LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

IT21の会の創設経緯と5Gへの展望

はじめに
現在、日本技術士会の認定グループであるIT21の会の幹事をさせてもらっている。IT21の会は1997年に設立し、最新のIT技術の開発や研究を行い、その成果を国際的視野に立って社会に還元することを目的とする。同時に技術士としての自助努力と相互支援を達成する(要約)と会則にある。そんな設立時からの話を創立時から貢献された先般技術士にIT21の会で話をしてもらった。将来を考える上ではやはり起源が大切だ。いわゆる「初心忘るべからず」である。

初心忘るべからず
世阿弥(ぜあみ)という方をご存知でしょうか?1363年(正平18年)生まれなので、645年ほど前に生誕された方で、能を大成し、能楽に関する書物を多数著している。そのうちの一つが「花鏡(かきょう)」という伝書を書き、その時に「初心忘るべからず」と記している。
f:id:hiroshi-kizaki:20180915185910p:plain
 出典:Wiki(世阿弥)

参加者63名
IT21の会は、だいたい20名から30名程度の参加だが、9月の例会はなんと63名という過去最高レベルの技術士に参加頂いた。その理由は2つある。一つは、今回、エリクソン・ジャパンのCTOである藤岡雅宣工学博士に登壇してもらい、5Gを中心としたモバイル通信の最新動向について話をしてもらった点だ。藤岡さんはモバイル技術の最先端の状況に精通し、かつ分かりやすく説明頂けるので、セミナーを受講した人や著書を読まれた方も多い。携帯電話システムの担当者だけではなく、情報通信に関係する多くの技術士に聴講して欲しいという思いを電気電子部会に伝えた。共同開催や後援の可能性も想定したが、電気電子部会の会員に展開してもらった。席上も挙手を求めるとIT21の会員でない人=初めてIT21の会の例会に参加した方が25-30名ほどいらした。参加者の許諾をもらっていないので、少し写真の顔を隠しました。
f:id:hiroshi-kizaki:20180915185948p:plain

5Gを中心としたモバイル通信の最新動向
今回の講演の内容は次の4つのトピックだ。
・モバイル通信のの世代と進化
セルラーLPWAの動向
・5Gのロードマップと現状
・5Gフィールドトライアル

モバイル通信のの世代と進化
モバイルの世界はほぼ10年で世代が交代している。現在は、いわゆる第4世代のLTEだ。2017年時点での世界のモバイル加入者数は78億台だが、すでに第四世代方式が第三世代方式を抜いている。第四世代でも十分に高速だし、エリアも広い。特に困っていることはない。第五世代が本当に必要か?と疑問に感じる人もいるかもしれない。しかし、やはり第五世代が必要だ。理由は3つある。まず、第一にモバイルのトラヒックは毎年54%程度増加している。これが10年続くと何倍になると思いますか?なんと75倍です。つまり、2010年から2020年の間に75倍のトラヒックなる。それはLTEでなんとか対応する。しかし、2030年までにさらに75倍になるトラヒックLTEでは対応できない。やはり新しい仕組みが必要だ。第二はIoTの台頭だ。第4世代までは通信の主役は人間だった。しかし、今後はIoTを筆頭にものとなる。このものとものの通信にLTEでは効率的に対応することが難しい。第三は自動運転のような超程遅延通信のニーズへの対応だ。LTEでは超低遅延通信には対応できない。
f:id:hiroshi-kizaki:20180915191813p:plain
 出典:総務省|平成28年版 情報通信白書|移動通信システムの高度化

セルラーLPWAの動向
LPWAについては以前にもこのブログで取り扱った。
hiroshi-kizaki.hatenablog.com
LPWAは、実はセルラー系の方式と非セルラー系の方式が激しく切削琢磨している。非セルラー系の優位性は900MHz帯の周波数を活用して、低廉なコストで自営ネットワークを構築して運用することだ。限られたエリアや限られた用途で低速の通信であれば、非セルラー系のLPWAが活躍するユースケースも多いだろうと思う。しかし、できるだけ制限のないエリアで安定して通信しようとすると、やはりセルラー系のLPWAを活用することが有利だ。そして、セルラー系のLPWAにも大きく2つの流れがある。NB-IoTとLTE-Mだ。NB-IoTは、既存のLTEのガードバンド等の隙間電波を活用する方式で、帯域が200kHz以下なので、通信速度も100kbps程度だ。LTE-Mは、1Mbps程度の速度が可能で2017年にはRel-14のCat-M2の仕様がリリースされている。2018年のRel-15ではさらに機能追加も予定されている。特徴は、待ち受けモードの高度化だ。例えば第3世代のセルラーでは5.12秒ごとに無通信でも基地局とアライブ確認を行っている。これをeMTCと呼ばれる拡張モードでは43分、NB-IoTでは2.91時間まで拡張できる。この間隔が長く、かつ1回の通信で時間が短いほど低消費電力が実現する。
f:id:hiroshi-kizaki:20180915193026p:plain
 出典:SocialNetworking(http://www.socialnetworking.jp/?p=132899)

5Gのロードマップと現状
5Gのキーワードは色々ある。まずはスライシングだ。これは通信のユースケースに応じて通信速度や遅延などの要求条件の組み合わせたを決めることだ。次が仮想化とクラウド化だ。ネットワークの機能を従来は固有のハードに固有のOSと固有のソフトで最適化したが、このハードウェアをまずクラウド化し、OSも仮想化で共通化する。これによって、例えば交換機能のMMEのリソースが足らなければこれを増やす。認証機能が不足しているならこれにリソースを割り当てる。さらには、クラウドのセンターも集中化と分散化を組み合わせることでエッジ化も可能だ。つまり、超低遅延通信を実現する場合には、端末〜基地局だけでなく、基地局〜サーバーも遅延も短縮する必要がある。そこで期待されるのがエッジサーバーだ。つまり、例えば基地局の近傍でサーバ機能が実現すれば超低遅延も可能だ。さらにはビームフォーミングやC/S分離など多彩な技術が開発されている。この辺りの基本的な概念は過去のブログも参照して欲しい。
hiroshi-kizaki.hatenablog.com
f:id:hiroshi-kizaki:20180915195019p:plain
 出典:http://www.omgkrk.com/apply-for-hubraum-low-latency-prototyping-program-edge-computing-and-5g-technology/

5Gフィールドトライアル
藤岡さんは、色々と興味深いネタを集めて頂いた。例えば、次のようなYouTubeは興味深い。講演で拝聴した動画そのものではないが、5GとかEricssonといったキーワードを入れるといろんなYouTubeの動画が出てくる。興味のある人はぜひトライして欲しい。
The Power of Millimeter Wave | 5G | Verizon
 The Power of Millimeter Wave | 5G | Verizon - YouTube
Verizon quietly ran live 5G VR, 4K, and video calling demos during Super Bowl LII
 https://www.youtube.com/watch?v=ZUfRI7UkiiQ
Taking Cell Tower Inspections to the Next Level | AT&T
 https://www.youtube.com/watch?v=d-nDYAlCYp4

まとめ
今回のIT21の会の9月度例会は本当に多くの方に参加頂いた。さすがに良く知っている人もたくさん来ていただけた。自分がIT21の会の幹事をやっていることを知らなかった人がほとんどでびっくりされていたようだ。IT21の会の講演資料はさすがに会員もしくは参加者以外には開示していないが、その議事録は結構詳細に記録するので、多分参考になると思います。興味があれば検索してみて欲しい。
日本技術士会登録グループ - IT21の会ポータルサイト

以上