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労働安全衛生法:造船業を考える。

はじめに
造船業について問われても前提条件としての基本知識がないのでピンとこない。船底で危険な作業と言われてもどれほど危険がよくわからない。なので、少し造船業について調べてみた。

造船といえば海賊(笑)
古来から大海原を自由に行き来する民族はきっといただろう。国家の威信をかけてそれらを統治するために統治される側は海賊と言われたのかもしれない。海賊というと、カリブの海賊を連想するが、海賊で最も古いのはどこだろう。下の絵は、1541年のBrigantine船長が造船するところを描いたもののようだ。
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 出典:Shipbuilding - Wikipedia

考古学的な船の起源
日本語のWikiには詳しくないが、英語のWikiには船の歴史が詳しく記載されていて、それによると12万年前には人類がボルネオに到着した証拠があるという。オーストラリアの原住民とニューギニアの祖先は、5万年以上前に何らかの船でロンボク海峡を渡ったという。そして、パプアニューギニアにはなんとも不思議な石がある。下の写真の石は「Ambum Stone」と呼ばれ、3,500年前に島の高地に作られたという。このAmbum Stoneだけでなく、12種類の遺物が残っている。これだけ精巧なものを古代の人はどうやって作ったのだろう。ミステリーだ。
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 出典:Ambum Stone (article) | Khan Academy

日本の御座船
屋形船は有名だが、御座船(ござぶね)はあまり聞かない。私も調べるまで知らなかった。この御座船は天皇や公家、将軍、大名が使う非常に豪華な船だ。今でいう豪華なクルーザだ。天皇の御座船は茅萱葺きで、千木・鰹木を上せる。将軍の御座船は檜皮葺きで鯱を上せる。すごいものだ。御座船は参勤交代に用いられたほか、琉球使節の江戸上り・朝鮮通信使の送迎等にも使われた。NHKの時代劇でも登場して欲しいけど、予算の関係もあって、とても建造できないのだろう。
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 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/御座船

三国志の時代の中国の船
中国ではどうだったのだろう。三国志の時代の船となるが、様々な船が活躍したようだ。
1) 楼船(ろうせん)
周囲に板を立て並べて、矢石を防ぐように作られた大型船。多層の船体を持つことから楼船とも呼ばれた。 長さ20m前後、艪の数は片舷20前後。戦国時代から建造されはじめ、秦、漢時代になると次第に大型化してゆき、三国時代には外洋へ出るための大型海洋船にまでなった。 孫権が東南アジアに使者を使わせたときの船は、7枚の帆を張り600人から700人の乗員を乗せていた。
2) 露橈(ろとう)
船の側面に櫂が長く突き出した手漕ぎ船。 漕ぎ手は板で保護され、櫂のみが出ていたのでこう呼ばれた。長さ15m前後、艪の数は片舷8前後。
3)艨衝(もうしょう)
頑丈な船首を持つ細長い快速船。 猛スピードで突入し敵船を破壊する。現代の魚雷に似た働きをした。長さ10m前後、艪の数は片舷5前後。
4) 先登(せんとう)
先陣をきる小型の軍船。 多くの水兵が乗り組み、すばやく敵船団に突入し敵の陣形を乱し、機先を制する働きをした。そのために、敵船に乗り移るための梯子や投げ縄を搭載していた。長さ7m前後、艪の数は片舷2-3前後。
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 出典:三国志の軍船

造船業のシェア

話を造船業に戻す。1950年代は西欧の造船業が圧倒的なシェアを握っていた。日本の造船業のシェアは1960年代には西欧と二分した。1980年代には韓国の造船業が立ち上がり、日韓でシェアを競っている。さらに1990年代からは中国製が着実にシェアを伸ばしている。
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 出典:https://www.spf.org/opri-j/projects/information/newsletter/backnumber/2005/126_2.html

ぎょう鉄
労働安全衛生法には、「ぎょう鉄」という用語は出てこないが、プレス機械はよく出てくる。造船業を語る上で、このぎょう鉄という匠の技を抜きには話ができない。ぎょう鉄とは、船体の曲線部分を造り出す技術だ。鉄を撓(たわ)める意味から撓鉄(ぎょうてつ)と言う。最初は平坦な鋼板をガスバーナで熱して、その後冷却水を操りながら曲げていく。熟練の技が必要だ。
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 出典:http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h17/hakusho/h18/html/H2054320.html

ぎょう鉄加工のプロセス
船の曲がり外板を製造する行程は、下の図のように、まず線図を設計して、原図に展開して、NC切断して、ぎょう鉄して、最後に組み立てる。ぎょう鉄の難しいところは、三次元の加工をイメージして、それを具現化することだ。問題は経験ベースとなるので品質は職人次第となる。
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 出典:http://www.nmri.go.jp/oldpages/main/publications/newsletter/fy2010/2010-winter-m.pdf

労働安全衛生規則での規定
労働安全衛生法には、造船業に特化した規制は見当たらないが、労働安全衛生規則だと、安全管理者の千人に関する第4条において、造船業の文字がヒットした。造船業の場合には千人以上の労働者を使用する事業場にあっては少なくとも一人の専任の安全管理者が必要だ。建設業では300人以上なので、それに比べると緩いと言える。
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電撃防止装置
労働安全衛生法に出てくる電撃防止装置がよくわからないので、調べて見た。溶接作業で注意すべき事項は、「引火による火災」と「閉所でのガス中毒」と「感電による事故」だ。労働安全衛生規則では、導電体に囲まれた著しく狭あいな場所または2m以上の高所などでは自動電撃防止装置の取り付けを義務づけている。JIS規格では、溶接開始時に装置を作動させるのに必要な接触所要時間を0.03秒以内、回路電圧がかかるまでの始動時間を0.06秒以内と規定している。アーク電圧を切ってから25V以下の安全電圧となるように電撃防止装置が働くまでの遅動時間を1±0.3秒と規定している。
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 出典:溶接用電源の特徴

まとめ
だんだん手抜きになってきたような気がする(笑)。まあ、造船業の歴史や起源を紐解くのは面白いけど、受験生の身なので、あまり趣味に走ってもよくない。あくまで試験勉強の一環としてという立場はわきまえておこう。姪っ子が大学を卒業したときに船会社に就職したが、船舶に乗船しようとする日本人の若者は非常に少なくて、ほとんどが外人船員だという。船舶の中での世界は一種独特なんだろう。しかし、最近では、船舶でもインターネットができる環境が整いつつある。まだまだ遅いけど、最低限のアクセスができないとそれこそ日本人は働かなくなってしまうかもしれない。

以上