LuckyOceanのブログ

新米技術士の成長ブログ

これからの仮想通貨の可能性

はじめに
技術士には経営工学という部門がある。そして、経営工学の部門には金融工学という科目がある。今をときめくフィンテックだ。自分は金融工学の専門家ではないが、経営工学にチャレンジする立場なので、やはりフィンテックにも興味と関心を持っている。技術士の立場で何かができるわけではないが、少し仮想通貨の現状や各国の取り組み状況、将来の展望について理解したことや私見を述べたい。

日本における国債残高と利払い費用
下の図(左)は国債の残高だ。平成23年度では667兆円だった。最新のデータを見ると、平成29年度末は865兆円だった。6年間で198兆円。年平均では33兆円増えている。不景気な世のなかで右肩上がりは珍しいが、国債残高は不健康に右肩上がりだ。下の図(右)は平成28年度の歳入と歳出だ。歳入も歳出も同じ97.4547兆円だ。歳入のうち公債の発行金額は全体の約35.3%の34.3兆円だ。テレビでも評論家が解説しているが、収入の三分の1が借金という異常事態だ。そして、歳出でも国債費が全体の24.1%の23.5兆円だ。34兆円を借金しても、右から左で23兆円は借金の返済に回っている。個人であれば、サラ金地獄の世界ではないか。

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(出典:財務省、参考1)

日本の国債保有者と金利
下の図(右)は国債保有者だ。もっとも多いのは銀行だが、増加しているのは日本銀行だ。そして、その国債金利は、低下している。直近(2018.1.11)でも個人向け国債の利回りは0.5%だ。でも、中央銀行である日本銀行はどれだけの利回りを日本国政府から受け取っているのだろうか。そもそも日本国政府の歳出の利子9.1兆円は誰に支払っているのだろう。個人の金利市中銀行が払い、市中銀行への金利日本銀行が払うのだとすると、日本銀行への金利を政府が払っているのだろうか。もし、そうだと200兆円の借金に9兆円の金利(利率4.5%)を払っていることになる。そんなことはないだろう。国債の仕組みは難しい。もっと勉強しないとよくわからない。

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(出典:NAKAKEN、参考2)

日本政府が発行する硬貨
日本では硬貨は政府(独立法人造幣局)が発行する。発行枚数では、平成2年に49億枚を発行したのがピークだが、発行金額では平成12年の3,187億円がピークだ電子マネーの活用などにより、硬貨の利用料は減少傾向にあり、発行枚数もこれに追随して減少している。最新のデータを調べると2017年度の発行金額(計画)は2,811億円相当とあるが本当だろうか。

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(出典:Wiki、参考3)

日本銀行が発行する紙幣
明治時代になって銀行制度ができるまでは政府が大判や小判を発行し、両替商がこれを丁銀や銭貨に手数料を取って交換していた。平成27年度の朝の連続ドラマ「あさが来た」の世界だ。明治になって中央銀行(=日本銀行)が設立し、政府は中央銀行国債(=借用書)を発行する代わりに、紙幣が日本銀行から市中銀行経由で国内に流通する仕組みができた。日本銀行が発行した紙幣の残高は右肩あがりに増加している。2015年時点で90兆円を超えた。日銀によると2017年度の発行予定紙幣は14.8兆円だ。日本では現金志向が強く、発行残高の約半分はタンス預金だという。

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(出典:日本銀行、参考4)

世界最古の銀行と世界最古の中央銀行
世界最古の銀行はどこなのだろう。じぶん銀行のホームページを見ると、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(Banca Monte dei Paschi di Siena、MPS)で、1472年にイタリア中部のシエナ市で誕生したという(参考5)。また、世界最古の中央銀行は1668年に設立したスウェーデンのリスクバンクという(参考6)。英国のイングランド銀行が設立したのはその6年後の1694年だが、当初は中央銀行ではなかった。19世紀の初頭に英国で金融恐慌が発生し、その対策としてイングランド銀行のみが紙幣を発行するという体制になった。これが実質的な中央銀行の始まりだ。

