LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人

はじめに
会社にライブラリーがあり、その愛用者だ。月に一度ほどライブラリーの利用状況のレポートが配布されるが、その時の読書感想を求められた。どうしようかと思ったが、まあお世話になっているので表記の新書について書こうと思った。でも、表紙を見ただけでまだ読んでいないので、そのポイントや感じたことなどをこのブログでまとめてみたい。

熊谷徹(くまがい とおる)
筆者の熊谷さんは、大学を卒業後モーレツ社員としてNHKの記者を8年間働き、1990年から27年間はドイツでフリージャーナリストとして働いている。ドイツでは厳しい残業規制があるが、フリージャーナリストは対象外なので、実はこの熊谷さん自身はドイツでも猛烈に働いているのではないかと穿ってしまうが、それは本論ではない。

5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人
これは刺激的なタイトルだ。帯にも書かれているが、仕事の生産性は日本の1.5倍で、夏休みは2週間以上で、有給消化率100%だという。ここまでは知っている方人も多いかもしれない。個人的に凄いと感じたことを後述したい。
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サバティカル
恥ずかしながら初めて聞いた。サバティカル(Sabbatical)とは、使途に制限がない職務を離れた長期休暇のことだ。1か月から1年間の休暇を取ることだ。語源は、旧約聖書安息日(ラテン語 でsabbaticus)だ。 大学の教員が伝統的に採用した制度だが、牧師、芸術家、スポーツ選手などがしばしば充電期間として使う。いきものがかりが、2017年1月にいきなり「放牧宣言」をしたのには驚いたが、これもサバティカルかもしれない。ドイツの企業の約5%はサバティカルを導入している。その制度も様々だ。サバティカルの期間は、無給のところもあれば、1年間25%の減給を受ければ3ヶ月のサバティカルを取得できるところもあるという。ドイツではコンサルティング企業で採用が広がっているようだ。昨年は3週間有給休暇を取得して、バルト三国を旅行したが、今度は3ヶ月の休暇を取って海外を旅したいなあと妄想が始まる(笑)。

罰金は管理職のポケットマネー
ドイツではほぼ全ての労働者は1日の勤務時間の上限が10時間でかつ平均労働時間が8時間を超えてはいけないという規則がある。規則を守ることが大好きなドイツ人の労働者も管理者も会社もこれを遵守する。この平均で8時間というのも凄い。つまり、今日10時間勤務したら別の日は6時間勤務にするということだ。これはいいなあ。しかも、この規則を守らないとどうなるか。管理職は労働者を管理できないダメ管理者として評価を落とすことになる。それだけではなく、最高1万5千ユーロ(約180万円)の罰金を管理者が管理者のポケットマネーで支払うことを求められる。このため、管理者は文字通り必死になってこの規則を守ろうとする。それはそうだろう。管理者の心理をよく理解して制定された規則だと感心する。

サービス精神は期待できない
まだ20台の頃にヨーロッパを旅行したことがある。ドイツの地ビールを飲もうと小料理屋のような小さな店に入って注文すると、グラスには線が引いてあって、ビールの泡がピッタリその線と重なったときに「bitte」と出される。「danke」といって飲む。これは最高に美味しい。しかし、せっかくドイツにきたので、ソーセージでも食べたいので何かないかと聞くと、「Nein(ない)」という。なぜと聞くと、ここは飲む店だ。食べるならレストランに行けという。なるほど。そうかと感心した。日本でも、東京に進出したばかりの「京都の餃子の王将」に入ると、餃子のみだった。ラーメンを食べたければラーメン屋に行け。ここは餃子屋だ。ドイツ人も餃子の王将もプライドを持って仕事をしていると感心した。

日本人のような過剰サービスは期待できない
お客様は神様ですというのは、歌手の三波春夫のセリフだ。日本人はこの言葉に共感する人も多いだろう。でも、ドイツではそのような感覚はない。日本人が得意な「忖度」も苦手だという。良いサービスを受けたければ対価(チップ)を払うのが当然という感覚だ。日本人もドイツ人も勤勉だが、このサービスに対する考え方は両極端だ。どちらが良いということはないだろう。しかし、お互いに良いところは取り入れたいところだ。

