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情報通信の時代考証をしっかりとやってほしい。

はじめに
昨晩は、日本技術士会の認定グループである「IT21の会」の例会だった。2人の講師によるダブル講演がパターンだ。そのうちの一つが「テレビドラマの時代考証に物申す」という内容だった。面白かったので、自分の興味ある部分などを混ぜながら少し振り返りたい。

時代考証
時代考証(じだいこうしょう)とは、主にテレビのドラマや映画の中での設定が現在ではなく、過去だった場合に、その時代の生活や風習、風俗、文化が正しく表現されているかを検証することだ。

NHK時代考証要集
NHKの代表作品といえばやはり大河ドラマだろう。第58作となる今年は「いだてん~東京オリムピック噺~」だ。最初の数話を見たけどつまんないので今は見ていない。第59作となる来年は、明智光秀をテーマとした「麒麟がくる」の予定だ。小さい頃からなんとなく見ていたけど、昭和48年に放送されて「国盗り物語」は夢中で見た記憶がある。昭和43年の「竜馬がゆく」は残念ながら記憶がない。NHKアーカイブで観れる。でも無料はサンプルだけで、本編とかは有料のようだ。NHKの受信料を払っているのになぜ無料で見れないのだろう。
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 出典:アマゾン

日本大正村
何百年も過去の時代設定の場合には、家屋や道路などがその設定に適切となるようにロケ地を設定するのが大変だろうと思う。名古屋に単身赴任していた時に、岐阜県恵那市明智にある「日本大正村」の小学校を訪問したことがある。名古屋からJR中央本線恵那駅まで行き、そこで明知鉄道に乗って終着駅の明智駅からすぐだ。2017年に新たに投入された「明知鉄道アケチ100形気動車」は綺麗でびっくりした。
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 出典:日本大正村街歩き・村内マップ | 公益財団法人日本大正村

明智光秀の出生地には諸説ある
明智駅の由来は、ここが明智光秀の出生地だからと言われている。来年の大河ドラマで活用されるのだろうか?下は、2017年7月に訪問した時のメインエリアの写真だ。
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 出典:筆者(日本大正村にて)

日本大正村の郵便局
この郵便局は明治8年に開業した。写真下(右)の水色の建物は現状の郵便局だ。そして、その左の古びた民家風の建物が当時の面影を少し残す元郵便局だ。そして、中に入ると情報通信の関係者(だけ?)には興味津々な電話機や電話交換設備が展示されている。
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 出典:筆者(日本大正村にて)

諏訪形磁石式卓上電話機とデルビル磁石式甲号卓上電話機
写真下(左)が諏訪工業社が製造していた磁石式の電話機だ。明治33年から昭和20年まで使われていた代表的なモデルだ。写真下(右)はデルビル式と呼ばれるもの。明治29年に登場したタイプは受話部分と送話部分が分離していたが、これは受話部分と送話部分が一体となった新モデルで大正5年に登場し、昭和38年まで使われた。両機ともに電話機の右にダイヤルが付いていて、発信する時にはこれを回して、交換手を呼び出す。逆に交換手が呼び出す時にはベルが鳴動した。まあ糸電話を延長のようなモデルだ。AさんがBさんと通話したい時には、Aさんが交換手を呼び出し、Bさんにつないでほしいと依頼し、交換手がBさんを呼び出し、Bさんが応じたら、「ではお話ください」とAさんにつなぎ、AさんとBさんが通話できた。なので、この当時は電話番号はなく、ダイヤルもない。
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 出典:筆者(日本大正村にて)

51-N80型磁石式交換機と40回線1号A共電式構内交換機
交換手が操作したのが交換機だ。先の例でいえば、Aさんから呼び出しがあり、Bさんに接続したい時は、Bさんを呼び出した後で、Aさんの端子とBさんの端子を接続する。写真下 (右)は40回線式なので、合計40名までを任意に接続できたという意味だろう。写真下(左)には交換機の上に当時の交換手の写真が掲載されている。交換手といえば、今でこそ女性の仕事だったが、最初は男性が従事したが、メンタルの弱い男性は定着せず、女性に向いている職業として普及した。
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 出典:筆者(日本大正村にて)

手動通話から自動通話へ
携帯電話を使うようになってからは相手の番号を覚えない。固定電話の場合には相手の番号を暗記したものだ。最近の若い世代は、ダイヤルを回すというと、サザエさんの昭和の風景と感じるのだろう。このダイヤルは秀逸でダイヤルが戻る時に発生するパルスの数を相手番号の情報として交換機に伝達され、交換機がそこで示された相手番号と接続する方式が発案される。日本では、1926年にA型交換機が東京の京橋電話局に導入されて、初の自動通話が始まった。こんな電話の歴史の話を始めるとキリがないが、技術的な内容はネットを見れば結構整理されている。

