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日米地位協定からJAL SKY Wi-Fiまで

はじめに
日米地位協定を初めて知ったのは在日米軍を担当する営業部門に配属されたときだ。一度しっかりと読み込もうと思いながら月日が経ってしまった。日米地位協定を調べているうちにラプコンが気になり、ラプコンを調べているうちに飛行機内でのWi-Fi通信が気になった。興味本位でまとめたものだが、何かの参考になれば幸いだ。

日米安全保障条約
昭和35年1月19日に締結されたのが日米安保条約だ。英語名は、「Treaty of Mutual Cooperation and Security between the United States and Japan」だ。形式的には、昭和26年に署名された旧安保条約を失効させて、新たに制定されたものだが、実質的には改定版だという。主な改定内容は、日米共同防衛の明文化と在日米軍の配置・装備に対する両国政府の事前協議制度の設置だ。
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 出典:All About(参考1)

日米地位協定
問題の日米地位協定は、日米安保条約に基づく協定だが、旧条約に基づいて昭和27年2月28日に先行して合意されている。英語名では、「Agreement under Article VI of the Treaty of Mutual Cooperation and Security between Japan and the United States of America, Regarding Facilities and Areas and the Status of United States Armed Forces in Japan」だ。先の日米安保条約はTreatyだったが、この日米地位協定はAgreement under Treatyだ。Wikiによると、日米地位協定の運用に関しては月に2回日米合同委員会で協議しているという。そういえば、日曜日の朝の討論番組で石破防衛大臣(当時)がそんなことを話していたのを思い出す。
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 出典:左はBlog.Goo(参考2)、右はNewsYahoo(参考3)

在日米軍基地内はアメリ
沖縄に家族で赴任したと言うと「良いなあ」と羨ましがられることが多い。でも、在沖米軍の担当だったと言うと「???」微妙な反応になることが多い。多分、米軍基地内に入ったことがない人が大部分だろうし、それに対する考え方も確固たるものを持っている人は少数かもしれない。幸い、自分が担当した時期には戦争や紛争がなく平和だった。個人のパスに加えて、カーパスも取得したので、在沖米軍の基地内にはほぼ自由に出入りが可能だった。当時0歳だった息子も土日のたびに出掛けて、ほぼ全ての在沖米軍基地を訪問した。たぶん、全然覚えていないだろう。その時に感じたことは基地内はアメリカそのものだと言うことだ。基地の中には、学校もあり、スーパーもあり、映画館もあり、ボーリング場も、ゴルフ場も、将校クラブもある。商品を購入することはできないが、施設の利用やその場での飲食は自由だ。ちょっとしたルーレットマシンなどもあった。ゴルフはゲストは50ドルほど払う必要があるが、米兵は10ドル程度でプレイしていたような気がする。ゴルフの打ちっ放しの練習場などもあり、美人のスタッフもいたので、一時期通ったものだ(笑)。

在日米軍の施設
北は北海道から南は九州・沖縄まで在日米軍は配備されている。在日米軍基地には自衛隊の基地が併設されていることが多く、土地や施設は自衛隊が管理している。陸軍の中心は座間基地やトリイ(沖縄)だ。空軍は横田、三沢、嘉手納、海軍は横須賀、佐世保、ホワイトビーチ(沖縄)だ。これらの陸海空の兵隊は優秀だし、プライドも持っている。一方、問題を起こしやすいのが海兵隊で沖縄の北部の基地はほぼ海兵隊の基地だ。本土では岩国だ。沖縄の海兵隊の基地も南の普天間やコートニーなどは本部機能だが、北部のハンセンやシュワッブはいわば突撃隊だ。基地内に入ると銃弾の練習などをしていたりして、緊張感が高まる。深い森の中でのサバイバルゲームなどもあり、兵隊も命がけだ。兵隊も教育レベルが高くないため、玉石混合だ。
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 出典:防衛白書(参考4)

自衛隊と米軍
主要国の軍事費と軍人のランキングをみると、軍事費では米国が圧倒的に多く、中国語、サウジと続き、日本は6位だ。一方で、軍人数では中国が最も多く、インド、米国と続き、日本は同じく6位だ。
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 出典:Wiki(参考5)

