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電動アシスト自転車の課題と将来への提言(2/2)

前回(1/2)では、電動アシスト自転車の現状と課題について考察してきた。ここからは、これらの課題に対する解決法の提言や今後の夢のような話を無責任にイメージしてみたい。
hiroshi-kizaki.hatenablog.com


5. 安心・安全のための提言
5.1 自転車の位置づけの見直しと規制緩和
5.1.1 自転車の位置づけ

移動手段として日本では電車やバス、自動車が上位にあり、自転車による移動は近距離に限定したイメージがある。従って、広域の道路整備はまず鉄道や車両のために進めている。このため、自転車道の整備状況は自転車先進国のオランダに比べて10分の1以下の状況だ。しかし、電動アシスト自転車を利用すればより広域への移動が可能であり、エネルギー消費も半分は人力で、環境にも優しい。災害発生時にも安定して利用でき、利用者にとっても利便性が高い。自転車先進国では自転車レーンが3車線だという。2017年5月には自転車活用推進法が制定された。警視庁も2020年の東京オリンピックまでに100地区に自転車用走行路、自転車ナビルートを設置すると発表した。今後、自転車を有効に活用してエコで便利で安全・安心な社会を作れるかどうか日本人の知恵と工夫が求められているのではないだろうか。
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(出典:神奈川県警、参考1)

5.1.2 電動アシストの規制緩和
日本では速度に応じてアシスト率をきめ細かく決めている。時速10kmまでは人力と同じ力でアシストするが、時速10kmを超えると徐々にアシスト比率が下がって時速24kmでゼロとなる。しかし、北米では時速45kmまでアシストすることも許容されている。速度を無防備にあげるべきではないが、自転車レーンの整備が進めば、電動アシストの速度も緩和することで行動範囲も広がり、結果として自転車の活用度合いも広がるのではないだろうか。ただし、その場合にも安全・安心対策をしっかりと行うことが条件になるべきだ。

5.1.3 シームレス運用
5.1.3.1 電車・列車への乗り入れ

ヨーロッバを旅行していて最もショックだったのは電車や列車への自転車の持ち込みが文化として根付いていることだ。日本でもこれが認められれば、行動範囲は非常に広くなる。現状ではハードルは多いが、是非取り組みが強化されることを望む。例えば、非常に混雑している区間や時間帯に自転車を持ち込むことは迷惑だし、許容はできない。しかし、十分に余裕のある区間や時間や車両は国内にも多く存在するだろう。一定のマーケティング調査を実施した上で、観光戦略や都市計画などともリンクした上で、電車や列車への持ち込みのルールの緩和を是非検討して欲しいと思う。想定するのは、人口の減少に伴って利用率の低下しているような路線とか、有人改札がないような無人改札の駅とか。自転車の電車への持ち込みが許容されれば、駅に駐輪する必要がなくなるという側面もある。現状ではエレベータやエスカレータの整備が不足していて車椅子での通行にも多くの障害がある駅が多いが、これらの解消がまずは先決かもしれない。駅の改修・改善が進んだら、電車や列車の改善を期待したい。車椅子を車両に接続する仕組みが徐々に普及しているため、これを流用することを社会が許容するかどうかも課題かもしれない。

5.1.3.2 ベロタクシーのチャレンジ
海外ではタクシーに自転車のキャリーを設置することを義務つけている国もいる。日本でも一部のバスで自転車をキャリーできる試みをしたようだがまだまだ試行段階だ。タクシーやバスで自転車を運ぶことができれば、シームレスな利用を促進するのだろうとそんな情報を集めようとしたらベロタクシーが出てきた。いわゆる輪タクだが、面白そうなのでこれに言及したい。人力の自転車にお客様を乗せて希望する場所まで移動するタクシー業務だ。このベロタクシーも実は電動アシスト自転車なので、坂道などでも大丈夫だ。そういえばエストニアのタリンを訪問した時も、観光客を待ち受けていたのは、人力タクシーだった。しかも、運転手は若い女性だったりして大丈夫かと不安になったが、車体の下部を見るとモーターが付いていて電動アシストになっていた。2020年の東京オリンピックにはこんなローテクのベロタクシーが都内のあちこちを走っていたらちょっと楽しい感じがする。
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(出典:ベロタクシー、参考2)

