LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

修論の発表会

はじめに
自分が通っている大学のMBAでは、修論と呼ばず、「ビジネス課題を解決する力を養うカリキュラム」であるプロジェクト・メソッドなので、プロジェクトと呼ぶ。実現可能なビジネスプランもしくはリサーチペーパーの総称だ。

プロジェクトのポイント
今までも学生時代に論文を書いてきた。でも、その多くは担当教授もしくは研究室が大きなテーマを持っていて、そのテーマに沿って、自分なりの切り口で前進していくものだった。なので、過去からの遺産や知見もあった。しかし、本校のプロジェクトは、取り組みべき課題を自ら設定する点が特徴だ。MBAの教育の要だ。このためにMBAに入学を希望するものは、取り組むプロジェクトをペーパーにまとめて事前に提出する必要がある。入学後に変更することは可能だが、ここでまず学生の志を見極めている。

プロジェクトの種類
プロジェクトには、ビジネスプラン型と特定ビジネス課題解決型がある。前者は、自らがビジネスを立ち上げるという前提でのビジネスコンセプトやビジネスの収支などを含むビジネスモデルを提案するパターンだ。後者は、ビジネスの課題の解決法を考案して発表するパターンだ。前者が6−7割、後者は3−4割だ。自分が想定しているのは、社会的な課題を解決するテーマであり、後者となる。

プロジェクトの発表会
2月14日と15日の2日間にわたって54名の学生が発表した。学生にはそれぞれ30分の枠が与えられ、まずは最初の15分で学生がプレゼンし、事前に論文を配布された副主査2名が5分の枠内でコメントしたり、質疑応答する。残る5分ではご参加頂いている他の教授からの質問などを受け付ける。基本学生は聞くだけだ。中間発表の時には、そんな空気を知らないので、質問した学生がいたが、最終審査会ではそんなことはなかった。

プロジェクトの概要説明
14日も15日も2つの会場で開催される。自分は、15日の午前中は1階の会場、午後は5階の会場で参加した。発表した学生はリラックスしているが、これから発表する学生はピリピリしている。まあそうだろう。一年後には、自分もここでどんなふうに発表するのだろうと想像しながら聴いていた。革新性があり、実現可能性があり、発展性が高いものが2月28日に予定している優秀プロジェクト発表会に進むことができる。しかし、革新性と実現可能性と発展性を併せ持つプロジェクトを進めることはかなりハードルが高い。発表を聞いた中で興味を持ったプロジェクトは次のようなものだ。

1) サブスクリプション型美容院
美容院と歯医者が街に増え続ける時代が続いたが、現在は淘汰の時期だ。この業界で独立して、美容院を経営する学生が考えたのはサブスクリプションモデルだ。最初のターゲットは夜の世界の女性たちだ。トップランキングの女性は、毎日出勤前に美容院に通ることも可能だ。しかし、第二ランク、第三ランクになるとそこまで費用をかけることはできない。しかし、自分でセットするのにも限界がある。このため、カットやトリートメントなどのセットではなく、最後の髪結の部分=10分相当をサブスクリプションモデルで解決する。月額3300円を支払えば都度の費用は500円+指名料。全国の美容院の協会を味方にして、大手の参入に対抗する。賛同する店にはステッカーを貼って明示する。ビジネスのコンセプトも、ビジネス自体も良いし、プレゼンも面白かった。ただ、論文はいけていないようだ(涙)。まあ、論文はお作法に沿って必要な修正をするにしても、優秀プロジェクトには残って欲しいと思った。

2) 鶏糞の肥料化
養鶏場を経営する学生による発表だ。従来の鶏糞は、燃やす材料にもならず、肥料にするにしても重く、最悪は廃棄処分していた。しかし、鶏糞を乾燥させた上で、燃やして、必要な化学処理を施すと優秀な肥料となり、販売することが可能なことが判明した。このため、会社に提案し、段階的に規模を拡大する計画につなげている。しかし、これで大きな収益を稼げるものではなく、これまで費用をかけて処分していたものに価値がつく程度と発表者は謙遜するが、着眼点は非常に面白いと思う。

3) スマホケースのブランド化
ファッション業界でトートバックのブランド化に成功した学生による発表だ。スマホのケースに特化して、ブランド化を進めるビジネスプランだ。ガラケーからスマホに移行して10年が経過するが、今後の10年はまた折りたたみ型のスマホに進化する過渡期なので、今勝負をかけるのは危険だと自分は感じるが、トートバックで蓄積したマーケティング手法などを駆使すれば成功するのかもしれないと感じさせるプレゼンだった。優秀プロジェクトに残るのは厳しいかもしれない。

4) プロモーションリードの商品開発
広告業界の大手で勤務する学生から提案だった。ニーズやシーズベースではなく、プロモーションのコンセプトをまず固めて、そこから商品を開発し、さらに販売するという手法の提案だ。着眼点は面白いし、ビジネス的にもヒットするかもしれないし、ダメかもしれない。このようなアイデアの中からヒットが出てくるものと感じたが、二人の主査からはダメ出しが続いた。前段と後段のつなぎがわからない。まるで2つの論文だ。最初に適用分野の設定がないので、このフレームワークが汎用的なのかどうか判断できない。参考文献にページの記載がないので、どこを引用したのかわからない。

5) 口コミを加味した最適価格の分析手法
従来の最適価格推定法は、高いと感じる価格と安いと感じる価格を調査する手法だ。今回はそうではなく、高いとか安いといった口コミで分類し、高いと感じる価格の回帰直線と安いと感じる回帰直線の交点を最適価格とする手法の提案があった。非常に面白いと思う。こういうのが特定ビジネス課題解決型だろう。実現可能性は証明した。発展性と革新性がどう評価されるのだろう。優秀プロジェクトに残って欲しいと思った。

所感
他人の発表を無責任に批判することは簡単だけど、次は自分かと考えると軽々に批判はできない。皆よく頑張ったと思う。革新性と実現可能性は通常相反するし、これに発展性が加わるものがあれば、そもそもMBAなどに通わず、ファンドを募って起業するぜと言いたい。そもそも自分がやりたいものはビジネス課題の解決というよりは、社会的課題の解決だ。ここにねじれがある。また、自分がMBAに通おうとしたのは、ITの専門家として5Gなどの技術を開発するよりは、IT技術の活用技術を開発することの方が重要ではないかという問題意識からだ。その意味では、IT技術をいかに活用してビジネス課題を解決するかというアプローチが原点かもしれない。もしくは、技術のシーズとニーズのマッチングビジネスも実はやりたいと考えているテーマの一つだ。人間観察も好きなテーマだ。人と人の相性を分析して、効果的な組織運営のための人事展開もしたいテーマだ。やりたいことは一杯ある。ある教授から帯に短し襷に長しだと辛口のコメントをもらったことがある。ああ悩ましい。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。