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データ・ドリブンマーケティング#7を受講して

はじめに
豊田裕貴教授による7回の授業は中身が濃かった。グループに分かれて、テーマを決めて、実際にアンケート調査を実施して、その分析をしたりした。マーケットの答えはマーケットにあるという考え方だ。つまり、これをやれば成功するという方法論は思いつきで創造するのではなく、マーケットのデータを分析して、マーケットが何を求めているのかを真摯に聴く。そんな興味深い授業が7月21日に終了した。

1. 宿題の話
1.1 グループ課題

受講生を3つのグループに分けて、それぞれでテーマを設定して、アンケート項目を決め、本当にアンケートを実施して、Rで分析した。でも、受講生は一部を除いて素人だ。結局、先生がいろいろと調整したり、対応して頂けた。もう感謝しかない。具体的には大学と、ファミレスと遊園地だった。自分のグループは遊園地だった。そこでわかったことは、アンケートに回答してくれる人のセグメントには、アウトドア派よりもインドア派が多いという事実だ。そもそも遊園地に興味がないとか、言ったことがないという人が多かった。これも通過すべき小さな失敗なのだろう。アンケートをとるにあたって、その母集団がどのような傾向を持つのかを理解しておくことはマーケット分析の第一歩かもしれない。とはいえ、何らかのアウトプットは必要なので、そこは思案中だ。

1.2 個人課題
これがなかなかムズイ。時間ばかり経過してしまう。個人的には、ベーシックインカムをテーマにして、その認知度とか、PSM分析(最低価格や最高価格、適正価格を求める手法)をしたいが、なかなかそこに行き着かない。うーん。困った。

2. CS分析
2.1 戦略的分析と戦術的分析

何かアンケートをとったり、そのアンケート結果を分析する場合に注意すべきかは、それ自体が目的化してしまわないようにすることだ。そのためには、そもそもどのような問題意識を持っていて、どのような仮説を検証したいのかをまず明確にすることだ。例えば、自分の例で言えば、ベーシックインカム知名度や適正価格を知ってどうするのか。それでどのような仮説を検証したいのか。そこを深掘りすることが重要だ。例えば次のような仮説が想定される。これら全部を調べることはできないので、3つか4つほどのテーマで何度か定期的にアンケートを取ると、時系列分析にもなるだろうか。
 仮説1)年収とベーシックインカムの希望金額の関係、年収の低い人は希望金額も低い。
 仮説2)ベーシックインカムの金額が上がると、就業を放棄する人の率が増える。
 仮説3)低所得の人は少ないベーシックインカムでも価値を見出す。
 仮説4)ベーシックインカムが支給されると出生率が上昇する。
 仮説5)ベーシックインカムは貧困対策として有効だ。
 仮説6)ベーシックインカムは中所得層でも歓迎される。
 仮説7)ベーシックインカムをデジタルマネーで支給されることに抵抗感はない。
 仮説8)ベーシックインカムでの利用情報は有益なビッグデータだ。
 仮説9)ベーシックインカムは国民の幸福度を高める。
 仮説10) ベーシックインカムだけでは国民の幸福度を高めることはできない。

2.2 手段目的連鎖モデル
目的と手段は表裏一体という考え方だ。ラダリングという概念で説明されることもある。ラダーアップとはある事象の目的を考えることで抽象度を高めることだ。逆にラダーダウンとは、ある事象の手段を深めることで具体度を高めることだ。このように抽象度を上げたり、具体度を深めたりすることは頭の体操としても有効だ。例えば、コーヒを飲むという事象の目的は何だろう。喉の渇きを潤すのか、癒しの空間を欲しているのか、それともブログを書くためのスペースを探しているのか。自分の場合は、ブログを書くスペースを探している。では、その行為の目的は何かというと、自らの情報発信のため。ではその目的はとどんどん抽象度をあげる。逆にコーヒを飲むのはどこか、スターバックス。どこのスターバックスか、市ヶ谷のスターバックス。市ヶ谷のスターバックスのどこか?なぜか?どうして?などとどんどんと深めていく。ちょっと例がよくなかったかもしれないが、このラダリングはマーケティングだけではなく広く活用できる考え方だ。
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 出典:https://dentsu-ho.com/articles/5775

2.3 満足度と重要度
マーケティングの調査においては、満足度と重要度の2つの軸で分析する手法は有用だ。例えば、下の図は横軸が重要度で、縦軸が満足度だ。その両方が高いのは右上のゾーンで、例えばレストランなら重点維持項目となる。右下は重要だけど満足度が低いというちょっとマイナスの要因だ。店員の対応が悪かったり、不潔だったり、虫が出たりするのは困る。すぐに改善が必要だ。左上は重要ではないけど、満足度が高い要因だ。店員がフレンドリーにお話ししてくれるとか、ちょっとした工夫が嬉しいようなもの。左下は、満足度も重要度も低いもの。それほど重要ではないかど、改善した方がいいなというものになる。
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 出典:https://www.mgt.ous.ac.jp/management/lecture/lecture_d-03/