米国の中央銀行(FRB)の設立は1913年
米国では1776年の建国以来複数の銀行が設立されたが、1837年に大恐慌が発生し、さらに1873年から1896年の大不況に対抗するために資本家の後ろ盾をベースにして、1913年にFRBの体制が確立された。銀行の歴史は不況や大恐慌との戦いの歴史でもあった。

日本の中央銀行(日本銀行)の設立は1882年
日本では、1867年に大政奉還があり、1873年に日本初の第一銀行(現みずほ銀行)が設立された。そのあと、1882年に中央銀行としての日本銀行が設立される。日本銀行の株主は非公開だが日本国政府保有は55%という。設立にあたっては米国の資本家も支援した。しかし、米国からの支援と圧力のもとで設立した日本銀行よりも、米国のFRBの設立の方が30年も後だったとは知らなかった。どういうことなのだろう。

宗教と銀行
世界の金融業界はユダヤ系資本が牛耳っているとよく言われる。なぜなのだろう。宗教と金融が結びつかない。調べると、ユダヤ教では金利を取って金を貸すことを禁じていたという。そして、ユダヤ教から派生したキリスト教イスラム教でも同じようにこれを禁じた。しかし、ユダヤ教では、ユダヤ人以外に金を貸すときには金利を取っても良いという。このためにユダヤ人のみが金貸しを行った。しかし、欧州を中心にこの金融の覇権や利権のための長い闘争があったらしいが、その分野の専門家でもないので割愛する。

仮想通貨と電子マネーの違い
ここまで金融の基本の基本をレビューした。しか、本来の主旨から話がずれてしまったので、仮想通貨に戻す。そもそも仮想通貨と電子マネーは何が違うのか?という質問がある。一般には、仮想通貨は、国が発行する通貨とは別の独立した通貨だが、電子マネーは国が発行する通貨を電子的な手段で決済するものと説明される。しかし、最近は、銀行や中央銀行も仮想通貨やその仕組みのエンジンであるブロックチェーンの活用を検討している。

中央銀行が仮想通貨を発行する可能性
Wikiによると、欧州中央銀行は2012年に仮想通貨を特殊な仮想空間で取り扱う電子マネーと呼び、2014年には欧州銀行監督局は仮想通貨を中央銀行や政府が発行したもんではなく、電子的な取引用通貨と定義した。つまり、下の図(左)のCryptoCurrencyが仮想通貨だった。しかし、1930年に設立した各国の中央銀行間の決済を行う国際決済銀行(BIS)によると、下の図(右)のように、中央銀行が発行する仮想通貨(CBDC)の定義を示している。

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(出典:BIS、参考7)

中央銀行が発行する仮想通貨(CBCC)の可能性
BISの資料では、さらにこの一般的な仮想通貨と中央銀行が発行する仮想通貨の関係をマネーフラワーと称して定義付けしようとしている。これによると、CBCCとは中央銀行が発行する仮想通貨と一般的な仮想通貨の両方の特徴を有するゾーンだという。

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(出典:BIS、参考7)

エストニアが企画するエストコイン
中央銀行の発行するCBCCとの対極にあるのがエストニアが企画するエストコインだ。私の大好きなエストニアだ。エストニアは、SKYPEを発明したり、日本のマイナンバーの手本となるDigital IDカードを2002年から開始した。日本は2016年からなので14年も先行している。また、政府の業務でコンピュータ化できるものはコンピュータに任せようとしている。消費税(VAT)は現在20%だが、これもピークから値下げされた。消費税の増税しか考えない日本とは真逆だ。そんなIT立国を目指すエストニアが企画しているのがエストコイン(estcoin)だ。しかも、これをICOで行うものだ。

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 (出典:estcoin、参考8)

