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監視カメラを考える。

はじめに
最近は、犯罪者を検挙する三種の神器は、監視カメラとDNAと携帯履歴だという。確かにテレビでも、犯罪現場の状況を捉えた映像を入手しましたとか言って何度も報道している。世の中には一体どれぐらいの監視カメラがあるのか?監視カメラはどこに向かうのか?シェアはどうか?どこがリードしているのか?安全・安心には本当に貢献できているのか?そんな疑問に対する答えを探して見た。

監視カメラの世界市場規模
下の図は2015年8月時点なので、3年前の予測だが、2018年には世界で4,300万台を超えるという。青いパートはアナログカメラで、白いパートはIPカメラだ。2017年にはIPカメラがアナログカメラの台数を超える。今後、増えるのはIPカメラだ。
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 出典:矢野経済研究所(参考1)

ネットワークカメラの動向
下の図は、横軸を成長率、縦軸を台数規模でマッピングしたものだ。右上にあるのはビル・オフィスや店舗・流通だ。セキュリティを高めるためには必須だ。少し台数規模が小さいのが公共系だ。最近は日常化している異常気象に基づく災害監視などで設置が進んでいる。残念ながら左下は工場とか、文教、娯楽施設だ。工場内での活用や学校内では活用されているが、まだまだその規模は小さく、さらに今後の成長率も低いと見込まれている。この辺りの安全・安心を高めることも課題だろう。
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 出典:テクノ・システム・リサーチ(参考2)

街の監視カメラに対する期待と懸念
監視カメラは事業者から見るとセキュリティを高めるツールだ。しかし、監視される側はどのように感じているのだろうか。下の調査によると、犯罪抑止に効果があるとか、迷惑行為が減る、犯罪検挙率が上がるという期待感が多数だ。その一方で、プライバシーや肖像権の侵害を懸念する声もある。特に、最近の監視カメラは解像度が高いために、予想以上の情報を吸い取られている可能性がある。また、本来の目的ではなく、悪意の犯罪者がそのような映像を悪用する懸念もある。
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 出典:アルコム(参考3)

監視カメラの世界シェア
下の図は、世界の監視カメラの出荷台数のシェアだ。2016年実績では4,400万台以上が出荷された。そして、そのうちの32.3%を中国の杭州海康威視数字技術が占める。2位(9.8%)も中国メーカーなので、1位と2位を合わせると中国の2社で40%を超えている。3位はスウェーデンアクシスで日本にも支社がある。日本メーカーではパナソニックが4位に食い込んでいる。
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 出典:日本経済新聞(参考4)

監視カメラの国内シェア
2015年の出荷台数は60万台弱だが、年率10〜20%のペースで伸びている。2019年には100万台を超えると見込まれている。メーカのシェアでみるとパナソニックがダントツのトップで約57%を占めている。ついで、アクシス、キャノン、ソニーと続く。ちなみにスウェーデンアクシスキヤノンが2015年に3337億円で買収して、完全子会社化した。今後はキヤノンが世界のメジャープレーヤとなる可能性がある。素晴らしい。
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 出典:テクノ・システム・リサーチ(参考5)

顔認証技術で世界をリードするNEC
監視カメラの台数ベースにはNECはランキングされていないが、技術力では世界をリードしている。顔認証技術の研究を本格的に開始したのは1989年なのでほぼ30年前からだ。2002年にNewFaceを製品化し、2009年からは米国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークで3回連続で一位を獲得している。ただし、このNISTの評価は非常に多面的で多様なので興味のある人は原文レポートを読んで見るのをお勧めする。
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 出典:NEC(参考6)

NECの顔認証制度はダントツ
下のグラフはNECフジサンケイビジネスアイ賞を受賞した時のレポートだ。我田引水に思う人もいるかもしれないが、NECの認証精度の高さは0.3%とダントツだ。人種に対する認識率も2位の2分の1、25度の斜めからも2位の3分の1だったという。
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 出典:NEC(参考7)

顔認証のための分析エンジン
これもNECの資料からだ。自画自賛の部分もあるが、インバリアント分析や異種混合学習、顔画像解析、行動分析などの技術を総合的に活用しているのが、NECの高い認識率を高めるという。なお、インバリアントを日本語でいえば不変量だ。複数の画像データを見比べて、いつもと違う何かを見つけて判定するというNEC独自の技術だという。キヤノンではなく、技術力でリードするNECがもし、スウェーデンアクシスを買収していたら世界の監視カメラの勢力図はまた違ったものになっていただろう。もしくは、NECはもっと別のグローバルなマーケット戦略を検討しているのだろうか?
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 出典:NEC(参考8)