2.4 トライアルユーザとレピータ
顧客に関連するビジネス上の法則はいろいろある。例えば、次の図に示すようなものだ。この中でも特に最初の1:5の法則はよく言われる。既存の顧客を維持するのと、新規の顧客を開拓するのとどちらが大変かと言えば後者が前者の5倍だという。個人的には、既存の顧客を徹底的にフォローして、ファンにすると、口コミで新規の顧客が増えていく。そんなマーケティングが理想だと思う。
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 出典:http://ss-smb.nikkei.co.jp/column/29/04.html

2.5 コメダは出店1億円・回収5年
名古屋に単身赴任していた時は、もっぱらスターバックスだったけど、時々はコメダ珈琲も使った。スタバは若いおしゃれな子育て層や学生が多く、コメダは高齢者やおじさんが多いイメージだった。コーヒーの料金でモーニングも頂けるのがお得感があるが、そもそもコーヒー代はモーニング相当だ。名古屋の元祖1号店を覗いたけど大したことなかった。コメダは出店時に1億円かかるけど5年で回収できるというのが定説なほど流行っていた。すでに47都道府県すべてに出店していて、その記念のコーヒーチケットが下の写真だ。
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 出典:https://news.livedoor.com/article/image_detail/16727688/?img_id=21621966

3. ブランディングの科学
3.1 デシル分析

デシルとは、ラテン語で10分の1という意味がある。データを10個に分類して、その構成比を高い順にソートする。ABC分析とも近い。2割8割とは、2割の原因が8割を占めるという意味。構成比の傾向を見ることでマーケットの集中具合や特性を知ることができる。
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 出典:https://book.mynavi.jp/manatee/detail/id=72599

3.2 RFM分析
RFM分析を聞いたことがありますか?私は初めて聞きました。RFM分析とは顧客分析の手法です。RFMとは、Recency(最近の購入日)、Frequency(来店頻度)、そしてMonetary(購入金額ボリューム)の3つの指標で顧客を分類し、ランク付けする。しかし、どのセグメントのお客様が重要かを判断することはトレードオフも発生するので簡単ではないが、考え方としては明確だ。例えば、頻繁に来店するけど、安いものしか買わない。例えば、スタバにはよく来てくれるけど、コーヒーのショートしか注文しないのに長居する。しかも、マイカップがあるので値引きまでするし、100円でもう一杯飲めるワンモアも頻繁に使う。自分のような客は店の収益にとってはあまり美味しくない。来た時には大量に爆買いするような海外からの旅行客はどうだろう。リピートが望めればよい客だけど、単発だと美味しくない。でも、SNSとかで宣伝してくれれば美味しいかも。馴染みのお客様はどうだろう。コメダ珈琲はお馴染みでもいつもありがとうございますとは言わないという。でも、スタバはなじみになるとおしゃべりにも付き合ってくれる。どちらがいいのだろう。
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 出典:顧客分析の手法(デシル分析、RFM分析) | データ分析基礎知識

3.3 カスタマージャーニー
カスタマージャーニー(Customer Journey)とは、マーケティングの用語だ。最近なんとなく耳にすることも多い。商品やサービスのお客様の行動をシナリオ分析する。お客様がどのように商品やサービスに興味を持ち、買いたいと思い、実際に購入し、そして満足するか。全ての顧客とのタッチポイントを網羅して、調べて分析することが重要だ。カスタマージャーニーの設計の枠組みの基礎部分はターゲットの明確化であり、これは「ペルソナ」という。最近では、Webマーケティングにおいて特定のユーザ像を細分化したり、多様化したりすることに役立っている。
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 出典:https://markezine.jp/article/detail/29298

3.4 PSM分析
今回の授業で一番面白い!と思ったのは、このPSM分析だ。PSM分析とは、Price Sensitivity Measurementの略で、日本語で言えば価格感度測定だ。つまり、ある商品やサービスの価格に対する4つの質問をすることで、その商品やサービスの価格に対する幅を突き止めることができる。具体的には、上限価格、妥協価格、理想価格、下限価格の4つを導き出す手法だ。もし、この4つの価格を理解していたら、例えば最初は上限価格で販売し、徐々に下限価格に値下げする戦略があるかもしれない。もしくは、最初は下限価格で提供し、ブランドが出来てきたら、徐々に上限価格に引き上げる戦略もあるかもしれない。企業は高く売りたいけど、利用者は納得できる価格で買いたい。関西人なら安ければ安いほど嬉しい。このような4つの価格を調べる質問は次の4つだ。これの回答を統計的に分析することで理想価格や妥協価格を見つけることができる。個人的にはベーシックインカムの適正価格をこのPSM分析で研究できないかと思案している。
 質問1.いくらから高いと感じ始めるか?
 質問2.いくらから安いと感じ始めるか?
 質問3.いくらから高すぎて買えないと感じ始めるか?
 質問4.いくらから安すぎて品質に問題があるのではないかと感じ始めるか?
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 出典:https://www.nsspirt-cashf2.com/entry/2018/09/26/000000

