LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

ルールとマナーを考える

はじめに
全国の学校を回ってケータイモラル教室の講師をしてきた。最近は、月に1回程度だ。子供達は、普通にケータイやスマホを使っている。いや、使いこなしているというべきかもしれない。しかし、子供達が学校でケータイやスマホを自由に使えるかといえば、ノーだ。学校では、タブレットやPCを整備してそれを子供達が利用できることもある。でも、PCは10年以上も前のOSだったり、埃をかぶっていたりするのが多い。タブレットも、1クラスの生徒数分はあるが、全校生徒分が用意されていて、自由に使えるような環境を整備している学校は私立の高校で始まっているが、中学校や小学校ではまだまだだ。

業務用のスマホはいつ頃からだろう
会社でスマホやケータイが支給されるようになったのはいつ頃からだろう。自分自身では、1996年に沖縄に赴任した時に業務用として支給された。当時は、技術部長も兼務していて、台風等で携帯電話の基地局が故障すると連絡がくるためだと脅かされたけど、台風でバスが止まることはあっても、基地局の修理に直行することは幸いなかった。まだPDCといういわゆる第二世代のケータイでゴツかった。香港に赴任した時も、当然のように業務用の携帯を持たされた。GSMというこれも第二世代のケータイでゴツかった。当時パナソニックが香港で小型のGSMケータイを売っていたので、これを自費で購入して入れ替えて使っていた。SIMフリーなので簡単だった。一般的には、2010年ごろからの会社が多いのではないだろうか。

高校生は2011年からの2年間で急激に浸透した
下のグラフは内閣府が白書で発表したものだ。特徴的なのは、高校生だろう。それまでの携帯が急激に減少する一方で、スマホの所有・利用率が2011年にはわずか10%だったのに、2013年には80%にまで急増した。それに追随するように中学生でもスマホへの移行が進んだ。2015年の小学生では携帯の方がスマホよりも多いが、現在はすでに逆転している。この前も小学生に携帯とかスマホ使っている?と聞いたら、「テン」という。最新のiPhone Xの意味だろう(涙)。
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 出典:内閣府(平成28年度子供・若者白書)

年代が上がるほどに増える携帯・スマホの所有率
下のグラフは、2014年8月時点でのMMD研究所の調査結果だ。小学校1年生は27%ほどだ、中学生では58%、高校生では94%だった。今はこれがさらに進展している。ただ、このグラフでちょっと気付いてほしいのは、小学生3年生の方が4年生よりも高い点だ。小学校を訪問して講演するときの対象が5−6年生のことが多いけど、実はターゲットにすべきはこの3−4年生だ。3年から6年までの各学年を別々に講演することがあったが、その反応を見ると、学年差よりも個人差が圧倒的に大きいことを痛感する。
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 出典:小学生の携帯所持、賛否は二分!中高生は親とアプリで連絡 - iPhone Mania

2歳の乳幼児の50%は一人でスマホを操作する
もっとショッキングなのは、下のグラフかもしれない。0歳や1歳の乳幼児が一人でスマホを操作するのは3割ほどだが、2歳になるとこれが5割ほどに急増する。これは2016年3月時点でのMMD研究所の調査結果だ。乳幼児がスマホを使うようになったのは、若いママさんたちがスマホを使い始めた時期と呼応する。昔なら、食事の準備をする時には、子供に絵本を読ませたり、アニメを見せたりしたが、最近はスマホYouTubeを見せている。そして、乳幼児はすぐにスマホの操作を覚えてYouTubeを楽しむ。これは悪いことなのだろうか。
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 出典:乳幼児のスマートフォン利用実態に関する調査

バイトテロ
最近、テレビのニュースで飲食店の従業員が不適切な動画を投稿していることが相次いで報道される。何をやっているのかと思う。しかし、下のブログによると、これらは連続して発生しているわけではなく、今拡散すれば炎上するという計算が働いているという。文春砲ではないが、二の手、三の手と続くと、そのイメージが完全に浸透してしまうものなのかもしれない。例えば、すき家は1/21に投稿し、1/29に炎上、くら寿司は2/4に投稿し、2/5に炎上した。ビッグエコーは昨年12/6に投稿したものが今年の2/7に炎上した。バーミヤンに至っては、昨年4/21に投稿したものが今年の2/9に炎上したものだという。くら寿司が法的措置を発表してからもバイトテロが炎上したために、何を馬鹿なことをし続けるのかと感じるが、実際はそうではなく、過去に起きて、撮りためていたネタをこのタイミングに出して炎上しているということだ。つまり、法的な措置を起こすことが抑止力になっている。
 出典:バイトテロ「バカッター」は相次いでいるわけではない。過去の動画が掘り起こされている(篠原修司) - 個人 - Yahoo!ニュース

