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Questantによるベーシックインカムの意識調査

はじめに
データ・ドリブンマーケティングの授業でウェブによるアンケート調査を実践した。そこで利用したのがQuestantの有料アンケートだ。Questantは株式会社マクロミルが提供するサービスだ。マクロミルは、2000年に設立されたマーケティングリサーチの企業だ。このQuestantでは、単にアンケートのフォームを作るだけではなく、GMOリサーチと連携して、実際にアンケートを取れる点が素晴らしい。

1. 料金体系
 基本料金とサーチ料金に分かれる。

(1) 基本料金
単にアンケートを取るだけなら無料プランで可能だ。アンケート数は無制限だが、質問数は1アンケートで10問という制約と、メール配信では1日に100件という制約がある。今回、思い切って加入したのは年払いの通常プランだ。1年間有効で、アンケート数は無制限、質問数も無制限、メール配信は1日に最大1万件、回答数は1アンケートにつき最大3千件だ。サーチを頼むと最低でも1万円がかかるが、これからの1年間にテーマを決めて、毎月一つぐらい調査をしたいと思う。一次データを作れるのはすごいことだと思う。
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 出典:https://questant.jp/mypage/plans

(2) サーチ料金
最低料金の1万円コースだと10問のアンケートを100人まで聞くことができる。今回利用したのもこの1万円コースだ。サンプル数は100だけど、1,000にすると10万円だ。大学の費用を使えれば、これぐらいは調査したいところだ。今回の100件の調査の所要時間はなんと5時間!すごい!
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 出典:https://questant.jp/mypage/function/

2. 今回の調査の目的
テーマはベーシックインカムだ。8月18日に駒澤大学井上智洋准教授が主催する勉強会があるのでできればそれに間に合わせたいと思った。いろいろ調べたいことはあるが、今回は次の点に絞った。
 1) ベーシックインカムの認知度や理解度を調べる。
 2) ベーシックインカムを受給すると仮定し、期待する最低額と最高額を調べる。
 3) ベーシックインカムをキャッシュレスで利用することへの許容度を調べる。
 4) ベーシックインカムの利用用途を調べる。
 5) ベーシックインカムの期待額と年収や年齢、性別との関係を調べる。

3. 調査方法
1) 利用サイト

 前述の通りQuestant(https://questant.jp/)のアンケート調査を活用する。サンプル数は約100件だ。

2) 調査期間
 誕生日の8月13日に悩んだ末に、通常プランを申し込んだ。そして、すぐにアンケートフォームを作成して、展開した。Questantでは一度スタッフが内容を精査する。多分、公序良俗に反した内容がないかどうか等を見るのだろう。翌日の午後にはOKのメールが来た。そして、アンケートの展開依頼を出すと、16:09に承諾のメールが返送された。その1時間後の17:09に最初のアンケートがあり、21:54までには100人を超す回答があった。所要時間はなんと5時間だ。素晴らしいスピード感だ。

3) 調査対象
 全国の男女の全年代とした。セグメント毎のサンプル数を制限することも可能だけど、今回は、セグメントの特性というか、勢いも見たかったので制限はせずに成り行きとした。
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4. 調査結果
(1) ベーシックインカムをご存知ですか?

