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育種家・坂嵜潮さんに学ぶ

はじめに
今日の1−2限は休校だったので、3−4限の「ビジネスイノベータ育成セミナー」のみだ。小川孔輔教授による講義で、今回のゲスト講師は有限会社フローラトゥエンティワンの坂嵜潮社長だ。あまり接点のない業界だけに逆に非常に興味深い内容だった。

ビジネスイノベータ育成セミナーのテーマ
この講義のテーマは「次世代のビジネスリーダはいかにあるべきか」について学ぶことだ。講義の後グループに分けれて討議して発表する。

坂嵜潮さん
業界内では超有名人だ。なぜ有名かと言えばヒットメーカーではなく、ホームランメーカーだ。育種家の王貞治だ。

1)ガーデニングブームの火付け役となったサフィニア
坂嵜潮さんの最初のホームランは1989年のサフィニアだ。これで世界的なガーデニングブームの火付け役として有名になった。提供するのはPROVEN WINNERSだ。プルーブンウィナーズ (PW)とは植物の国際ブランドだ。1992年に園芸種苗会社7社(アメリカ4社、ドイツ1社、オーストラリア1社、日本からは株式会社ハクサン)で発足した。現在、アメリカ・カナダ・日本・ドイツ・イギリス・スペイン・イタリア・デンマークポーランド・オーストラリア・南アフリカから19社の企業が参加するグループとなっている。PWが届けたいのは育てる喜び。そして、めざすものは、「植物を通じて、みなさまに驚きと感動をお届けすること」だ。
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 出典:https://provenwinners.jp

2) チェルシーフラワーショーでの最優秀賞の受賞
2つ目は紫陽花だ。紫陽花といえば、母校の奈良県大和郡山市にほど近い矢田寺が紫陽花寺として有名で6月から7月にかけては見事な紫陽花が咲き誇る。今回、坂嵜潮さんがチャレンジしたのは、結婚式の新婦をイメージする「ラグランジア・ブライダルシャワー」だ。欧州最大の名誉あるチェルシーフラワーショーの新品種コンテストで、最優秀賞に選ばれている。すごい。これは坂嵜さんが得意な種間雑種による作品だ。作品自体の素晴らしさに加えて非常に用途が広いことが評価された。
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 出典:https://provenwinners.jp/product/luxrangea

3) オウミ木イチゴ
坂嵜さんは今彦根市に在住だ。自分も明日、近江八幡に帰省する。大阪への出張があり、移動日がちょうど日曜日なので、久しぶりに実家に立ち寄るだけだ。坂嵜さんは、滋賀県にオリジナル品種のフルーツがないことから、2006年にオウミ木イチゴを開発した。宮崎大学・國武教授と共同で開発し、現在は農業法人「㈱あぐりきっず」で生産されている。健康意識が高まる中無農薬・無化学肥料での栽培しやすいことにも着目された。
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 出典:宮崎大学産学・地域連携センター - 宮崎大学育成品種「オウミ木イチゴ」いよいよ販売!... | Facebook


育種家としての坂嵜さんの才能の開花
ブリーダーというとペットなどの血統を考慮して動物の増殖や改良を行う。育種家はこの対象が植物だ。坂嵜さんの代名詞とも言えるサフィニア(Surfinia)はサーフィン(Surfing)とペチュニア(Petunia)の造語だ。坂嵜さんがサントリーの社員の頃にブラジルのワインの現地生産の調査に来たときに、道端に咲く赤紫色の美しい野生のPetuniaに心を奪われた。トップセラーになった「サフィニア・パープル」の相手の園芸種はサカタのタネの種子系の赤花品種「リカバラー・レッド」だという。当時共同研究先だった京成バラ園芸の研究所長であり、日本のバラ育種の第一人者である鈴木省三さんやその一番弟子の平林浩さんの協力を得て交配に成功したのが1986年10月だ。
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 出典:https://greensnap.jp/post/383942

第二のプロダクション・イノベーション
坂嵜さんが第二のプロダクション・イノベーションと自負する作品がCalibrachoaという花だ。Wiki(英)によると、この種はナス科の植物で常緑性の多年生植物とある。小さなペチュニア型の花が咲き乱れる。種を交配させることで様々な色のバリエーションが広げった。坂嵜さんによれば、金色と銀色以外の色はほぼできたという。確かにこれは素晴らしい作品だ。
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 出典:Calibrachoa Care - How To Grow And Care For Million Bells Flower

氷河期のサバイバー
ダーウィンの進化論に従えば、古代の生物の遺伝子が現在の遺伝子に引き継がれるものと理解する。しかし、最近の研究では現在の生物の90%以上は20万年以降に地球に現れたらしい。もっといえば、厳しい氷河期を生き抜き、1万年前にイギリスに生息していた野生の原生植物はわずか300種類だった。このため、大航海時代にはプラントハンターが世界を駆け巡ってパトロンに献上したという。なお、日本は縄文時代からの植物を含めて3000種類の植物が生息している。
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 出典:https://indeep.jp/dna-barcoding-survey-reveals-new-evolution-theory/