ルールを守らなければ罰せられる
バイトテロが起きると、最近の若者のマナーはなっていないという批判が起きる。なぜバイトテロが起きるのかはもっと調べないといけないが、一部の人間の行動を持って最近の若者と論じるのはちょっと飛躍だろう。また、バイトテロの問題は、マナーではなく、犯罪のレベルだ。不適切な画像や動画をSNSに投稿することで、業務を妨害するのは偽計業務妨害罪に当たるだろう。これ以外にも子供達が何気なくLINEで友達の悪口を言ったり、裸の写真をアップしたりするのも犯罪だ。これはルールであり、ルールを守らなければ厳しく罰せられることになる。これは物を盗めば窃盗罪となり、人に暴力を振るえば暴行罪になるのと同じだ。
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マナーのルール化
先述のようにバイトテロはマナーの問題ではなく、ルールの問題だ。法令遵守の問題だ。これを持って、もっとマナー教育を厳しくしなければというのは、正しいことなのだろうか。特に日本の子供達は、ほとんどが真面目だし、大人しい。やんちゃな子供は少ない。しかし、一部の子供が悪さをして、それを全体責任として、マナーをルール化して、その強化を図っているように感じる。それは穿った見方なのだろうか。マナーとルールは本来違う者だが、マナーをマニュアル化して、明文化するとそれがルールとなる。つまり、マナーがルールとなってしまう。

マナーとモラル
マナーは本来は周囲の人を不快にさせないように個人個人が気配りして行動すべきものだ。エチケットや礼儀作法はマナーだろうか。技術士の試験でも、やはり独特のお作法があり、そのお作法に沿った回答をすると高得点を得やすい(笑)。一方、モラルは道徳を意味するMoralityを略したものだ。日本では修身教育をしてきた。韓国は儒教の国という。Wikiによると、道徳性とは、良いことと悪いことを区別し、道徳的規範に従う心や能力のことだという。そして、道徳的社会規範とは、社会や組織において共有されるべき道徳観に基づき、より健全で快適な共同生活を送る為に守るべき規範だという。ここで、道徳観とは、道徳に対する捉え方であり、正邪・善悪の価値観だという。分かったようなわからないような(笑)。要は、仲良くするための知恵と判断力のことだろうか。

儒教の教え
日本では修身教育がかつて行われてきたが、韓国は儒教の国と言われてきた。そして、その儒教五常と五倫が両輪となる教えだ。五常とは、仁、義、礼、智、信という徳性を拡充することだ。そして、五倫とは、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友との関係を維持することだという。五常をもう少し詳しく解説する。
 仁:人を思い遣ること
 義:利欲に囚われず、すべきことをすること
 礼:仁を具体的な行動として表したもの
 智:学問に励むこと
 信:言明を違えないこと、真実を告げること、約束を守ること、誠実であること。

やるべきこととやってはいけないこと
個人的には、ルールとはブラックリスト。つまり、やってはいけないことを明記して、それを違反した場合には法に基づいて罰するべきものだと思う。そして、モラルはやるべきホワイトリスト。奨励すべき行動を明記して、その行動を実践した場合に賞賛したり、褒めること。つまり、飴と鞭のような関係がモラルとルールであると思う。でも、そのような論法はあまり目にしないのが残念だ。

文部科学省の通達(20文科初第1156号)
「児童生徒の学校における携帯電話の取扱いに関する方針等」については、文科省からの通達(通知)が平成21年1月30日にだされている。学校及び教育委員会の取組の基本とすべき事項として、学校における携帯電話の取扱いと情報モラル教育の充実を図ってほしいとある。そして、具体的に書かれていることは、小・中学校への生徒の携帯電話の持込みには原則禁止とすべきとある。ただし、緊急連絡のために保護者から申請がある場合には、学校での使用を禁止し、学校での教育活動に支障がないこととしている。これは先の自分の理解からいえば、モラルではなく、ルールの強化だろう。
 出典:学校における携帯電話の取扱い等について(通知):文部科学省

