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ITU-R研究会に参加:5Gなど周波数共用技術の動向

はじめに
5G(第五世代移動通信システム)の課題は色々あるが、やはり最も根本的な課題は周波数バンドの捻出だ。これは5Gのみの問題ではなく、これに続く6Gも7Gも同じ課題に直面する。

プラチナバンド
現在の携帯電話やスマートフォンが主に使っている代表的な周波数バンドの一つで、700MHzから900MHzの帯域を示す。ゴールデンバンドとか、プラチナバンドと呼ばれる。この周波数はアナログテレビで使われていた周波数帯だ。家の壁とか窓とかもある程度は浸透してくれる。携帯電話でも屋外よりも屋内で利用することが多いため、この周波数帯域の取り合いになった。

周波数再編計画
テレビのアナログ放送が2011年7月24日までに終了した。その年の3月11日には東日本大震災が発生したため、一部の地域では例外措置が講じられたが、多くのエリアでは予定通り終了した。そして、これに合わせて携帯電話の利用周波数も大きく再編した。下の図にあるように、細切れの周波数帯域をまとめるのと同時に、上りを低い周波数、下りを高い周波数といわば左側通行の方式に変更した。それまでは日本では右側通行なのに米国等海外では左側通行なので何かと不便だった。iPhoneがグローバル仕様で使えるのもこんな施策が背中を押している。
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 出典:[ 2/3 ] 活発化する電波/周波数の割り当て(4):3G、3.5Gから4Gへ 携帯電話用の周波数再編 | 情報通信(ICT) | スマートグリッドフォーラム

5Gで必要な周波数帯域
この2012年時点では既存事業者の仕様周波数を合計しても88MHzほどだった。しかし、5Gでは新たに1000MHzが用意された。つまり、3.7GHz帯が100MHz幅x5枠、4.5GHz帯が100MHz幅x1枠、そして28GHz帯が400MHz幅×4枠だ。2012年当時の帯域に比べて10倍以上の帯域が割り当てられる。これだけあれば十分かといえば、そうでもない。やはり周波数帯域はもっと必要だ。ではどうするのか。
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 出典:総務省、5G向け周波数の割当方針を策定 - ケータイ Watch

ホワイトスペース問題
携帯電話事業者は割り当てられた周波数帯域の中でなんとかお客様の通信を疎通させようと頑張っている。しかし、一方でテレビ事業者に割り当てられた周波数は必ずしも全て常時使っているわけではない。稼働率は正直低い。このため、テレビ放送用に割り当てられた周波数も、テレビ放送で活用されていない時には使えないかと言うのがホワイトスペースの概念だ。しかし、そのためにテレビの視聴者がテレビを視聴できない事態があっては困るので、これを回避するための措置が色々と研究されている。
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 出典:NICT NEWS

衛星通信設備との干渉
5Gで新規に割り当てられる3.5GHzと重複するのが衛星放送だ。衛星放送ではCバンドと呼ばれる4GHz帯の利用と、Kuバンドと呼ばれる12GHz帯の周波数を主に使う。衛星放送の敵は雨だ。雨が降ると衛星放送の画面にも雨が降ることがある。そしてこの雨の影響を特に受けるのがKuバンドだ。なので、やはりCバンドを使いたい。しかし、このCバンドは5Gで使おうという3.5GHz帯と一部重複する。したがって、やはりここでも衛星放送の視聴者に影響があってはいけないので、干渉を回避する技術が研究されている。
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 出典:携帯3.5GHz波からの干渉のメカニズム - 海外衛星・中国衛星無料受信

静的な割り当てから動的な割り当てへ
テレビ放送や衛星放送は時間とともに利用周波数が変化することはあまりない。しかし、軍事用のレーダーも3.5GHz帯を使っていて、米国での調査では時間平均で約1%だ。ほとんど使っていない。このため、3.5GHzの帯域を有効に活用したいけど、いざという時に軍事レーダが使えないのは困る。そのために静的な割り当てではなく、動的な割り当てをするスキームが検討されている。それがSAS(Spectrum Access Systemの略)だ。
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 出典:Federated Wireless

SASによる動的な周波数割り当て
特に米国ではこのSASによる動的な割り当てスキームの検討が進んでいる。要は、遊んでいる周波数と使いたい周波数のマッチングサービスだ。シェアリングエコノミーと考えればわかりやすいかもしれない。そして、そのプラットフォームビジネスに積極的なのがGoogleだ。一般財団法人マルチメディア振興センターの飯塚留美さんによると、「FCCは2016年12月、SASプロバイダー7社に条件付きで承認した。具体的には、FederatedWireless、Google、Amdocs、CTIA、Comsearch、KeyBridge及びSonyの7社だ。
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 出典:http://www.soumu.go.jp/main_content/000517432.pdf

まとめ
今日のセミナーでは、このSASによる割り当てをブロックチェーン技術で実現することが検討されているという説明があった。特にフランスはイーサリアムを用いた検討に積極的なようだ。欧州ではECとしての方針はなく、国によって全く違う考え方のようだ。米国がSASの活用には積極的だし、ノウハウもしっかり貯めてきている。日本も米国に追随するのだろうか。しかし、その時にはプラットフォームが出来ているのだろうか。Googleは世帯当たり$2.25/月の有料サービスを固定無線サービス向けに提供するという話もある。日本もしっかりと準備をしておかないとちょっと怖い気がする。

以上

今日の内容は少し難解だったでしょうか。最後まで読んでいただきありがとうございました。