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演算法や帰納法はもう古い?!

はじめに
春の授業も2週目に突入した。前回出された宿題を提出して、指名された人が発表して、先生が講義して、グループ演習して、そして、今日のまとめをして終わり。だいたいそんな感じだ。

宿題の提出
前回の宿題のテーマは、渡された論文の内容の要約を示すとともに、自分のプロジェクトの概要と課題(JTBD=Jobs to be done)と、それをどのように解決するのか、そして、その結果どのような効果(VP=Value Proposition)を得られるのか。そんなことを各自がA4の裏表に記載して提出する。

宿題の発表
幸か不幸か自分は指名されなかったけど、指名された人は3分ほどで発表する。そのあと発表内容に対して質疑応答を行う。だいたい、一人10分かかる。4人ほど発表したところで次に進んだ。挙手ではなく発表者を先生(実際はアシスタントのTA)が指名するのは、実に日本的だ。

演算法と帰納法と第三の方法
(1) 演算法(Deduction)

有名なのは、ソクラテスの論法だ。人は死ぬ。自分は人だ。だから自分は死ぬ。そんな風に論理を積み上げる。先生によれば、30年前の人工知能はこのようなルールベースで処理した。しかし、ルールを入れるのが大変だし、入力したルールが間違っているとダメだ。広辞苑を全て入力したって人工知能が正常な判断をする訳が無い。下の表は、演算法と帰納法のメリットとデメリットをわかりやすく比較している。
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 出典:画像 : 推論の基本「演繹法」と「帰納法」を使い分けて考える力を身につけよう - NAVER まとめ

(2) 帰納法(Induction)
17世紀の英国思想家フランシス・ベーコンが経験則を理論的に解釈するための仮説として導入した。複数の結果や事実からルールを見つけて、論理展開する。現在の人工知能機械学習には、教師あり学習教師なし学習があるが、この帰納法はいわば教師なし学習だ。膨大なデータから傾向を見つけて、それをルールとするものだ。
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 出典:https://www.ashita-lab.jp/special/5414/

(3) 第三の方法
演算法を英語でDeductionという。帰納法は英語でInductionだ。そして、第三の方法は、Abductionという。abとは反対という意味だ。適当な日本語がなく、カタカナで「アブダクション」という。強いて言えば逆演算法だ。多くの仮説を検証することで結論を得る。20-30年後の人工知能がこのアブダクション方式に対応すると、人間と同等かそれ以上のロジカルシンキングができるということになるかもしれない。

来週の宿題
自分のプロジェクト(卒論のテーマ)に対して、論理のメカニズムを図にする。パワーポイント1枚程度にロジックを示し、残り1枚は表紙だ。名前やプロジェクト名、プロジェクトの内容などを簡単に記述する。今回と同様に用紙に印刷して、持参し、指名されたら発表する。そんな感じだ。

まとめ
演算法と帰納法は知っていたが、アブダクション法は初めて聞いた。第三の方法はないのかと先生に質問しようと思ったら、説明があった。現在のAIでは、相関関係は分析できるが、因果関係は分析できない。個人的にはヒステリシスの傾向を分析すると、因果関係を究明できるようになると考えている。しかし、このアブダクション法を活用する方が現実的かつ早いかもしれない。また、今回の授業にはなかったが、消去法とか、パラドックスなどの話題も追記しておきたい。

以上

追記1)ヒステリシス分析
ヒステリシス分析とは、例えば、勉強時間と成績に一定の相関関係があるというのは理解できるが、勉強時間を1時間増やすと成績はどうなるか、逆に1時間減らすとどうなるかを統計的に分析する方法だ。例えば、毎日1時間勉強する人が2時間にする。2時間を3時間にすると成績は上がるだろう。しかし、3時間を2時間にしても、すぐには成績は下がらない。2時間を1時間にして、時間が経過すると成績は下がる。回帰直線にまとめるのではなく、ヒステリシス特性に当てはめる。そんな風に勉強時間と成績の動きを分析すると因果関係を示せるのではないだろうか。
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 出典:ヒステリシス - Wikipedia

追記2)消去法
複数の選択肢を示し、そこから不適切な選択肢を消去していく方法だ。問題は、正しい選択肢が本当にあるのかどうかだ。また、選択肢の順番に影響を受けることもある。しかし、選択肢を与えるというテクニックは実社会でも役にたつ。例えば、デートに誘う時に、複数のデートのパターンを示して、それを選んでもらう。どの選択肢であっても、選択してもらえたということはデートが実現するということだ。つまり、目的は達成される(笑)。

追記3)背理法
有為性があるかどうかを統計的に判断する時に用いるのが、この背理法(proof by contradiction)だ。例えば、ある命題を証明したいときには、その命題が偽であると仮定する。そして、そこから矛盾を導き、命題が偽であるという仮定が誤りであると証明する。つまり、命題は真となる。これは無実の証明が難しいので、二重否定の論法であり、帰謬法とも言う。
 出典:背理法 - Wikipedia

追記4)パラドックス
一見正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、とんでもない結論を導くことをパラドックス(paradox)という。これは論理だけではなく、下の写真のように、一見ありえない構造物もパラドックスと言えるかもしれない。
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 出典:パラドックス - Wikipedia

追記5)フェルマーの最終定理
直角三角形の垂直な二辺の二乗の和は、残る一辺の二乗に等しい。垂直な二辺をxとyとして数式で書くとx^2+y^2=z^2となる。フェルマーの最終定理とは、これを二乗ではなく、3以上の自然数n乗とする。つまり、x^n+y^n=z^nとなる自然数の組み合わせ(x,y,z)は存在しないという定理だ。17世紀フランスの数学者ピエール・ド・フェルマーが驚くべき証明を得たと宣言したが、詳細の証明がないため、フェルマー予想と言われた。そして、それを完全に証明したのが、イギリスの数学者であるアンドリュー・ワイルズ(1953年4月生)だ。1993年の講演では、モジュラーでない楕円曲線をモジュラーである楕円曲線に変換することを考えたが挫折した。1994年9月には、岩沢理論によるアプローチを可能にすることで証明した。1995年に論文が審査され、証明は確認された。今後、人工知能が革新すればフェルマーの定理も簡単に証明するようになるのだろうか。多分、まだ数十年はかかりそうだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。