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感染症対策:歴史から学ぶ

はじめに
新型コロナの感染者を抑制するためにステイホームが求められている。テレワークもZOOMも利用する頻度が増えたというか、必須ツールになってきた。これまでも人類は感染症と闘ってきた。少しタイムスパンを広げて歴史から学んでみたいと思った。

1. 新型コロナがもたらす世界社会の変革
1.1 歴史から学ぶ:インカ帝国の滅亡

メキシコのアステカ帝国を駆逐したのはコルテス(1518年)だ。インカ帝国を駆逐したのはピサロ(1520年)だ。しかし繁栄していた帝国が崩壊したのか。「疾病と世界史」の著者ウイリアム・ハーディ・マクニールはその秘密は感染症にあるという。つまり、帝国滅亡の決定的な要因は疾病=天然痘だった。当時のスペイン人にはすでに天然痘に対する免疫があったが、先住民には免疫がない。そのため、天然痘に感染するのは先住民ばかりだ。このため、先住民は、「神の怒りがインディオのみに向けられた」と考えた。スペイン人がキリスト教であるため、改宗する人も多かったようだ。そして、スペイン人に畏敬の念を抱き、抵抗らしき抵抗もなく、帝国は崩壊し、文化的にも宗教的にもスペイン人に支配されることになった。領土拡大にはキリスト教の布教が有効だと実証することにもつながった。
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 出典)ウイリアム・ハーディ・マクニール、「疾病と世界史」

1.2 モンゴル軍によるペストの感染拡大
モンゴル軍が1252年に中国南部とビルマに侵入した時に、ペストに感染したノミを持ち帰ったのが、ペスト感染拡大の契機だった。今回の新型コロナの契機が明らかになることはあるのだろうか。勢力を拡大するモンゴル軍は、1347年には黒海からクリミア半島に到達する。モンゴル軍とともにクマネズミも拡大した。特に、ロジスティックとして隊商基地に保管している食料がクマネズミの食料だ。クマネズミとともに、クマネズミにたかるノミが温床された。そして、ヨーロッパにペストの感染が広がった。ヨーロッパでは、ペストの原因が分からず恐怖が広がる。まさにパンデミックだ。そして、ヨーロッパの人々はその原因がユダヤ人にあるとして、スケイプゴートとして、ユダヤ人の迫害や大虐殺に突き進んだ。まさに魔女狩りだ。人類は何か問題が生じると答えを欲しがる。そして、それは必ずしも正解ではない。宗教だったり、人種だったりする。そして、それを信じることでサバイバルしようとする傾向があることには注意が必要だ。このユダヤ人の迫害には、ユダヤ人からの借金を帳消しにすることを狙ったとも言われている。結果的に、当時の新興勢力だったキリスト教がさらに拡大する契機にもなった。
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 出典:https://call-of-history.com/archives/23203

2. 新型コロナがもたらす日本社会の変革
2.1 日本で猛威を振るった感染症コレラ

コレラはインドのベンガル地方の風土病だった。インドで軍事活動をしていたイギリス軍人がこのコレラに感染したのが契機だ。そして、このコレラ1820年から1822年にかけてセイロン、東南アジア、中国、そして日本へと伝搬した。日本で初めてコレラに感染したのは1822年(文政5年)。さらに1858年(安政5年)、1862年(文久2年)、1879年(明治12年)、1886年(明治19年)と繰り返し流行した。平成から幕末にタイムスリップした南方仁のアニメがドラマ化されたが、この幕末の1858年(安政5年)には江戸で3万人がコレラで死亡した。当時の江戸の人口は100万人だった。今で言えば、日本で300万人が死亡するレベルのパンデミックだ。さらに安政の大地震など、感染症や震災が繰り返し幕府や社会を襲ったのも、幕府の体力を消耗させた原因という。
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 出典:https://article.auone.jp/detail/1/5/9/8_9_r_20200428_1588020012492698

2.2 西洋蘭学の発達
江戸時代、日本に流れ着いた外人は長崎に送られ、感染症は長崎から広がった。インフルエンザ、天然痘コレラなどの外来の感染症はまず長崎で猛威を振るった。これに対して、天然痘の予防接種やコレラ の治療法といった西洋医学(蘭学)が導入されて、発達したようだ。日本でも感染症の脅威にさらされると、元号を変えたり、医学を発達させたり、政治体制を改革したりして対応してきた。最近では、1920年スペイン風邪ではマスクで儲ける商売が増えた。そういうことは反面教師として解決したいものだ。
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 出典:https://intojapanwaraku.com/culture/90941/