子供達がスマホを使い続ける場合の弊害
あまり子供達にダメダメを連呼したくはないが、子供達が自分自身を律することは難しいだろう。そして、何時間も何時間もスマホを使い続けると色々な弊害が懸念される。下は、realfalmacy.comという団体がそのウェブに掲載している「子供をハンドヘルド機器から遠ざける11の理由」だ。参考に和訳を付記するが、意訳なので厳密性はご容赦願いたい。また、北米での実情を前提にしているが、日本でも無縁ではない。

 1.急速な脳の成長:子供の年齢が0歳から2歳のかけて脳の大きさは3倍になる。21歳まで急速な発達を続ける。初期の脳の発達は環境的な刺激やその欠如に依存する。発達中の脳への過度な刺激は、注意力の欠如や認識の遅れ、学習障害、衝動性の増加、自己調節能力の低下などとの関連性が指摘されている。

 2.発達の遅れ:子供の運動を制限し、発達の遅れを招く可能性がある。 3人に1人の子供が発達遅滞で入学し、識字能力および学業成績に悪影響を及ぼす。運動は注意力と学習能力を高める。これら情報機器を12歳未満で使用されるとき、それは子供の発達と学習にとって有害だ。

 3.流行性肥満:自分の部屋に情報機器を持ち込むことを許可されている子供は、肥満のリスクが30%高くなっている。カナダの4人に1人の子供、アメリカの3人に1人の子供が肥満だ。肥満の子供の30%が糖尿病を発症し、肥満の人は早期脳卒中および心臓発作の危険性が高く、それによって平均余命が短くなる。

 4.睡眠不足:両親の60%が子供の情報機器の使用を見守っていない。子供の75%が寝室で情報機器を使用することを許可されている。9〜10歳の子供の75パーセントは、成績に影響のあるレベルで睡眠不足だ。

 5.精神疾患:情報機器を過剰に使用すると小児うつ病、不安、愛着障害、注意欠陥、自閉症双極性障害、精神病、および問題のある子供を増やす原因因子と関係する。カナダの6人の子供のうち1人が精神疾患と診断されている。

 6.攻撃性:暴力的なコンテンツは子供の攻撃を引き起こす可能性がある。幼児が肉体的および性的暴力の情報に晒され危険がある。米国は、セックス、殺人、強姦、拷問等の放送を子供の攻撃性への影響など公衆衛生のリスクと考えている。

 7.デジタル痴呆:脳の前頭皮質への神経経路の剪定が原因で、高速メディアコンテンツが注意力の欠如、ならびに集中力および記憶力の低下の一因となり得る。注意を払えない子供たちは学ぶことができない。

 8.中毒:親がより多くの情報機器を使わせると、子供は保護者から離れる。保護者の付き合いがない状態で子供たちは情報機器に夢中になり、その結果中毒になる可能性がある。 8歳から18歳までの11人の子供のうち1人は情報機器にはまっている。

 9.放射線放出:2011年5月、WHOは携帯電話を放射線放出のためにカテゴリー2Bリスク(発がんの可能性)として分類した。 2013年、トロント大学公衆衛生学部のAnthony Miller博士は、研究に基づいて、無線周波ばく露は2Bではなく2A(発がん性の危険性)に再分類することを推奨した。

 10.持続不可能:情報機器の世界で子供たちが育ち、教育される方法はもはや持続可能ではない。むしろライフスキルを教えることが、危険なウイルスに犯されるリスクを高めている。情報機器を使い過ぎた子供たちにとって未来は暗い。

 11.目の疲れ:何時間もスクリーンを見つめた後、子供が目の疲れに苦しむことになる。これはコンピュータビジョン症候群とも呼ばれる。30分一度はスクリーンを見ないようにさせることで、子供達が目の問題を抱えないようにすることができる。
 出典:https://realfarmacy.com/11-reasons-children-age-12-use-handheld-devices/

まとめ
還暦を過ぎて年を感じるのは、五感の衰えだ。高音は聞こえない。小さな字は読めない。滑舌が低下する。反応が遅い。特にこの中で致命的なのは視力の低下だ。若い頃は遠くが見えない近視だが、最近は近くが見えない遠視だ。遠くも近くも見えなくて大丈夫なのだろうか。そして、今の子供達は幼児期より目を酷使している。彼らが大人になった頃には、自動焦点のコンタクトレンズとかが発売されているのだろうか。若いうちは遠くの山の緑とか青い空を見て、伸び伸びと育ってほしいと思うが、現実にはなかなか難しい。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。今日も代休です(笑)。