意味を含めて知っているのは全体の19.8%、言葉は聞いたことがあるが全体の24.5%だ。下のグラフは回答者数なので、106で割る必要がある。一方、言葉を聞いたことがないが46.2%、分からないが9.4%と認知度が低いことが確認された。
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(2) 日本でもベーシックインカムのトライアルをするべきですか?
半数の50%がよく分からないという回答だった。正直なところだろう。残る50%のうち肯定的な意見は35%で、否定的な意見が15%なので、全体としては肯定的と言えるのだろうか。もっと議論を広める必要があると思う。
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(3) ベーシックインカムはいくらだと安いと思いますか?
平均額では約5万円だった。しかし男女差が大きい。男性は6.3万円、女性は2.7万円だった。これはどのように解釈すべきなのだろう。男性は少なくとも6万円ぐらいは貰わないと意味がないと思うのだろうか。女性は2.7万円でもいいので貰えるものは欲しいと思うのだろうか。
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(4) ベーシックインカムはいくらだと高いと思いますか?
平均で18.7万円だった。財源が心配だと言いながら貰えるなら多い方が良いと思っているのだろうか。女性は平均では7.8万円と節度を持っているが、男性はなんと24.4万円だ。そんな支給できるわけないだろう。しかし、高額を要求しているのは30代後半や40代前半が多い。妻子を養うために金のかかる年代からの悲痛な訴えなのかどうかは不明だ。
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(5) 年齢別性別の推定年収額
差し障りなければ年収幅を選択して貰った。この中間値を推定年収として、性別、年齢別に集計してみた。40-44歳と60-64歳がダブルピークとなっている。なぜだろう。一般的な所得の分布と違うような気がするが、面白い。300万円以下をベージュ色、600万円以上を黄緑でマークしている。
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(6) ベーシックインカムのキャッシュレス支給は許容できますか?
この質問も40%が分からないという回答だった。残る60%のうち許容できる派は32%、許容できない派が28%だ。僅差だけど許容できる派が多い。ただ、20-24歳で許容できない派が67%も多いのは看過できない。最近のキャッシュレス支払いの混乱を解消する必要がありそうだ。
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(7) キャッシュレスを許容できない理由は?
もっとも多い理由は、お年寄りには難しそうだった。利用できる店が限定されそうとか、操作が面倒そうとか、操作性を重視した設計が不可欠だ。しかし、同時にセキュリティにも万全の対策を求められる。なかなか難しい課題だ。
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(8) ベーシックインカムを貰うとしたら何に使いますか?
もっとも多い用途は飲食だ。衣食住が多いのは想定通りだけど、娯楽も42%が肯定的だ。また、その他では交通費とか、通信費とか、貯金とか、投資とかもあった。なかなか面白い。
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(9) おおよその年収を教えてください?
前述の(5)とも関連するが、アンケートでは年収も聞いた。男性の推定平均年収は470万円、女性の推定平均年収は336万円だった。女性にも1000万円以上の高年収の方がいるが、100万円未満の年収では女性が多い。
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(10) ベーシックインカムの期待額と年収の比率
ベーシックインカムとして多いと思う金額と少ないと思う金額の平均を仮に期待額として、これとそれぞれの回答者の推定年収額との比率を計算してみた。そうすると、全体では5.7%だった。特徴的なのは年収100万円未満に限定すると16%だった点だ。年代別では特に30歳代の同比率は30%超と多い。年収100万円未満の男女で見ると女性は8%程度だが、男性は29%と突出していた。これもどのように解釈すべきなのだろう。
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5. まとめ
わずか100人のアンケートだけど、アンケートに回答してくれた人の生活感や悲鳴が漏れ聞こえそうな気がした。もちろん余裕のある人もいるのだろうけど、経済的に苦しいと感じる人が多いように感じた。また、これまでベーシックインカムというと、仮に7万円として議論することが多かったように思う。日本のマーケットにおいて、何を目的としてベーシックインカムを展開するかを明確にした上で、STP戦略を明確にする必要があると感じる。つまり、セグメントに分けて、どこをターゲットにするかを考える。その上で、どのようなポジションニングにするかだ。ベーシックインカムは富裕層のためのものではない。貧困層の救済であり、経済の活性化であり、日本国民が尊厳を持って活き活きと生きるための施策であるべきだ。今回の調査で、「いくらだと安いと思いますか?」という質問をした。20-24歳の女性の平均が1.5万円だった。日本における貧困層がどこなのか、そこを救うにはどれだけの金額が必要なのかを深掘りする必要があるように感じた。特にスタート時には7万円にこだわる必要は全くないように思う。月額1万円でも貰えるなら喜んで貰う人がほとんどではないだろうか。さらには、それをテコにキャッシュレスの仕組みの普及や、ビッグデータの活用をかぶせれば、財源の負担も少しは軽減できるだろう。その上で、どれだけ上乗せしていくのかは財源の問題と不況対策の問題の緊急性や重要性を鑑みて判断するような余地を残しておけば良いのではないだろうか。そんな風に感じた。なお、本来なら価格感度分析をすべきだけど、サンプル数100では厳しいと判断して、少しラフだけど、安いと感じる金額と高いと感じる金額を質問した。今後、サンプル数を増やせる時には、ぜひ4つの質問をして4つの価格を分析する価格感度(PSM)分析にトライしたいと思う。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。