ICOによるestcoinは成功するか
ICOは資金調達する組織が独自に発行した仮想通貨をネットを通じて不特定多数に販売して資金調達する仕組みだ。ICOは、企業が資金調達するときのIPOをベースに検討されているが、仮想通貨を直接売買できる点がIPOとの違いだ。エストニアではe-Residensyと言う仕組みを提供していてこれが布石になっている。e-Residencyはエストニアに住んでいなくても、エストニアが定める所定の条件を満たせば電子国民になれる。安倍首相もメンバーと言われている。私も、目指している(笑)。f:id:hiroshi-kizaki:20180111202131p:plain
(出典:JEEADiS、参考9)

諸外国における仮想通貨に対する取り組み
エストニアICOという仕組みを活用してエストコインを発行しようと検討中だが、他の諸国も仮想通貨の活用を模索している。銀行の決済を自動化するには、数十年前からの人手による決済方法をベースにして合理化するのではなく、ブロックチェーンという仕組みを活用して作り変える方がスマートだ。日本の銀行でも、数十年前に開発した決済系のソフトを改修しようと思っても、ソースコードが当時のソフト技術者の職人的作品なので、今の若いソフト技術者では太刀打ちできないという。20年おきに式典遷宮を行う神社・神宮の宮大工(神宮では小工:こだくみ)ならノウハウを継承できるが、ITの分野では過去の遺産を引き継ぐのは大変だ。
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(出典:中谷さんのブログ、参考10)

仮想通貨の発行権をめぐる利権
政府自身が仮想通貨を発行するトライはエストニアだ。そして、欧州の中央銀行はこれに断固としては反対している。それはそうだろう。政府が発行する仮想通貨を認めると、中央銀行の存在意義は半減する。でも、逆に言えば、本当に中央銀行が仮想通貨(CBCC)を発行することがベストなのだろうか。国内では中央銀行(=日本銀行)が発行することを前提に紙面で報道されているが、本当にそれが正解なのだろうか。

ベーシックインカムの政府発行の仮想通貨
新しい仕組みという意味では、ベーシックインカム(UBI=universal basic income)も議論が進んでいる。個人的には、過去のブログにも書いたが、仮想通貨の仕組みはこのUBIを支払う手段に使えると思う。つまり、政府が通貨(コイン)を支給する代わりに、仮想通貨(例えば、円コイン、仮称)を発行して、電子的に支給する。それであれば、政府は日本銀行に借用書(=国債)を発行する必要はないし、金利を払う必要もないマネタリーベースを増やすことも減らすことも、政府の判断で調整することで可能だ。ただ、それが良いのかどうかは議論が必要だ。

まとめ
フィンテックが注目されて久しい。仮想通貨の筆頭であるビットコインは2017年年初に7万円だったのが12月には230万円を超えた。その後、暴落している。2018年は政府&中央銀行が本気で仮想通貨を始めてくるかもしれない新たな局面を迎えるだろう。小池百合子さんが代表になって希望の党に期待がまだ集まっていた頃には、その公約にベーシックインカムを検討すると記載されていた。でも、希望の党の惨敗に伴って、ベーシックインカムの議論にもブレーキがかかったようにも見える。仮想通貨を政府が発行するのか、中央銀行で発行するのかは、二者択一ではないかもしれないが、明治の時代に中央銀行を作ったのと同じぐらいのインパクトを将来の日本や世界に与えることになるのではないか。中央銀行が現在の利権を手放すとも思えないが、今後もこの分野の動向には注目する必要があると思う。フィンテックという技術を磨くことは大切だが、それをどのように活用するかを十分に理解することや正しい利用に誘導する努力は、原子力の例を出すまでもなく、必要なことだろう。

以上

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考1:http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/002.htm 
参考2:http://nakaken88.com/2015/06/08/080831
参考3:https://ja.wikipedia.org/wiki/造幣局_(日本)
参考4:http://blogos.com/article/142729/
参考5:https://www.jibunbank.co.jp/column/article/00108/
参考6:https://ja.wikipedia.org/wiki/中央銀行 
参考7:https://www.bis.org/publ/qtrpdf/r_qt1709f.htm 
参考8:https://e-resident.gov.ee/estcoin
参考9:http://www.jeeadis.jp/jeeadis-blog/e-residencyid
参考10:http://blogos.com/article/246872/