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モラルライセンスを考える

1. モラルライセンスとは
モラルライセンスという言葉を聞いたことがありますか?日本語ではまだあまり聞かないかもしれない。実際日本語のWikiで調べても「モラルライセンス」は出てこない。モラルライセンスとは心理的な現象を言います。つまり、「モラル的に良いことをしているのだから、少しくらいモラル的に悪いことをしても許されるだろう。」と勝手に考えてしまう傾向があるというのです。スタンフォード大学の心理学者であるケリー・マクゴニガルがその著書「スタンフォードの自分を変える教室」で問題提起して有名になった考え方です。私もKindle版を購入して読破中です。
www.daiwashobo.co.jp

2. モラルライセンスの罠

モラルライセンスが問題なのは、いわば免罪符をもらったように感じてしまうことです。これまで頑張ったのだから少しぐらいいいだろう。こんなに良いことをしているのだからこれぐらいは許されるだろう。ちょっとした心の緩みが大きな問題になりえます。モラルは貯金できるものではないことを忘れてしまう傾向が人間にはあるのだということです。

3. モラルライセンスの事例
(1) 温泉付きの学会

1年間コツコツと研究をして、その成果を学会で発表して、参加者からも賞賛を受けた。今日ぐらいはお酒を飲んで、温泉に入ってゆっくりしよう。そんな気持ちは理解できる。モラルライセンスというほどのことはないかもしれない。でも、お酒も入って、綺麗な女性のいるお店に入ってしまったり、そのままはめをはずしてしまったり、普段は考えられないような行動をついとってしまう。真面目な研究者だったと思ったのになんて後で問題にならないように気をつけましょう(笑)。

(2) バーディの後のボギー
ゴルフをしていて不思議なのは、たまたまバーディが出たりすると、次のホールではボギーとか、ダブルボギーを叩いてしまう。別に気を緩めたつもりではないけど、なぜか大叩きしてしまうことが多い。そして、そんな時にはなぜか落ち込まない。まあ、バーディも取っていたのでいいか。これもモラルライセンスというよりは、心理学で言うコンフォートゾーンの問題かもしれない。つまり、本来の自分の実力よりも良い結果が出ると、気持ち悪くなって、少し失敗をして安心をする。意図的ではないが、無意識のうちにそんなつじつま合わせをするようなメカニズムが人間の脳にはあるようです。

(3) いじめの司令塔
学校でいじめ問題が起きています。その場合に、加害者が自分の意思で行ったのであれば、それは加害者と被害者の問題で比較的構図は単純です。しかし、加害者が実は自分の意思ではなく、誰かに指示された、示唆されたとすると、その構図は複雑です。この指示や示唆をする人を仮に司令塔と呼ぶと、この司令塔も悪意を持って誰かにいじめを指示するようなケースだけではなく、そういう空気を作るだけのケースもあります。司令塔が意図的に指示したのではなく、司令塔の意思を忖度したのかもしれない。いろいろなケースが考えられるので問題が非常に複雑です。そして、このような司令塔になる生徒は、多くの場合には優等生だったり、スポーツの優秀選手だったりする。本人は毎日毎日勉強したり、練習したり、頑張っているので、組織のルールを守らないような人間を許すことができず、ちょっと指導が必要だなあと発言したり、そんなムードを作ったりすることがあるのかもしれない。

4. モラルライセンスの罠を避けるにはどうすれば良いのか。
(1) 自らの意思で行動する

チームのために、チームの目標に向けて、練習を頑張るのは素晴らしい。悪いことではない。しかし、自分の意思というよりは、誰かに命令されて頑張るのはどうだろう。学校で勉強したり、進学するのは本来感謝すべきことだが、誰かから勉強を強要されて、頑張って勉強を続けるのは辛いことかもしれない。大切なことは、誰かに言われたから行動するのではなく、自分で考えて、自分で判断して、行動することだ。特に、いじめの司令塔になるような生徒が、自発的に勉強しているのか、他発的に勉強させられているのか。そんなところも紐解いていくと新たな真実が見えてくるのではないだろうか。

(2) なぜを問う
例えばダイエットにチャレンジした。ここまで頑張ったのだから少しぐらいならと大好きな甘いものを食べてしまう。そんな心理にもモラルライセンスのメカニズムが潜んでいるという。例えば、ダイエットに成功したことがあるとすると、そのような結果を思い出すようにした人と、なぜ成功したのかを考えさせた人で比べると、前者は誘惑に負けるが、後者は誘惑には負けなかったという。つまり、前者はこんなに頑張ったのだから少しぐらいはと自分を甘やかした。でも、後者はダイエットの目的を振り返り、さらに決意を新たにした。高い目標や動機付けをしっかりとすることがやはり目標達成には必要だし、効果的だということだろう。

(3) PDCAを回す
モラルライセンスは心理的な現象です。なので、モラル的に良いことをしたというのと、しようとしたの区別はないというのです。つまり、良いことをしようとしただけで、良いことをしたという免罪符は貯金されていく。したがって、本当に良いことをしたのかどうか、それが効果があったのかという事実を検証し、自らにフィードバックさせる必要がある。それによって、良いことをしたつもりだったけど、まだまだだったという事実に気づき、免罪符にはならないと理解する必要があります。

5. まとめ
モラルライセンスは聞き慣れないことばかもしれない。でも、そのような心理的な事象には共感できるのではないでしょうか。人間というのは弱いものです。最近は、残業規制が厳しい。そして、それなりの成果を挙げた日は気持ち良く退社できるけど、なんだか会議とか研修ばかりで生産的な仕事をしていないと後ろ髪を引かれるような気持ちになったりする。なお、ここで良いこととは、道徳的な善悪が基準となっている。一日一善を習慣にしている人がいたら、それは素晴らしいことです。でも、その反動として、モラルライセンスの仕組みとして、論理的に悪な行動の免罪符にしていたとしたら、免罪符にならないことを理解すべきです。多分、一番良いのは、ある組織や個人が考えるあるべき姿や将来の目標を高く掲げ、それに向けてそれぞれが謙虚に日々研鑽することで、個々人がちゃんと自分の頭で考えて、自分の意思で行動することが大切だと思います。生徒の意思を尊重し、自発的な行動を促すようなような学校ではいじめの問題は起こりにくいし、個々の社員が自ら考えて意見を出し合うような会社はブラックにはならないのではないでしょうか。
                                               以上