変だ。そんな生命の危機と紙一重のところで安全を担保して、仕事をしている現場がいっぱいある。そして、その安全を担保するには、どのようなリスクがあるのか。そのリスクにどのように対処するのかを分析して、検討して、実施するリスクアセスメントが有効だ。でも、アミューズメント施設や公共施設において、リスクアセスメントは十分に実施されているのだろうか。豊島園の例を見る限り、そうは思えない。
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 出典:https://www.jisha.or.jp/oshms/ra/about01.html

意外と事故の多い滑り台
参加者から滑り台の危険性を指摘する声が相次いだ。一つは、岩手の公園に設置されたバナナ滑り台による事故だ。四歳のお嬢さんがこのバナナ滑り台で遊びたいと思った。心配だった父親がそばで見ていると、分岐のところでバランスを崩して、頭から落ちる寸前で抱えて大事には至らなかった。このバナナ滑り台は全国235箇所に設置されている。他の公園でも子供が股間を打ったり、落下したりする事故が起きている。東京消防署の2007年から2011年の調査では、遊具で最も事故が多いのは滑り台がトップで、次にブランコ、うんてい、ジャングルジムなどだ。遊具だけで3281人の子供が救急搬送されているという。
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 出典:https://daipresents.com/2018/nagasakadani-banana/

マンションからの転落事故
Safe Kids Japanの調査(2017年5月12日から12月31日:N=115家庭)によると、ベランダからの転落事故を89%が知っているが、対策をしているのはわずか30%。残り70%の人は何も対策をしていないという。特に近年増えているのがマンションやアパートからの転落事故だ。子供も歩けるようになると活動範囲が広がる。エアコンの室外機などを足がかりにしてベランダの塀によじ登り、そのまま転落は悲しすぎる。コロナ禍対応で部屋の換気も大事だけど、小さな子供が外に出るリスクを考えると慎重にしたい。ベランダに万一でても、塀によじ登れないような仕組みや、塀によじ登っても大丈夫な仕組み。そんなまさに二重三重のセーフティネットを仕掛けておいて欲しい。
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 出典:https://select.mamastar.jp/244599

安全対策はマンション選びのキー
小さな子供がいる世帯が住まいを選ぶときには、近くに保育所があることが重要な要素だという。交通の便利や行政のサービスも大事だ。でも、そんな住まいにも危険が潜んでいるかもしれない。きちんとマンションのリスクアセスメントをすることで、マンションの安全を担保できれば、マンションを提供する側にとってもメリットが得られるかもしれない。東京消防庁のデータによると、平成23年から28年の間に子供転落事故が218件起きている。一人歩きを始める1-2歳の子供からは本当に目を離せない。
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 出典:https://tamagoo.jp/lifestyle/danger-of-the-high-rise-apartment/

遊具製造会社アネビー
危険な遊具は撤去すべきだろうか。アネビーは公園から遊具を撤去すると逆にリスク値が高まると警告する。学校は、本来なら小さな失敗を繰り返し、学ぶ場だ。結果として大きな失敗を回避することが目的だ。公園の遊具も同じだ。大きな失敗をしないように、小さなチャレンジで失敗を経験することに意義があるのかもしれない。しかし、それを放任しすぎると、思わぬ大事故につながってしまうかもしれない。
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 出典:https://www.aneby.co.jp/safety/

日本の遊具の安全に関する基準
アネビーのホームページを見ていると、日本の遊具の安全に関する基準は、ヨーロッパの国際基準EN1176と、アメリカの遊具基準を参考にして、2002年に制定したようだ。そして、その基準に満たない遊具は撤去され、公園から遊具がなくなり、公園から子どもの遊ぶ姿がなくなったとしたらそれでよかったのか。ヨーロッパの基準EN1176では、遊具の基準に加えて、事故報告のシステムを定義している。これに基づいて、何関数万件の事故事例を集め、分析し、基準にフィードバックしている。日本の基準はこのコンセプトを受け継いでいるのだろうか。
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 出典:https://www.aneby.co.jp/safety/column_190426.html

EN1176
ドイツ語だったけど、グーグル先生に翻訳してもらった。長いのでさらに意訳すると次のような感じだろうか。

DIN EN 1176-1:一般的な要件と試験方法
一般的な安全要件とテスト方法」は、サイト固有の公共遊具と遊具の床の一般的な安全要件を規定しています。

DIN EN 1176-2:スイングの要件と試験方法
特別な安全要件とスイングのテスト方法」では、恒久的に設置されるスイングの安全要件を規定しています。

DIN EN 1176-3:スライドの要件とテスト方法
スライドの追加の特別な安全要件とテスト方法」は、恒久的に設置されるスライドの追加の安全要件を規定します。

DIN EN 1176-4:ケーブルカーの要件とテスト方法
追加の特別な安全要件とケーブルカーのテスト方法」は、恒久的に設置されるケーブルカーの追加の特別な要件を指定します。

DIN EN 1176-5:カルーセルのテスト方法
2019年12月に現在のバージョンで公開されました。 恒久的に設置されたカルーセルの要件を定義しています。

DIN EN 1176-6:シーソーの要件とテスト方法
シーソーの追加の特別な安全要件と試験方法」は、子供用の遊具として使用されるシーソーに適用されます。

DIN EN 1176-7:設置、点検、保守、操作
設置、点検、保守、操作の手順」は、現在2019年4月に入手可能です。 2008年8月のバージョンおよび2008年12月の修正と比較して、次の変更が行われました。

まとめ
子供安全管理だけでも研究している人は多い。国内でも多いけど、海外も多い。マンションのベランダからの墜落事故の原因を分析し、対策を検討し、その効果検証をするだけでも、十分に意義はあるだろう。旅館のまる適マークのように、マンションに安全マークを付与したり、公園に安全マークを付与するようなビジネスモデルもあるかもしれない。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。