3. 社会経済のオンライン化の加速
3.1 ポストコロナで大事なこと

エストニアでは、本年3月12日にオンラインハッカソンが開催された。貿易・情報技術大臣は「エストニアはこの危機を利用して前よりも強くなって立ち直るべきだ」と呼びかけた。13日から15日の3日間で20ヵ国1300人が参加し、「SUVE」や「Share Force One」、「VENTIT」など80のアイデアが生まれた。最優秀賞には5000€(約59万円) が与えられた。
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 出典:https://wired.jp/2020/04/17/covid-19-online-hackathon/

3.2 SUVEはチャットボット
Webにアクセスした時に、アクセスした人と会話するプログラム。会話ボットとか、チャット ボットとか、人工無脳とも呼ばれる。危機に瀕した時に回答するSUVEが実運用されている。日本でも、周回遅れではあるが、テレワークやオンライン授業が一気に普及に向かっているし、オンライン診断も解禁や普及が期待されるが、行政のサービスのオンライン化はまだまだだ。
 出典:https://investinestonia.com/

4. 米国における低所得向けの支援策:SNAP
4.1 米国のフードスタンプ

米国では1960年ごろから低所得者向けの公的扶助として、補助的栄養支援プログラムSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)が始まった。これは金券の一種で、食料以外やアルコール系は購入できないが、通常の食料を購入可能だ。人が生きていく上で最低限必要なのはやはり食料だ。米国農水省(USDA)ではフードスタンプ の提供だけではなく、その利用データをウェブ上でも公開し、ファクトベースの施策につなげている。素晴らしい。
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 出典:http://www.nygreenfashion.com/html/learn/usda.html

4.2 電子給付振替(EBT:Electronic Benefit Transfer)
フードスタンプで提供されてきたSNAPは2004年からは磁気カードによるEBTでの運用に変更されている。月平均の支給は参加者は一人あたり125ドル程度という。日本なら月1万円から1.5万円ほどだろうか。下のポスターはマサチューセッツ州のもの。拳銃やギャンブルなどには使えませんよとわざわざ注意書きしている。貧困対策というとベーシックインカムや給付金を思いつく。今回、調査する中でSNAPという制度を初めて知った。日本ではあまり話題にされない気がする。日本の事情に合わせた日本版SNAPは考えられないか。SNAPは各自治体が低所得者向けに直接的に支援する点が特徴で経済的な効果も大きいと思う(仮説)。
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 出典:Top EBT cash withdrawal locations in Western Massachusetts

5. 拡大する経済格差
5.1 貧富の格差と負の連鎖

世界的に貧富の格差が拡大している。日本でも上位1%や上位10%の富裕層の人口が世界一増加しているという。その一方で、下位90%のシェアは低下している。つまり、貧富の格差の拡大は加速している。さらに新型コロナの影響がこれに重なる。日本社会だけの問題ではないが、世界中の経済や人々の暮らしは守られるのだろうか。
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 出典:http://editor.fem.jp/blog/?p=3083

5.2 負の連鎖と対策
貧富の格差拡大に対して、富裕層の人たちは頑張ったものが稼いで何が悪いという気持ちかもしれない。頑張ったものが報われる社会は良いが、頑張っても報われない。頑張る土俵にすら上がれない。そんな負の連鎖は是正されるべきだし、それに反対する人は、少なくとも表立ってはいないだろう。貧困には経済的貧困と精神的貧困がある。短期的には経済的な救済策が必要だけど、経済的な救済で本当に負の連鎖を断ち切ることができるのか?経済的な救済よりも精神的な貧困を救済する方が有効かつ必要ではないか。孤立を防ぐことや、様々な体験をさせること、将来のための教育を受けること。人と人のつながりを図るソーシャルビジネスの可能性に期待がかかる。

まとめ
感染症の猛威にどのように人類は闘っていたのかその光と影を少し歴史から学ぼうと思った。なぜ戦争が始まるのかという問いの答えがまだ見つからないが、もしかするとこの感染症が1つの原因かもしれないと思う。つまり、世界的に感染症が広がる。世界的に社会システムが大打撃を受ける。世界的な大恐慌が起きる。大国では自国優先主義に走る。切り捨てされる国とそうでない国で戦争が起きる。そんな図式を研究した人はいないのだろうか。事実を検証するのがなかなか大変かもしれない。大切なことは新型コロナを早期に沈静化することで経済的な影響を最小限に食い止めることと、ポストコロナに向けて、社会システムのオンライン化をさらに進めることや、社会的弱者に対するセーフティネットを整備すること、地域内のつながりを強化して、相互扶助のシステムを整備することではないだろうか。
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以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。