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電気をきる、アースをとる

はじめに
最近は工事現場に立ち会うことが増えている。しかし、工事現場に行っても工事は出来ない。かと言って工事監督も出来ない。では何をやっているのか?電気事業には電気事業法があり、電気通信事業には電気通信事業法がある。同様に建設業にも建設業法がある。この建設業法において、建設業法の免許を取得したものは建設業法に基づく建設業者となる。建設業者は、請け負った工事の金額によって主任技術者や監理技術者をアサインすべきと規定している。特に請負金額が4千万円以上の大口案件の場合には専任の監理技術者を置くと規定している。そして、自分はその監理技術者だ。

建設業法と労働安全衛生法
建設業に特に関係のある法律は、先の建設業法と労働安全衛生法だ。後者の労働安全衛生法は、特に労働災害を防止し、「労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」と第一条に明記されている。労働基準法が労働者の最低基準を定めているのに対して、労働安全衛生法はより良い環境の形成を目的としているのが特徴だ。

労働災害は減少傾向
昭和49年には休業4日以上の死傷者数が34.7万人いた。平成26年には12万人を切るレベルまで減少した。中長期的には、これまでの安全対策が効果を発揮していると言える。
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 出典:厚生労働省

直近では増加傾向
労働災害は減少しているのかといえば、直近では逆に増加している。例えば、平成26年度の休業4日以上の死傷災害は1,373人も増加している。また、平成29年度にはついに12万人を突破し、前年度比2,550人も増えている。なぜ労働災害が増えているのだろう。
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 出典:厚生労働省

ベテラン労働者の高齢化と若手の育成
原因を究明した資料は残念ながら見当たらないが、やはりベテランが高齢化し、それを引き継ぐ中間層がいず、若手に技術継承しようとするが、なかなかうまくいかない。もしくは外国人労働者の増加による死傷者の増加が考えられる。下の調査資料によれば、外国人労働者の休業4日以上の死傷者数は平成24年の1,292人から平成29年には2,494人と倍増している。
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 出典:https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11302000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Anzenka/0000209163.pdf

監理技術者の役割
工事も現場監督もしないで監理技術者は何をやるのか。建設業法の第26条では下のように、当該工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理、技術指導を行うと規定されている。まあ平たくいえば、何があっても建設工事を「適正かつ適切に完遂する」というところだろう。技術的な問題や、工程上の問題などは発生するものだ。それを関係者と一緒に考え、総力を結集して解決することが求められることだ。だから、監理技術者が暇なことは良いことだけど、それに甘えていてもいけない。
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 出典:http://www.mlit.go.jp/common/001130685.pdf

専任の規制緩和
4千万円以上の案件では、監理技術者の専任が求められる。つまり、他の仕事をしてはいけないということだ。しかし、これでは生産性が低く、監理技術者の費用を賄うことが困難なケースも出てくる。このため、例えば下の図のように工事が複数の期間に渡って実施される場合にはその期間は当然専任だが、工事と工事の間の期間は他の専任工事を実施できるようになっている。しかし、これには発注者の了解等が必要という条件がついている。
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 出典:http://www.mlit.go.jp/common/001149079.pdf

安全教育
社員の研修を実施するのは会社だ。例えば、大きなプロジェクトで元請け会社があって、その下に複数の会社がそれぞれの業務を請け負っているとする。そして建設業では高所作業があったり、クレーン作業(玉掛け)があったり、ガスバーナ等での溶接作業があったりと危険がいっぱいだ。そして危険な作業には全て法律で規制がかかっている。労働安全衛生法では、元請け会社には総括安全衛生管理者を、下請け会社には安全管理者のアサインを義務付けている。
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 出典:https://www.tokubetu.or.jp/text_shokuan/part1/text_shokuan1-1.html

総括安全管理者
話題が硬いがご容赦ください。総括安全衛生管理者は例えば建設業であればある事業所の労働者が100人以上だと、選任が必要だ。事業を統括する工場長等が任命される。そして、労働者の危険防止や健康障害の防止、さらには安全や衛生の教育の実施を統括管理する。
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 出典:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/a-kanri.html

新規入場者研修
労働災害は、労働者が工事作業に携わってから7日以内に約61%が発生するという。つまり、労働者が不慣れな段階で事故が発生する。このために新しく工事を始めるときには、新規入場者のための教育を行う。途中で参加する人にも、教育をしてから参加してもらう。その中では、作業書の概要と編成や作業所の案内などを示す。確かに、どこが危険なのか。どのような指揮命令系統で作業を実施するのかを最初に教わらないとわからない。健康状態などのチェックも同時に実施する。今回は監理技術者としては初めての業務なので、自分自身が不慣れなことだが、自分で調べて対応するしかないのが辛いところだ。
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 出典:https://www.tokubetu.or.jp/text_shokuan/part2/text_shokuan2-2.html

電気を切る
新規入場者研修を実施して欲しいと言われ、教材を作って、講師を務めた。「耳だこ」の話ばかりでも退屈なので、少し最近のトピックを入れたり、少し深掘りして解説したり、興味の湧きそうな話などを混ぜて対応した。興味を持って聞いてもらえたらようでちょっと安心した。その時に使った小ネタが、表記だ。上司(職長等)が電源を切ってくれと部下(労働者)に指示をした。当然ながら電源スイッチをオフにするという意味だ。しかし、それを聞いた部下は電源ケーブルを文字通り切断した。しかも、その電線は電圧が掛かっていたのでショートしてブレーカーが落ちて、目的通りに電源は切れた。しかし、上司が望む結果ではなかった。部下は幸い怪我はしなかったが、利用したニッパーはもう使えない。ニッパーの絶縁部分が不足していたら部下は感電して死傷したかもしれない。別の上司は、部下にアースをとっておくように支持した。部下は上司に「了解しました」と気持ちの良い返事をした。そして、アース棒を抜いてしまった。その結果、せっかく苦労して実施した接地工事は無駄になる。万一の事故が起きなかったのが不幸中の幸いだが、万一漏電でも起きてアースが必要なケースなのにアースされていないと漏電による感電事故が発生したかもしれない。言葉の誤解は恐ろしい。口頭だけの指示も信用できない。
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 出典:https://www.chiko.co.jp/setti/faq/001-2.html

まとめ
やはり工事とか、監理技術者とか、安全教育とかはトピックとして硬いなあ。まあ、しかし、今はそんな仕事もしている。作業は少なくても責任は重大だ。ちゃんとやれば効果も出る。逆にいえば、労災とかが発生したらもう大変だ。どちらかといえば加点主義の仕事というよりは、減点主義の仕事と言えるかもしれない。労働安全コンサルタントの方がやればやるだけ安全が向上するという意味では、加点方式だが、案件が増えるほど労働災害のリスクも高まるので減点方式でもある。安全・安心をライフワークにするという意味ではどストライクの仕事かもしれない。ただ、性格的におっちょこちょいの自分に向いているのだろうか(笑)。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。