4. STP分析
4.1 STP分析とは

MBAの授業では他の科目でもSTP分析はよく出てくる。STPとは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つの頭文字を組み合わせた造語だ。何か事業やビジネスにチャレンジしようとした時には、まず市場を細分化して、どのセグメントを取りに行くのかターゲットを決める。このたターゲティングが甘いと中途半端な商品やサービスになりやすいし、競争力や独自性を出すことも難しい。とんがった市場を狙って、個性を磨くと、そのセグメントだけではなく、思わぬお宝を見つけられることもある。ターゲティングは重要だ。
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 出典:https://drm.ricoh.jp/lab/glossary/g00037.html

4.2 ポジショニング
その市場がブルーオーシャンならターゲットを決めてそこにマーケティングすれば良い。でも、すでに競合他社が頑張っている市場の場合には大変だ。でもそのような場合にも、重要性と満足度のマトリックス分析をすると、下の図のように競合AやBは価値軸(例えば価格)では優位だけど、価値軸2(品質)では低い。価格も品質も競争力を持つ左上のゾーンは意外と競争者がいない。また、その逆で価格は高いけど品質も低いゾーンにも競争者がいない。では自社はどのポジションか?右下は競合者がいないと言うよりも、ニーズがないのかもしれない。狙うならやはり価格も安く、品質も高いポジション1か。市場を地理的な面や、人口統計分布の面、心理的な面、行動的な面などで細分化して、ターゲットを決めて、ポジションを探る。自社の価値や存在意義をよく考えよう。
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 出典:https://blog.kairosmarketing.net/marketing-strategy/stp-analysis/

5. コンジョイント分析
5.1 直交表

技術士の総合技術監理部門や経営工学部門にチャレンジした時に直交表を知った。例えば、ある試験をする時に、全ての組み合わせの試験を行うのは大変だ。しかし、全ての組み合わせをしなくても、この直交表という概念を使えば最小限の試験で最大限の効果を上げることができる。例えば、ラーメンのアンケートをする時に、スープと麺の硬さ、油の量、麺の量のどこに重要度が高いかを調べたいとする。単純な組み合わせなら81通りになる。81通りのラーメンを作るのも大変だけど、食べる方も大変だ。しかし、下の図のようにL9直交表を使えば、わずか9つのパターンで全ての組み合わせの試験をしたことと同等の結果が得られる。すごい。
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 出典:https://geechs-magazine.com/tag/lifehack/20161004_1/2

5.2 直行のパターン
昔お笑いで「3の倍数」というのが流行った。3の倍数の時だけアホになる世界のナベアツだ。直交法では、3の倍数だけではなく、2の倍数とか、2と3の組み合わせとかがある。しかし、最も効率的で実用的なのは3の倍数方式かもしれない。下のサイトには、L8直交表やL9直交表、L12直交表、さらにはL36の直交表のエクセスシートが掲載されている。これはすごい。
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 出典:https://www.monodukuri.com/gihou/article/74

5.3 クラスター分析
ビジュアル化するのを最近はよく見える化という。データ分析の見える化で最もインパクトがあるのはこのクラスター分析ではないだろうか。アンケート調査を実施して、それらの調査結果を分類する手法だ。しかも、人間が判断するのではなく、データをもとにあるアルゴリズムに従って、類似性を調べて、似たものを集めていく手法だ。例えば、下の図だと、右に赤貝ととり貝が同じグループとされている。大トロや中とろ、マグロの赤みは当然近い。光物も近いし、巻物系も近い。そんな風にグループ分けしていく。さらにすごいのは、さらに抽象度を上げて、似たものを組み合わせることだ。従って、ある調査セグメントをいくつのカテゴリーに分類したいかはこのクラスターを見れば一目瞭然だ。下の図だと6つの色が塗られているが、まあそんな感じだろうか。R Studioなら、分類する数を指定することもできる。すごい。すごすぎる。分かりやすく言えば、「似たもの集めの手法」だ。クラスター分析は、基準がはっきりしていないデータを分類する時に威力を発揮する。授業では遊園地を分類化したりした。
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 出典:クラスター分析|マーケティングリサーチのマクロミル

まとめ
データ・ドリブンマーケティングは面白い。米倉先生は経営はアートとサイエンスの融合と言われたが、このデータ・ドリブンはどちらかと言えば、データに答えを出させる手法などでサイエンス重視かもしれない。しかし、その結果からどのような知見を抽出するかは感性の世界だ。ここで勘が働くかどうかでデータサイエンティストの優秀さが決まる。まあ、個人的には、サイエンスもアートも自信はないし、才能もないけど、愚直にドリルを繰り返すように、色々な事象を分析していると、スキルや感性は磨かれていくかもしれない。5年後、10年後の世界が定量的に見えてくるのだろうか。ちょっとパンドラの箱を開けるようなドキドキ感があるのも面白い。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。