文化的なものの継承
昨日の講師が強調したのは、そういうハード的なことだけではなく、ソフト的なことをもっと時代検証すべきという。つまり、当時は端末として選べる端末は黒電話のみだった。なので、おしゃれではないので、どの家庭でも可愛いカバーをしていた。しかし、ドラマで使われる黒電話はそのままで、違和感がある。また、当時の電話は性能が悪く、大きな声で明瞭に声を発しないと相手に伝わらない。また、市内通話ならまだしも市外通話は高価だったので、無駄話をすると怒られた。しかし、ドラマの中ではボソボソと普通に長話をしていて、違和感が止まらないと講師は嘆いていた。

ひよっこ
名古屋に単身赴任している時は、結構、朝の連続ドラマを見ていた。どれもよくできていて感動したり、泣けたが、その中で有村架純がヒロインを演じた「ひよっこ」は素晴らしいと感じた。今月の25日から28日まで4日x30分でひよっこ2が放送される。個人的にすごい楽しみだ。そして、講師が褒めていたのが、このひよっこ時代考証の秀逸さだった。当時は自宅に電話機がある家は少なくて、近所で電話機を持っている人のうちに行って借りて使ったりした。ひよっこの舞台になる北茨城では郵便局まで行って、かつそこで相手に繋がるまで30分も待つ設定だった。東京で行方不明になる父の手がかりを見つけて、北茨城から東京に電話する時に、母親役の木村佳乃が窓口で「特急」でお願いしますという。これは特別急行の略ではなく、特別至急の略だ。当時は、例えば東京〜名古屋の通話なら、普通で6時間、二倍の料金を払う至急で2時間半、三倍の料金を支払う特急で50分も待たされたということは一般的に知られていないかもしれないが、時代背景を正しく再現しようと言う意思と意気を感じられる。
 出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/10/4/10_264/_pdf

ポケベル世代
バブルが崩壊する1980年代後半から1990年代前半はポケベル文化が盛り上がった。自分は送ったことも受けたこともないが、14106といえば、「アイシテル」という意味になる。1990年代後半になるとポケベルで文字も受信できるようになり、女子高生を中心にポケベルブームが起きた。ポケベルとルーズソックスとプリクラ手帳が女子高生の三種の神器と呼ばれた(笑)。

PHS(ピッチ)世代
1995年なると通信の自由化の一環として、PHSのサービスを複数の会社が競って始めた。当時は自分も興味があったので、PHSの端末を見ながら散歩して、エリア状況をよく確認した記憶がある。当時、担当していた在日米軍からも基地内でPHSの通話をできる良いにしてほしいと言われて、国際電話の大口ユーザだったので、基地の建物内で使えるようにしたらえらく喜ばれた覚えがある。サービス名も最初はPHPだったが、クレームがあり、PHSに呼称された。当時の女子高生は「ピッチ」と呼び、料金も安かったので、一気に市場が広がった。個人的にもPHSは32kbpsのADPCM方式を採用していて音声品質が高いので好きだった。

携帯世代
アナログ方式は1985年当時より、デジタル方式は1993年当時からスタートしたが、1億台に達したのは2007年だ。いわゆるiPhone 3Gが日本でリリースされたのが2008年なので、その一年前にほぼ一人一台となった。携帯は一巡したが、女子高生が使うガラケーは2011年から2013年の2年間で急速にスマホに切り替わった。
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 出典:内閣府平成28年度子供・若者白書」より

まとめ
情報通信を担当している人間でも、あまりの変化の速さに振り回される。ましてや、舞台演出や脚本家が作品を創造する時に、その時代に合わせた描写を再現するのは簡単ではないだろう。飛脚に文を依頼したり、電報を打ったり、手動電話を依頼したり、黒電話を調達するのは大変だろう。特に、ハード的な部分は記録に残っているものも多いが、ソフト的なものは想像に頼るものが残るのだろう。即時通話が当然の時代に6時間も待たされる時代を想像するのは厳しいだろう。また、人間は過去の記憶を美化しがちだ。韓国ドラマは論外だが、日本の歴史物でもやはりあくまでフィクションだという認識は必要だ。しかし、フィクションであっても、嘘はいけない。事実を確認しながら、創造力を膨らませるべきだ。また、少なくとも国民が支払う受信料で経営するNHKは謙虚に、しっかりと事実検証を進めてほしい。時代ごとの情報をAIに学習させてAIに時代考証させるのも有効かもしれないと思った。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。