5.2 インフラ整備
自転車専用レーンの整備とともに有効なのがビーコンの活用だろう。下の図はトヨタ社の資料からの引用だ。ITS技術を活用して、交通事故の低減を目指すとしている。しかし、この図に含まれるのはトラックと乗用車と自動二輪車だ。ここに電動アシスト自転車や普通自転車を含めて基本デッサンをする必要があるのではないだろうか。例えば、700MHzの周波数を発振するビーコンを小型化して、自転車に設置すれば出会い頭の事故防止に役立つのではないだろうか。自転車と自動車の接触事故の9割は自転車が加害者だ。つまり、自転車と自動車の追突事故、自転車と自転車の追突事故をなくすには、お互いの存在を電子的に認知するシステムが有効だ。そして、車両事故が多発するような交差点やT字路に光ビーコンを設置することの有効性を検証できないものか。
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(出典:トヨタ、参考3)

5.3 モビリティの技術革新
電動アシスト自転車の性能を決めるものは電池とモーターだ。個人的には、これに回生充電を追加したい。
回生充電を使えば、例えば下り坂では回生充電をしながら減速し、上り坂ではモーターの力でアシストする。しかし、理想通りにはなかなか行かない。克服すべき問題も多い。例えば、発電効率と充電効率をいかに高めることができるのかと言う効率の問題だ。次は充放電を短時間で繰り返すと電池の寿命に影響を与えるのではないかと言う問題。さらには、それらを実現するためのコスト増と重量増と言う問題。最近は前輪に回生充電可能なモーターで駆動する方式を採用する電動アシスト自転車もある。今後の技術革新に期待したい。
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(出典:AERO LIFE、参考4)

6. 将来のモビリティへの期待
6.1 もっと自由なモビリティ

電動になれば部品は電池とモータとタイヤと車体だ。電動アシスト自転車の現在の構成や外観を大きく変える新しいコンセプトの商品が今後話題になる可能性はあるだろう。Pinterestに掲載されていたモビリティを少しピックアップしてみた。あなたがこれに乗ってみたいと思うような車両がありますか?個人的には一輪モータとでも言うのだろうか。写真の上左のような乗り物は面白いと思う。電子的にバランス制御するのであれば、タイヤは一つで十分かもしれない。こんな車両なら、キャリーバッグのように、電車や列車に持ち込む場合の抵抗も少ないのではないだろうか。ハブがないようなタイヤも面白い。巨大なタイヤに挟まれたベビーカーに赤ちゃんが乗っていたらどうしよう。本日1月22日は東京でも記録的な大雪になったが、写真下中央の黄色い農機具のような車両なら、雪道でも平気かもしれない。
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(出典:Pinterest、参考5)

6.2 ひとり乗り用のモビリティ
自動車(4輪)とバイク(2輪)の垣根が今後なくなるかもしれない。例えば、自動運転の技術が進歩して、下の図の様な乗り物に乗車して、目的地をセットしたら、あとはゆっくりと車内でリラックスできるのであれば、別に4輪でなくてもいい。こんなコンパクトでかっこいい二輪なら乗ってみたい気がする。
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(出典:Pinterest、参考6)

7. 終わりに
自転車活用推進法が昨年制定されたことを最近知った。また、ヨーロッパでは自転車の活用が進んでいる。一方、日本では電動アシストという新しいテクノロジーを世界に発信した。国によって規制は異なるが、今後電池やモーターや回生充電の仕組みが進めば、もっと楽しい世の中になっているかもしれない。そんな思いから調べてみた。しかし、そんな新しいテクノロジーは楽しいだけでは終わるべきではない。やはり、安心・安全がキーワードだろう。車両と車両の事故、車両と人間の事故、車両の単独の事故。そんな事故の根本原因を深掘りして、事故ゼロを目指すような社会インフラをデッサンして、そこに新しいテクノロジーを投入する。そんなマクロ的視点とミクロ的視点のコラボレーションが求められているような気がする。この分野の技術動向についても引き続きウオッチしていきたいと思う。
以上
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

参考1:https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesf0178.htm
参考2:http://www.kita-colle.com/content/5733/
参考3:http://www2.toyota.co.jp/jp/news/12/02/nt12_0211.html
参考4:http://www.aero-life.jp/aero/index.html
参考5:https://www.pinterest.jp/pin/166070304979089963/
参考6:https://www.pinterest.jp/pin/664562488735347195/