F1は罪悪か
講義の中でF1は罪悪かという話が少しでた。しかし、討議の中で話をしているとF1のことを正しく理解している人は少なかった。というか、自分のグループではいなかった。F1はフォームラーではない。ニつの異なる品質を掛け合わせて作られた最初の世代をF1という。例えば、美人だけど病弱な女性と、ゴリラみたいな容姿だけど頭もよく、健康な男性が結婚すると、美人で頭が良くて、健康な子供が生まれる。そんな図式だ。しかし、問題はその次だ。優秀なF1とF1から優秀なF2が生まれるとは限らない。このため、最近の農家は美味しくて健康な野菜ができる種を種会社から購入して農業している。このためいろいろ問題もあるが、詳細は割愛する。
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 出典:http://tsukitohoshi.wixsite.com/home/koteishu

交配育種
優れた種を作る方法には、交配育種と遺伝子操作がある。この2つのアプローチは全く異なる。坂嵜さんが従事しているのは交配育種である。そして、そのコツは「捨てること」だという。どの種を残し、どの種を捨てるかはロジカルな判断だけではなく直感力もいるようだ。このあたりに後継者を育成することの難しさがあるのかもしれない。
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 出典:https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/mori/mori-80.html

1990年4月の大阪の博覧会
正式には、「国際花と緑の博覧会」だ。1990年4月から9月までの半年間大阪の鶴見緑地で開催された。坂嵜さんが小川孔輔教授と知り合ったのはこの前年の1989年1月24日だ。まだ消費税がなかった時代だ。それから酒を飲みながら語り合ったり、真面目に議論したり、長い付き合いが始まった。
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 出典:wiki

3つのイノベーション
1990年代には3つのイノベーションが並行して進んだ。まず最初は生産技術の革新だ。ウイルスにかかりやすいのが課題だったが、試験管に収めるなどして、ウイルスフリーの技術で解決した。2つ目は栄養系品種の登場だ。消費者サイドでパフォーマンスが非常に優れた栄養系の品種がどんどん商品化された。3つ目は販売方法の革新だ。ビジネスが成功するには、このように複数のイノベーションが相乗的に革新することが追い風になったようだ。
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 出典:https://provenwinners.jp/product/frosty_knight

師資相承(ししそうじょう)と教外別伝(きょうげべつでん)
難しい言葉だけど、坂嵜さんの好きな言葉だ。師の教えや技芸を受け継いでいくこと。また、 師から弟子へ学問や技芸などを引き継いでいくこと。教外別伝とは、真の精髄は言葉によって表現しうるものではない。心から心へと直接伝達されるとする考え方だ。ビジネスを長期間継続しても、メガネにかなう弟子に出会うのは難しい。しかし、7年前に若いアメリカ人(28歳)と出会い、継承者に出会ったと直観した。さらに日本人女性も加わった。交わした言葉は少なくても、一緒にやるか?はい!で決まったという。まさに教外別伝だ。
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 出典:https://aucfree.com/items/b395077408#

社会的課題への対応
グループで発表した。坂嵜さんからはよくまとまっていると褒められた。でも、褒められたのは発表者だ。社会的な課題についても今後取り組んでほしいと追加した。坂嵜さんは彦根市在住なので、琵琶湖で問題になっている外来種(オオバナミズキンパイ)の問題などを解決できないものかと言ったら、最後は外したねと指摘された。しかし、育種にも光と影がある。坂嵜さんはこのような社会的な課題についても既に対応されていると説明があった。

ワサビ問題
ワサビは日本を代表する食材だが、中国にもワサビとよく似た食材がある。それは、シャンユサイだ。形だけではなく、標高3000mの高地で生息し、日本の渓流のような環境で生育している。しかし、このシャンユサイはワサビのような辛味がない。DNA分析の結果数百万年前に枝分かれしたという。氷河期よりも前の時代から日本独自の進化を遂げたようだ。そして、問題は非常に重要な個体群が生育する原生地が河辺の森の近くにあり、それが風前の灯火のような状況だということだ。文化的・栽培植物的にも世界的に重要な日本の固有種の遺伝子をいかに守るかは我々日本人がなんとしても解決したい課題だ。

まとめ
今日のテーマは育種家の話を聞いて、それに対してグループ討議して、発表して、質疑応答する。来週は飲食チェーンのハイディ日高屋の神田会長だ。11期連続増収増益で年収320億円を誇る会社を創業したのは、村一番の貧乏からスタートした神田正会長だ。どんな話が聞けるのか今から楽しみだ。
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 出典:https://matome.naver.jp/odai/2141168904981347401

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。