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倫理問題:米国の企業の方が倫理的なのか?

内部通報件数の多いランキング
少し古くて恐縮だが、昨年9月の東洋経済オンラインに内部通報者の多い企業のトップテンランキングが掲載されていた。内部通報が多いことは良いことなのか、悪いことなのかを論ずるのは難しい。内部通報が多いということは問題が多いという側面に加えて、社内の自己解決機能が高いという側面もあるからだ。また、今年になってから社内不祥事が報道された企業はこのランキングには含まれていないことからも、ベストではないが、ベターな企業群だと言えるのではないか。

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(出典:東方経済オンライン、参考1)

社内風土の活性化と改善
内部通報が多くてもそれらの課題を社内で共有されているかどうかが重要ではないか。下の表のように、各種問題はすでに社内で議論されているが、それでも内部通報が多いというのは改善の意欲が非常に強いということで望ましいことでもある。ただし、改善のためのリソースや時間、コストには限界もあるので、社内でよく議論して、優先度を決めて、それをオープンに共有することで、さらに次のステージに進めるだろう。

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閉鎖的な社内風土&内部通報が多い
上の表で左下のマトリックスは要注意だろう。つまり、問題は事業部別の縦割りが進んでいたり、ラインの上下でも社内の情報の共有がされていないケースだ。現場の第一線の不満や問題意識を吸い上げる体制も人材もいないために内部通報に情報が偏るなら、日常の情報共有やコミュニケーションを活性化することが先決だろう。

内部通報が少ない場合
判断が難しいのは、このケースだ。社内では問題が活発に議論されているのに、内部通報が少ないのだとしたら、それは内部通報システムが謦咳化しているのかもしれないし、内部通報システムが頼りにされていないのかもしれない。もっとわかりにくいのは社内の情報共有や議論も活発でないケースだ。これは問題意識自体が低いがなく、言われたことだけをやれば良いというような企業風土になっている可能性がある。このような企業の文化を変えることが実は一番難しい。

グローバルに高い倫理観を持つと評価されている企業
世界で最も倫理的な企業の調査を米国のシンクタンク(エシスフィア・インスティテュート)が毎年行っている。2017年版は2017年3月13日に発表され、世界19ヶ国124社が発表された。日本の企業では花王が選出された(参考2)。

11年連続で世界で最も倫理的な企業に選定された花王
花王は、世界で最も倫理的な企業2017に選定された。花王は2007年に同賞が開始してから11年連続で選定されている唯一の日本企業だ。同賞は透明性、誠実さ、倫理、コンプライアンスに関する優れた成果を挙げる企業を表彰する賞だ。

日本の企業は減少傾向
2011年版の調査では、この花王を筆頭に、日本郵船、リコー、資生堂、損保ジャパン、そして東京海上火災(当時)の6社だったが、2017年版では花王の1社のみに減少してしまった。日本企業の倫理観はグローバルに見ると減衰しているということなのだろうか。

企業倫理の評価基準
エシスフィア・インスティテュートは、同社の独自の倫理指数で評価している。具体的には、企業倫理・コンプライアンスプログラム(35%)、コーポレートシチズンシップと責任(20%)、倫理文化(20%)、ガバナンス(15%)、リーダーシップ・イノベーション・社会的評価(10%)で構成されている。同社によると、選出された124社はS&P500より株価が6.4%も高いという(参考3)。

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(出典:ETHISPHERE、参考3)

まとめ
日本では、内部通報の多い企業を報道することが多い。一方、米国では倫理感の高い企業リストを発表する。脳科学者の中野信子さんは、飴と鞭よりも、飴と無視の方が改善効果が高いという。良いことをしたら飴をあげて褒め、悪いことをしたら鞭で叱るという方法は、一般的な方法として認知されている。しかし、鞭を使わせないように、余計なことをしなかったり、隠したりするようになる。そうではなくて、悪いことをしても、スルーして、良いことをした時にだけ褒める。まさにペットの指導法だ。このような「飴と無視」による指導が最も学習効果が高いという。ただし、いつも褒めているとその効果は低下するので、スパイスの意味で軽く叱るとか注意喚起するのは良いのかもしれない。企業の倫理感を高めるには、自虐的に問題のある企業をリストアップするのではなく、模範となるべき企業をリストアップするような方法を日本でも採用したり、お手本となる企業の姿勢やノウハウを学ぶべきなのかもしれない。

以上

参考1:http://nenene-news.com/?p=5984
参考2:https://www.forbes.com/sites/jeffkauflin/2017/03/14/the-worlds-most-ethical-companies-2017/#611b08057bc3
参考3:http://worldsmostethicalcompanies.ethisphere.com/scoring-methodology/