多種多様な用途で高まる動画・画像監視のニーズ
監視カメラのニーズを大別すると、次のような4つに分類できるかもしれない。最近ではいわゆる監視カメラはIP化し、コストも安くなっている。ネットさえあれば動画情報をアップできる。このため、ドローンに搭載したカメラやロボットによる撮影もリアルタイムに見ることさえできる。
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 出典:アスキー(参考9)

ゴーグル型360度カメラ
Indiegogoとは2008年に設立されたベンチャー企業だ。サンフランシスコを拠点としてクラウドファンディングにより資金を調達する。Indiegogoは審査基準が比較的緩く、当初設定した金額に到達しない場合は、出資者らに資金を返す方法とするか、9%の手数料を払って集まった額だけ受け取る方法とするかを選べる。クラウドファンディングでは、Kickstarterの方が11万件、Indiegogoは約4万4000件プロジェクトに対応している。そんなクラウドファンディングを用いてゴーグル型の360度カメラを開発する人たちがいる。面白いことを考えるものだ。
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 出典:indiegogo(参考10)

ポケットに入れて撮影できるペン型カメラ
さっきの360度カメラは最低でも229ドルだが、下の図のようなペン型カメラなら1万円強で購入できる。静止画なら1280×960ピクセル、動画でも720×480ピクセルで撮影できると言う。マイクロSD対応で32GBまで保存可能だ。これぐらいなら買えるけど、こんなペンを持っているとちょっと怪しい。
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 出典:Skylijp(参考11)

パナソニックの「みえますねっと」
安心・安全を考えると、パナソニックが提供する「みえますねっと」のようなサービスも便利だ。でも、これは保育園の様子を外からでも見れると言うだけの仕組みだ。保育園で働く保育士は、園児が寝ている時も15分に1回はチェックしなければならない。0歳児の園児の場合には、5分に1回呼吸をチェックする。これが精神的にも肉体的にもきつい。そういった部分を監視カメラで代用して、リスクが高まったらすぐにアラームを鳴動させて、保育士に対応を求める。そのような仕組みの導入が必要だと思う。そう!昨日アップしたプールの監視システムと同じだ。監視カメラで映像を録画するのをゴールとするのではなく、リスクを監視して、リスクが高まったらアラームを鳴動させる。そういうシステムが求めれらている。
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 出典:パナソニック(参考12)

製造者責任(PL)
リスクを監視して、リスクが高まったらアラームを鳴動させるようなシステムを開発した場合にも、システムは完璧ではない。誤って鳴動することがあるし、見逃すこともある。どちらもゼロに近づけるべきだが、生命に関わるので、やはり見逃す確率を限り無く小さくする必要があり、必然的に誤鳴動が増えて、狼少年的な扱いを受ける懸念がある。また、見逃す確率をいくら小さくしても、見逃すケースもあるかもしれない。そんな時に製造物責任を問われるとしたらこれは辛い。保険制度を導入する等でメーカーのリスク分散をしないと、チャレンジするメーカーがフェードアウトするだろう。この辺りはなかなか難しい問題だ。

まとめ
犯罪者を見逃すのと、無罪の人を誤認するのとどちらがやばいかと言う判断は難しい。より高いセキュリティが求められる空港では前者を最小化すべきだし、アマゾンGOのような商業施設であれば後者を最小化すべきかもしれない。プールの監視システムや保育園の園児監視システムだと生命の問題なので前者を最小化すべきだ。現在の製品やシステムは、どちらかと言うと利便性や警備的な目的のものが多い。しかし、今後は監視員や保育士の気合と根性に頼っている危うい仕組みではなく、ITの力を借りて、より確実に、簡単に、効果的にリスク監視するようなニーズが増えてくるのではないだろうか。リスクを嫌うと言われるパナソニックには、ぜひ先陣を切ってリスク監視システムを開発して欲しいと思う。
以上

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

参考1:https://irorio.jp/agatasei/20150816/252787/
参考2:https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/3986/Default.aspx
参考3:https://www.arucom.ne.jp/sp_column/column12.html
参考4:監視カメラ世界トップの海康 急成長 :日本経済新聞
参考5:https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/5271/Default.aspx
参考6:リアルタイム監視を実現する動画顔認証技術 : NEC技報 | NEC
参考7:http://www.fbi-award.jp/sentan/jusyou/2011/8.pdf
参考8:http://portal.isee.kyushu-u.ac.jp/symposium/pdf/005.pdf
参考9:http://ascii.jp/elem/000/001/528/1528353/
参考10:ORBI Prime: The First 360 Video Recording Eyewear | Indiegogo
参考11:偽装スパイカメラ激安通販 おすすめ,長時間隠しカメラ
参考12:保育園の様子がみえます! | みえますねっと | Panasonic