台頭する中国
下の図は1989年から2014年までの26年間での日本と中国の軍事費の推移だ。日本は1.27倍とほぼ横ばいだが、中国は約10倍に増大している。2017年度の米国の軍事費は6,098億ドルと2016年から0.87%の微増だが、中国では2,282億ドルと1.57倍に増大している。仮にこのペースで増大すれば4年後には中国の軍事費が米国の軍事費を抜くことになる。2022年の米国と中国のパワーバランスがどうなるかが懸念される。しかし、中国の軍事費が米国の軍事費を追い抜くのは、もはや時間の問題だろう。その時に日本がどのようなポリシーを取るべきかは難しい問題だ。
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 出典:Hatena(参考6)

横田ラプコン
話題が少し変わるが、「ラプコン」をご存知でしょうか?日本語では空域でしょうか。英語では、Radar Approach Controlの略でRAPCONと言い、直訳するとレーダー進入管制だ。日本には、米軍が支配するラプコンが横田と岩国と嘉手納の3つがある。特に大きいのが横田ラプコンだ。北は新潟から西は静岡までの1都8県にまたがる。横田空軍基地から三沢空軍基地までは米軍の戦闘機では20分ほどだと言う。急発進と急停車でGもすごく、米兵も一度乗るともう乗りたくないと言う(笑)。一方、羽田空港から三沢空港まで飛行機で行こうとすると1時間15分ほどかかる。これは当然、急発進・急停車をしないし、巡航速度も違うが、飛行ルートが全然違う。横田ラプコンで制限されているので、羽田を離陸するとまずは東方向に向かい、太平洋上を北上し、三沢空港に近づくと左旋して着陸する。ただし、最近の国内ジェット機の巡航高度は8,000m~12,000mと高いところを飛ぶので実効的な問題はないと言う意見もある。横田空域は、平成4年に約10%、平成20年9月25日に約20%が返還されて現在に至っている。
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 出典:dmcr(参考7)

嘉手納ラプコン
下の図は嘉手納ラプコンのイメージだ。嘉手納基地を中心に半径約92km(50海里)、高度約6千m(2万フィート)の巨大なゾーンだ。那覇空港の管制空域は半径5km、高度600mとわずかだ。よくこれで運航できていると感心する。那覇空港を離発着する民間機は北向きに離陸する場合は高度300m以下、南向きに離陸する場合は高度600m以下に制限される。これは辛い。嘉手納ラプコンは平成21年(2009年)までには返還することが合意されているようだが、進んでいるのだろうか。
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 出典:ExciteBlog (参考8)

国内空域の容量倍増
通信の世界では時分割とか空間分割と符号分割とか多様な方式がある。飛行機の空路は基本的に空間分割だ。進行方向2,000ftで隔離していたが、1,000ft間隔とすることで輸送量の拡大を図っている。この方式をRVSMと呼ぶ。日本語では短縮垂直間隔、英語では「reduced vertical separation minimum」と言う。RVSMは英国では2001年に導入し、欧州、米国で導入されて、日本は2005年から導入している。
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 出典:国土交通省(参考9)

飛行機からの通信方式
最近は、飛行機の中からもWi-Fiを利用できるサービスが拡充されている。日本では下の図(右)の衛星を用いる方式を採用しているが、米国では地上から飛行機に向けて電波を出すATGが使われている。日本はラプコンの関係もあり、海上を運航することが多いので、ATGには不向きだが、この仕組みはドローンの走行ルートでドローンとの通信を安定化するためには有効かもしれない。
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 出典:thePoint(参考10)

まとめ
日本の空域については、断片的な知識しかなかったが、今回の調べてみて理解は深まった。しかし、空の制御権などの軍事問題の解決には時間がかかる。また、中国の台頭がどこまで進むのか、日中米の関係を理解するのは、経済問題だけではなく、軍事問題も不可欠な情報だと感じた。平和利用という意味では飛行機内でWi-Fiが使えるようになったり、今後のドローンの安定運行にATGのような方式が有効かもしれないというのは新鮮な気づきだった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

以上

参考1:https://allabout.co.jp/gm/gc/293316/2/
参考2:https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/891846011d81c34854fe9fee9c4dd080
参考3:https://news.yahoo.co.jp/feature/290
参考4:3 在日米軍の駐留
参考5:https://ja.wikipedia.org/wiki/自衛隊
参考6:http://f.hatena.ne.jp/kibashiri/20150413153216
参考7:首都圏の空域について
参考8:https://stowaway.exblog.jp/2809203/
参考9:http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/12/120226/04.pdf