裁量労働制の課題
以前、裁量労働制についてブログにまとめた。その時の結論が下の図だ。つまり、タテ軸にやる気(やりがい)、横軸に労働時間をプロットすると、月100時間を境にして、やる気が急激に増大する。4つのゾーンに分割すると、やる気もなく、労働時間も少ないのがダラダラゾーンだ。そして、やる気が高く、労働時間が長いのが猛烈ゾーンだ。やる気は高いが、労働時間は短いゾーンをハイカルチャーゾーンと呼ぶ。大好きなスタバはこの代表格だ。そして、問題なのは、やりがいもなく、社会的な評価も低く、賃金も低くてやる気が低いにも関わらず長時間の労働を強いるゾーンだ。さらにはサービス残業で労働の対価も払わないとなるとまさにブラックゾーンだろう。
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 出典:裁量労働制を考える - LuckyOceanのブログ

労働時間を下げるよりも、やりがいを高めるべき
これは自論だが、労働時間が長いから悪いのではない。やる気ややりがいを持てないことが問題だ。これは企業側の問題だけでなく、働く側の問題でもあるが、このやる気をいかに高めて、付加価値の高い業務を行うようにするのか。この点を重点的に検討して、追求すべきではないのかと思う。その上で、労働時間を短くするのか、長時間働くのかは個人の自由だろうと思う。

猛烈ゾーン
個人経営者や企業の幹部などはやり甲斐もあるし、やった分だけ対価も得られる。年間数千万円とか数億の収入を得られるならもう必死で働くと思う。そして、疲れたら、サバティカル休暇でリフレッシュするのもいいかもしれない。問題は体力の限界と、健康と家族だろう。ワークライフバランスを心がけられるかどうかはこのゾーンの人たちにとっては課題だろう。

ハイカルチャーゾーン
やる気もやり甲斐もあるが、短時間で仕事を終える。勤務時間は仕事に集中して、成果を出したら、さっと帰る。現在の社会が求めているのは、コチラだろう。でも、日本人は勤勉だ。会社から早く帰って趣味を楽しむ人もいるけど、スタバとかで必死に勉強している人もいる。資格試験にトライしているのだろうか。資格試験に合格しても人生が劇的に変わることは少なく、結局資格取得ビジネスに踊らされているだけということもある。自分自身その毛があるが、まあ人それぞれだ。いずれにせよそれぞれの夢を是非実現して欲しいとは思う。

高橋まつりさんのTwitter
ネットを見ると高橋さんのTwitterが検索できる。2015-09-23 17:35:09にこんなことを書いている。時給=人間の価値ではないが、彼氏の時給が彼女の時給の25倍ということにショックを受けている。やはりブラックゾーンに突入していたと言えるのではないだろうか。
最近失恋しかけてメンタルずたずただったんだけど何とか持ちこたえて生きていますという報告と、この前年俸制の彼の休日出勤手当を時給換算してもらったら私の残業代の25倍だったので、この人は労働市場で私の25倍以上の価値がある…と全身全霊のリスペクトを以って関係修復に励んでいる。

ドストエフスキー地下室の手記
自分自身はまだ読んでいないが、ドストエフスキーは「地下室の手記」のなかで、「重犯罪人に自分の罪を思い知らせるなら、土を掘り移動させてそれをまた元に戻す。ということをさせれば良いのだ。しかし、それは全く拷問と同じことになって、精神に異常をきたすだろう。」と書いているという。やる気が低い事に長時間の労働を強いることの究極はこのような行為だろう。そして、彼の指摘のように精神的に異常をきたす悲劇が日本では続いていると言えるのではないか。
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まとめ
電通で悲惨な自殺をした高橋まつりさんの心情は想像するしかない。仮に月100時間の残業をしていても、それに対する対価がしっかりとあり、評価も高く、成果も得られたのだとしたら、最悪の事態にはならなかったのではないだろうか。今後は、もっと短時間で成果をあげるようにするか、もっと時間をかけて探求するかは本人の判断だが、少なくとも精神的には充実していて、自殺を考えることはないのではないかと思う。成功した人が月100時間ぐらいで自殺するなんてという問題発言をすることがある。多分、本人の素直な感想なのだと思う。でも、想像して欲しい。意味のないことを強いられるほど苦痛はないだろう。先の地下室の手記は極端だが、そんなことを強いられている人を想像すべきだと思う。あと、個人的には企業の管理者はこの規制の対象外だという。やる気は高いのだろうか。心配になる。

以上

すいません。ちょっと結論が暗くなってしまいましたね。